2016年6月17日(金)
『デウスエクス マンカインド・ディバイデッド』開発者インタビュー。周回プレイでより深く遊べる作品に【E3 2016】
スクウェア・エニックスから発売予定のPS4/Xbox One/PC用ソフト『Deus Ex:Mankind Divided(デウスエクス マンカインド・ディバイデッド)』。日本での発売も決定した本作について、ディレクター・Patrick Fortier氏にインタビューを行いました。
『デウスエクス マンカインド・ディバイデッド』は、カナダのゲームデベロッパーEidos Montrealが開発を手掛けるサイバーパンクアクション『Deus Ex』シリーズの最新作。2029年のサイバーパンクな近未来を舞台に、“オーグメンテーション(人体拡張技術)”による人間の機械化が引き金となって起きる陰謀が描かれます。
前作『Deus Ex:Human Revolution』(日本では『デウスエクス』というタイトルで発売)と比較すると、“オーグメンテーションが引き起こした負の側面”にフォーカスしいるという今作。
インタビューでは、本作の世界観についてや、前作から進化したポイントなどを聞いています。シリーズのファンはぜひチェックしてみてください。
アダム・ジェンセンが世界の陰謀に立ち向かう
――昨年のE3でも本作の情報が出ておりインタビューもさせていただきましたが、今年のE3ではどんな情報に注目してほしいですか?
昨年は、メカニックやゲームプレイに特化する形で紹介させていただきましたが、今年のE3では、本作の世界観に注目していただきたいと思い、いろいろと用意させていただきました。新しく公開した実写映像を見ていただけると、本作の世界観が伝わるのではないかと。
動画:Deus Ex: Mankind Divided ‐ The Mechanical Apartheid Trailer
――拝見しましたが、かなり衝撃的な内容ですよね。ゲーム内でも、いろいろな視点から人間とオーグメンテーション使用者たちの対立を描いているのでしょうか。
機械化されている人たちと普通の人々の間の溝というのは、この作品の中の一番の大きなテーマです。今作では、その対立を意図的に作り出している陰謀のようなものも描かれています。
――機械化してしまった人間は、二度と生身には戻れないのでしょうか。もしくは、生身に近いパーツをつけるなど、そういったこともできないのですか?
本作の世界では、まだ完全に生身に戻す、あるいはそれに近いようなオーグメンテーションに変えるといった技術がまだできあがっていないのです。機械が嫌だからといってそれを外してしまうと、生活に支障が出てしまう。
ただ、サイドミッションの中に、そういったことを考えている人が描かれています。ですが、実際に生身の姿に戻るということは事実上ありません。
――マルチエンディングを採用しているとのことですが、それはどのように分岐していくのでしょうか。
メインのストーリーはアダム・ジェンセンの物語としてしっかり用意されています。ですが、前作に比べて、どの選択肢を選んだかによって変わっていくドラマの幅が拡張されています。
選択肢によってエンディングが変わるんですが、物語そのものが変わるというよりは、世間がどう自分の選択肢を受け入れてくれたのか、あるいは受け入れてくれなかったのかなど、ゲーム内の社会に変化が生じます。
――いわゆるトゥルーエンディングのようなものも?
大半の人がこれがいいエンディングだと思うようなものももちろんあります。ですが、もしかしたら他の側面から見たら、それは必ずしもいいものであるとは限らないですよね。
その良し悪しをどう判断するかはプレイヤー次第ですが、どのエンディングにたどり着いたとしても、それは今までの選択肢の積み重ねによってできています。
ブラッシュアップしてゲームがより素晴らしいものに
――本作は海外での発売日が半年ほど伸びているのですが、どのあたりを一番気をつかってクオリティアップを進めたのでしょうか。
大まかなところに手を加えたというよりは、開発チームでプレイした際にゲームの進行ペースに気になる点があったため、そこを調整するのに時間が必要でした。
細かいところですが、ここは会話が多すぎて飽きてしまうだとか、新しい要素が全然出てこない箇所があるとか、そういった部分をブラッシュアップしています。それができたおかげで、ゲームをより素晴らしい作品にすることができました。
――では、もうほぼ作業は終了しているのでしょうか。
今はもう、最終的なバグの精査と修正をしています。本当に最終段階まできているので、もうこれ以上は発売が遅れることはないでしょう。
オーグメンテーションが進化し遊び方も変わる
――ゲームとしての特長を教えてください。
主人公のアダム・ジェンセンは、自身が望んだわけではない形でオーグメンテーションを施されていますが、前作に比べると自分の状況を受け入れ、身体機能をより自在に使いこなせるようになっています。そのことは、ドラマだけではなくアクションの形でも実感できると思います。
また、X軸だけでなくY軸――つまり、高さの概念を大事にしています。そうしたアクションも本作ならではの特長と言えるでしょう。
――前作では、1つの目的地に対していくつものルートを選ぶことができました。そこに高さの概念が加わったことで、より選択肢が増しているということでしょうか?
