2016年3月25日(金)

『PSO2』×『ワルエク』コラボ記念! プロデューサー対談でE3や『戦場のヴァルキュリア』動画撮影の秘話が

文:滑川けいと

 セガゲームスのPS Vita/PC用オンラインゲーム『ファンタシースターオンライン2』とiOS/Android用アプリ『ワールド エンド エクリプス』がコラボを展開中。それを記念して、酒井智史プロデューサーと本山真二プロデューサーによる対談を行いました。

『PSO2』×『ワルエク』 『PSO2』×『ワルエク』

 『PSO2』と『ワルエク』のコラボキャンペーンは、SEGA IDを登録してそれぞれのタイトルで条件を満たすと、豪華なアイテムがもらえるというもの。

 対談では、コラボ実現のいきさつから始まり、2人がこれまでに手がけた作品や最近気になるゲームなどを語っていただきました。トーク後半には、とんでもない方向の話題に!? 時折見せる、くだけた話し方も注目です。

 パーソナルな部分にも踏み込んだ対談となっているので最後までご覧ください。なお、インタビュー中は敬称略。

『PSO2』×『ワルエク』
▲『ワルエク』の本山真二プロデューサー(左)と『PSO2』の酒井智史プロデューサー(右)。

子どものころにハマったのはあのタイトル!? 最近気になるソフトも判明

――まずはお2人の経歴を教えてください。

酒井:僕は1994年にセガに入社しました。最初はデザイナーとして入社して『ワールドアドバンスド大戦略』、『AZEL -パンツァードラグーンRPG-』、『ソニックアドベンチャー』に携わりましたね。その後『ファンタシースターオンライン』にかかわって以降は、ずっと『ファンタシースター』シリーズを作っています。

 メインデザイナー、ディレクターを経て『ファンタシースターポータブル』からプロデューサーになりました。今は『PSO2』のシリーズプロデューサーをやっています。

本山:僕がセガに入社したのは2002年です。当時、セガの開発はそれぞれ分社していたころで、その前は別の会社で1年半くらい働いていました。

酒井:最初はオーバーワークスだっけ?

本山:そうです。アーケードのメダルゲームの企画をやっていたのですが、企画書がまとまったころに「君はRPGのチームに行ってくれ」と言われました。RPGチームに入り、1年くらいは企画をコネコネしていたのですが、結局通らなかったんですね。

 その後はアクションゲームの『Shinobi』、『どろろ』に携わりました。『どろろ』はいろいろな人がかかわったのですが、その時は確実に開発を完了させて期日にリリースする役を仰せつかり、何とか間に合わせるということをしました。

 その後、再びセガ本体に統合された後は、コミックやアニメの『BLEACH』という原作を生かしたゲームを担当しました。そして『戦場のヴァルキュリア』シリーズに携わり、現在は『ワールド エンド エクリプス』のプロデューサーをやっています。

――お2人がゲームを好きになったきっかけは何でしょうか?

『PSO2』×『ワルエク』

酒井:小学校のころにLDゲーム(レーザーディスクゲーム)をすごくやりましたね。小学校5年生くらいかな。ゲームセンターに行って、連コインしてプレイしていました。中でもやり込んだのは『サンダーストーム』です。

本山:LDゲームを連コインできるということは、相当なお金持ちじゃないですか!

酒井:お金はそこまでなかったので、結局5、6面までしか行けなかったんですよ。サターン版が出た時にすぐに買って、すべてクリアしました。それまでエンディングを見たことがなかったんです(笑)。

本山:僕が小学生の時はファミコンが発売されたタイミングだったので、家庭用ゲームにハマっていました。初期のソフトはいろいろやりましたよ、『ナッツ&ミルク』とか。当時はよく見られた光景でしたが、友だちの家に集まってやってました。

――本山さんはアーケードゲームはプレイされなかったのですか?

本山:アーケードゲームは中学生以降に本格デビューでした。例えば、『ストリートファイターII』や『ダンジョン&ドラゴンズ』をやっていました。

酒井:僕の家はカセットテープで読み込む“パピコン”があったんですけど、家庭用ゲーム機は高校生くらいまでなかった。だから、もっぱらアーケードゲームでしたね。

 シューティングが特に好きで、『ゼビウス』や『スターフォース』など、多くの人が通るであろう道はひと通りやっていました。大学の時は、ずっと『TATSUJIN』をプレイしてましたね。他には『怒首領蜂』とか『RAY FORCE(レイフォース)』もすごくやりました。

『PSO2』×『ワルエク』

本山:『TATSUJIN』が出てくるって相当なシューターですよね。僕が最初に買ってもらったソフトは『ツインビー』だった気がします。『スーパーマリオブラザーズ』と『ツインビー』のどちらにしようか迷って、なんとなく『ツインビー』を選びました。

酒井:なんとなくそういうところからもセガに入る感じがするね。

本山:どうなんでしょうね。あんまり言うと、偉い人に「オイ!」って言われそうですけど(笑)。

――ここ最近で印象に残ったゲームはなんでしょうか?

