2016年5月10日(火)
『ガルパン』ミリタリー生コメンタリー上映会で判明したこととは? 笑いと驚きの連続だった2時間をレポート
2015年11月21日の上映開始からおよそ半年が経過し、現在でも劇場上映中の映画『ガールズ&パンツァー 劇場版』。そのBD&DVDが5月27日に発売されることを記念した“ミリタリー生コメンタリー付き上映会”が、5月6日に新宿バルト9で開催された。
この日の生コメンタリーに参加したのは、鈴木貴昭氏(考証・スーパーバイザー)、岡部いさく氏(軍事評論家)、吉川和篤氏(イタリア軍研究家)、田村尚也氏(ミリタリー監修)、齋木伸生氏(フィンランド軍研究家)、二宮茂幸氏(ミリタリー監修)、そして杉山潔プロデューサーの7名。
▲左から杉山プロデューサー、鈴木氏、岡部氏。 |
▲左から吉川氏、田村氏、齋木氏、二宮氏。 |
2月5日に開催されたミリタリートークショーの参加メンバーに、ミリタリー監修を手掛けた田村氏&二宮氏が合流し、より一層濃いミリタリートークに花を咲かせた。上映中の2時間は、場内のいたるところから笑いや驚きの声が上がっていた。
この記事では、その中からいくつかを抜粋してお届けしていく。また、大洗市街戦の部分については、公開中の映像と合わせて楽しんでもらいたい。
●動画:『ガールズ&パンツァー 劇場版』本編序盤 大洗市街戦 一部配信
●ミリタリー生コメンタリーで語られた内容
・吉川氏はこれで劇場版を46回見ている。
・冒頭の“3分でわかる『ガールズ&パンツァー』”は糟谷富美夫氏が絵コンテを担当した。SDキャラは描き下ろしで、この部分の音声はプレスコ収録をしている。
・イギリスのお茶は、日本のものほど茶柱が立たないらしい。
・大洗ゴルフ倶楽部のシーン。ゴルフ場を壊させてほしいとお願いしたり、18ホール全部を歩いたりした。
・ダージリンたちがこもっているバンカーは、深いことでとても有名なバンカー。中から見ると、まるで崖のように見える。いろいろと写真を撮影したものの、後から見返すとなぜかキノコが写っている写真が多かったのだとか。
・自動車部はとても優秀。各車両で使用している弾が全部違ったり、働いている状態のエンジンを修理したり。
・大洗ゴルフ倶楽部で知波単が突撃するシーン。国内で九七式中戦車にここまでフィーチャーしたフィルムは恐らくないとの話から、モスクワに行けば九七式を含めてさまざまな戦車を見られることや、中国・東南アジアには今でも可動状態(エンジンは交換されている)であったりすることなどが語られた。可動状態のものは、観光目的で使われているそうだ。
・国内では、静岡県の若獅子神社にサイパンで使用された九七式中戦車が展示されている。
・戦車のリベットについて。これまでにも語ったことがあるけれど、3Dモデリングのデータが大きくなるから大変。
・大洗市街戦における1年生(うさぎさんチーム)がノンナに倒されるシーンは、彼女たちが身の丈を知るという意味で大事なシーン。脚本会議でも、彼女たちをどう生かすかは大事な議論のひとつだった。
・劇場版をやるにあたって、大洗の各所を壊そうという話がもともとあった。「役所を壊していいですか?」と町長に聞いたら一瞬静止した後オーケーが出た。なお、マリンタワーを壊すプランもあったもののこちらは見送られた。
・知波単の福田は、とても人気が出たキャラクターの1人。大洗にある“せんな里食堂”には福田のパネルが置かれている。
・ローズヒップとクルセイダーについて。“聖グロいちの俊足”とは言うけれど、他の戦車はマチルダとチャーチルなので……。
・各セクションが独自に小ネタを放り込んでくるので、そのすべてを把握している人はごくわずか。
・劇中であんこうが吊るされているシーン。劇中の季節は夏だけど、学園艦であんこうの養殖を行っているので、年中食べられるらしい。
・肴屋本店での爆発炎上シーン。ここでの爆発はガソリンタンクによるもの。ちなみに、他のシーンなどで、ディーゼル車は爆発していないので、注意して見てもらいたい。
・砲撃した際の衝撃で戦車の履帯がたわんでいるので注目してほしい。
・まいわい市場のシーン。福田が頭をぶつけた看板には『World of SPG』という架空のゲームタイトルが書かれている。また、九五式軽戦車が昇りエスカレータを降りていく際、警報音が鳴っている。
・“スーパー風紀アタック”の部分。画面に写っている道路標識に“40t”とある。ドイツにロケハンに行った時にそんな標識があった。
・立体駐車場のシーン。マチルダの装甲を抜いたのではなく、冷却パイプを狙い撃っている。
