2016年6月23日(木)
E3 2016でも新情報が公開され、世界中で話題を呼んでいるPS4用ソフト『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』。今回は、そんな本作の開発を手掛けるプラチナゲームズの開発現場にお邪魔する、スタジオツアー企画を2本立てでお届けいたします!
2本目の記事となる今回は、9人の開発スタッフに加え、プロデューサーの齊藤陽介さんとディレクターのヨコオタロウさんを加えた計11人のスタッフによる座談会企画が実現! 開発現場ならではのエピソードから、気になる発売日など、ざっくばらんにお話しいただきましたので、ぜひ熟読ください!
なお、E3 2016で発表された情報、9人の主要スタッフにお話をお聞きしたインタビュー企画に関してもまとめておりますので、ぜひご覧ください!
【座談会に出席いただいた皆さん】
・田浦貴久さん(ゲームデザイナー)
・根岸功さん(ゲームデザイナー)
・木嶋久善さん(エネミーコンセプトアーティスト)
・大西亮さん(プログラマー)
・田崎一軌さん(キャラクターモデリングアーティスト)
・村中高幸さん(アニメーター)
・亀岡昇平さん(エンバイロメントアーティスト)
・中島史音さん(VFXアーティスト)
・上田雅美さん(インプリメンテーション)
・齊藤陽介さん(プロデューサー)
・ヨコオタロウさん(ディレクター)
▲後列左より村中さん、田浦さん、田崎さん、亀岡さん、大西さん、齊藤さん。前列左より中島さん、木嶋さん、上田さん、根岸さん。 |
――まずは自己紹介も兼ねて、それぞれがどのようなお仕事を担当されているのかを教えてください。
齊藤陽介さん(以下、齊藤):プロデューサーを担当している齊藤です。ヨコオさんとは以前に『ドラッグ オン ドラグーン(DOD)』でエグゼクティブ・プロデューサーを担当して間接的に関わったりもしつつ、『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』で初めて一緒にお仕事しまして、今に至ります。
ヨコオさん自身がどう思われているかはわかりませんが、僕からすると、今回の『ニーア オートマタ』のヨコオさんが一番イキイキと仕事をしているように見えますね。
――そのあたりの“イキイキ感”が作品に反映されているのだとすると、いろいろ楽しみですね。
田浦貴久さん(以下、田浦):プラチナゲームズでゲームデザイナーをやっている田浦です。本作では、アクションまわりをメインに携わっています。
もともと『ニーア』というタイトルがすごく好きだったので、その続編にかかわることができて光栄です。かなり濃いファンの方がたくさんいらっしゃることは存じていますので、プレッシャーもすごいですけど(笑)。
ファンの皆さんの期待を裏切らないように、『ニーア』の魅力を生かしつつプラチナゲームズのいいところも組み合わせて、よりよい作品に仕上げられればと考えています。これについては、ヨコオさんが舵を取ってくださっているので、お互いに相乗効果を出していけるのではと思っています。
――ちなみに、ヨコオさんにはこの座談会に天の声的な形で参加してもらっているわけですが……ヨコオさん、ずいぶんニヤニヤされていますけど、何か気になることでも?
ヨコオタロウさん(以下、ヨコオ):いや、田浦さんのインタビューに慣れてきた感じがすごいな、と。最初の頃はもっと初々しかったのに。いまやこれ以上ないくらい模範的だなぁって。
齊藤:でも、この間のコンサートはトークコーナーに20分ぐらいの尺を、5分ぐらいで終わっちゃってましたよ(笑)。
田浦:あの時は本当に緊張していまして……。
ヨコオ:それって、今回は緊張していないってことですか?
――電撃の座談会企画では緊張しないってことですか?
