2016年3月29日(火)
スクウェア・エニックス×トライエースのタッグが開発している、PS4/PS3用RPG『スターオーシャン5 -Integrity and Faithlessness-』。
待ちに待ったPS4版の発売まで残り一週間を切った(PS3版は4月28日発売)こともあり、電撃オンラインでは主要開発スタッフの3人に特別インタビューをさせていただきました。
本作における最大のこだわりポイントや、ゲームボリュームやバランスはどんな按配なっているのかといった真面目な質問から、各キャラクターの下着事情や開発秘話といった裏情報まで、さまざまなお話をお聞きできたので、ちょっと長くなりそうですが、ぜひ熟読ください。
ちなみに、ストーリーのネタバレにはほぼ触れておりませんので、そこらへんが心配な方はご安心を。
【お話を聞かせてくださったスタッフ】
・プロデューサー:小林秀一さん(写真左)
スクウェア・エニックスのプロデューサー。過去作で宣伝プロデューサーを担当してきており、その大きな『SO』愛で現場を取りまとめた。
・ディレクター:小川浩さん(写真右)
開発を手掛けたトライエースのディレクター。『SO3』以来、久しぶりに本シリーズの開発に携わった。
・キャラクターデザイン:あきまんさん(写真中央)
メインキャラクターのデザインを担当したイラストレーター。パッケージイラストや、3月31日発売の『電撃PlayStaton Vol.611』の表紙イラストも氏の手によるもの。
――ついにPS4版が発売となりますね! 小林さんにとっては、最初から最後までプロデューサーとしてかかわられたデビュー作品となるわけですが、率直な今のご感想はいかがですか?
小林秀一さん(以下、敬称略):やっと世に出せた……! 今はただそればかりですね。正直なところ、本作は開発のスタートからいろいろと苦難の連続だったので、感慨深いです。
――本当に、よくぞ『SO』をよみがえらせていただいて……イチファンとしてとてもうれしいです。では、小川さんはいかがですか?
小川浩さん(以下、敬称略):私としては、最後の最後で発売を延期してしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいなのですが……。時間を多くいただけたぶんチューニングに費やすことができました。
PS3版についてもユーザーさんに納得していただけるよう、引き続き全力で調整しましたので、もう少々お待ちください。
――まだまだ開発は続いておられるわけですね……。では、あきまんさんからも一言、今のお気持ちをお願いします。
あきまんさん(以下、敬称略):僕はまだ直接ゲームをプレイできてはいませんが、小林さんをはじめとするスタッフのみなさんから、ひしひしと情熱は伝わってきているので、仕上がりを純粋に楽しみにしているところです。
僕自身の作業は、イラストなどがまだまだ現在進行形なんですが、ひとまず作品全体が完成して、ようやく小林さんの霊圧も落ち着いてくれたな、と(笑)。
――霊圧ですか(苦笑)。プレッシャーがすごかったってことですかね?
あきまん:ええ。一時期は、切羽詰まっている感じがものすごかったので。
小林:それだけ、この『スターオーシャン』の復活に懸けていたんですよ(苦笑)。何せ、自分も大好きなシリーズでしたからね。正直なところ、数年前にも『SO』の復活をもくろんだことはあったのですが、仕事に追われるうちに、一度諦めてしまったことがありまして。
心の中で、“これだけ大きな会社なんだし、誰か別の人がプロデュースするだろう”と楽観視していたところもありましたからね。
でも、いつまで待っても誰もずーっとやらないままで、マズイぞ、このままでは『SO』が忘れられてしまうと思って、ついに自分から手を上げた形ですね。
――初のプロデューサー業に挑ませる、それほどの思い入れと由緒ある歴史があるシリーズなわけですが、最新作を手掛けるということにリスクは考えませんでしたか?
