2016年6月21日(火)
『初音ミク Project DIVA Future Tone』違和感ない操作性と描写を実現した秘訣とは? 新要素や魅力を紹介
セガゲームスから、6月23日に配信されるPS4用ダウンロードタイトル『初音ミク Project DIVA Future Tone』。本作を手がける開発者へのインタビューを掲載する。
『初音ミク Project DIVA Future Tone』は、アーケードで展開している高品質のリズムゲームをPS4向けにベストアレンジしたタイトル。本体アプリケーションの『Prelude』と、追加コンテンツである『Future Sound』、『Colorful Tone』で構成されている。本体アプリは無料配信で、追加コンテンツは各3,900円(税別)。
話を伺ったのは、大崎誠統括プロデューサーと豊田勝プロデューサー兼ディレクター。配信を控える『初音ミク Project DIVA Future Tone』の特徴、尽力したところなどを、開発者自らプレゼンしているので、ぜひご覧いただきたい。
▲豊田さん(左)と大崎さん(右)。 |
AC版を補完させるつもりで開発
――本体アプリケーションの『Prelude』を無料配信という形式にした理由を教えてください。
豊田:最初に言いたいのは、『Prelude』は体験版ではなく、無料で遊べる製品版ということです。トロフィーやオンラインラインキングにも対応していますし、ゲーム内容をしっかり遊べるものなので、気になっている人はまずプレイしていただき、おもしろければ追加コンテンツをぜひ買ってください。
『Future Sound』と『Colorful Tone』は、楽曲とモジュールが入ったパックとなっています。『Future Sound』はPSプラットフォームで発売された『初音ミク -Project DIVA-』、『初音ミク -Project DIVA- F』シリーズの楽曲を、一方の『Colorful Tone』は、『初音ミク Project DIVA Arcade』や3DSで展開した『Project mirai』シリーズの楽曲を中心に収録しています。
大崎:今回の位置づけとしては、アーケードで稼働している『初音ミク Project DIVA Arcade Future Tone』の永久保存版です。100万人以上がプレイをし、愛されたゲームから220曲、340着を超える衣装を楽しめます。
――『Prelude』には『Weekender Girl』と『1/6 -out of the gravity-』が収録されています。こちらを選ばれた理由、基準はあるのでしょうか?
▲『Weekender Girl』:Music by 八王子P/Lyrics by kz |
大崎:無料で配布するソフトに楽曲を載せること自体、なかなか難しいところがあるのですが、関係者の方にご理解いただき、我々の意思に乗っていただいたために実現できました。
あわせて、皆が知っている曲であり、『初音ミク -Project DIVA- F』系のフラグシップになっていたものと、『Project mirai2』で入れた曲にしたかったという意図があります。
豊田:収録できた要因としては、クリエイターの方々にご賛同いただけたことが大きいです。
▲『1/6 -out of the gravity-』Music & Lyrics by ぼーかりおどP(noa) |
――順番が逆になりますが、タイトルが開発された経緯は?
大崎:アーケード版は2010年6月23日に稼働しました。ただ、アーケード版は部品の故障やユーザー数などの理由で、いつかは撤収されてしまうものです。そのため、残したかった、補完したかったという意図があります。
一方でアーケード版を超えている部分もあります。AC版は720ピクセルですが、PS4版は1080ピクセルのうえに、60フレームを確保しています。
豊田:一部の楽曲はイージー/ノーマルやエクストラエクストリームはありませんが、220曲あって基本5種類の難易度なので、一度ずつクリアするだけでもかなりの時間、楽しめます。
さらに、カスタマイズモードが大幅にパワーアップ。これまでは髪型とモジュールがセットだったのですが、髪型だけを変えられるようになっています。
大崎:『Project mirai』で服だけチェンジできる“おきがえ”システムを搭載したところ、すごく好評でした。本作ではこれだけの物量があるからぜひやりたいと思いました。ただ、組み合わせがすごく多くて大変でしたね。
豊田:あと、曲によっては6人出るものもあります。AC版では、3人までしかカスタマイズてきなかったのですが、全員を変えられるようになっています。体験会でさわられたユーザーからはかなり好評でしたね。
プラクティスやコンフィグで遊びやすさを実現
――リズムゲーム以外でこだわったところはどこでしょうか?