本山:月並みかもしれないですけど、Wii Uの『Splatoon』ですね。そこまでガッツリと触れるタイミングはないのですが、FPSやTPSは大好きなので、人がプレイしているのを見ると、こういうシューターの見せ方があるんだなということを嫉妬するくらい感じます。

酒井:僕はPS4/PS3/PS Vita『ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ』ですね。サンドボックス型のゲームはあるとしても、それを包含してくる力を感じると言いますか……『ドラクエ』をいろいろな形で展開してくることに、スクウェア・エニックスさんは攻めているなと思います。

本山:『ドラクエ』らしさを盛り込み、似たゲームで終わらせていないのがスゴいですよね。ちゃんと世に出せるというところまで仕上げてくるんですから。

コラボで互いのユーザーが行き来してほしい!

――第2弾コラボが3月25日から始まりますが、そもそも相互コラボをやることになったきっかけを教えてください。

『PSO2』×『ワルエク』

本山:僕から『PSO2』チームにアプローチをしました。「コラボ、どうですか?」みたいな軽いノリで(笑)。『PSO2』は巨大なチームでいろいろやっているので、多くのコラボタイトルの準備をして仕込んでいるのですが、その中にサクッと入れていただきました。

酒井:『ワルエク』が開発初期のころにそういう話はあったのですが、中々タイミングがなかったんです。なのですが、ちょうどいいタイミングがあったのでやらせていただきました。

 両タイトルとも同じ部署で作っているんですよ。それに『ワルエク』自体がおもしろいゲームなので、協力させてもらおうかなと。

本山:ありがとうございます!

――コラボキャンペーンの達成報酬ですが、ここまで豪華にして大丈夫ですか?

酒井:互いのユーザーにプレイしていただきたいですからね。というわけで、魅力的な報酬を用意させていただきました。

 そういえば、『ワルエク』のユニオンランキング上位に『PSO2』ユーザーだと思われる団体がランクインしていると聞きました。アークスが『ワルエク』を侵略しているのだとか。

本山:上位ユニオンの常連が『PSO2』ユーザーのユニオンに抜かれる可能性はありますし、むしろ競い合ってもらえるといいと思います。ぜひ『PSO2』ユーザーでもっと勢力を築いていただきたいですね。

酒井:『ワルエク』ユーザーの皆さん、『PSO2』もやってくださいね(笑)。

本山:ゲーム性やプレイスタイルが違うタイトルなので、グルグルとお互いのゲームを行き来してもらいたいです。

――第1弾コラボでユーザーからはどのような反響がありましたか?

『PSO2』×『ワルエク』

酒井:『ワルエク』は『PSO2』とは全然違うゲーム性なので、おもしろさを感じていただけているみたいです。

本山:『PSO2』は歴史のあるタイトルですし、濃いファンがいて、コミュニティもすごい。その方たちに『ワールド エンド エクリプス』を受け入れてもらえるかな、という不安が少しあったのですが、「やってみたら意外とおもしろかった」という声をいただけたので、よかったなと思います。

――少し気が早いかもしれませんが、コラボキャンペーン第3弾はあるのでしょうか!?

酒井:(本山さんを見て)あるの?

本山:あったらいいですね。その時はもっと深い形でかかわりたいと思います。

酒井:そうですね。やるとしたら、もっと踏み込んだコラボにしたいですね。

――これまでにお2人が携わってきたタイトルでのコラボについて、振り返っていきたいと思います。

『PSO2』×『ワルエク』 『PSO2』×『ワルエク』

本山:『戦場のヴァルキュリア2 ガリア王立士官学校』『戦場のヴァルキュリア3』時代に『ファンタシースターポータブル2』『ファンタシースターポータブル2 インフィニティ』とやらせてもらっています。『ファンタシースターポータブル2』のエミリアやナギサを『戦場のヴァルキュリア』で登場させてもらう代わりに、コスチュームや武器を『ファンタシースターポータブル』を使ってもらうということをやりました。

――ちなみに、その時のコラボが決まったきっかけは?