小林:もちろん考えましたよ。スクウェア・エニックスには順調な大作IPがあり、スマホやソーシャルゲームについても多くのユーザーさんが遊んでくれている現状があります。
ですが、そればかりに気持ちが傾いて、いわゆる大作と呼ばれるタイトル以外の、コアなファンの方に支えられてきたコンシューマのシリーズが埋もれつつあることに危機感もありました。
ゲーム業界に携わる者として“それはちょっともったいなさすぎるよな”って危機感です。長く愛されてきたという事実と、ファンの思いにそろそろこたえるべきだと。ファンの方たちと同じように、僕も大好きなシリーズを途絶えさせたくなかったんですよね。
とはいえ、6年ぶりの新作ということで、シリーズ作品としてはかなり間があいてしまうことになってしまいました。
――空白期間が長く、シリーズ最新作として送り出すには難しい部分も多かったのではありませんか?
小林:先ほども言いましたけど、とにかく苦労だらけでしたよ!(笑) なんといっても、スーパーファミコンで『SO1』を発売してから、もう20年ですからね。トライエースさんと密に相談をして“初めて遊ぶ人にも楽しんでもらえる作品にしよう”と決めました。
じつのところ、もしかするとシリーズファンにとっては不満に思えるような部分もあるかもしれません。でも、この『SO』シリーズをこの先の未来へ繋いでいくためにも、今回は新規ユーザーさんでも遊びやすい作品にしたい、との思いでとっつきやすさには特に注力しました。
――次世代へ向けて、まさしく船出となる最新作というわけですね。
▲古参のファンを意識しつつ、新規ユーザーに受け入れられる作品を作り上げるのは容易ではなかったとのこと。そんな『SO5』には、さまざまなチャレンジが盛り込まれている。 |
――では、小林さんや小川さんたちが考える、本作の最大の見どころはどこですか?
小川:これは、以前のインタビューで弊社の五反田(トライエースのシリーズメインコンセプター・五反田 義治氏)が答えていた言葉なのですが、今回、物語的な見どころとしては、『Integrity and Faithlessness』というサブタイトルにすべての思いを入れ込みました。
プレイしていただければ、きっとその意味を理解していただけるかと思います。そしてコンシューマならではのシームレス感、コントローラから繰り出されるドライヴ感を存分に味わっていただけたらうれしいです。
――たしかに、物語にもプレイにも心地よい速度感を感じます。シームレスってすごいなって感じました。
小林:今までの『SO』だったら、イベントが挟まるたびにゲームではなく鑑賞する時間になるところでも、今回はシームレスにこだわるということで、キャラを自由に動かせるなど、ゲームプレイの延長上と感じられるようにしてあります。
小川:五反田は、今までのどのシリーズよりもたくさんのシナリオを書いてるかも? と言っていましたので、それくらいのボリューム感だと思っていただければ。
小林:ただ、シームレスにこだわった結果、プレイする方にとっては、逆にものすごいスピードで物語が進むように感じられるかもしれません。
そういった意味でももしかしたら逆にボリュームが減った? と錯覚されるかもですね。今まででしたらイベントシーンとして演出していた部分なども基本的にはノンストップで進んでしまうので、体感的には短く感じてしまうかもしれないです。
――イベントをイベントだと感じないほどのシームレス感ってことでしょうか。ちなみに、クリアまでのプレイ時間はどのくらいを想定されています?
小川:急いでプレイすると、30時間前後でしょうか。実際にはアイテムクリエイションなどで、もう少しかかるのではないかと思いますけど。
小林:歴代のシリーズを遊んでいる人からしてみれば、単純比較で「たった30時間なの?」と言われるかもしれませんが、“会話シーンを眺めるだけの時間が減ったぶんだけ圧縮されている”とイメージしていただければ。
ゲームとしてのボリュームは、ものすごいことになっていますよ。正直なところ、こんなゲームは作っちゃいけなかったって、作っている途中で感じたほどですからね。
――ほほう……それはどういう意味でしょう?