田浦:いやいや、そんなつもりでは……うう、あたりがキツイ(苦笑)。
――いえ、僕たちは緊張してもらいたいわけでもなんでもなく! むしろ、リラックスしてお話しいただけるのであれば望むところですけどね。
田浦:ありがとうございます(ニッコリ)。では、次は大西さんどうぞ。
大西亮さん(以下、大西):リードプログラマーを担当しています、大西です。プログラムチーム全体のかじ取りもしています。背景・シナリオ・ギミックに関係するプログラミングなどをやりつつ、プログラマー全体のスケジュール管理をしている形ですね。今日はよろしくお願いいたします。
村中高幸さん(以下、村中):リードアニメーターを担当している村中です。私はプレイヤーキャラクターのアニメーション制作すべてと、アニメーターのスケジュール管理・クオリティ管理をしています。
――E3 2016のトレーラーなども拝見しましたが、キャラクターの動きがものすごいですよね。なめらかで、操作していて気持ちよさそうで、正直感動しました!
村中:ありがとうございます。『ニーア オートマタ』はこれまでのプラチナゲームズの作品に比べてかなり自由にやらせてもらえているので、やりがいがありますね。
例えば、今までの作品ではコンボを1つ作るにもディレクターと綿密に打ち合わせて“ここのフレームを短くしよう”といった流れを組んで作ったりしていたのですが、今回は任せてもらっているところも多いです。
――では、次は中島さんと木嶋さん、お願いします。
中島史音さん(以下、中島):VFXを担当しております。具体的には、『ニーア オートマタ』のすべての敵のエフェクトを作成しています。
今までのプラチナゲームズが手掛けた作品では、派手なエフェクト効果を用いる作品が多かったのですが、今作ではキャラやモーションを引き立たせるエフェクト、いかにキレや気持ちよさを感じてもらえるかに注力して制作しています。
木嶋久善さん(以下、木嶋):リードUIアート兼エネミーコンセプトアートを担当しています。本作でいうと、敵のメカデザインを自由にやらせていただいております。
ヨコオさんからは『ニーア』の世界観にあわせたデザインはあまり意識しなくていいと言われたのですが、その範囲の中で、ヨコオさんが思うデザインに落とし込めているのかなと思っています。
――なるほど! では、上田さんお願いします!
上田雅美さん(以下、上田):BGMなどを実装したり、楽曲にどのようなエフェクトがつけられるかを提案したりする、インプリメンテーションの仕事を担当させてもらっています。
――上田さんは、以前は『ベヨネッタ』シリーズに参加されたりしていたんですよね?
上田:ええ。『ベヨネッタ』シリーズでは、コンポーザーとして参加しています。『ニーア オートマタ』では、バトル曲とフィールド曲にメリハリをつけすぎない演出もあるんだなとハッとさせられたりしています。1曲1曲を非常に大切に使っているのも、本シリーズ独特だと感じています。
田崎一軌さん(以下、田崎):キャラクターのモデリングを担当しています、田崎と申します。プラチナゲームズの作品に関しては、いかに派手に見えるかを重視してモデリングをしてきたのですが、本作においては世界観に重きをおいて作るように指示をいただきましたので、あえて演出を抑え目にするなど、今までとは違ったアプローチのモデリングを心がけています。
――木嶋さんと田崎さんは、互いにやり取りする回数も多そうですね。
木嶋:そうですね。ヨコオさんともそうですが、キャラクター1人1人におけるコンセプトの確認とか、意識のすり合わせは何度もしています。
亀岡昇平さん(以下、亀岡):色彩の設定やライティングを担当している亀岡です。画面全体の表現や統一感などを演出させていただいております。
――ありがとうございます。では最後に、根岸さんお願いします。
根岸 功さん(以下、根岸):ゲームデザイナーとして携わらせてもらっております、根岸と申します。ヨコオさんからあがってくるメインシナリオやサブクエストを、ゲームに実装する作業を担当しています。
入社時から『ベヨネッタ』といったプラチナゲームズが得意な方向性の作品にかかわってはいたのですが、今回オープンワールドともいえる『ニーア オートマタ』を作るというのは、今までにない経験なので非常に楽しませてもらっています。
――これは齊藤さんにまずお聞きしたいのですが。そもそもなぜプラチナゲームズさんに『ニーア』の新作をお願いしようと思ったんですか?