本山:あのころも同じ部署で、フロアが一緒だったんですよ。

酒井:そうそう。当時は同じCS3研で「せっかく同時期に発売されたタイトルだからコラボしましょう」という話があって、相互コラボをしました。

本山:結構入り組んだフロアだったのですが、スタスタと歩いていって「コラボをやりません?」みたいに気楽な感じで相談しましたね。

――今回の件もそうですが、コラボはもっとしっかりとした会議で決まるものだと思っていました。

酒井:時と場合によります。他社さまとの案件は正式にお願いすることになるので、会議で決める場合が多いです。逆に社内のタイトル同士の場合はノリやスピード感で決まることが結構ありますね。

本山:「リリースの時期が近いよね」みたいなところから、話が始まるんですよ。社内だと素材のやりとりが早いですし、共通言語で語れることもあってスムーズにいきます。

『PSO2』×『ワルエク』

 3月25日からは『PSO2』コラボ第2弾、その後には『PSO2es』の方でもコラボをさせてもらうんですね。つい先日の話になるんですが、『PSO2es』コラボ武器に自在槍(ワイヤードランス)の“グロリアスウィング”という武器があって、そのデザインを『ワルエク』の仕様に合わせてアレンジする必要があったんです。

 その時に元のデザインをもらってから、すぐにラフを作って見せたら、そのすぐ後にOKの返事が来たんですよ。このスピード感が社内コラボの利点ですね。

新たな交流の場となったスイーツパラダイス

――コラボと言えば『PSO2』も『戦場のヴァルキュリア』もスイーツパラダイスさまとコラボをされましたね。

『PSO2』×『ワルエク』

本山:先日発売された『戦場のヴァルキュリア リマスター』とのコラボですね。世界観をモチーフにしたメニューを考えていただくというのは、大変だったと思います。皆が皆、『戦場のヴァルキュリア』を知っているわけでもないでしょうし。

酒井アークスカフェの反響はすごいですね。皆さんにすごく愛していただいたおかげで、第3弾まで続けることができました。オフ会の場みたいなのが欲しいなというのがあったので、そういう場としてもユーザーさん同士で活用していただいています。

――アークスカフェのメニューは、酒井さんが考えられたのですか?

酒井:僕が考案したメニューもありますし、お題を出して考えていただいて、試食をして意見を言うこともあります。今回ですと『ジェネのぷにぷにデザートピザ』というメニューがあるのですが、おっぱいの部分が……こう膨らんでいるんですよ。「スイパラさん的に大丈夫ですか?」と聞いたところ、問題ないとのことでラインナップに加えました。さっそくぷにぷにする動画がネットに上がっていました(笑)。

『PSO2』×『ワルエク』

本山:狙い通りですね(笑)。フォトン色のドリンクとかは用意されています?

酒井:フォトンではなくて、モノメイトドリンクをやったかな。でも第1弾の時はフードメニューでいっぱいいっぱいであまりドリンクに凝れなかったんです。第3弾では惑星のイメージで統一したドリンクを出しています。前回はドリンクに凝れなかった分、今回は力を入れました。

――本山さんは『戦場のヴァルキュリア』カフェに行かれる予定は?

本山:今は『ワルエク』が詰まっているのでなかなか時間が取れないのですが、タイミングを見つけて、こっそり行ってみようかと。『セルベリア特製 ヴァルキュリアクリームシチュー』の色は、かなり独特でしたね。

『PSO2』×『ワルエク』

酒井:スイパラさまはいろいろなコラボをやっているだけあって、引き出しがスゴいんですよ。無茶な注文をしてもやっていだだけるので、すごくありがたいです。このようにさまざまなタイトルでコラボできているのも、“ぷよクエカフェ”が成功したからだと思います。

本山:スイパラさんだと、周りの人を誘いやすいですよね。

酒井:そうそう。普通に友だちを連れてきて、自分がアイテムコードをもらったり……。

――ありそうですね。

酒井:実は、以前にアークスのお客さんだと思ってあいさつに行ったら「この話かけてきた人、誰?」みたいな対応だったことがありまして……。その中の1人がアークスで友だちに説明してくださったので、怪しい人ではないことはわかっていただけました(笑)。

 でも、ああいうコラボで友人に連れていってもらったのをきっかけに『PSO2』を知ってもらえるのはいいですよね。説明の紙を全テーブルの上に置いて、草の根的に広げていこうとしています。

性格が異なるからこそわかる互いの長所

――付き合いが長いというお2人ですが、お互いにどのような印象を持たれているのか、教えてください。

酒井:さわやかイケメン。でも心の中は悪い人です。

本山:超エロいプロデューサーです。あと、ずっと『ファンタシースターオンライン』の人というイメージですね。

酒井:“ファンタシースターおじさん”だね。

――ハハハハ。それでは作品に対しての向き合い方だと、どうでしょうか?