小林:イベントもフィールドもシームレスで全部がつながっているっていうのは、作る側にとって予想以上に大変なことなんです。どこかに修正が入ったら、他の部分にも影響してしまう。
しかも、シナリオが重視されるJ・RPGとして、きちんと物語の道筋はあるので、どれだけユーザーに自由に遊んでもらっても、最終的に破綻することがないように作らなきゃならない。
それは同じシームレスでも、海外で主流のプレイヤーが自由な冒険者となるオープンワールド系のRPGとは根本的に違っていて、すごく繊細な作業が要求されるんです。そういう意味でも『SO5』はオープンワールドではない、クラシカルでありながらも進化したJRGPであるということです。だからこそ、作業量も膨大で本当に開発が終わらないんじゃないかと思った時期もあったほどです。
――なるほど。たしかに、前例のないものを作り上げてしまいましたね……。
小川:調整に次ぐ調整の繰り返しでした。結果的には満足がいくものに仕上がりましたが、ファンのみなさんをお待たせしてしまいまして申し訳ありません。
――小林さんの霊圧が大変なことになるのも納得です(笑)。
――過去作との繋がりについては、どんな調整をされたんですか? シリーズ未プレイの方も、いまや少なくはないかと思うのですが……。
小林:シリーズ再立ち上げの意思表明としての『SO5』です。今、この5作目から“この『SO』という作品が好き”という人が増えてほしいと思っています。
ですので、“過去作を知ってなきゃいけない”といった形で作ってしまうと、ユーザーの幅が狭まってしまうので、何も知らなくても大丈夫なようにしてほしいと五反田さんにお願いしました。正直なところ、最初の打ち合わせで「宇宙暦を捨ててもいいですよ」とまで言いましたからね。
――そこまで!? その思い切りはすごいですね。
小林:ええ。でも、五反田さんからは「この“宇宙歴”をテーマに、やれるとがまだまだある。ストーリーの構想もあります」と頼もしい言葉がもらえました。結果としてシリーズとしての流れがありつつも、過去作を一切知らなくても楽しめる内容になりました。
小川:最初はファンタジーで、少しずつ壮大なSFになっていく流れは、まさしく『SO』といった風情です。
小林:五反田さんの頭の中にはもっと壮大な宇宙暦が広がっていて、僕らはそれを少しずつ取り出して見せてもらってる感じですね。
――シリーズ定番のプライベートアクション(PA)のシナリオについてはいかがですか?
小川:シームレスになった分、今までよりも1つ1つのPAそのものは短く感じるかもしれません。ただ、PAを追っていけば、各キャラクターがこういうことを考えているんだということがわかって、グッと仲間たちの心情に寄り添っていけるはずです。
――なるほど。オススメのPAはありますか?
小川:アンヌがかなりPAでいじられたりして、本編にないところをみせてくれるキャラが多いので、そのギャップが見ていて楽しく、気に入っています。
▲生真面目ゆえに、どこかヌケているというアンヌ。PAでその片鱗が垣間見られる? |
小林:仲間たちがフィオーレの服を着たがらない、というPAは個人的にとても気に入っていますね(笑)。
――難易度や周回プレイについての情報も、ぜひ教えてください。
小林:今回は、“高難易度でなければ○○ができない”というようなものはありませんし、周回プレイをしないとできないことなどは仕掛けていません。ただしカップルエンディングが1回のプレイでは網羅できないはずなので、繰り返し遊んでいただけたらと。
――仲間の取捨選択などで頭を悩ませなくてよいのは残念なような、うれしいような……ですね。
小川:本作は必要な人間が必要なエピソードに明確に絡んでいます。関係性と各キャラの意志が、物語を動かしていきますので、傍観者的なキャラは1人もいません。そのあたりも楽しんでいただければ。
――本作のバトルシステムについては、今までのシリーズほど難しさを感じない仕様になっていると思っているのですが。
小川:没入感とプレイアビリティのバランスをとるのに、相当苦心しました。いわゆる“これぞトライエース”と長年のユーザーさんに言われるような、シビアな感じに作るというよりは、手触りと爽快感を優先して現場としては調整しています。
気持ちよく戦える、気持ちよく物語を進めていける。その点でいえば、トライエースファンとしては、バトルシステム的に物足りなさを覚える人もいるかもしれません。
小林:けれど、やっぱり時代が流れて“トライエースとはなんぞや”“スターオーシャンって、どんなシリーズ?”という若いユーザーさんも大勢いるわけで。そういうプレイヤーさんを置き去りにするようなシステムにはしたくなかったんですね。
――こうやって戦うと進めやすいよ、というアドバイスはありますか?