・海から出てきたKV-2。その砲塔に乗っている昆布は3Dによる描写。
・アキは絵コンテの時に名前がなかった。フィンランドの神話の英雄は詩人で、ミカの性格にちょっと影響しているかも。
・“潮騒の湯”の女湯をどうしてもロケハンしたいとお願いした。
・“潮騒の湯”で入浴していないネトゲチームが回しているカプセルトイは『World of SPG』のもの。
・大洗の女の子たちは強くなるために戦っているわけではないので、モチベーションを持たせるために再度学校を困難に陥れた。
・学校がなくなると決まった時のリアクションはそれぞれ違うはずとのことで、風紀委員がやさぐれてしまうのは水島監督が早いうちから言い出していた。
・みほが引越しのために段ボールに詰めているボコ。このボコは水島監督が描いている。
・シナリオを見たら、どう考えても3時間を超えていた。時間を収めるためにカットするシーンの筆頭はボコミュージアムのシーンだったが、水島監督たってのお願いでカットを見送られた。
・C-5Mスーパーギャラクシーに描かれているサンダース大学付属高校のロゴは、二宮氏のデザイン。また、二宮氏によるとC-5Mのマニュアルは、このために買ったものではなくてもともと持っていたもの。
・大洗女子学園の生徒たちが乗り込んでいるバスについて。バス専門の監修もいた。バスのために茨城交通にロケハンした。
・優花里が料理しているシーン。鍋に入っている具材の動きにこだわりあり。
・サンダースが届けに来てくれた戦車を見に行くシーン。校舎から走っていくキャラクターの動きが1人1人バラバラになっている。そのカットがあまりに多く、いわゆる“カット袋”ではなく箱にカットを入れていた。
・カバさんチーム(歴女チーム)が遊んでいるボードゲームの駒は3Dで作られている。これは、後で位置を変えやすくするため。
・みんなで寝ているシーン。アフレコの際に寝息も収録していたけれど、それはボツになってしまった。
・ボコミュージアムのお土産コーナーで麻子が見ていたのは目覚まし時計。
・戦車道連盟の会議室のシーン。飾られている絵には、全部戦車が描かれている。
・『ガルパン』世界の作中アニメ『魔砲少女マジカルパンツァーファウスト』には、“リボンのついたパンツァーファウスト状のステッキ”が登場するのだが、みほの部屋(実家)にはそのステッキのおもちゃがある。
・アリスの部屋は非常に殺風景。みほの部屋と対照的。
・大洗に戻ってきた杏と桃が再会するシーン。このパイプいすは3Dではなく手描きで、ひと夏かかったそうだ。作画を担当した人は「もう当分パイプいすを描きたくない」と言ったらしい。
・講堂に集合した時、ももがーの眼帯がはずれている。ももがーの眼帯は、ここ以外にエンディングでも外れている。
・麻子が風紀委員の遅刻を取り締まりに行くシーン。よく見るとゴモヨの眉毛がつながっている。眉毛をつなげるかつなげないかで激論を交わされたそうだ。なお、脚本会議の際には髭を生やす案まであったとのこと。
・大学選抜チームとの試合は、フェリー“さんふらわあ”に乗船して北海道に来ている。
・ダージリンたちのティーカップは試合ごとに違う。
・試合開始直後の、大洗女子チームが“全部スペックが違う戦車を横一線で進める”シーン。映像的にも見どころだが、彼女たちのスキルの高さを表してもいる。
・劇場版の戦車戦について。第二次世界大戦におけるドイツの戦車部隊戦術マニュアル『パンツァータクティク』などを読み込んで組み立てていた。
・ネットで考察されていたけれど、大洗女子チームは隊長として部隊を動かせる人材がたくさんいるから強い。
・林の中で機銃を撃っているシーン。曳光弾のはじけ具合で敵の位置を探っている。
・脚本会議では、戦闘の中でなかなか戦車が減らなくてかなり困った。
・雨の降る中、プラウダの戦車が次々と撃破されていくシーン。ソ連映画を思わせるイメージがある。
・植物などは、北海道の植生をきちんと意識している。
・遊園地に入る直前の、大洗女子チームの戦車が短い坂を下っていくシーン。各戦車、各キャラクターの特徴がよく出ている。CV33やローズヒップのクルセイダーは止まらずに下っている。
・沙織は戦闘に直接かかわらないポジションなので、どう見せ場を作るかに苦心した。
・T28重戦車の車体に01とマーキングがあることについて。最初は2台出すつもりだったのでその名残。
・スペック的にだいぶ劣る日本戦車を勝たせるために、いろいろと頭をひねった。日本の戦車で敵戦車を撃破できた知波単の選手たちは練度が高く、突撃グセさえなければ優秀なのかも?
