2016年6月18日(土)
12月に発売されるPS4用ソフト『キングダム ハーツ HD 2.8 ファイナルチャプタープロローグ』。本作を手がける安江泰Coディレクターへのインタビューを掲載する。
本作は、完全新作のプレイアブル作品『KINGDOM HEARTS 0.2 Birth by Sleep -A fragmentary passage-』と、新規HD映像作品『KINGDOM HEARTS χ Back Cover』、そしてHDリマスター作品『KINGDOM HEARTS Dream Drop Distance HD』の、『キングダム ハーツ III』へ繋がる3作品を収録したスペシャルパッケージだ。
インタビューでは、“Electronic Entertainment Expo 2016(E3 2016)”会場で体験できるデモ版についてのエピソードから始まり、製品版の仕様や開発時の秘話などをお聞きしている。発売を楽しみにしているファンはぜひご覧いただきたい。
――E3会場ではどのような反応がありましたか?
今回ゲームをプレイしているのを後ろから見ていました。喜んだところで「ああ、こういうところがよかったのか」とすごく実感できました。例えばアクアがスロープからスライドするアクションで興奮しているユーザーを見て、地形を作るヒントになりました。
ゲームを開発していると、日々ちょっとずつクオリティアップをしていくので、ゲームの進化が実感しにくいことがあります。ゲームイベントなどで出すトレーラーやデモは間隔あけて出すので、ゲームの進化をもっとも実感してくれるのはファンの方。去年のイベントの情報と比べて、例えば「このキャラはこうなった」といろいろ意見を言ってくれるファンがいて、とても参考になりました。
――『キングダム ハーツ』は海外でも人気の高いIP。日本との反響に違いはあるのでしょうか?
どちらも心の中の熱量は高いのですが、海外の方がわかりやすく声に出す方が多いですね。生放送のスクウェア・エニックスプレゼンツでゲーム内容を説明した時は、目の前の『KH』ファンから熱い声援をいただき、励みになりました。
――会場でプレイしているのは後ろから見ていて、ボス戦で苦労されているようでした。難易度はどれくらいを想定されているのですか?
難易度については、テスターを含めて開発スタッフもプレイして調べています。実はあれでもだいぶ弱く調整した後なんですが、弱過ぎると逆にユーザーの工夫がいらなくなってしまい、記憶に残らないので少しクセがあるぐらいがいいと思っています。
重要なのはメリハリですね。気持ちよくサクサク倒せる敵もいれば、少し工夫しながら戦う強い敵をいれることが大事だと思います。
――アクションのうまさで攻略していくというよりは、クセをうまくついてクリアして行く形になるのですか?
両方いけると思います。ボス戦であれば回避やガードをして反撃を狙うというストイックな戦い方でもいいですし、いろいろな技をカッコよく使いたい人であれば、シュートロックや魔法などいろいろ連発して、派手に倒していくスタイルも可能です。
そこは好みによると思いますが、いろいろな人が楽しめるバトルを目指しています。
――これまでのタイトルは難易度を選べましたが、本作でも用意されるのでしょうか?
今回は体験版デモということだったので入れてないのですが、難易度設定はしっかりできるようにします。
――『キングダム ハーツ 0.2 バース バイ スリープ -フラグメンタリー パッセージ-(KH0.2)』についてお聞きします。“キャッスル・オブ・ドリーム(『シンデレラ』の世界)”が追加されていますが、やり込み要素は用意されているのでしょうか?
あそこのエリア固有のことでいうと、探索を重視しています。地形全体に高低差があり、入り組んでいるので、2段ジャンプなどのアクションを駆使して宝などを探すことが楽しいマップになっているかと。
あとは、まだ詳しくお話しできないですが、チャレンジ要素やコレクション要素も用意しています。アクアのファンには特に喜んでいただけると思います。
――マップが縦に広がっているようですが、こちらは安江ディレクターの趣味ですか?
そうですね、縦に広がるのが好きだったりします(笑)。スケール感が出ますし、高い所にいけるのは興奮できる要素でもあるので、そういうマップも積極的に入れていきたいと思っています。
上に特別仕掛けがあるわけではなくても、高い所に登って下を見ることで次に向かう先がわかる。それを見せてあげる手段でもあるんです。
――シリーズ初のPS4タイトルになりますが、ハードが現行機に変わったことでやれたことはどこですか?
わかりやすいのは、グラフィックのディテイルアップだったり、リアルなライティングやシェーダー処理です。『KH』のキャラはアップで見ると布地がみえるくらいすごく細かく描かれています。顔も普通に綺麗なんですが、よくよく見るとディテールがわかるほど。
さらにライティングに凝ることで、場面ごとに感じて欲しいムードを変えることができたり、ユーザーを誘導できたりします。宝箱があるところに光を置いて、見せてあげるようなことが可能なんです。
あとは、今回のデモでシンデレラの城へ渡る道でもやった、破壊表現。大量のパーツをバラバラに動かすのは大変なんですが、迫力が出るのでやっています。リアルな表現だけではなく、『KH』シリーズならではの表現でも試行錯誤しています。
――あえてリアルではない描写にしているところもあるわけですね。
そのままリアルにすると『KH』らしくなかったり、ディズニーさんの映画らしくなかったりします。リアルだけでなく、ファンタジー要素を盛り込んでいくことに注力しています。
――それは本作だけでなく、『キングダム ハーツ III』でも同様ですか?