小川:アクションに慣れてない方に、“敵の行動を見ながら戦って!”といってもなかなか難しいと思うので……。まずは気持ちよくコンボをつないでいくことを覚えていただけたらと思います。
ビギナーにオススメなのは、アンヌやフィデル。手数が多いので単純に強いです。使いこなしていくと強いなと思えるのはフィオーレ。彼女のオーブは貫通系の攻撃が多いので、戦況を判断できるようになり、各キャラの攻撃特性を把握しながらコンボを繋ぐことができるようになる頃には、かなり便利なキャラだと思えるはずです。
小林:主人公であるフィデルは、万能タイプなのでスキが少なく、序盤から終盤まで使いやすいはずです。迷ったら彼を操作していれば間違いはないと思います。
――武器や防具によっても戦況は大きく変わると思うのですが、アイテムクリエイションでとんでもない武器や防具が手に入ることはあるんでしょうか?
小川:強力なアイテムはもちろんあるにはありますが、一部を除いて、今回はシナリオのバランスブレイカーとなるほどのものはないかと思います。
とはいえ、アイテムクリエイションをほったらかしにしていると、バトルはどんどん厳しくなります。シナリオが進んだら、その時その時のタイミングに応じてアイテムクリエイションも進めていくのがオススメの攻略法です。
小林:本当に強い武器を得ようとすると、クリエイティブ合成をやりこまなければいけません。相当細かい仕様になっていますし、その材料を集められるくらいのタイミングならば普通にレベルも上がっているんじゃないかなと。
とはいえあえてクリエイションで作る武器に性能などを抑制はしていません。クリエイションでの結果もユーザーの選択肢ですし、そういう意味ではある程度の、ユーザーが起こしうるバランスブレイクは“ありき”でもいいと思っています。
――なるほど。話を進めたいと急いでばかりでは、逆に苦労が増える、と。じっくりゆっくり進めたほうが、結果的に効率的になるというのはステキですね。
――では、それぞれのキャラクターたちについて、デザインのポイントなどをおうかがいしたいのですが。
小林:今回はミキ以外のメインキャラクターをあきまんさんにゼロからデザインしていただきました。
ミキは開発のプロトタイプ時にはアウトラインだけは設定していたので、それをあきまんさんにベースとしてデザインしてもらったということです。結果的に、どのキャラもそれぞれ魅力的に仕上がったなと感じています。
――フィデルはプレイしていても好感度が高くて、これぞ主人公という強さとカッコよさだな、と。
あきまん:過去のシリーズから主人公は金髪→青髪→金髪→青髪と交互に来ているので、今回は黒系の青みがかった髪に設定しました。少女マンガに出てくる男子のかっこよさを僕なりにやってみました。
小川:現場では、衣装の背面のひらひらしたデザインに四苦八苦したりしましたけどね(苦笑)。
あきまん:こういう動きのある要素がないと、風が吹いている崖の上とかで様にならないような気がするんですよ。プレイヤーがずっと見るのは後ろ姿なると思うので、飽きないようにフードがついていたり工夫しています。
――“主人公らしさ”で意識したところはありますか?
あきまん:雰囲気的に、かわいい感じになるのはマズいと思っていました。学生でたとえるなら、ちょっと怖いほうの男の子ってくらいの感じは出したかったんですよね。上着を脱いだりすると、上腕二頭筋バキバキでやべぇ……って思われるくらいの男子かな、と。
――細かい!! そしてすごく納得できる気が。
小林:あきまんさんと話していると、こいつはこうだから、こういう格好であるべきだ、というデザインについてのこだわりがたくさん出てきておもしろいんですよ。各キャラの洋服の構造や下着の話とか。(笑)
――下着!?
小林:フィデルのパンツはこういうのだー、とかね。決まっているんですよね?
あきまん:そうですね。時代とか、世界観設定から下着の仕様や生地の素材まで決めていかないと、服装の全体が見えてこない。デザインするってそういうことだと思うので。ちなみにフィデルはローライズタイプのボクサーパンツだと思っています。
▲『SO1』のラティ、『SO3』のフェイトと、シリーズの奇数ナンバー伝統的に、フィデルの髪の色は青系になったとか。 |
――……ミキとかフィオーレのパンツにも設定が?