豊田:シリーズで初めてプラクティスを実装しました。開始時間を設定でき、さらにワンボタンで戻れるので、つまる場所だけを何度も練習できます。さらに、開始する場所をプレイ中に動かすことが可能。うまくなる施策として取り入れたので、ぜひ活用してもらいたいです。
また、サバイバルコースを作りました。規定の曲数を1本のライフでクリアできるかに挑戦します。コースの楽曲は各難易度からチョイスされたもになっており、コースをクリアできればその難易度をマスターしたと言えると思います。
髪型カスタマイズ機能とサバイバルコースは『Future Sound』と『Colorful Tone』両方を買うと追加される機能です。
――やりごたえもあるというわけですね。
豊田:サバイバルコースでは曲をまたいでコンボが持続するので、上級者はかなり白熱するのではないかと。星10マスターコースのオンラインランキングが配信後にどうなるのか、期待しています(笑)。
また、全曲のオンラインランキングに対応しています。こちらは3939位まで確認できるようになっています。
――他にこだわっている要素は?
豊田:AC版ではPV観賞にて、画像を撮影することができました。それをさらに快適にして対応させています。PVを一時停止できるようになった他、△ボタンで簡単に撮影できるので、トコトンこだわれます。
撮影したものはSHARE機能と同じくライブラリーに保存されるので、共有できるうえに、ゲーム内でのロード画面に設定できるようになります。まさに自分好みにゲームを染められる要素です。
▲『DECORATOR』を撮影して、ローディング画面に設定する豊田さん。 |
――シリーズで初めてコンフィグに対応していますね。
豊田:AC版は同時押しが特徴で、コンシューマ版とは操作性が異なります。慣れるまで苦労する可能性があるため、コンフィグを実装し、同時押しを設定できるようにしました。
AC版の独自要素としてスライダーがあります。PS4版では左右のスティックとL/Rにアサインしています。さらにタッチパッドと、モーションセンサーにも対応させました。ただ、誤認識しないように、設定の切り替えが可能です。個人的にしっくりくるのはスティックでの操作ですね。
大崎:メロディアイコンをコンシューマのものにすることを想定していました。ただ、同時押しをしにくいと感じる人もいるであろうということで、いろいろやれるようにしました。その結果、パターンがどんどん増えましたね。
豊田:同時押しについては、サポートする機能を用意しています。初めて遊ばれると、どのボタンを押せばいいのか、パッと見た時に難しいので判定をサポート。ボタンの数さえあっていればライフゲージは減らないようになります。
さらに、同時押しで指定されたボタンは画面に表示されるようにもできます。これを使って、徐々に慣れてもらい、うまくなっていってください。ただし、難易度エクストリーム以上ではサポートはありません。そこに挑む人はサポートしなくていいだろうという判断ですね。
アーケードの感覚は残しつつ、見た目からはわからないこだわりが随所に
――本作で特にこだわったのは?
大崎:アーケード版の要素を収録するのは当たり前です。今回、ソフトの容量は追加コンテンツをあわせると25ギガを超えます。昔はダウンロードソフトでそこまでの容量は許してもらえませんでした。
ただ、発売するのであれば、要素を入れたうえで、もっとも綺麗なものを出したいと考えました。パッと見ると、AC版と同じだと思われるかもしれませんが、メニューアイコンなどはすべて書き直しています。デザイナーはかなり悶絶していましたね(苦笑)。でも、そこが弱いと何をしていいかわからないので、実は大事な要素なんです。
豊田:そうですね。そういうこだわりはかなり入っています。
大崎:最初はなかったことや、仕様書に入っていないことが後から後から増えていきました。最近は仕様を減らすことが多いので、正直言って現在のゲームの作り方ではないですね(笑)。
豊田:アイコン配置だけでなく、ボタンの反応にもかなりこだわっています。ボタン入力の操作方法や遅延対策について、ケリがついたのは3月くらい。かなり対策を入れて、アーケードをプレイしている人が遊んでも違和感がないかと。モニターの遅延だけでなく、そもそものソフト側で遅延しないように調整するのが大変でした。
大崎:アーケードと同じ感覚で遊べないとダメですからね。
豊田:あとは、操作方法は違うのですがスライダーの気持ちよさはかなり再現されています。
大崎:個人的には、『Project mirai 2』の長押しの音がすごくいいんです。例えると、ドリフトでタイヤが音をたてるような感じ。それを再現したかったんです。
――追加コンテンツが『Future Sound』と『Colorful Tone』の2つにわかれた理由は?