『PSO2』×『ワルエク』

本山:全然タイプが違うように思います。酒井さんは、もともとデザイナーだからかもしれませんが、特にデザイン物にすごくこだわる人だと思います。どれだけ仕事を抱えているのかと思うほど、いろいろなことをされているじゃないですか。

酒井:未だにPVは僕が作っていますからね。放送前の2週間くらいでスライドも合わせて集中的に作っています。形にするだけなら2~3日でできるんですが、そこからディレクター陣や関係者のチェックがあるんで、ある程度時間はかかりますね。

本山:スキルのなせる技ですよね。

酒井:PVはユーザーさんに見てもらうものの中でも、すごく大事にしています。自分が他のスタッフに見せ方を伝えるのが下手なのかわかりませんが、編集や確認の時間などを考えると自分で作った方が早いんですよね。……本当は一番やっちゃいけない方法なんですけど(笑)。

本山:デスマーチですね。

酒井:“PSO2放送局”で言えば全体の要素を2週間くらいで用意するのですが、そのうち半分くらいは動画をいじっています。スライドもしばらくは自分でやっていたのですが、「それはやらなくていいのでは?」という話になって、半分くらいはお任せしてます。

 でも、スライドのクオリティ管理やアップデートのスライドは自分で行っています。スライドで使用する言葉選びをディレクター陣に「これでどうですか?」と聞き、「ここを直してください」と言われて直すという。

本山:「じゃあお前がやれよ」と言えばいいのに(笑)。

酒井:ただ、ディレクターとして言ってくれないと困りますからね。PVでも「このシーンは使わないでください」と言われて、「そこを取られると尺が合わないんだよな~」とか思いながら一生懸命合わせています。なんだか外注みたいな感じですね。

(一同笑)

――酒井さんは本山さんについてどう思われますか。

酒井:本山くんは、カメレオン的な感じがしますね。

『PSO2』×『ワルエク』

本山:褒めてくれてもよくないですか!?

酒井:褒めているんですよ! 本山くんはいろいろなタイトルをやっているのですが、ちゃんと自分のこだわりを持ちながら、それぞれをこなしているところがスゴイ。

 僕はほとんど1つのタイトルしかやらないので、『ファンタシースター』シリーズのことだったらできるタイプ。本山くんは何を与えられても、そのタイトルに合わせた自分の色を出せる、ということでカメレオン的な感じがするのです。

本山:お互いを褒めあうって気持ち悪いですね(笑)。実は2006年くらいに一度『ファンタシースターオンライン』チームに行く可能性があったんですよ。酒井さん、全然知らないでしょ?

酒井:オーバーワークスから人をたくさんもらった時?

本山:そうですね。『ファンタシースターオンライン』が大型化してきたことで募集がありました。個人的に憧れのタイトルだったので行ってみたいと言ったんですけど、「聞いてはみたがお前はだめだ」と言われて……。「じゃあなんで聞いたんだよ」と(笑)。

酒井:たぶんね、本山くんができるヤツだったからですよ。企画の重要なポジションはなかなか譲ってもらえないんで。あ、もちろんその時にきたメンバーが、できないメンバーだったわけではないですよ?

本山:コラボのお話が進む中で、「あの時もし『PSO』開発スタッフのひとりになっていたら、今どうなっていたのかな~」とは思いましたね。

――『戦ヴァル』も『ワルエク』も生まれてなかったということですね。

『PSO2』×『ワルエク』

本山:そうかもしれないですね。

酒井:純粋なファンタジーを僕らはやっていないので、そういう意味では『ワルエク』はちょっとうらやましいです。

本山:1から企画を立てるチャンスは昨今なかなかないじゃないですか。それで、いろいろと好きなワードを入れていき、今の『ワルエク』が完成しました。

酒井:ドラゴン、いいですよね~。ドラゴンをデザインしてみたい!

本山:『ワルエク』でやってみます? でもそうなるといろいろな人に怒られそうだ(笑)。

――お2人で飲みに行かれることはあるのですか?