あきまん:はい。全部が全部というわけではありませんが、頭の中に設定がありますよ。
小林:ちょっと待って、ここからあきまんさんと全キャラのパンツの話をするつもり!?(笑)
あきまん:まあ、僕はできますけども。決まっていないところを聞かれたら、今決めることになりますけど。
――じゃあ、パンツも含めたキャラデザの細かい設定、ぜひ聞かせてください! きっとキャラクターデザイナーを志している人や、『SO5』のコスプレをしてみたい人にとっては貴重なお話になりそうな気がします。
――ということで、ミキについて。彼女は本当にかわいいキャラに仕上がっていますね。
小川:人によってはめんどくさいと感じる方もいるかもしれませんが、とても素直な子です。フィデルと5才も離れているので、お兄ちゃんと妹のイメージでいい感じのコンビになったと思っています。
小林:東山奈央さんの声と演技とで、ばっちり決まった感がありました。嫌味ではなく、まっすぐかわいいって思える。妹っぽい感じをしっかり表現してもらえましたね。
小川:「いぃ、やたっ!(やった!)」って喜ぶボイスがあるんですけど、ニュアンスがわかりにくいかな……と思っていたら、収録時にとてもスムーズに表現してくださって、すごいなと得心したのを覚えています。
――ミキはトライエースの開発サイドのデザインから、あきまんさんがイラストに起こしたそうですが、印象はいかがでしたか?
あきまん:ミキのモデルが上がってきたときに抱いた印象としては、“子ども感”がすごいなと。設定年齢よりもかなり下……中学校1年生くらいに見えたんですね。僕が描くとどうしてもムチッとしてしまうので、モデルに近づけて、わりとシュッとした感じに仕上げたつもりです。
カラーはピンクと白が主体だったので、それを受けつつ、いろいろと頭を悩ませましたね。世界観に合わせて“田舎出身の娘”にしようと思った時に、服装の白の使い方に悩みました。白って強調させ過ぎると、聖なるモノというか、高尚なヒロイン像になりがちで。
小林:どこぞのお姫様っぽくなっちゃうんですよね。
あきまん:白は白でも、どこか田舎っぽく見える、少女マンガにおけるちょっとだけちんちくりんな感じを出したかった。ミキ本人がどう思っているかはさておき、周りから見ると少しダサいかな? というような模様をあしらったりとか、細かく工夫しています。
――ちなみに……あのー、スリーサイズとかは……?
あきまん:キャラクターをデザインするときには全体のバランスも考えるので、各キャラそれぞれの身長も自分の中でイメージするんですが、僕の中ではフィデルが182~178cmくらいで。
そうすると、ミキは身長145cmくらいのイメージなんですね。で、胸とか考えていくと……。
小林:背伸びしてフィデルに着いていこうとするミキはもちろん幼さがあるわけですが、わりと幼児体型の巨乳なのではないかと思っていますよ、僕は。
――こんなところでプロデューサー権限が発動ですか? でもそれ、ステキです(笑)。
あきまん:まぁ、僕もそういうイメージで描き上げたつもりですから(笑)。ちなみに下着については……白ですね。サイドで結ぶ紐パンであってほしいと思っています。
――えええっ!? それはちょっと背伸びしすぎなのでは?
小林:僕的には、普通のパンツであってほしい。白いパンツであってほしい!
あきまん:いえ、エロい方面にではなく(笑)。世界観設定的に、田舎のほうで、ふんどしの変形版みたいな紐で結ぶタイプのパンツなのでは、ということであってですね。
――ああ、なるほど。純真さゆえの、という。近代的ではないと。まあ、そのー……カメラのアングルをあれこれすると、今作は思いっきりパンツが見えてしまうわけですが。あれはもちろん、見せパンなんですよね?
