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2016年5月9日(月)

【WoWS特集】ソ連・ドイツの巡洋艦を戦場で生かすには? 性能分析&使い方講座

文:田中尚道

 これまで日米の軍艦について細かく掘り下げてきた『World of Warships』特集ですが、今回はこの2国以外の国に目を向けてみたいと思います。

 第二次大戦中、太平洋では日米が激しい戦いを繰り広げていましたが、他の連合、枢軸国だってもちろん海に面していれば海軍を持っていました。陸軍国として名をはせたソ連やドイツも同様です。

 どちらの国も第二次大戦中は潜水艦が海軍の主戦力だったため、水上艦は日米ほどの数はありませんが、なかなか個性的な艦がそろっています。この記事ではソ連、ドイツともに巡洋艦ツリーからTier IIIまでの艦を紹介していきます。

ソ連のTier I~III巡洋艦を分析する

 “ソ連の”と書いておいてなんですが、Tier IのOrlan以外、Tier IVまでに登場する艦はすべて帝政ロシア時代に建造されたもの。西は黒海とバルト海、東は日本海に面する広大な領土を持つこの帝国は、強大な海軍も有していました。

 日露戦争の日本海海戦で主力艦のほとんどを喪失しますが、性能だけを比較すれば日本海軍に遜色ない強力な艦がそろっています。

Tier I:Orlan(オーラン)

『World of Warships』

速度、旋回性能、手数と穴のない優等生

 ソ連の37号計画で建造された沿岸警備艇(駆逐艦)です。130mm連装砲と強力な武装と最大船速25ノットの快速を誇ります。本艦は本来駆逐艦ですが、魚雷発射管を下ろし、主砲を積み巡洋艦としてTier Iに登場しています。

Orlan(オーラン)の戦い方

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▲元が駆逐艦なので装甲は非常に薄く6-10mm、HPも9100とちょっと心もとありません。撃ち合いには注意が必要です。
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▲弾道は低めで当てやすいうえ、艦体は小さいので敵の弾を回避しやすい艦です。

 他の味方艦に気が向いている敵に一撃食らわせ、すぐに戦場を変えましょう。撃たれるとバイタルパート(軍艦において、もっとも守らないといけない区画)を抜かれやすいのです。

 もともと小型の駆逐艦を巡洋艦扱いにしているため、巡洋艦よりも駆逐艦と似たようなイメージで操作したほうがしっくりきます。特筆すべきは弾道の低さと旋回能力の高さ。さらに駆逐艦準拠の隠蔽率の高さ。これらは他のTier I艦にはない特徴です。中でも攻撃力はTier IIまでは問題なく戦える安定感を誇ります。

 Tier Iで操艦を覚えるには扱いやすくてオススメですが……本艦から他の艦に変わると一気に操作性が落ちるので痛しかゆしです。また軽装甲をカバーするためなるべく他の艦の後ろから撃ち合いたいのですが、最大射程が8.8kmとちょっと短め。速力に任せて一気に戦場を駆け敵に砲弾を叩き込んで逃げる戦法がお勧めです。

Tier II:NOVIK(ノヴィーク)

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数奇な運命をたどった偵察巡洋艦

 1901年に竣工した当時世界最速の巡洋艦です。竣工後ロシア帝国海軍第一太平洋艦隊(旅順艦隊)に配属されます。

 1904年8月10日に行われた大日本帝国海軍との黄海海戦に参加するものの、帝国海軍の攻撃にロシア海軍はちりぢりに散ってしまいます。本艦も単艦で日本列島を迂回して太平洋側から樺太に逃げますが、追尾していた防護巡洋艦千歳と対馬に攻撃され擱座してしまいます。

 その後引き上げられ、通報艦鈴谷として帝国海軍に編入、旅順警備艦として使用されますが、1913年に除籍されスクラップとして売却されました。ロシアで建造されたものの、日本での艦籍のほうが長いという少々変わった運命をたどっています。

NOVIK(ノヴィーク)の戦い方

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▲遠距離射撃では、とにかく砲弾の弾道が高すぎます。通称打ち上げ花火。遠距離で当てるのは至難のワザですが、そこは砲門数でカバー。
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▲逆に寄ってしまえば5門の艦砲で集中砲火を浴びせられます。バカバカ当たって気持ちいいのですが、この後魚雷にやられました……。注意一秒怪我一生!
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▲装填の速さと砲門の多さで戦闘終了までに90ヒット。無論これだけ当てるにはある程度近づかなければなりませんが。