本山:国内ではないですね。

酒井:飲みはないですけど、2人旅はしたことがあるんですよ。

本山:そう、男2人で一週間。しかも海外を。

酒井:毎年アメリカで行われるイベント“E3(Electronic Entertainment Expo)”で同室だったんですが、ちょうど中日(なかび)に取材がキャンセルになって、2日ほどすっぽり空いちゃったんです。E3会場をほぼ見ちゃってやることがなくなり、それで社会勉強しに行こうぜと出かけたんですね。

 2人とも英語がほとんどわからない状態だったのですが“ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー・パーク”と“マジックマウンテン”へ行くことにしたんです。マジックマウンテンは絶叫マシンしかない遊園地で、本当に現地の人しかいないところなんですよ。

本山:僕らはどこまでいっても旅行客の空気があるのですが、マジックマウンテンで開園を待っている間、周りの人にはそれがありませんでしたからね。明らかに地元のお兄ちゃんとお姉ちゃんたちばかりで(笑)。

『PSO2』×『ワルエク』

酒井:日本語……なかったよね。

本山:なかったですねぇ。

酒井:チケットのファストパスを買うのにもすごく一苦労でした。目覚まし時計みたいなのを持たされて、それをピピピッてやると登録できるんです。

本山:でも登録の仕方もわからず、「これは何を押すとどうなるの?」と、謎だらけでしたね。

酒井:それでも何とかなって、「次どれ乗るー?」「マジで怖かった……」とか言いながら堪能しました。

本山:あれはすごかったですよね、本当に。

酒井:日本じゃ絶対できないような絶叫マシンがたくさんあって、動画も撮ったハズなんですが、今はどこにあるのかわからないな……。

――それも立派な社会勉強ですよね(笑)。そこまでした仲ということは、職場でプライベートな会話もされるのでしょうか。

本山:フロアが違いますし、普段はお互いに別のチームで自分の仕事でいっぱいいっぱいなので、プライベートの会話をしている余裕はないですね。そもそも時間が合わないんですよ。

酒井:会社が終わってからも、僕はあまり会社の人と飲みに行かないので。話す機会は実は少ないです。

本山:なかなかタイミングがあわず、飲みは行けないですよね。

個々のこだわりを持って制作に臨む

――作品を作られるうえで、自分なりのこだわりやポイントを教えてください。

本山:オリジナルなのか何かお題があるかにもよりますが、お題がある場合も与えられたものをそのまま使うとぎくしゃくしてしまうので、なぜこうなっているのかを自分の中で一度かみ砕きます。

 例えば、原作もののタイトルで「見せ所はここかな」というシーンがありますよね。そこに、ゲームならではの要素を取り入れてみようというのを少しずつ差し込んでいくのが楽しいですね。

酒井:やっている人によってタイトルにその人の色は出るよね。

本山:出ますね。でも、色と言えば酒井さんですよ!

酒井:え? 色!?

本山:「『ファンタシースター』の宇宙の色はこれだ!」というのを譲らないらしいんですよ。いわゆる黒とか青などの単一の色ではなくて、複雑な色があるんですよね。

『PSO2』×『ワルエク』

酒井:星雲とかの混じったいろいろな色、深い宇宙の色ってあるじゃないですか。「それが『ファンタシースター』です」と言ったことはありますね。

本山:それを言える人は、なかなかいないですよ。その話を聞いた時に爆笑しました。

酒井:でも、その作品が持っている宇宙の色はあると思います。真っ黒な宇宙と真っ青な宇宙では、作品が違う。もとがデザイナーだから、そういうことを言うのではないかなと思います。

本山:そのあたりの伝え方というか、言葉のチョイスがデザインスキルのある人のひと言ですよね。僕は元々がプランナーなので、「何か違うんだよなぁ」みたいに曖昧になってしまうんです。

酒井:『ワルエク』で色にこだわったところは?

『PSO2』×『ワルエク』

本山:色というか……清潔さと“汚れた感”にこだわりました。双方のバランスが難しくて、清潔すぎるとこの世界ならではの生活感を落としてしまうんですよ。

 同じ白でも、ワイシャツ的な白ではなくてオフホワイトっぽくしようとか、文明も発展途上な世界観らしく、布の厚みが感じられるようなデザインにしようとか、キャラクターデザインに悩みました。

――ゲームを制作に際して、特にどこを意識していますか?