小林:どストレートだなぁ……(苦笑)。
▲移動中など、カメラアングルをがんばると……。 |
小川:海外への対応も含めまして、わりと健全な見えパンであると了解していただければと。
――なるほど。そしてあきまんさんの中では、それは紐パンであると。
あきまん:はい。
小林:こだわるなぁ~。もっと大事な話がたくさんあるような気がするんだけどなぁ~?(笑)
――電撃のインタビューだけでしか読めない質問を突き詰めていこうかな、と(苦笑)。というか、イチファンとして気になってしまうので……すみません!!
――ということで、次はヴィクトルですが。彼はとにかくイケメンで、頼れる兄貴って印象です。
小川:苦労人でマジメな兄貴分ですね。辺鄙な村で育って、がんばってマジメに成長したタイプの青年です。
小林:僕はあきまんさんに“イケメンの軍人を”と、ずいぶん乱暴なオーダーをしました。
――プレイすると、かなりリーダーっぽいイメージで、声から何からイケメンだなぁと。
小川:全体とのバランスを考えた時に、髪の毛の赤いメッシュについてはゲーム中で入れられず、あきまん先生に申し訳なかったところではあるんですが。
――あきまんさんがデザインで、このメッシュを入れた理由というのは?
あきまん:僕はなにせ独善的な人間なので、はじめてのものとか、見たことがないものっていうのが好きなんです。だから、“騎士なのに髪に赤いメッシュというキャラクターはおもしろそうだぞ”と、わりとノリで入れてしまったんですよね。
少なくとも自分では未見だったので、OKがもらえるかどうかはわからないけど、やってみたんです。くどいかなーと思ったりもしたんですが。フィデルがウエスト細い系マッチョだとしたら、ヴィクトルは逆三角形マッチョですね。アイドルの水泳大会に出ている男性陣より、少し太いくらいの印象です。
▲戦闘でも頼りになるヴィクトル。かなり筋肉質なキャラとして想定されているようだ。 |
――細かい……でも、よくわかる気がします。そして、あのー、パンツは?
あきまん:真面目に設定を語れと言われたら、パンツは柔らか素材で、前に紐が着いてる感じ。生地少なめのブーメランタイプですね。
――なるほどなるほど、容易にわかる気がします(笑)。
▲赤いメッシュにブーメランパンツ? ヴィクトルのキャラの濃ゆさが際立ちます。 |
小林:次はフィオーレですが……彼女、一番苦労したんじゃないかなぁ。奇抜な見た目だからこそ、性格的なものがいかようにもイメージできますもんね?]
――ゲームを先行して遊ばせていただいたところ、こんな見た目なのに意外と常識人で驚きました。
小川:カタいだけの研究者ではない、常識あるお姉さんキャラですね。変なのはファッションだけかな……。
小林:この非常識な格好で常識的なお姉さん、というギャップがいいですよね。
――そう、この非常識な……ハレンチな……。でも、ちゃんと理由があるんですよね、この衣装。
小川:呪印を扱う人は露出の多い衣装にならざるをえないという世界ですので。
あきまん:フィオーレの服は、パッチワークが伝統衣装系であるという設定にのっとったデザインです。立体的なものに単純な記号を乗せるとすごく強調されるので、あまり見たことのない形でやってみたかったんですよね。
どうなるかな……となかば試すような形で提出したら、文句なしで「これで!」というお返事が返ってきたので、あ、小林さんのチームとは末永くお仕事できるな、と感じたものです(笑)。伝わってよかった、うれしいなって思いながら、本当に大丈夫かな? という気持ちも半分ありましたけど。
――いろいろな想像を喚起されるデザインですよねぇ……。
あきまん:ちゃんとパンツもはいてますからね。よく見ていただくと、パンツの紐ありますから。
――あ、本当だ。
▲たしかに……黒い紐のようなものが見えますっ!! フィオーレは……はいているんですッ!! |
あきまん:フィオーレは、パンツをはいてからこのスーツを着用するんです。制服ですからね。
――しかしこれは、コスプレイヤーの方たちをなかなかやる気にさせるデザインのような気がします。
小林:破れないようにうまく作成していただいて、コミケとかで着てもらえたらかなり注目されるのではないかと思いますね。というか、僕が見たいです(にっこり)。
――えぇ、僕も見たいです(真剣)。
――エマーソンとアンヌですが……じつはかなりのキーパーソンとなる2人ですよね。
小川:エマーソンは飄々としていい加減なところもあるけど、じつはマジメなおっさんで、おいしいところをもっていくニクい奴です。ちょっと保護者的でもありますが、最初から答えを示すのではなく、一回相手に考えさせてから責任をとる男。責任感のあるオトナですね。
小林:ミキ以外は、以外とみんなオトナなんですよね。みんな20歳以上ですし。少年少女たちだけじゃなく、オトナだってまだまだ成長していく……そんな作品になっています。
小川:五反田からは「自分ももう歳をとったから、20代の頃のようなストーリーは書けない」と言われたんです。でも、だからこそできる『SO』もあるだろうと思いました。それもあって、年齢設定はわりと高めになっていますね。
――では、そんなエマーソンのデザイン的なこだわりはどのあたりに?