齊藤:前作の『ニーア』は世界観やサウンドなどの演出において高い評価をいただきましたが、アクションRPGでもあるわけで、続編はアクションゲームを制作するのが上手なところがいいと考えたからです。
私のなかで、プラチナゲームズさんはアクションゲームの開発の最高峰だと考えているんですが、自社ならではのゲームを作っておられる会社でもあるので、お話を持ち込むにあたって『ニーア』をお引き受けいただけるかは正直不安がありました。ヨコオさんの個性とプラチナさんの個性がぶつかって消滅する可能性もありましたしね(笑)。
――それは確かに。強い個性がぶつかりあって、どんな化学反応が起こるかは未知数ですもんね。
齊藤:ええ。でも私のなかで、だからこそ見てみたいという想いが強くありまして。正直、ダメ元でお話をしてみたところ、こころよくお引き受けいただくことができたんです。タイミングなどもよかったという側面はありますが、開発スタッフの中に『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』が好きなファンがいてくださったことも大きいかな、と。
――今回、そんなプラチナゲームズさんのスタジオツアー企画をご提案いただけたのは、どんな思惑があってのことなんですか?
齊藤:今回の企画に関しては、ヨコオさんからのご提案があったからというのが最大の理由ですね。プラチナゲームズの現場でがんばっている若手のスタッフをぜひ紹介したいと、ヨコオさんがずっとおっしゃっていたので、だったらやってみようかな、って。
ヨコオ:僕たちおっさんがインタビューとかに出ても、もう仕方ないじゃないですか。実際、今回はプラチナゲームズのスタッフさんたちがものすごくがんばって開発してくれているので、僕の仕事なんてほとんどないですし。だから、もしインタビューなどをしてくださるのであれば、僕ではなくてプラチナゲームズの皆さんにお話しを聞いた方が早いんです。
齊藤:ディレクターって、ゲーム全体を俯瞰して、穴が開いているところを埋めていく作業が必要になるんですけど、今回、プラチナゲームズさんに開発をご担当いただけたことにより、ヨコオさんが埋めなくてはならない穴が、そもそも数少なくなっていると思います。
ヨコオさんにはそのぶん、世界観を作ることに専念していただけていますので、それはもうすごいシナリオが上がってきていますよ。
――なるほど。じゃあ、当然シナリオはすべてあがっている、と。
ヨコオ:あがっているわけないじゃないですか。何を言っているんですか!
齊藤:いや、そこは偉そうに言うところじゃないでしょう?
――田浦さん、本当にシナリオあがっていないんですか?
田浦:ええ、まだ全部はあがってきていないですね……。
ヨコオ:イケメンに何を言われようとも、あがっていないものはあがっていないんですけども……ええ、すみません。がんばります、これから。
――楽しみにしています(笑)。そもそも、このようにして各セクションのスタッフ同士で集まってディスカッションすることって多いんですか?
大西:いや、ほとんどないですね(笑)。密接に絡み合うセクションのスタッフ同士はディスカッションしたりしますが、こうして全体でミーティングとなると、ほとんどないと思います。
――そんな皆さんを一堂に集めて座談会をやれって言うんですから、さすがはヨコオさんですね。
ヨコオ:ええ、ムチャぶりしました(笑)。
――その様子ですと、ゲーム制作においてもこのようなムチャぶりが多いのでは……?
根岸:いやいやいや(苦笑)。実際は、『ニーア』の芯の部分がブレてさえいなければこちらに任せてもらえる部分も多いので、ムチャぶりというよりは信頼してもらっているという感覚ですけどね。現場としては。
ヨコオ:信頼して任せています。これは本当です。
――いや、強調しなくてもわかりますよ(笑)。これまでで一番イキイキとしていると齊藤さんがおっしゃったのも、よくわかります。ちなみに、現在の各セクションごとの進行度的にはどれくらいでしょう?
根岸:メインのシナリオについては、あとはつないで遊べるようにする段階です。現時点は、サブクエストをガンガン追加しているところですが、全体的に見ればちょっと遅れているぐらいですかね。
ヨコオ:エンディングなども含め、ボイスの収録も進んでいます。
田浦:バトル関連でいえば、基本的なアクションはほぼ完成しています。ボス戦やカメラなどの調整はまだまだかかりそうですが。
――戦闘はスタイリッシュで本当にかっこいいですよね。今までのプラチナゲームズさんのど派手なバトルとはうって変わって、とても静かで美しい感じで。それがまた素晴らしい!