本山:僕は世界観とテキストかもしれないです。ユーザーさんの心をつかむキーワードや、キーワードから連想してもらえる情景とは何だろうというのを意識しながら作っています。

酒井:ゲームは基本コミュニケーションツールだと思っているので、僕はニュースになる話題作りをつねに意識していて作っています。

 このあいだの幻創戦艦・大和FFXIVコラボにしてもそうですが、ユーザーさんが「えーっ!」と驚く感じです。それが「バカじゃないの、この人たち!?」でも何でもいいんです。何かしら話題になったり、ユーザーさん同士が盛り上がれるネタがあったりすると、そのゲームは活気づいていると感じてもらえると思います。

 斜め上とよく言われますが、つねに驚きを与えられるものをやることがオンリーワンのゲームになるためには大事なのかなと。『PSO2』のエピソード4でも、もちろんそこは意識しています。

――一度斜め上にいくとユーザーさんが慣れてきますから、どんどんハードルが上がって大変ですよね。

『PSO2』×『ワルエク』

酒井:難しいですね。僕らは自分の持っているものをつねに全部出すわけですよ。そして次はさらに上に行くというのを繰り返しています。

 そういう意味では現在エピソード4を出して、からっぽの状態。次はどうしようという感じではあります。僕の好きな言葉に、『ゴジラ』の音楽をやられてた伊福部昭先生が「毒を食らわば皿まで」と言われていた発言があります。そういう感じで、やるならとことんやりたいんですよ。

――オンラインゲームを作る上で、終わりがないことのよさと大変さはどんなところでしょうか。

本山:僕はこれまでパッケージのタイトルしか作ってこなかったので、そういう意味ではオンラインゲームの1年生なんですが、そのうえで考えると、自分たちのやりたいと思ったことをすぐ実行に移せる機会があるのは新鮮ですし、楽しいですよね。

 その反面、調整ひとつ間違えるとおもしろいハズのものがおもしろくなくなってしまいます。だから、自分たちはこう思っていたとしてもユーザーからはどう見えるのだろうという、客観的な視点が大事になってくるかなと思います。

『PSO2』×『ワルエク』

酒井:よい面は、つねに更新を続けられること。ユーザーさんに出したものに対してフィードバックを受け、「ではこれはどうでしょうか?」と提供できるのはいいですね。失敗してもリカバリーできます。

 その反面、ライバルがたくさんいるので、そこでどう生き残っていくのかが大変です。いかにユーザーに驚いてもらったり、続けたくなったりするものを出し続けることは、マラソンのようなものですから。

――走り続けるのは大変ですよね。

酒井:オンラインゲームはひとつの国を運営するのと同じことだと思います。オンラインゲームだと国民は、政府をあまり選べないじゃないですか。だけど、国民に対してどのような政治をやっていくかはすごく大事。もし国民が政府に嫌気をさしたら別の国に行ってしまうかもしれませんし。

本山:あまりこちらが束縛しすぎるのも窮屈だし、「どうですか?」というのが強すぎてもダメですもんね。

酒井:意見に対して、本当は何を求めているのだろうというところをちゃんと汲み取ることが重要ですね。

 自分たちのできる範囲の中で、ベターな選択をしていかなくてはいけない。ベストの選択をすると1年かかるけれど、それは今求められていて1カ月後になくてはならないというものであれば、ベストでなくてベターを選ばなくてはならないんです。

――賛否両論の意見が出た場合は、どのように対応されるのでしょう。

『PSO2』×『ワルエク』

酒井:意見というのは、不満を持っていない人はあまり言わないんですよ。ただ、自分たちがどうしたいのかをある程度長期的に考える必要があります。この時出ている不満はいつか改善されるという目標があるのでしたら、しっかり説明をして納得していただくようにしています。

本山:酒井さん、そういうところはブログを使って懇切丁寧に説明しますよね。

酒井:なぜこうなっているのかがわからない時に不満が爆発するんですよ。だから、それをちゃんと説明してあげるのは大事だと思っています。

――そういえば、本山さんがブログ“ドラゴンロア通信”を開始したのは、酒井さんにすすめられたのがきっかけだったとか。

本山:確かにそうです。『戦場のヴァルキュリア』の時もやっていましたが、情報を伝えるひとつの手段になりますし、楽しみにしてくださる人もいるので、やってよかったです。酒井さんのブログは『ファンタシースターポータブル』のころからすごく丁寧ですよね。

酒井:あの時はすごかったですね。平日毎日更新を1年続けました。振り返ってみると、バカなんじゃないのかと。

本山:アハハハハ。でも、だからこそすごいなと素直に感心しました。

動画文化の走りである2人の勇姿を刮目せよ!