そうですね。現実を再現するだけなら、参考になるものはあるのですが、そうではないので、表現の方向性やリアルとファンタジーのバランスが難しいのです。あとはキャラや背景という、違う要素の相性を調整するのもポイントです。
――プレイしてUIが少し小さくなっているように感じたのですが……。
解像度があがっているので、そこまで大きく表示しなくても見えるようになっています。
――キャラクターですが、アクアともう1人出てきましたが、シリーズのキャラは他に出てくるのでしょうか?
可能性としては、他のキャラが出てくることもありえますね。そこについてはゲームをプレイした際に見ていただきたいです。
――『KH0.2』に注目が集まっているようですが、海外のファンで楽しみにされているのは『0.2』なのでしょうか?
ネット上で確認している範囲ですと、『KH0.2』について気にされている方が多いですね。ただ、『KH0.2』はこれまでプレイできなかった新作ですし、『KHIII』と同じ技術で作っているので注目されるのは当然だと思います。
作品として見ると、『KINGDOM HEARTS Dream Drop Distance HD』は大幅に進化している。『KH0.2』の暗く切ない雰囲気と、『KINGDOM HEARTS Dream Drop Distance HD』の明るい雰囲気はいい意味でコントラストがきいていると思うので、ぜひ『Dream Drop Distance』も遊んでいただきたいです。
さらに、新規HD映像作品『KINGDOM HEARTS χ Back Cover』ですが、これまでの『KH』の中でも最高のクオリティに仕上がっているので、ぜひ観てほしいです!
――今出てきた『KINGDOM HEARTS Dream Drop Distance HD』の魅力を改めて教えてください。
『キングダム ハーツ』シリーズは動きが重要なので30fpsから『KH』シリーズ初の60fpsになっている所は注目ポイントです。それとこれまでのHDリマスターと比べてもキャラクターなどのグラフィックを大幅に作りなおしています。特にキャラクターは顔から指先まで相当綺麗になっています。
『KH0.2』のようにUnreal Engine4は使っていないのですが、これまでの素材を生かしつつ丁寧に描きなおしていて、鮮やかさだったり温かさのある表現になっています。
――『KINGDOM HEARTS χ Back Cover』のポイントは?
ソラがいる『KH』タイトルは、明るくハッピーな感じですが、『χ Back Cover』のキャラは複雑で人間ドラマがあり、感情を揺さぶられる内容になっています。
――開発は『KH0.2』や『KHIII』と同様の作り方をしているのですか?
同じエンジンを使っています。方向性は近いですが、Unreal Engine4はまだまだバージョンアップしているので、今後『KHIII』は表現の幅が広がってきます。
ワールドごとにグラフィックの方向性を変えつつ、さらにPS4の豪華な感じが出るようにしています。チームは巨大化しつつあるのですが、これまで以上に個人の専門性が増して、エキスパートがいるようなチームになっています。
――具体的にはどういったところからそう感じるのでしょうか?
例えば水や波をリアルに動かしたり、リアルな雲をソフト側で生成したり、髪の毛の繊維の表現を作ったり。超ふわふわな鳥の羽やタンポポの綿を作っているスタッフもいます(笑)。アート的な才能と、理系的な才能のコンビネーションでいいものができていくのを感じています。
――『KH0.2』の話に戻ります。こちらではアクアの物語が中心になると思っているのですが、他のキャラが主人公になるようなエピソードは今後あるのでしょうか?
『KH0.2』はアクアがメインのストーリーで、アクアが闇の世界で何をしたのかが描かれています。ただ、アクアは他のキャラクターと繋がっているので、他のキャラについてまったくふれないわけではありません。
――出展されている体験版は“キャッスル・オブ・ドリーム(『シンデレラ』の世界)”に行くまで遊べましたが、製品版ではいろいろなワールドに移動しながら冒険していくのでしょうか?
闇の世界にディズニーの世界がいくつか飲みこまれており、その中を冒険できます。各ディズニー作品の世界観に合わせて独自のゲーム性を用意しており、謎解き要素をはじめ、ハラハラしてスピード感のある要素を用意しています。
――体験版では一度にいろいろな仕様が開放されていく仕様でしたが、製品版ではもう少しゆるやかに開放されていくのでしょうか?
『KH0.2』は『バースバイスリープ』から続く物語なので、アクアはいろいろなアビリティを覚えている強いキャラクターです。ただ、一番最初からすべてを持っていると、ユーザーにアビリティを紹介するタイミングがないので、『KH0.2』の始まりの部分である体験版のエリアでアビリティやシステムを習得するようにしました。
シンデレラの城では、時間が止まっているので、止まった時間を戻すことでアビリティやシステムを開放します。
――高いところまで敵がついてくると印象だったのですが、どれくらいまでついてくるのでしょうか?
今回はAIが進化していて、敵が自分の地形を認識しながら移動します。なので、アクアが高い所に乗ったら積極的にジャンプして追っかけてくることがあります。
――ではこれまでにないような、たくさんの敵と戦うのでしょうか?
たくさんの敵もそうですし、スロープになっている屋根のうえなど、いろいろな場所で戦えます。
――ボスバトルのようなものはどれくらい用意されているのでしょうか?
体験版でプレイしていただいたシャドウが群れとして動く“デビルズウェーブ”は、中ボスくらいのイメージで、それよりも強いボスはいます。
――最後にファンにメッセージをお願いします。
『KH 2.8』は『KHIII』の技術を使った完全新作のプレイアブルワールドとムービー、また大幅にクオリティアップしたHDリマスター作品が含まれている豪華なパッケージです。開発スタッフ一同、今回のE3での熱い反響には励まされ、その気持ちに応えたいので、これまでの『KH』の中でも最高のクオリティを目指してゲームを仕上げていきます!
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