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2016年5月26日(木)

『360Channel』では世界初の360度バラエティ番組を配信。観光スポットや被災地の様子を視聴できる動画も

文:イトヤン

 コロプラの100%子会社である株式会社360Channelは、5月26日より、オリジナルの360度動画を無料で配信する新サービス『360Channel(サンロクマルチャンネル)』の提供を開始しました。

『360Channel』

 サービスの開始に先立ち、配信前日の5月25日にはメディア向けの体験会が開催されました。ここでは実際にVR専用端末で視聴してみての感想をお伝えします。

上下左右を自由に見回せる“360度動画”を制作し、VR端末向けに配信できる!

 体験会の会場では、株式会社360Channelの経営企画/プロデューサーである中島健登氏が登場し、『360Channel』の特徴について解説を行いました。

『360Channel』
▲株式会社360Channelの中島健登氏。

 冒頭で紹介しましたが、株式会社360Channelは、スマホ向けRPG『白猫プロジェクト』などで知られるコロプラの100%子会社です。コロプラでは現在、VR対応ゲームの開発にも力を入れていますが、それだけでなくVR端末で視聴できる360度動画の事業に特化した企業として、株式会社360Channelを設立したとのこと。

 なお、『360Channel』で視聴できる“360度動画”とは、VR端末を使用して、視聴者を中心とした上下左右360度の全方位へ自由に視点を動かすことのできる動画です。

 VRゲームのようにコンテンツの内容そのものに影響を与えるようなインタラクティブ性はありませんが、あたかもその動画の世界の中に自分自身が実際にいるかのような、臨場感のある視聴体験を味わうことができます。

 株式会社360Channelでは、360度動画の制作から配信までを自分たちの手で行うとのこと。中島氏はこれを「360度動画のテレビ局になる」という言葉で表現していました。

 360度動画の制作は、テレビ番組やCM映像を制作したキャリアを持つ映像のプロが手がけているので、企画や撮影のノウハウを活用した質の高い番組作りが可能になっているとのことでした。

『360Channel』
▲360度動画を撮影する際は、このように数台の小型カメラをさまざまな方向に向けることで、360度全ての画角を同時に記録します。その映像を1つにつなぎ合わせれば、全方位を見回すことのできる動画になるわけです。

 さらに同社における360度動画制作の特徴として、中島氏は“スティッチ”の専門部隊が存在することを挙げていました。360度動画では、“GoPro”と呼ばれる小型カメラを複数同時に使用して撮影を行いますが、その映像を1つにつなぎ合わせて全方位視点対応の動画にする作業が“スティッチ”です。

 現行の映像制作では存在しないVR独自のこの工程に対して、株式会社360Channelでは10数名の専門スタッフを配置。クオリティの高い360度動画をより早く作成できると、中島氏は語っていました。

“バラエティ”や“ライブ”など多彩なコンテンツを無料で継続的に配信!

 『360Channel』の配信サービスとしての特徴は、マルチデバイス対応である点です。サービス開始時点の現在は、VR専用HMDのOculus RiftとGear VRで視聴可能になっています。その他のVR専用HMDについては、順次対応していく予定だそうです。

 また、PCやスマートフォンなどでも視聴が可能です。サービスのアカウント登録を行うと、動画のお気に入り登録ができるため、外出先でスマートフォンを使ってお気に入りの動画を登録しておいて、自宅に帰ってからVR専用端末でじっくりと楽しむ、といった利用法もできるとのことでした。

『360Channel』
『360Channel』

 『360Channel』で配信される動画は、すべて無料で視聴することができます(別途、各デバイスの通信料がかかります)。これは、360度動画の魅力をより多くの人に感じてもらうためとのこと。企業としての収益は、番組のスポンサーによる広告収入といった形を考えているそうです。

 サービス開始時の現時点では“バラエティ”、“旅行”、“ライブ”といった6チャンネルに、全22本の動画が提供されています。なかでも特徴的なのがバラエティ番組で、中島氏によると「360度動画ではおそらく世界初」だそうです。動画1本あたりの長さは5~10分となっています。

 動画の更新に関して、「現時点ではユーザー数が限られているとは思うが、ユーザーに視聴を習慣づけてもらえるようにするためにも、継続的に新コンテンツを提供していきたい」と、中島氏は語っていました。

 またアーカイブ形式の動画だけでなく、生放送にも挑戦していきたいそうですが、今はまだインフラ的にもカメラの機材的にも難しいとのこと。

 ちなみにVRには、360度の自由視点だけでなく3D立体視という特徴もありますが、中島氏によると3D立体視は個人の向き不向きが大きく、視聴者によっては3D酔いによる不快感を覚えるのだそうです。そのため『360Channel』では当面、立体視を使った360度動画を提供する予定はないと語っていました。

美女やアイドルが目の前に迫ってくる!? その場にいるかのような距離感が刺激的!

