2016年6月17日(金)
『バイオハザード7』は純粋に恐怖を追求! 新生への意図や制作・発表秘話を開発者にインタビュー【E3 2016】
米国・ロサンゼルスにて、現地時間6月14日~16日に開催されたコンピュータゲームの祭典“E3 2016(Electronic Entertainment Expo 2016)”。
その開催に先駆けて実施されたSIEのプレスカンファレンス、“E3 2016 PlayStation Press Conference”では、『バイオハザード』シリーズの最新作『バイオハザード7 レジデント イービル』が発表された。
ここでは、シリーズプロデューサー・川田将央氏、ディレクター・中西晃史氏、プロモーション担当・神田剛氏へのインタビューをお届けする。
▲川田氏(左)、中西氏(中)、神田氏(右)。 |
純粋に恐怖をつきつめた新生『バイオハザード』
――今回、『バイオハザード7』を発表するにあたっていろいろな反響があったかと思いますが、それらを含めて今どんなお気持ちですか?
神田:まず、やっと発表できたなという思いがあります。また、同時に配信した体験版の反響を見ると、“ホラー”をしっかりと感じてもらえていて、意図しているところがゲームファンの皆さんに伝わったなという手ごたえを感じました。この作品のエグゼクティブプロデューサーの竹内も非常に喜んでおりました。ここから『バイオハザード7』をもっと盛り上げていこうと強く思っています。
――川田さんはいかがですか?
川田:まず、我々が提案したホラーに関しての反応は想像以上にいいと感じています。システムはガラッと変わっていますし、もっとネガティブな意見も出るかと思ったんですが、思っていた以上にいい反応をいただけました。そういう意味ではすごくハッピーです。
――カンファレンスでゲームの映像が流れたときに、みんなが「これ何?」って感じているなかで、最後にロゴが出て「これ、『バイオ』だったのか!」となりました。なかなか気がつかなかったほど、変わったという印象が強かったと思います。
川田:自分も昨日はネットでリアクションムービーをずっと見てました。海外の方は飛び跳ねてくれたり叫んだりと反応が派手で、とてもいいですよね(笑)。当日会場で自分が見ていたときは、トレイラーの最後まで大きな反応が少なかったので正直不安でした。ほかのタイトルもクオリティが高いものばっかりでしたし。
――みんな最初は何かわからなかったので、考えながら見ていたんじゃないかなと思います。
川田:最後にタイトルが出たところで大歓声が起こり、発売日とデモ配信発表で会場全体が喝采となって、自分も興奮してしまいました。ここまでの苦労や不安も吹き飛んで、報われた感じがしました。正直ちょっと泣きましたね。
――大成功だったということですね。デビューがE3で、体験版配信も始まっている。VR対応も発表していますし、ここに向けて入念な準備がされたという感じがするんですけど、E3に合わせて準備をしてきたということなんでしょうか?
川田:特に苦労していたのが、ここにいる神田なんですが、E3前も自宅になかなか帰れない日々が続いていましたからね(苦笑)。
神田:グローバル発信の場として、やはりE3というイベントがふさわしいということで準備を進めていたのですが、情報がリークされないように激を飛ばし、カプコンとしてチーム一丸となって今回の発表にあたることができました。
――本当にリークが出なかったですね。
川田:本当に発表の直前まで我々もすごくピリピリしていましたが、その甲斐あっての今回のサプライズです。
――この時代に少しも情報が洩れずにサプライズできたのはすごいと思います。
川田:我々にも管理能力くらいあるんだというところを見ていただけたんじゃないかなと思います(笑)。
――発表したタイミングとしては、タイトル的に何か意味があったんですか? 20周年などはあったと思いますが。
川田:やはりグローバルなタイトルですので、発表する場としてはE3が一番ふさわしいんじゃないかなと考えていました。
神田:20周年の目玉のタイトルですしね。1年前に『KITCHEN』を出展して、『バイオハザード』と関連づけられるような情報を出さないように注意しながら、『KITCHEN』のゲーム性とホラー感をあおってきました。このタイミングでその情報もドドンと出した形です。
川田:PR手法もあって、電撃さんにも本当に申し訳なかったんですけど、『KITCHEN』のスクリーンショットを1枚も出してないですからね。体験していた人にとっては、あれがこうなるのかという驚きもあったのではないでしょうか。
――『バイオハザード7』では主観視点になったというところが大きな変化だと思うのですが、恐怖を演出するということで主観視点になるのは、どういう意図がありましたか?