 速度は25ノットとTier IIとしては標準的。砲は威力に欠けるものの装填が早く5秒に1回の射撃が可能です。さらに初期状態で前後2門、側舷に各2門の計6門の主砲を持ちます。さらに後期状態では側舷に1門ずつ増えて計8門、側舷に指向できる砲門数が5門になります。

 この砲門数こそが本艦の一番の武器とも言えます。射程は初期9.2kmから後期10.1kmまで伸長されますが、弾道が大きく山なりなため着弾までの時間が長く、射程ギリギリだとかなり当てづらいです。反面、大きく山なりな弾道は、当たればバイタルパートを抜きやすい利点もあります。

 巡洋艦以上にはAP弾を積極的に使用していきましょう。また、駆逐艦には近接すれば弾道を低く抑えられます。ただしこの場合、敵の雷撃に注意してください。

Tier III:BOGATYR(ボガトィーリ)

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ロシア帝国最後の防護巡洋艦

 ドイツに発注された防護巡洋艦で、ロシア海軍でもっとも優秀と言われました。ところが、防護巡洋艦はすでに時代遅れであり、さらに日露戦争の出費のため同型艦の建造が遅々として進みませんでした。

 1901年に起工したボガトィーリ級5番艦・オチャーコフは、1905年のセヴァストポリ蜂起に巻き込まれて艦体に損傷を受けたため、竣工したのは1909年6月と建造に8年の歳月を要しています。

 建造当初は152mm砲を装備しており、203mm砲への換装も検討されていましたが、海軍元帥アレクセイ・アレクサンドロビッチ大公が砲の大口径化より統一と速射性を重視したため、小口径艦砲を搭載したままでした。

BOGATYR(ボガトィーリ)の戦い方

『World of Warships』
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▲強化すると砲の口径が小型化する珍しい艦。大きな砲のほうが高威力ですが、130mm砲は弾速と発火率が向上します。装填速度は大型砲のほうが早いので、お好みで。
『World of Warships』
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▲152mm砲も130mm砲も弾道はそう変わりません。どちらの砲にするかは完全に好みの問題です。

 速度は24ノットとノヴィークより遅くなりましたが、初期状態で主砲10門、後期型なら14門と戦列艦並の大量の砲が配備されています。

 前後の砲は連装砲で舷側の砲は単装砲が3門ずつ→5門ずつと増えます。つまり後期なら側舷に9門を志向できます。後期艦体は152mm砲も130mm砲も搭載できますので、なるべく早めに艦体をアップデートさせましょう。射程は10.3kmから11.4kmに伸びます。

 戦い方はアメリカの巡洋艦・セントルイスに準拠しますが、射程はセントルイスより長いです。海綿発見距離は10.3kmなので、初期型艦体で射程と同等、後期型なら射程のほうが長くなります。おかげで先手を打つことが容易です。手数の多い艦は、やはり敵艦を燃やしてしまうスタイルが戦いやすいでしょう。HE弾のほうが活躍できる気がします。

ドイツのTier I~III巡洋艦を分析する

 第一次大戦まで英仏ほどではないにしても多くの海外植民地を持っていたドイツは、植民地経営に必須の海軍増強にも熱心でした。仮想敵は英国海軍で、数の劣勢を覆すべく性能的に尖った艦も多いため個性的な艦が並びます。

Tier I:HERMELIN(ヘルメリーン)

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攻撃に特化した装甲砲艦

 ドイツ帝国が海外植民地に派遣するために計画した装甲砲艦です。防御力を犠牲にしても砲撃力と速力を高めた設計でしたが、建造する前に第一次大戦に敗北。海外植民地のすべてを失ったため、建造されませんでした。

HERMELIN(ヘルメリーン)の戦い方

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▲弾道が低く弾速も速いと敵艦に当てやすいのがいいところ。いかに撃たれず、撃てる場所を取るか、位置取りが非常にシビアです。
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▲後期砲になると装填速度と砲塔の旋回速度が上がります。本艦にとって攻撃力こそ生存への近道。早めに換装しましょう。

 速度24ノット、艦の旋回性能も悪くなく砲の装填速度も速いです(4秒に1発)。さらにAP弾のダメージは後期砲で3,000と攻撃力は申し分ありません。難点は低いHP。9,000はTier Iで最低レベル。装甲がソ連のTier Iオーランより厚いのがせめてもの救いです。射程は7.8kmと短めなので、いかに近づくかが最大の問題です。