田浦:ありがとうございます。今までのうちのゲームと違って、一見地味に見えるかもしれませんが、実際に触ってみると、プラチナゲームズのゲームらしく爽快感があっておもしろいという方向を目指しています。
齊藤:ちなみに、今回のボスのギミックはかなり手が込んでいますよ。あと、今回は乗り物も出ますのでお楽しみに。
――全体的に、ものすごくスタイリッシュですよね。ネガティブな意味でもなんでもなく、意識が高いというか、ものすごくオシャレ。
ヨコオ:田浦さんはOGDですからね。
――OGD?
ヨコオ:オシャレゲームデザイナー(OshareGameDesigner)です。これはゲームだけにとどまるものでもありませんけどね。彼という存在自体がOGD。殺意が芽生える人も多いと思いますね。
齊藤:いや、そんなのヨコオさんだけですよ(苦笑)。
――でも、そのオシャレな方向性でいきたいっていうのは、ヨコオさんの指示でもあるんですよね? 主人公の2Bなんて、ものすごくエレガントですし。
村中:田浦と話して、2Bのモーションにはところどころダンスしているように見えるものなどを入れたりしています。ヨルハの面々の戦闘シーンは、それぞれに違った個性が出ていると思いますので、ぜひご注目いただきたいです。
田浦:今回、キャラクターのアニメーションには本当にものすごくこだわって制作しています。攻撃終わりのアニメーションなどにもこだわりを盛り込んでいるので、ぜひお楽しみに。
――ちなみに、コンサートのトークライブで見せていただいたカッコイイ動きなんかも、すぐにできるようになるんですかね!? 正直、ちょっと難しそうに見えるんですけど。
田浦:誰でもすぐにカッコイイ動きを見せられるようになるというか、見た目以上にスムーズに操作できるように仕上げていますので、そこのバランスに関しては安心してください。回避についても簡単に操作できますよ。
大西:いつもだと、派手さを追求してドッカンドッカンと画面のあちこちで盛り上げていく感じになるんですけど、今回はあえてシンプルにまとめていますので、少なくとも“何がなんだかわからない”ってことはないかと。
自分たちとしては、こういう作り方をしても楽しいアクションゲームが作れるんだなって、ちょっと目からウロコでした(笑)。
――エフェクトの効果やサウンドの効果にも、ものすごく緻密な演出がなされていて、そこがこのオシャレ感につながっているんだろうなと思います。
中島:VFXに関してもいつもよりは抑え目で作っていますが、だからこそ表現方法には気を配っています。あまりギラギラとした、いかにもアクションゲームって見え方にはしたくないなと考えながら作っていますね。
――それは、背景や色彩の設定などに関しても同様ですか?
亀岡:そうですね。1つ1つのフィールドに、明確な意図を込めて色彩を設定したりしています。画面を見たときに、色数が少なく感じる方も多いかもしれませんが、細かいところで色々な演出が入っていたりするので、ぜひ細部までご覧いただきたいです。
上田:そうやってVFXや色彩演出加減が変わると、場合によってはサウンドの演出も変わってくるので、やりがいがありますね。せっかく皆さんに遊んでもらうのですから、恥ずかしいものにはしたくないので、ギリギリまでこだわっていきたいと思っています。
――ちなみに、映像を見ていて気になったのですが、戦闘中に2Bと9Sを自由に切り替えたりはできるんですか?
田浦:いえ。今回は自由に切り替えて戦う仕様ではなく、シーンによって切り替える形になっています。役割分担があるってことですね。
――開発画面を見せていただいたところでは、見下ろし視点で戦うシーンなどもあるようでしたが……。
田浦:はい。『ニーア』といえば、そういった特殊なギミックが突然入ってくるのも魅力だと思っていますので。とはいえ、カメラを上にあげるだけで屋根と被ってしまったり、敵の見え方が変わったりして、全員の負担が増えますので、そこは要調整ではありますけど。
――ちなみに、お話を聞いていると、これからやるべきことはまだまだ存在するって感じに聞こえるのですが、発売日についてはいつくらいを想定しておられるのでしょうか?