・植え込みで作られた迷路で戦うシーンを見ながら。この植え込みはボカージュを意識していたのだが、なぜか迷路になっていた。このアトラクションの名前にもボカージュが入っている。他にもいろいろと細かく名前が決まっている。
・センチュリオンの乗員は非常に腕がいい。大洗女子チームの戦車を、センチュリオンだけで10輌以上撃破している。
・カチューシャ、スリップストリームをきちんと理解している。知識の広さがうかがえるシーン。
・みほ&まほ VS 愛里寿のシーン。音楽とセリフを抜いたことで出る緊張感に注目してほしい。
・まほが攻撃に利用した船のアトラクション。ダズル迷彩が施された空母になっていて、甲板にはソードフィッシュが載っている。
・手を貸してくれたライバル校にお礼を言うシーン。一番泣いているのは桃かと思いきや、柚子。
・継続高校の船の行き先は、5月11日に発売される『ガールズ&パンツァー 劇場版 ドラマCD5 新しい友達ができました!』で確認できる。このドラマCDでは、知波単のエピソードも楽しめる。
・エンディングでの観覧車先輩。もともとあった位置と逆方向からわだちが伸びているところに注目。ここで倒れるまできっといろいろあった……らしい。
5月27日に発売される『ガールズ&パンツァー 劇場版』のBD特装限定版には、声優陣によるキャストコメンタリー(渕上舞さん、茅野愛衣さん、尾崎真実さん、中上育実さん、井口裕香さん)、スタッフコメンタリー(水島努監督、柳野啓一郎3D監督)、そしてミリタリーコメンタリー(鈴木貴昭氏、岡部いさく氏、吉川和篤氏、田村尚也氏、斎木伸生氏、杉山潔プロデューサー)といった豪華な音声特典が付属する。
杉山プロデューサーたちによると、この日の生コメンタリーではなるべく音声特典の内容と被らないようにしたとのこと。BD特装限定版では、別角度からの濃いコメンタリーが楽しめると思われるので、お聞き逃しなく!
▲Blu-ray特装限定版BOXイラスト。 |
こちらでも、制作からアフレコ、ミリタリーにかんする濃いトークが楽しめるはず。また、本編の後日談が楽しめるOVA『愛里寿・ウォー!』も収録するので、まだ予約していない人はお忘れないように。
▲特典OVA『愛里寿・ウォー!』場面カット |
●動画『ガールズ&パンツァー 劇場版』BD&DVD 5.27発売告知CM
【あわせて読みたい『ガルパン』トークショーレポ】
→『ガールズ&パンツァー』では戦車ごとに反響音が全部違う。読めば映画をより楽しめる音響制作陣トークレポ
→『ガルパン』ミリタリートークショーをレポ。登壇者が話すたびに驚きが生まれる宝石箱のような45分
→音楽で『ガルパン』の総集編を! オーケストラ・コンサートCD&BD発売記念イベントには渕上舞さんやChouChoさんの姿も
(C)GIRLS und PANZER Film Projekt
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