――最近は生放送やイベントに出演される機会が多いと思いますが、最初の方は戸惑いはありましたか。

酒井:そりゃ嫌でしたね。そもそも、自分が話している顔や声を見聞きするのが好きではないんですよ。反省のために見直すのですが、毎回ひどいです。

本山:自分の声って動画で聴くと違いますもんね。今でも苦手ですか?

酒井:もちろん今でもです。反省することがままありますよ。最後の挨拶がひどいと、次の日は1日落ち込んでいますからね。これも言いたい、あれも言いたいと思うけれど、結局3分の1くらいしか言えなくて、本当にダメだなぁと。

『PSO2』×『ワルエク』

本山:何度も登壇してそれなりに慣れたとはいえ、ステージに立つと舞い上がってしまうことってありますよね。

 時間の問題もあったりして、本来言おうと思っていた内容を伝えきないまま、次の話題に流れちゃうことってあるじゃないですか。その時は終われるんですけど、後で見直しすと、がっかりする。その気持ちはわかります。

酒井:この情報は言わなくちゃいけなかったのに……とかはあるよね。逆に、ポロっと出た言葉がすごく取り上げられちゃうこともありますし。

本山:あと、「自分のこの返しはつまらないなー」みたいなこともあります。うまい返しというか、芸人さんのようなスキルを最近は求められませんか?

酒井:それはありますね。自分自身も何かおもしろいことを言ってやろうと思っちゃて、ドッと笑いがおきたら「おぉ、ウケた」みたいな。

『PSO2』×『ワルエク』

本山:酒井さんもそうでしょうけど、うちの会社のマーケティングが、「この人を出しておけば何とかするだろう」と思ってイベントや番組に出すじゃないですか。大変ですよ、本当に(苦笑)。PSO2放送局は観ていて毎回尊敬しますね。

酒井:毎回5時間とか放送していますからね。休む時間がないですから、観ている方も大変だなと思います。

――そのおふたりの修行中ともいえるものが、以前の動画ですね。では、せっかくなのでおふたりの出演された動画を観てみましょう。

本山:これはまさに修行中のころ。当時は録画でやっていたので、結構撮り直していますね。

本山:ドラゴンサカーイの衣装、今どこにあるんですかね?

酒井:これは倉庫にあるら……いや、僕は関係ないので聞いた話ですが。

本山:戦車をつぶすなんてひどいなー、本当に(笑)。

酒井:戦車を頑張って作った人がいるわけでしょ。切ないよね。

本山:あーあ、「衛生兵ー」って言っている。これは衛生兵じゃ直せないよ。

(一同笑)

――これは一発撮りだったんですよね?

酒井:これは1回ですね。

本山:戦車を作る都合上1回しかできないじゃないですか。この時は台本を作ってもらいましたけど、現場はものすごい緊張感でしたね。

酒井:……このころは小芝居ばかりやらされていたなぁ。

本山:うちの会社で小芝居が流行した時期ですよね。

――こちらは『ファンタシースターポータブル2』の動画に『戦ヴァル』チームが出た時のものです。

酒井:途中のアドベンチャーゲームのような演出は、『ファンタシースターポータブル2』のイベントシーンっぽくやっているんですよ。

本山:ちゃんと台本あって、それでアフレコしていますからね。バカバカしいにもほどがありますよね(笑)。

まさかの声優デビュー!? その真相とは?

――このころに動画を観ていて勘のいい人は、「もしかしたら『ワルエク』と『PSO2』のコラボがあるかもしれない」と思っていたかもしれないですね。

『PSO2』×『ワルエク』

本山:いるかもしれないですね。この2人ならコラボをやるでしょって。

酒井:最近、僕がサカーイって呼ばれている意味がわからない人がたまにいるんです。『PSO2』から入ってきた人は「ドラゴンサカーイって何?」って状態ですね。今あの人をステージに呼んだとしても、「何なんだ?」ってなりそうです。

本山:そろそろあの衣装を引っ張り出しませんか。

酒井:でも、僕とは別の人だからなぁ。

本山:ゲスト出演をしてもらえばいいじゃないですか。

酒井:さっきも言ったんですが、自分の声を聞くのが嫌いなんですね。ユーザーからは「『PSO2』に酒井の声を実装しろ」とか、「髪型を実装しろ」と言われるのですがやっぱり気が乗らないんですよ。でも、『ファンタシースターオンライン2 ジ アニメーション』で声を入れましたね……。

本山:え!? 声優になったんですか?