齊藤:E3トレーラーにて、“Early 2017”と発表する予定です。“Early”の文字通り、2017年に入ってから、長くお待たせする形にはならないかと。このあたりの詳細はもう少々お待ちください。
――おお、2017年初頭ですね! 続報を楽しみにお待ちしております。ちなみに、発売前にファンがゲームを実際にプレイできる機会などは想定されていますか?
齊藤:あくまで個人的にですが、例えば店頭体験会など、時間を区切りつつ立って遊んでもらうのは、あまり向いていないタイトルだと思っています。出すならば体験版などを検討したいですね。
ただ、我々がいかに「遊びやすいですよ。どなたでもすぐに慣れますよ」と言っても、お客さまにはなかなか伝わらないとも思っていますので、何らかの形で触ってもらいたいとは思っています。
――それはうれしい配慮ですね。“ポッド”を使ったアクションなど、どんなものになるのかちょっと想像がつきませんし。
田浦:基本的には、プレイヤーキャラとポッドの攻撃ボタンが別々になっています。前作の白の書と似たような使い勝手になるかと思います。
――なるほど。では、前作プレイヤーはあまり違和感なく遊べそうですね。
田浦:そうですね。前作のファンの方に遊んでもらってガッカリされたくありませんので、操作感覚などが大きく変わるといったことはないと思っていただければ。
――ではここで、1つの核心といいますか、イチ『ニーア』ファンとしてお聞きしたいのですが。そもそも、なぜ今回『ニーア』の名を冠しているんでしょうか?
齊藤:それ、じつは俺も聞きたい。
――ええっ!? 齊藤さんも!?
齊藤:これはヨコオさんの口から聞きたいです。ヨコオさん、どうなんですか?
――そもそも、前作の主人公は“ニーア”だったからこそ、『ニーア』というタイトルが成り立ったわけですが、今回の物語に彼はかかわってくるわけではありませんよね?
ヨコオ:ええ。だって消えちゃってますからね、彼。
――では、本作は何をもってして『ニーア』と冠されているんでしょうか? そもそも、『ニーア』っていったいなんなんでしょうか?
ヨコオ:『ニーア』っていったいなんなのか……なんていわれると困るんですけど、ひとことで言うならば“呪い”ですね。
――“呪い”? “祈り”とか“希望”ではなく!?
ヨコオ:“呪い”です。これ以上はまたいつか。
――……またいつかですか……って、なんかはぐらかされた感が!?(苦笑)
齊藤:ここでヨコオ節が出ちゃいましたか……。でも、遊んでいただければきっとご理解いただけると思うんですけどね。……そうですよね、ヨコオさん。
ヨコオ:呪いです。
――……(今、仮面の下で絶対ニヤリとしてるな、この人)。では、お話は変わりますが。前作ではゲームの発売前にサントラを発売したり、ゲーム誌にサイドストーリーを掲載したりと、ある意味普通じゃない施策を打っておられたわけですが、本作ではいかがでしょうか?
齊藤:そうですね。いろいろやりたいことはあるんですけど。少なくとも、『ニーア』と音楽は絶対に切り離しては考えられないものになっていますので、先日開催いたしましたコンサートの映像化、およびコンサートの再開催などは考えています。
おかげさまで、先日のコンサートグッズもとてもお喜びいただけたようですし、東京ゲームショウで新しいグッズを販売するのもいいかな、なんて考えていたりもします。
――おお! それは喜ぶファンも多いのでは!?
齊藤:まぁ、売れなかったら今度こそ、ヨコオさんとリアカーを押して全国行脚の旅に出ますよ。
ヨコオ:リアカーですか。いろいろと遅れてもいいのなら歩きますよ。
田浦:いや、それは困ります(苦笑)。
齊藤:そして、見事予定どおりに開発が終了した暁には、ヨコオさんがずっとやりたいやりたいと口にしている舞台に取り組んでもらうのもいいのかな、と。
――舞台! それはヨルハが登場する舞台ってことですよね!?
