2016年5月21日(土)

『グランツーリスモSPORT』初試遊レビュー。アシスト機能の改良でレースゲーム初心者でも遊びやすくなった

文:megane

 SIEEがイギリス・ロンドンで開催した『グランツーリスモ』のプライベートイベント“Gran Turismo SPORT UNVEILING”にて、『グランツーリスモSPORT』の試遊機が展示されていた。

『グランツーリスモSPORT』
▲試遊機はハンドルコントローラとPS4コントローラの2タイプが設置されていた。

 まだ開発中のバージョンではあるが、試遊機でのプレイをもとにしたレビューをお届けする。

 なお、発売までまだ半年近くあるということで、山内氏は今回のバージョンについて「完成度は50%くらい」と語っていた。プレイしている上で背景にティアリングが発生していたり、フレームレートがしばしば60fpsを切ったりしていたが、現段階でその部分に言及するのは野暮なので割愛する。

新たな『グランツーリスモ』の挙動はどうなったか

 『グランツーリスモ』のみならず、レースゲームをプレイする上で必ず気になるのが車の挙動についてだろう。数十分のプレイで挙動のすべてを把握するのは不可能ではあるが、まず真っ先に感じたことは、荒っぽいドライブをするとすぐにスピンしてしまうようになったということだ。

『グランツーリスモSPORT』

 例えば、レースカーでニュルブルクリンク北コースを走ると、後ろの片輪がコースから少し外れようものなら、トラクションを失って即座にスピンしてしまう。また、コーナーにアプローチする際も荷重移動を考えて、しっかりとブレーキを踏み、横方向のトラクションのかけ方を考えた上で、ステアリングとアクセルコントロールをする必要がある。

『グランツーリスモSPORT』

 これらは昨今のレースゲームにはもはや当たり前とも言える操作だが、従来の『GT』ではまだゲーム的な挙動というか、ステアリングを切りつつブレーキも踏んでコーナリングするという手法がとれていた。今回のバージョンでその操作をすると、コーナーを曲がりきれずにコースアウトをしてしまう感覚だった。

 前作との比較をすれば、挙動に関してはリアルにやや寄せているぶん、気を使う必要ができたというところ。ただし、だからといってレースゲーム初心者お断りのゲームになってしまったかというと、そうとは言い切れない。

 『グランツーリスモSPORT』は、これまでのシリーズの中でもっとも初心者のことを考えた作品になっている。それは次に紹介するアシスト機能についてだ。

ブレーキ操作に介入するアシスト機能で初心者を支援

 『GT6』にもコーナリング中のトラクションを増やすスキッドリカバリーやアクティブステアリングといったアシスト機能は搭載されていたが、今作のアシスト機能ではさらにブレーキアシストを導入している。

『グランツーリスモSPORT』
▲ブレーキアシストとステリングアシストはトランスミッション決定後に選択メニューが登場する。

 ブレーキアシストは、コーナリングする際のブレーキング時に、必要なスピードまで減速を手助けしてくれる機能だ。

 こういったブレーキアシストは他社のレースゲームでも導入されている機能だが、『GT』シリーズでは初となる。もちろんずっとONにしておく機能ではなく、ある程度ゲームに慣れてきたら切ってしまう機能だし、レースゲームそのものに慣れている人には必要のない機能だろう。

 おそらく『GT』では何らかのポリシーがあって、ブレーキアシストを導入していなかったのだろうが、レースゲームを遊ぶ裾野を広げるにはなくてはならない機能だと個人的には思う。

 また、このブレーキアシストはアシストのかかり具合が結構絶妙で、介護(アシスト)されているという意識はなく、気持ちよくドライブできる。ただし、アシストされている分、タイムは遅くなる。試しにアシストありとアシストなしでタイムアタックをしてみたところ、ラップタイムに約1秒ほどの差ができた。

『グランツーリスモSPORT』
▲ブレーキアシストはコーナリング中にしか動作しないので、ストレートでの追突には注意。

 その他、従来通りのABSやTCS(トラクションコントロールシステム)、STM(スタビリティコントロール)などの機能も搭載している。

『グランツーリスモSPORT』
▲ドライビングオプション内にABSやTCSの設定項目が存在する。
『グランツーリスモSPORT』
▲タイヤはComfort、Sports、Racingの3タイプから、硬さを選べるようになっていた。
『グランツーリスモSPORT』
▲注目のTokyo Express Way。東京の首都高外回りのうち、芝公園、板倉、霞が関あたりを通りつつ、1周にまとめた架空コース。1周約4.4km。

次の世代の『グランツーリスモ』の片鱗を見せるのはまだこれから

 山内氏はこの『グランツーリスモSPORT』について、「次の世代の香りを見せるタイトル」と語っていた。また、レースゲームは初代『グランツーリスモ』が登場して以来、大きな変化を見せていないとも言う。

 サーキットを走るタイプのレースゲームは、もともとがモータースポーツを根本とするゲームゆえにシステム的には最初から完成されており、後はビジュアルや挙動などの部分を深く掘っていくのが進化の方向となる。

『グランツーリスモSPORT』
▲車種はローンチ時で137車種とこれまでのシリーズに比べると少ない。

 『グランツーリスモSPORT』は、PS4世代となることで、その部分の進化についてはやっと他のレースゲームに追いついてきたと言える。その上でレースゲームとしての新たな進化の方向として、ゲームからリアルへのアプローチを進めてきた。

 FIA(国際自動車連盟)との取り組みによる、リアルの場で開催される年1回のワールドチャンピオンシップなど、ゲーム内には留まらない座組みを提供してきた今作。『グランツーリスモSPORT』は、初代『グランツーリスモ』のようにレースゲームおよびモータースポーツ人口を拡大する一手となるのか、発売後の展開にも期待したい。

『グランツーリスモSPORT』
▲子供からお年寄りまでが『グランツーリスモSPORT』のメインターゲット。

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