あきまん:悪い僧侶、というイメージで作っていきました。自分で設定として勝手に“宇宙教”みたいなディテールを考えて、それに沿って“宇宙の滅びを止めるための砂時計”をデザインに施してみたりだとか。
――おお、この前掛けのようなものに描かれているのは砂時計だったんですか……細かい! そして、それはそれでおもしろそう!!
小林:その設定、僕も今はじめて聞いたんですけど、おもしろいですね!
あきまん:貧乏っぽいイメージになりすぎないよう、金色をゴージャスに使っています。なにやらスゴい家系だとか、細かい事情を小林さんから聞きまして……。
小林:最初はまったく違ったんですよ、エマーソンって。もっとSF色が強かったんですけど、やはり舞台となる惑星のイメージを最優先に今のエマーソンが出来上がりました。
――アンヌについてはいかがでしょうか? 実直な女性という印象ですが。
小川:パートナーであるエマーソンがいい加減なので、その対比としての存在感を重要視しました。
――デザインについては、他のキャラと比較するに薄着というか、わりとシンプルに思えますが。
あきまん:アンヌについては“シンプル イズ ベスト”という言葉の意味について考えまして。ただ、“シンプル イズ ベスト”はデザイナーにとって呪いの言葉でもあるな、と。
――呪い……ですか?
あきまん:ええ。なんにせよ、“どうしてシンプルがベストなのか?”って、ちゃんとした研究もないまま信じるわけにはいかないなと思ったんです。
たとえば、宇宙刑事ギャ●ンのデザインって、一見ごちゃごちゃしているように見えるかもしれませんが、その実、総合的な印象としてはとてもシンプルだよなぁと感じたりもして。“シンプル”であろうとしたとき、そもそもシンプルとはなんぞや……と考え始めると、逆に悩んでしまったんですよね。
そんな中、いくつかの色を混ぜてデザインをするんだけども、一歩引いたところから一体のキャラとして見たとき、オレンジのイメージにならないかなぁ~とか、いろいろと試した結果として完成したのがアンヌのデザインです。
――そう言われると、確かに緑の髪にオレンジの衣装の、と言いたくなる気がします。
あきまん:全体の雰囲気はちょっと中国のような、遠方の民族をイメージしました。
小林:マフラーがネルっぽいのとか、遊牧民のような印象もあって気に入っています。
あきまん:下着はスポーツブラの上下セット的なものを身に着けているイメージです。動きやすさ重視ですね。
――なるほど。近距離戦でアンヌはとても心強いし、納得です!
――最後にリリアについてお願いします。キーパーソンなので、言えることは少ないかとも思うのですが……。
小林:いわゆる魔法少女的であるべきだと、あきまんさんがデザインされた服ですね。かわいいですよね。ミキが用意した服を着ているわけなんですが、ここにもちゃんと、あきまん設定が隠れていてですね。
――というと?