ヨコオ:舞台、やりたいんですよ。
齊藤:そりゃあもう、完成したらいくらでもやってもらっていいですよ! なんなら、国立劇場ぐらいのハコでヨコオさんの望むものをやるのもいいのでは。そのためにも、まずは開発をしっかりとね。シナリオを完成していただかないと。
ヨコオ:が、がんばります……。
――ちなみに、齊藤さんの中で目標とする販売本数はどれくらいなんでしょう?
齊藤:プロジェクトの規模とかはまるで考えずに言うと、100万本ですね。こういうときは、常に100万本ということにしているので。
――目標は常に高くってことですよね……。でも、それだけのクオリティに仕上げていただける匂いはプンプンします。
ヨコオ:ここはもう、最後に根岸さんにぶちあげちゃってもらうしかないですね。
根岸:えっ、僕ですか!?(苦笑)えーと……ご期待いただいているファンのみなさんをガッカリさせないよう、最高のクオリティに仕上げられるように努力しています。“神ゲー”にしますので、引き続き応援をよろしくお願いします!
――神ゲー宣言いただきました! 本日はどうもありがとうございました!
今回、プラチナゲームズに、ヨコオさんがインタビューや会見の場で装着されているマスク、通称“エミールヘッド”を制作されたスタッフさんがおられると聞き、いてもたってもいられなくなった電撃スタッフ。
あの愛に満ちた造形に、1人のエミールファンとしてシンパシーを禁じえないわけで……これはなんとしてもお話をお聞きするしかない! ということで、エミールヘッドの作者である松下祥風さんに、特別にお話をお聞きしてきました!!
▲松下祥風さん。 |
――そもそも、あのエミールの顔をマスクにして人前に出るというアイデアからして狂気を感じるわけですが、あれはやはりヨコオさんのアイデアなのでしょうか。
松下祥風さん:ええ。まさにヨコオさんからのオファーで制作いたしました。僕は学生時代、特殊メイクや特撮の造形などを勉強していたんですが、それがどこからかヨコオさんのお耳に入ったらしく。
ある日ヨコオさんご本人から「松下さん、特殊メイクや造形ができるんですよね? よければ人前に出るときにかぶれるような、エミールのマスクを作ってもらえませんか?」とお願いされたのがきっかけでした。
――そんな軽い感じのオファーだったんですか!?
ええ。すこぶる軽い感じで。そして、僕も「やりますやります!」って軽い感じで答えました(苦笑)。
――いいんですか、そんなに安請け合いしちゃって!(笑)
なにせ僕、エミールのことが大好きだったもので、むしろ公然と作れることがうれしかったくらいです。
――いやでも、制作するといっても時間がかかるわけですし、ぶっちゃけ制作費なんかもかかりますよね?
そこらへんはこう……お小遣いをいただくことで解決したんですけど。
――お小遣い? ヨコオさんからのお小遣いですか?(笑)
ええ、まさしく。それですぐに制作に取り掛かりまして、1週間後には原型ができ上がりました。今もヨコオさんとは『ニーア オートマタ』で一緒に仕事をさせてもらっていますが、この時の原型チェックほど入念に確認されたことは他に記憶がないですね。
――それって、つまるところダメ出しが多かったってことですか? 「ここの角度がちょっとなー」とか、そういうことですか?
まさにそういう感じですね。とくに、目の造形にはものすごくこだわりがあったようで、何度もダメ出しをされました。
――目……ですか? 普通に円形にすればいいわけではなくですか?
ええ。具体的には、目の周辺にあるこの黒いフチの部分で、何度もダメ出しされました。個人的にも、この目の周りの黒いフチは、エミールのかわいさを表現する最も重要なチャームポイントだと思っていますので、ここにかなりの時間を割いています。
――そこなんだ……なるほど、わかるようなわからないような(苦笑)。
いや、ここは本当に重要なんですよ。ここの大きさや角度が少し変わるだけで、エミールのかわいさが全然でなくなってしまうので。自分としてもとことんこだわって詰めていきました。
――ちなみに、このマスクって視界はどれくらい確保されているものなんでしょうか?