中西:ホラーをどれだけユーザーに体験してもらうかというところで、距離感という部分でプレイヤーの没入感や臨場感が変わってきます。そこで、一番恐怖が伝わるのが今回採用した主観視点であると。そういったところで今回の『7』に関してホラーを徹底的に追求していく、さらにPS VRとの親和性というところを含めて主観視点が最適であると、自信をもって開発を進めています。
――PS VRに関してはいつごろから視野に入ってきましたか?
川田:もともとのこの企画の本格的な立ち上がりが2014年の2月あたりなんですが、その時期から、今まで3人称視点でやってきたけど、中西が言った理由で今回は1人称視点で行きましょうと決まってたんです。
それでテスト動画も作りましたし、グレーボックスと呼んでいるゲームの仮組みや、一部のエリアだけ作り込むバーチカルスライスを行いつつ、システムが変わることによるメリットを社内にアピールするための調整ごとも進めていました。
本格的にPS VRで制作しようと決まったのは、テストを兼ねた『KITCHEN』デモからですね。『KITCHEN』でホラーとVRの相性を図るために、プレイヤーの反応も見ようということになり、E3に出展する計画を作りました。VRの基礎研究は以前からカプコンでも行われていたのですが、PlayStation VRに関しては、このタイミングから本格的に実装を行い始めました。
――開発初期から中期くらいの段階で、視野には入っていたということですね。
川田:そうですね。昨年のE3での反応で、改めてホラーとPS VRの親和性の高さがわかりましたので、本格的に開発を進行させることになりました。
――PS VRには、フル対応になるのでしょうか?
川田:はい。フル対応になります。もしかしたら勘違いしている方もいらっしゃるかもしれないので、ここで言わせてもらいたいのですが、『バイオ7』は、もちろんPS VRがなくても遊べますし、同じディスクの中でPS VRと通常のゲームと切り替えることもできます。セーブデータを共有することも可能になっています。
――『KITCHEN』と『バイオ7』のつながりはどういうものになりますか?
川田:今回配信されたティザーデモを遊んでもらえば『KITCHEN』が『バイオハザード7』となんらかの関連性を持っていたことがわかると思いますが……単に素材の一部を使ったコンテンツではありません。今回の配信デモ、『KITCHEN』、そして本編につながるストーリーの中にプレイヤーはすでに組み込まれているんです。去年から仕込んだ甲斐がありましたが、非常にユニークなコンテンツに仕上がったのではないでしょうか?
――PS VRに関して、評価としてはちょっと酔いやすいというものがありますけど、そのへんで気をつけていることはありますか?
川田:そのあたりはまだ調整中ですね。いろいろ試行錯誤もしていますし、仕様面でSIEさんとも相談させていただいています。VR版だけの細かな変更もあるのですが、フルゲームで遊べるように調整しています。
――私も体験してみて思ったんですが、もともとの主観視点で充分怖いのですが、PS VRになるともっと怖くなりますね。そのあたりでケアをしなければならないものはありますか?
川田:怖いと思います。気持ち悪いものも多いので、注意喚起は相当しっかりやらなきゃいけないと思ってますね。あと体調管理とか(笑)。
――例えばゴキブリがぶわって出てくるみたいな演出は、VRだと本当に嫌でしたね。自分の手についた感じがありますよね。
川田:キャラクターが目の前にいるときの存在感もすごいですよ。もしかして匂いや息吹を感じているんじゃないかなと錯覚する体感性は、PS VRならではです。
――ファンとして気になるのは、これまでのシリーズとのつながりだと思うのですが、そこはどのような形ですか?
中西:つながりそうですね。まず大枠のところで、『バイオハザード』という世界観を共有している作品です。細かなところはまだまだ言えませんが、本編をプレイしていただければ、「あっ、『バイオ』だ!」ということを実感してもらえる作品になっています。
川田:ギミックも『バイオ』らしいものがありますし、ハーブなどシリーズのアイコンになっているものも一部登場します。システムは大きく変更になりましたが、同じ世界観でのストーリーなんだという部分は、我々も大切に考えています。今後、本編をプレイしていただければ、そういった部分も強くを感じてもらえるんじゃないかなと思っています。
――体験版だと敵らしきものは最後のおじさんしかいないと思うんですが
中西:ファミパンですね。
――“ファミ”は何の略なんですか?