 さてここからは、実際にVR専用HMDを使用し、360度動画を視聴することに。体験会場には現時点での対応端末である、Oculus RiftとGear VRが用意されていました。

 視聴する際は、オフィスなどでおなじみの回転イスに座る形となっていました。自分の周囲360度を見回すには、じつに理想的な環境だと言えるでしょう。みなさんが360度動画を視聴する時も、ぜひとも回転イスを利用することをオススメします。

『360Channel』
▲Gear VRを装着した状態での視聴の様子。……といっても筆者自身の姿を自分で撮影することはできないため、代わりにコロプラの広報さんが体験する姿をお届けします。

 6チャンネルある動画の中で、中島氏が「おそらくもっとも引きの強いコンテンツ」と語っていたのが、『チュートの真夜中にヤりたい事! グラドル ガチ誘惑グランプリ!』というバラエティ番組です。

『360Channel』

 こちらはグラドルとして活躍する美女たちが男性を誘惑するテクニックを実演し、それをお笑いコンビのチュートリアルが採点するという内容です。ナイスバディな美女たちが、視聴者のすぐ間近に迫ってモーションをかけてくるのですから、男性ならドキドキしないわけがありません(笑)。

 とにかくVRならではの、その空間に実際にいるかのような臨場感がダイレクトに伝わってくる動画になっていました。特に人が近づいてくるという距離の感覚を、VRによってここまでリアルに味わえるというのは、なかなかに刺激的でしたね。

『360Channel』
『360Channel』

 距離感という観点で見ると『発掘!次世代アイドルLIVE』も非常におもしろい動画でした。こちらは次世代を担うアイドルたちのライブを鑑賞できるミュージック動画なのですが、カメラの位置はなんと、ステージと観客席のちょうど中間。つまりライブ会場の最前列よりもさらにステージに近いポジションという、文字通りの“特等席”なのです!

 歌の途中でアイドルたちが接近してくるパフォーマンスもあり、ライブを鑑賞していると言うよりは、まるで自分もステージに立っているかのような感覚が味わえます。もちろん360度動画なので、後ろを振り向けば観客が熱狂する姿も見られますよ(笑)。

『360Channel』

 360度動画ならではの魅力を実感できるのが、普段なかなか訪れることのできない場所を楽しめる体験型のコンテンツです。『ANA機体工場見学』では、ジェット旅客機が整備される様子を見ることができます。

 ジェット機の格納庫を360度見渡すことができるだけでも興味深いのですが、ジェット機の各パーツの大きさなども実感できます。

 日本各地の美しい風景や人気の観光スポットを紹介する『日本の旅』は、360度の視点を生かした番組作りが印象的でした。

 正面は海、後ろを振り向けば崖といった具合に、見回すことで風景がガラリと変わる位置にカメラが配置されていたり、視野の一角に隠れキャラのようにゆるキャラがいたりと、細かく見れば見るほど新しい発見があります。

『360Channel』
『360Channel』

 そして個人的に興味深かったのは、2016年4月に発生した大規模地震の被災状況を記録したドキュメンタリー番組『熊本地震 ~被災地の記録~』です。VRならではの“その場にいあわせるかのような感覚”によって伝えられたその光景は、これまで目にしてきた報道映像よりも、ずっと説得力のあるものでした。

 こうした題材を扱うのはデリケートな部分もあるとは思いますが、エンターテインメントに留まらないVRの活用法として、非常に意義のあるコンテンツだと思います。

 中島氏は、「360度動画はスティッチの作業が必要なため、報道番組のような速報性はなかなか発揮できない」としながらも、「その場の体験をしっかりと伝えられるのが360度動画のよさなので、こういった分野は今後も視野に入れていきたい」と語っていました。

『360Channel』

 360度動画を無料で気軽に楽しめる『360Channel』は、これからさまざまなVR専用端末が普及していく際に、非常に価値のあるサービスだと思います。VR端末を手に入れた人が、VRの魅力をまず最初に体験できるスタート地点の役割を果たすのではないでしょうか。

 とはいえ、VRはまだまだ発展途上のジャンルです。このサービスで多くの人が360度動画に触れて、その感想をにクリエイターに伝えていくことで、360度動画やVRならではの表現がさらに進化を続けていくはずです。

 VRの記事については毎回言えることですが、いくら言葉を重ねてもVRならではの体験を文章で伝えるのは難しいものです。“百聞は一見にしかず”ということわざのとおりですので、皆さんもぜひ、機会を見つけて体験してみてください!

『360Channel』
▲体験会場では、Oculus Riftで動画を鑑賞しているのと同じ画角の映像を、大型モニターで表示するといったことも行われていました。

(C)2016 360Channel, Inc.
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