じつはこれ、目のところには一切穴を開けていません。なので、ヨコオさんは鼻の穴と、口の隙間から外を見る形になっています。
――Twitterなどを拝見すると、どうにも見えづらそうだなって印象を受けるわけですが。
ええ、実際見えづらいと思いますよ。とはいえ、本当は目の位置にも小さな穴を開ける予定だったのに、それを断ったのはヨコオさんご本人ですからね(苦笑)。それだけ、造形にこだわりがあったんだと思います。
――なるほど。結果的に通気性なども無視したぶん、より完成度の高いエミールヘッドが出来上がった、と……。
そういう側面はありますね。ヨコオさんご本人の意思を最大限に尊重したうえで、このデザインに落ち着きました。
――では、そんなエミールヘッドにおいて、松下さんがとくにこだわった部分はどこですか?
正面から見ると真ん丸に見えるかもしれないエミールですが、じつはかなり凹凸があるってところでしょうか。具体的には、横から見たらガイコツのように見えるでこぼこがあったり、よーく見るともともとあった鼻の形がおぼろげにわかるようになっていたりするんです。
ただ、あまりにもリアルにしすぎると、それはそれでダメなんですよ。エミールの魅力って、気持ち悪さとかわいさが奇跡的に共存している部分にあると思っているので。
――そんなところにまでこだわるなんて、かなりの苦労があったのでは?
正直ありましたね。PCの中にデジタルデータこそあれど、 立体物になったエミールの資料というものがまったくないわけで、自分で一番しっくりくるデザインを見つけなければならないのがしんどかったです。
――そのぶん、完成したときの感動はかなりのものだったのでは?
ええ。ヨコオさんから「これは完璧にエミールです」と太鼓判をいただけたときは、本当にうれしかったですね。
――ちなみに、ファンの中にはこのエミールヘッドがほしい! という方もたくさんいると思うのですが、ぶっちゃけ量産はできるものなのでしょうか?
原型はすでにできていますので、やろうと思えばできなくはないですよ。
――ほほう……。
あとは、スクウェア・エニックスさんから商品化のオファーがくるだけなんですけどね(スクウェア・エニックスの宣伝スタッフをチラリと見る)。
――いやこれ、欲しいってファンは多いと思いますよ。ぶっちゃけ、僕も欲しいですもん。たとえば、100個受注が来たとして、この型を使いながら量産したとしたら、経費はどれくらいになるんでしょう?
100個ですか……。手間などを考えずに材料費とかだけを考慮するなら、5千円とかそれくらいじゃないですかね。
――ほうほう。では、そこに梱包費や発送費なども含めたとしても、たとえば1万円も出せばお釣りが来そうってことですかね。
ええ。まぁ、人件費をまったく考慮に入れずに計算してますけどね(苦笑)。
――じゃあ、あとはスクウェア・エニックスさんがライセンス費をどれくらいに設定されるかで、定価が決まってくるわけですよね……。
スクウェア・エニックス宣伝担当:いやいやいや、何を具体的にそんな話を進めてるんですか! こんなところでいきなりビジネスの匂いをさせないでくださいよ(苦笑)。
――あ……ついアツくなってしまい、失礼しました(苦笑)。でも、全国のエミールファンを代表して言わせてください。これは欲しい! ぜひ商品化してほしいです! だって、できがいいもの!!
お褒めいただきありがとうございます。ただ、今のところはこれ1つだけで、量産のお話なんかはでていませんね(苦笑)。
――世界に1つだけのエミールなんですね……。
ええ。ただ、ヨコオさんと一緒に世界各地を旅しているわけですから、そろそろダメージの蓄積もたまってきているんですよね。ちょくちょく補修はしているんですけど……。
――ヨコオさんが粗末に扱っているんじゃないですか? 地下鉄だかに忘れたって聞きましたよ!?