酒井:10話にね、木村と僕が出たんですよ。顔は似せてあるので、見たらすぐにわかります。セリフはふた言くらいですね。“ファンタシースター感謝祭”では、アークスから突っ込まれるんだろうな。

『PSO2』×『ワルエク』

本山:エンドロールには名前が出るんですよね。

酒井:出るんじゃないですかね。ただ、僕も木村もこちらからはお願いしていないんですよ。というか、やはりアニメはその世界観がありますし、自分もアニメを見るので素人が出るとわかるじゃないですか。そこで冷める感じがいやなので、「絶対出さないで」と言っていたんですが、勝手に入れられていて現場に行ったら収録することになるという……。

 むしろ現場的には「ユーザーも喜ぶしやるべきです」という空気だったので、そこで断るわけにもいかず……。

本山:いいじゃないですか。遊び心あって。でも、そういうのに付き合わされることが多い会社ですよね。

酒井:嫌だって言っているのに、それで出ると「あいつは出たがりだ」とか「芸能人気取りだ」って言われてしまうんですよ。

本山:ユーザーさんから誤解されていますよね(笑)。

酒井:そんな出たがりじゃないのにね。ただ、“他の人がやるよりは自分が伝えた方がいい”とか、酒井の言葉だから信用してくださるという方がいるならば、喜んで出ていきますし、“自分が何かやることで、そのユーザーが楽しんでくださったり、モチベーションがあがったりするなら、喜んでやります”というスタンスなのはずっと変わらないです。

 そういう意味では別に「出たがり」とか「調子に乗っている」とか言われようがスタンスは変えるつもりはないですね。求めてくださる方がいるうちが華だと思いますし。

本山:でもブログとかは、たまに誰かに変わってほしいと思うこともあります。

酒井:わかる。でも伝えたいこともあるし、引き受けてくれる人もいないので自分でやるんですが。

――いろいろと楽しいお話ばかりでしたが、最後に、各タイトルについてアピールをひと言ずつお願いします。

『PSO2』×『ワルエク』

酒井:『PSO2』はエピソード4がはじまり、さらには4月20日にPS4版がいよいよスタート。その後には幻創戦艦・大和も控えています。エピソード4では新しく入る方に向けて変わった部分がたくさんありますので、アニメで「『PSO2』っておもしろそうだな」と思ってくれた方にとっても入りやすいタイミングになっています。

 『PSO2』はコンテンツが豊富なので、ガッツリも遊べるし、PS4で他のゲームを遊んでいてもセカンドゲームとして、ゆるいけれど長く遊べるようなスタンスにもお応えできるようなゲームになっていると思っていますので、自分のスタンスで存分に楽しんでいただければうれしいです。『ワルエク』も合わせてやってもらえると、さらにうれしいですね。

本山:『ワルエク』のサービスを開始してからいろいろとすごく学んだ半年でした。そして現在、開発チームは初期開発時以上に志気を高く持って日々開発を行っています。

 そのひとつの節目というのが、この3月末に実施するバージョン1.4となります。バーション1.4では“アリーナ”と呼ばれているPvPの要素が入り、それに向けた部隊編成やキャラクターの育成、スキルの付け替えをさらに楽しめるようになっています。

 アリーナの実装で、配信当初から導入しようとしていた要素の第一ピリオドを迎えるので、今熱心にプレイしてもらっているユーザーさんにもより深く遊んでいただきたいです。

――『ワルエク』と『PSO2』とのコラボについても一言お願いします。

本山:『PSO2』とのコラボ後に、『PSO2es』ともコラボをさせていただくことになっています。コラボを通して「こんなゲームもあったんだ」「毛色が違って両方楽しめる」と思ってもらえると、セガとしてもうれしいですね。

 ぜひこの機会に『PSO2』はもちろん、『ワールド エンド エクリプス』というタイトルを知っていただき、両方のゲームを遊んでみてください!

データ

▼『ファンタシースターオンライン2 EPISODE 3 設定資料集』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:KADOKAWA
■発売日:2016年3月23日
■価格:3,600円+税
 
■『ファンタシースターオンライン2 EPISODE 3 設定資料集』の購入はこちら
Amazon.co.jp
▼『ファンタシースターオンライン2 エピソード4 デラックスパッケージ』
■メーカー:セガ
■対応機種:PC
■ジャンル:RPG
■発売日:2016年4月20日
■希望小売価格:4,990円+税
 
■『ファンタシースターオンライン2 エピソード4 デラックスパッケージ』の購入はこちら
Amazon.co.jp

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