神田:ファミリーです(笑)。最後に「welcome to the family」と言いながらパンチしてくるので“ファミパンおじさん”です。
――一応お聞きしたいのですが、あれは誰だったんですか?
川田:トップシークレットがきましたね。誰でしょう?(笑)。
――敵なんですか?
川田:どうでしょう。どこかでプレイヤーを生暖かく見守ってくれている心優しいファミパンおじさんなのかもしれません。
神田:“family”に“welcome”という形でセリフを言っているので、そういう関係の人でしょうかね(笑)。
――先ほど神田さんからホラーという話が出てきたんですが、『7』の大きなコンセプトはホラーということになるのでしょうか?
中西:まさにそうです。そこがメインコンセプトです。ホラーがベースにあって、あとはどういう形で『バイオハザード』らしさをそこに重ねていくのかというところを、チームのほうで本編完成に向けて最終ブラッシュアップしているところです。
川田:グラフィックもそうですし、世界観設定もちゃんと『バイオハザード』らしさを考えて作っているんですけど、今回すごく『バイオハザード』らしさを残しているなと感じるところは、“音響”ですね。
プレイヤーが歩き回ると床には瓶やら缶やら落ちていて、蹴って音を鳴らしてしまうんです。この音が特にヘッドホンをしていると、音響効果もあってすごく怖いんですよ。プレイヤーの操作によって発生する“音”なので動画を見るだけじゃなく、プレイする事でより恐怖の感覚が強くなるんじゃないかなと思います。
逆にチャレンジャブル音響なのが今回のテーマソングだと思います。歌ものは嫌いではないので、自分も過去にかかわったタイトルではけっこう採用することが多いのですが、今回スタッフから提案を受けた内容が本作にハマりすぎていて、ほぼ即決でOKを出しました。今では社内のグローバルスタッフもよく鼻歌を歌っているくらいです(笑)。
――国内向けのタイトルでは、『レジデント イービル』という言葉が入っていますが、改めてサブタイトルとして海外版のタイトルを入れた意味というのはなんですか?
川田:インパクトがあったからですね。また、グローバルで展開するうえで、2つの作品名があるっていうのも前から違和感があったんですけど、あえて今回それを1つにして、両方のテーマをしっかり扱うんだという意味合い、我々の意思の表れをアピールしていきたいというのも理由としてありますね。
神田:かたや『バイオハザード』=生物災害で、かたや『レジデンド イービル』=邪悪な者たち、みたいな感じですからね。
――体験版ではずっと邸の中が舞台になっていますけど、基本的にはここが舞台になるんでしょうか?
川田:そうですね、宇宙に行ったりとかはしないですね。でも今回はオープンワールドのような広がりを持ったゲームではなくて、むしろ狭いんだけれどもしっかりと深さを持ったタイトルにしたいなと思っていました。
――トレーラーの最後にアンバサダーみたいなものに触れられてますけど、バイオハザードアンバサダーはどんなことをするものなんですか?
神田:『バイオハザード』は20周年を迎えましたが、ファンの方々に支えられてここまで来たブランドです。バイオハザードアンバサダーは、熱狂的なファンの方たちと一緒にブランドを盛り上げていくというプログラムです。これからコミュニケーションを取らせていただきながら、いろいろなフィードバックをもらって、ファンの方からは情報を発信してもらうといった内容です。
川田:この制度は、いろいろな場所でファンの方々盛り上がってもらうために、こういうものがあってもいいんじゃないかなと考えてこういう提案をさせてもらいました。
神田:例えば、今回の体験版をプレイして、“ファミパンおじさん”みたいな言葉などがさっそくファンの方から広まっています。こういったファン同士が何かを共有して広がっていくような事をもっと増やしたいんです。ファンの方たちといっしょに『バイオハザード7』の魅力を広げていきたいという目的、想いでこういうプログラムを立ち上げています。
――体験版をやり込んだ日本のゲームファンは、次の発表や体験できる場所を楽しみにしていると思います。本日はありがとうございました。