あきまん:僕は女性が怖いんです。女性とは怖いものだと思っています。その考えが、このリリアの服装に込められています。
――んん?(困惑)
あきまん:女の子が2人いると、どうしたって禍々しい考えになってしまうんですよ。僕の中の設定だとあらかじめ断っておくうえで言いますが、ミキはリリアにわざと子どもっぽく見える服を選んで着せているのではないかと考えています。
そうすることで、フィデルがリリアを女性であると意識することがないように、わざとです。
――お、おおぅ……そいつはなんと禍々しい……すごくリアルですね。わかってしまう。12歳にしては幼いなと思ってたんですが、なるほど、腑に落ちました。
あきまん:あくまでも僕の中での設定ですけどね!
▲(あくまであきまんさんの中で)ミキとリリアの、フィデルをめぐる抗争が……。 |
小林:あきまんデザインのすごいところですよね。恐ろしく細かい(笑)。ですが、経緯はどうあれ“守ってあげたくなるような子”というこちらの意図は汲んでいただけて、かわいい幼さを出していただけたなと。
小川:女性というよりは、やっぱり子どもなんですよね。
――そんな小さな子どもなのに、彼女の身には大きな秘密が……。
小林:そこらへんはぜひ、プレイして見届けていただけたらと。裏表なくていい子なのでね。
――では最後に、シリーズおなじみのウェルチですが。
小林:ウェルチは本作にも絶対に出してほしいと、小川さんに僕からお願いしました。やっぱりシリーズには欠かせないキャラになっているなと感じたので。
小川:アイテムクリエイション=ウェルチというイメージが、ユーザーさんの中にも強かったようなので、結果的にいてくれてよかったなと思っています。ゲーム中、指し棒の指先が動かせなかったことだけが心残りです。
▲シリーズの皆勤賞ともいえる人気キャラ・ウェルチは本作にももちろん登場! |
――では、そんな皆さんのお気に入りキャラは誰ですか?
あきまん:僕はフィデルが好きですね。主人公に感情移入するタイプなので(笑)。リアルでもイケメン好きでドラマ見てしまったりするので、うん、主人公はやっぱりいいですね。
小林:僕はアンヌがお気に入りです。マジメなんだけど、マジメすぎてちょっといろいろ足りない感じがかわいくて、これはいいぞと。実際、バトル要員としても強いですしね。
小川:僕はフィオーレですね。見た目と性格のギャップがいい。プレイしていただけたらきっとわかります、ホントにいい人なんですよ?(笑)。後は武器のオーブを作るのが大変で、現場もよくがんばってくれたので、細かいところまで見ていただけたらと。
――それにしても20年というのは長い年月で。それだけの長い間、愛されてるシリーズということにもなるわけですが、今後については何かをお考えですか?
小林:今はやっと『SO5』を世に問えるというところに到達したばかりなので、細かなことを言える状況にはありません。ただただ、このタイトルをできるだけ多くの人に届けたいと……そればかり考えています。
――以前、電撃オンラインで『SO』シリーズの生放送を行った際は、“過去作のリメイクをしてほしい”というファンの声も根強くあるようですが?
小林:僕個人の意見としては“やれるものならリメイクを”という気持ちと、“リメイクに手間をかけるよりも更なる新作を”という気持ち、どっちもが天秤にかけられて揺れている状態です。
いずれにせよ、今回の『SO5』次第という側面はやはり強いので、本作をより多くの方に遊んでいただいて、どんどん『SO』の輪を広げていっていただけたらと思うばかりです。みなさんの応援が大きな力になります。ぜひよろしくお願いします。
――それでは、最後に読者のみなさんへメッセージをお願いします。
小川:お待たせしてしまったぶん、楽しめるものに仕上げたつもりですので、どうか手にとって、遊んでいただければと思います。
あきまん:僕はシリーズ未経験で、今作から初めて遊ぶことになるんですが、読者の方でもし未経験という人がいらっしゃれば、ぜひ僕と一緒に『SO』デビューしましょう。
小林:やっとここまで辿り着きましたが、すべてはここからはじまります。これから『SO』が更なるシリーズとして続いていくための新たな一歩となる作品です。
僕自身が「これはおもしろい!」と心から思える『SO5』を作り上げましたので、ぜひ遊んでください。そして、更なる星の海を目指して進んでいけたらと。応援よろしくお願いいたします!
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