どうなんでしょう? 愛着をもって使ってくれていると信じていますけどね。表面は固くコーティングされていますけど、マスクの内側は柔らかい素材を使うなど、着用者のこともしっかり考えているつもりなので、少なくとも自分としてはものすごく愛着がありますね。
――いや、失礼ながらちょっと異常なほどの愛を感じますよ。だって松下さん、このマスクの制作や管理が本業ではないですよね?
そうですね。本業はキャラクターのモデリングを担当しています。
――それはいけない! じゃあ、100個とか生産してもらうとなると、それだけ『ニーア オートマタ』の発売がズレてしまうじゃないですか。それだけはいけない!!
たしかに(笑)。ちなみに、エミールの3Dデータと、このエミールヘッドの原型を3Dスキャンしたデータと見比べてみたんですけど……結果、このエミールヘッドの原型のほうがずっとよくできているという驚きの事実が判明しまして。
――なんと!
やはりエミールヘッドへの思い入れが尋常ではないからなのでしょうか(苦笑)。そういえば、このエミールヘッド、世界中の『ニーア』ファンの方からコラージュ画像などでイジられていたりするみたいで、それがいいか悪いかはさておき、ちょっとニヤリとしてしまう自分はいます。
僕自身、本当に『ニーア』の大ファンだったので、そんな自分が作ったエミールヘッドをヨコオさんにかぶってもらっているだけで、なんて幸せなんだろうと感じています。
――うーん、松下さんの目は赤い、赤いなぁ! ちょっとうらやましいかも(苦笑)。ちなみに、『ニーア オートマタ』にもエミールが登場するとお聞きしていますが、松下さんから見て、エミールすら超えるほど人気の出そうなマスコットキャラはいたりするのでしょうか?
うーん、これは言っていいのかどうかわかりませんが、ぶっちゃけ人気が出そうなキャラがいますね。自分もいろいろと作らせてもらっているので、こちらも愛着が深いです。ぜひご期待いただければと思います。
――貴重なポロリをありがとうございました! ちなみに、ちょっと個人的なお願いがあるんですけど。もし僕がこの場で1万円をお支払すれば、このエミールヘッドを作ってもらうことは……(ゴニョゴニョ)。
スクウェア・エニックス宣伝担当:コラコラコラ! シレッと何を言い出してるんですか(苦笑)。
――あはは、ですよね……(汗)。松下さん、本日はとてもおもしろいお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
今回こちらの記事を制作するにあたって、スクリーンショットを追加素材としてご提供いただきましたので、ここでまとめて公開いたしましょう。
▲砂漠での戦闘の一幕。2Bが両腕に装備している武器は、近接戦闘用のバイルバンカーのように見えるが、詳細は不明だ。 |
▲9Sが敵に繰り出しているのは天使文字? 情報収集能力に長ける9Sだけに、直接攻撃とは異なる方法で敵にダメージを与えるのか? |
▲高所から襲い掛かってくる敵ロボットたち。『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』に登場した“仮面の人”たちが着用していた仮面やマフラーを身にまとっている点に注目。 |
▲歌うボスとの戦いの一幕。ミサイルの弾幕が2Bと9Sを襲う。 |
▲濃度の異なる2色の弾幕。ジャンプなどで回避するのか、はたまた武器で薙ぎ払うのか。とっさの判断が勝利のカギを握る。 |
本作の攻略情報と設定資料を収録した『NieR:Automata Strategy Guide ニーア オートマタ 攻略設定資料集 ≪第243次降下作戦指令書≫』を4月28日に発売します。価格は2,500円+税。仕様はB5判・304ページとなっています。
やり込みに役立つ攻略データに加え、ネタバレ注意のキャラクター&ストーリー解説も収録!
ディレクター・ヨコオタロウさんによる短篇小説、小説家・映島巡さんによる書き下ろし小説2篇も読める『NieR:Automata』ファン必携の1冊です。
【『NieR:Automata』注目記事】
→『NieR:Automata』を支えるプラチナゲームズの開発のキーマンを直撃。各人のこだわりにも注目
→『ニーア オートマタ』もマルチエンディングに! 9Sの気になる秘密も飛び出した開発者インタビュー
→『NieR:Automata』新情報やボスバトルの映像が公開。2Bの立体化も進行中!?
(C) SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
データ