豊田:これまでの家庭用版に収録されていた曲を、買い直すことに抵抗がある人もいると考えました。そこでわけたという理由もあります。
あとは、アーケード版のユーザーにアンケートをとった際、回答者の多くが若い方だったんですね。1つにまとめて値段を高くすると、敷居が上がってしまうので、わけて価格を安くしたいと考えました。
大崎:違う理由になると思っていたら、同じでした(笑)。
豊田:どちらかしか買わない人がいるかもしれないのですが、連動要素もあるので、両方買っていただいても損はしない内容だと思います。
大崎:本音を言ってしまうと、手間だけを考えたらもっと高い値段をつけますよ(笑)。かけた手間と値段を比べた時に「見合っているのか?」と会社から聞かれました。普通ならば通るわけがないことですが、でもそこは支持していただいたファンへの感謝と、残したいという意思があり開発しているので、買いやすい価格にしました。
「もとのソフトがあるから移植しやすいのでは?」と思われているかもしれないのですが、描画についてはすべてPS4に向けて描き直しているのでかなり大変です。
――すべて描き直しているのですか?
大崎:描写を変えているのに、同じに見えるようにするのは本当に大変でした。開発初期はうまくいかないことがありました。色をチェックする際におかしな色味になっているのを見て、手作業で修正する。
パッと見は同じになっているのですが、根っこはまったく違います。そんな手間をかけなくてもいいというところまで手を入れているんです。
豊田:同じという意味で髪の動きは同じですが、髪型カスタマイズがあるので、パラメータはすべて直しています。そのままだと、モジュールと干渉してしまうものがあったので、手を加えました。相当大変なことなんですが、実は秘訣があるんです。全体の数を数えないことと、好きな人が作業をすること。それがこの値段で出せるポイントです(笑)。
――ダウンロードコンテンツはあるのでしょうか?
豊田:アーケード版でも楽曲を追加していくので、それを配信していく予定です。
大崎:誤解しないでいただきたいのは、PS4で出したからといってアーケード版が終わるわけではない。モジュールをふくめて、何回かにわけて追加していきたいです。
――最後に読者にメッセージをお願いします。
大崎:ぜひ長く遊んでほしいです。アーケード版はかなりの台数が市場に出ているのですが、それでも近所にないという報告が届いています。そんな人にも届けられるような価格にしています。
このソフトが入っているPS4が愛おしくなるように作りました。先ほども出ましたが、セレクター1つ見ても飽きないです。所有欲を満たしてもらえると思うので、ぜひさわってほしいです。
豊田:初音ミクが確立されていること、『Project DIVA』シリーズのゲーム性が確立されていることは当然です。そのうえで、初心者がプレイした時に楽しめて、うまくなれる。この作品のいいところにちゃんとさわれる内容になっていると思います。気になった人は、『Prelude』で本作にさわってほしいです。
大崎:期待は裏切りません。むしろ、正直やりすぎました。
『初音ミク Project DIVA Future Tone』注目記事
(C) SEGA / (C) Crypton Future Media, INC. www.piapro.net
記載の商品名および社名は各社の登録商標です。
データ
- ▼『初音ミク Project DIVA Future Tone Prelude』
- ■メーカー:セガゲームス
- ■対応機種:PS4(ダウンロード専用)
- ■ジャンル:アクション
- ■配信日:2016年6月23日
- ■価格:無料