その通りです。オーグメンテーション自体も進化していて、それもより選択肢を広げる一因になっています。
例えば、“イカロスダッシュ”というスキルがあります。これは瞬間的に移動するものなのですが、これを上に向けて使うことによって、普段は行けないようなところにも行けるようになっています。
せっかくイカロスダッシュに触れたので加えて言うと、このスキルは移動だけではなく敵を倒すことにも使えます。プレイヤー自身の発想で、オーグメンテーションで得た能力はいろいろな顔を見せてくれるでしょう。
――まったく戦わずにゲームを進めていくことも可能なのでしょうか。
前作では強制的なバトルがありましたが、本作にはありません。ですので、プレイヤー次第ではそうした進め方も可能になっています。ただ、かなり難易度は高いと思いますよ(笑)。
――前作では、バッテリーの関係でオーグメンテーションを生かすことができない状況もありました。
そうしたエネルギー管理についても進化しています。本作ではオーグメンテーションに2つの種類があります。1つは使うことでエネルギーが減っていくもの。これはマップで拾うことができるアイテムなどでエネルギーを補充していく必要があります。
もう1つは、クールダウンの時間はあるものの、補充なしで使うことができるものです。こちらは比較的自由に使うことができると思います。前作に比べると、オーグメンテーションを使える機会は増えています。
――本作で初登場となるオーグメンテーションはありますか?
今回一番特長的なのが、アダム・ジェンセンの左腕に組み込まれた“ガンアーム”と呼ばれるいくつかのオーグメンテーションですね。その中でも主なものが“テスラ”、“ペプス(衝撃波)”、“ナノブレード”の3つです。
本作では、銃を持ちながら“ガンアーム”を使うことができるようになっていますので、側面に回ってきた敵などに即時に対応できるようになっています。これによって、流動的なプレイを実現しています。
“ペプス”はいろいろな使い道があります。敵を倒すのはもちろん、重い障害物をどかすためにも使えます。こちらに投げられたグレネードをはじき返すことも可能です。相手の武器を弾き飛ばし、無力化することだってできます。無力化してから一旦隠れてステルスで進んだり、そのまま倒したりと、使い道はさまざまです。
こうしたスキルの切り替えなどは、メニュー画面を開くことなく行うことができます。
――ここまでのお話ですと、本作ではアクション要素が大変進化しているように思えます。前作では、探索パートとアクションパートがはっきりと分かれるような形になっていました。本作ではどうなっているのでしょうか?
メリハリをつけるために、どちらかのセクションに特化したパートはありますが、前作に比べると、2つのセクションをよりシームレスに楽しんでもらえるようになっています。本作に搭載されている“Dawn Engine”によって、それが可能になっています。
――先ほどマルチエンディングのお話もありましたが、周回プレイはどのように遊べるのでしょうか。
今作で新しく追加した要素なのですが、入手した装備などを引き継いで新しいゲームを始められるようになっています。1回目のプレイでは選ばなかった選択肢などを見ることもできるので、何度も遊べると思いますよ。
そもそも1周のプレイだけでは、すべてのオーグメンテーションを入手することができないようになっています。選択肢次第で手に入るものが変わってくるので、2周目のプレイで別の道を選んで手に入れることができます。
自分のやりたいようにゲームを楽しんでほしい
――本作の年代設定が2029年とのことですが、初代の『Deus Ex』(PC/日本では2001年に発売)の時代(2052年)につながっていくような要素はあるのでしょうか。
直接的なつながりはまだありません。ですが、開発チームも初代の『Deus Ex』が大好きなので、初代で描かれている要素が失われないようにしつつ、独自の物語を作っています。
よくチームのシナリオライターが言っているのですが、歴史というものは“勝者”によって書かれるものです。もしかしたら、2052年にもアダム・ジェンセンは存在していて、ただ誰もそれを知らなかったというだけかもしれませんね。
――Patrickさんのお気に入りの本作の楽しみ方を教えていただけますか?
何か1つのやり方にこだわるのではなく、状況に即して臨機応変に進めていく遊び方が好きですね。わりと非殺傷系の武器を中心に使っている気がします。本作にはさまざまな分岐が用意されていますが、一度選んだ選択肢に沿って進めていくのが好きです。
ゲームを制作する立場ですから、必然的にいろいろなアプローチでゲームを進めていますが、そのどれも楽しく遊べています。
――最後に、日本での発売も決定しましたので、日本のファンへのメッセージをお願いします。
去年の時点ではまだ日本語版の発売を発表していなかったので、日本の皆さんに届けられることをお知らせできて、今とても幸せです。
そして、ゲームの中ではいろいろなテーマが描かれていますが、そういったものを通して自分自身についても何か新しい発見が出てくるんじゃないかと。なによりもクリエイティブに、自分のやりたいようにゲームを楽しんでいただければと思います。
Deus Ex: Mankind Divided (C) 2016 Square Enix Ltd. All rights reserved. Developed by Eidos-Montreal. Deus Ex: Mankind Divided, Eidos-Montreal, and the Eidos logo are trademarks or registered trademarks of Square Enix Ltd. SQUARE ENIX and the SQUARE ENIX logo are registered trademarks of Square Enix Holdings Co. Ltd. All other trademarks are property of their respective owners.
データ
- ▼『デウスエクス マンカインド・ディバイデッド』
- ■メーカー:スクウェア・エニックス
- ■対応機種:PC
- ■ジャンル:ARPG
- ■配信日:未定
- ■価格:未定