 本艦のクセを強くしているのが被発見距離。8.6kmと射程より長いのです。また、AP弾の攻撃力は3,000ですが、HE弾は1,500しかなく、少々心もとないです。AP弾は駆逐艦相手だと貫通してしまってダメージが出ないことがあります。適切な距離、適切な攻撃手段を敵艦ごとに選択する必要があるテクニカルな艦と言えるでしょう。

Tier II:DRESDEN(ドレスデン)

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装甲と手数で勝負する小兵

 偵察、船団護衛、通商破壊のために作られた小型巡洋艦。1908年に就役し、カリブ海に配備されました。

 第一次大戦が勃発すると、大西洋で通商破壊を行います。英領フォークランド沖で行われたイギリスとドイツによる海戦、フォークランド沖海戦に参加。作戦参加のドイツ艦が次々と沈むなか、逃走に成功します。その後3か月も逃げ続けますが、1915年3月チリ領ファン・フェルナンデス諸島でイギリス艦隊に捕捉されて交戦後に自沈しました。

DRESDEN(ドレスデン)の戦い方

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▲ヘルメリーンに比べると弾道の山なりが高く当てづらい印象があります。そのための砲門数ともいえますが。
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▲出会いがしらの一斉射でバイタルを抜いての轟沈に持ち込めました。これもAP弾の攻撃力があればこそ。

 ヘルメリーンより攻撃力が落ちましたが、初期型艦体で10門、後期型で12門の砲を搭載できるようになり、手数で勝負するタイプの艦になります。HPも後期型なら17,000とヘルメリーンのおよそ倍。装甲も厚くなりました。

 これで生存性は改善されましたが、相変わらず被発見距離の砲が射程より長いので位置取りは慎重に。多くの艦に紛れて射撃を行えばその砲門数で有効打を与えることができます。

 ドイツのHE弾は発火確率が低いので、駆逐艦の相手をしないと割り切ってしまうのも手です。火災による追加ダメージを狙いにくいので多くの砲弾をばらまくタイプの艦ながら、HE弾よりAP弾のほうが効果的なダメージを与えられると言えます。

Tier III:KOLBERG(コルベルク)

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ドレスデン級の発展型

 ドレスデン級の発展型であり、ドイツ最後の防護巡洋艦です。ちなみにドイツでは小型巡洋艦(Kleiner Kreuzer)クラスに分類されます。備砲は前級から引き継いだ105mm砲そのまま。一応40口径から45口径に砲身が伸びています。

 第一次大戦後の1920年にフランスに戦時賠償艦として引き渡されてコルマールと改名されましたが、1929年老朽化により解体処分となりました。なお、4番艦のアウグスブルグは日本に賠償艦として引き渡されています。

KOLBERG(コルベルク)の戦い方

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▲上位Tierを相手にすると攻撃力的にかなり分が悪いコルベルグ。手数は多いものの、致命打になかなかなりません。
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▲ARPキリシマの一斉射でこのありさまです。
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▲横を向いてない天龍なんてただのカモです。片舷6門の主砲を叩きこんでやりましょう!

 防護巡洋艦の完成形とでも言いましょうか、ドレスデン級を発展させた艦なので戦い方は一緒。積んでいる砲も一緒です。違いは少し上がったHPと速度と装甲。操艦の感じもドレスデンとほぼ同じ。

 バージョンアップが地味過ぎてイマイチ活躍できないのでは? と思っていたら、どっこい日本のTier III巡洋艦は天龍で装甲と砲撃力で圧倒できるようになりました。もちろん雷撃に注意が必要ですが安心して戦えます。

 問題は相変わらず短い射程。Tier IIIになっても10kmに届かない……。天龍型のように圧倒できるほど速度が速くもなく固い艦には手を焼くかもしれません。まぁここら辺はドレスデンで散々戦ってきた戦い方なので、あせらず味方艦に紛れて機会を伺いましょう。

(C)Wargaming.net

データ

▼『World of Warships(ワールド オブ ウォーシップス)』
■運営:ウォーゲーミングジャパン株式会社
■対応機種:Windows
■ジャンル:SLG
■サービス開始日:2015年9月17日
■料金:ゲーム内課金あり

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