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2016年7月4日(月)

SIEJAの盛田厚氏が振り返るE3 2016とは? PS VR、そしてPS4の日本国内での展開も語る

文:電撃オンライン

 都内某日、ソニー・インタラクティブエンタテインメント・ジャパンアジア(SIEJA)のプレジデント、盛田厚氏にお話を伺うことができた。盛田氏が考える国内でのPlayStationの展開とは? より一層の注目を集めるPlayStation VRの未来とは? そうした内容を存分にお話いただいたので、ぜひ注目してほしい。

『SIEJA』
▲SIEJAプレジデント、盛田厚氏。

――4月に“ソニー・コンピュータエンタテインメント”から“ソニー・インタラクティブエンタテインメント”へと社名変更がありました。これまで多くの人に認知されている社名を変えての再出発となるわけですが、この社名変更にはどのような意図があったのでしょうか?

 社名変更というより、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)とソニー・ネットワークエンタテインメントインターナショナル(SNEI)の“統合”というのが、まず第一だと考えています。“統合”した結果として名前が変わったということです。PlayStation 3が発売されてPlayStation Network(PSN)を展開し始めたとき、PSNの運用はソニー・コンピュータエンタテインメントのなかでやっていました。

 ただ“ネットワークサービス”というビジネスを本格的にやっていくことを考えると、ソニーグループ全体でやったほうが、より我々の考えている戦略をうまく推進できるんじゃないかと考えたのが、SNEIを設立した理由のひとつでした。

 今はPSNの売り上げがすごく拡大しておりますし、PS4も非常に好調。このタイミングなら、今度は逆に一緒にやったほうが、より効率的にできるのではないか。あるいは、もっと我々がやりたいPlayStationとネットワークサービスの展開を、強力に推進できるのではないかと考えて統合したことが第一でした。

 その意味では収まるべきところに収まったというのが、今回の統合のお話になります。そういった経緯があるため、今回の社名変更はこれから我々が進んでいく道を示すためのものだと思っています。

 SCEという名前は長年親しんだものですが、その状況に合わせて名前が変わっていくのはいいことだと考えています。

――SCEは「コンピュータでエンターテインメントを作っていく」という社名でしたが、今回のSIEにも、将来のビジョンが入っているということでしょうか?

 そうですね。我々のやりたいことを端的に表している名前だと考えていますし、5年後10年後にやっぱりそういう名前がすごく相応しいと思っていただけたら嬉しいですね。

――社名変更から3カ月ほどが経ちましたが、社内での大きな変化はありましたか?

 やはりネットワークとしてのビジネスとPlayStationが一緒になったことで、よりスピーディに展開できるようになりました。また、グローバルで議論する機会も多くなって、そうした意思統一や調整が可能になったので、グローバルな一体感はさらにできてきたと思います。

――アメリカの市場が大きくなってきていて、発言権もアメリカの意見が大きくなっていると思います。本社もアメリカになりました。そうした状況で、日本向けの対応については、どんな影響があるのでしょうか?

 ヘッドクォーター(本社)をアメリカに置いたという話ですが、元々SNEIのヘッドクォーターはアメリカにありました。

 SCEは日本にヘッドクォーターがあったのですが、統合するにあたってどこに本社を置くかとなったとき、ネットワーク関連のテクノロジーが強いアメリカに置くというのが、1つの判断としてありました。

 ビジネスをするとき、市場の大きいアメリカ、あるいは欧州のことをどう考えるかというのは、グローバルでしっかり議論する必要がありますしね。ただ、それと「発言権が強い」というのは若干違うと考えています。

 もちろん、大きな市場に対して議論するのは重要なポイントですが、日本の市場がおざなりになるかというとそんなことはありません。やはり日本の市場というのはPlayStationにとって非常に大事です。

 そこでどういう展開をするか、どんなことをするのが一番ユーザーのみなさんに喜んでもらえるか、という考え方は変わっていません。むしろそういうことをするにあたり、グローバルな協力を得られるということが、今回の体制の良い面でもあります。

――アジアのなかでも組織は変わったのでしょうか?

 組織変更はビジネスを推進していくなかの適切なタイミングで行っているので、とくに今回の統合の話があったから、それに合わせて大きく変更したということはありません。

 日本とアジアのPlayStationビジネスをいかに拡大していくのかということは、組織変更前後でも変わっておらず、むしろインフラ面でサポートしてもらいやすくなったと考えてます。急にやることが変わるわけではありません。

――今年の“E3 2016”では、PS VRの大規模展開はもちろん、『God of War』や『Days Gone』などの新規タイトルに加え、『CoD IW』や『Horizon』の実機プレイ映像など、非常に見どころが多かったように思います。盛田さんがE3で一番注目したポイントはどこでしょうか?

 見どころはやっぱりタイトル群がこんなにそろった! というのが一番だと思うのですが、個人的に言うと、一番最初に出てきた『God of War』が、ものすごい大歓声で受けとめられた場面。待ってくれている方たちがたくさんいるんだと実感しましたね。

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▲PS4用ソフト『GOD OF WAR』。

 あと自身の立場も含めてになりますが、日本の大型タイトルの発表が、今回アップデートも含めてありましたので、そこがユーザーのみなさんにどう評価されるのか、すごく気にしていました。その点もすごく評価されているようでしたので、うれしかったです。

――『バイオハザード7』の発売日発表はとにかく盛り上がりましたね。カンファレンスも毎年のように盛り上がりが加速していることに対して、そのなかでも日本のタイトルが中心になっているというのは、うれしいですね。

 そうですね。私も本当にそう思います。

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▲『バイオハザード7 レジデント イービル』。

――E3でのプレスカンファレンスに加え、日本では盛田さんからの日本向けのメッセージ映像が配信されました。これまでにはなかった施策だと思いますが、どのような意図があってのことでしょうか?

 PS VRの発表自体はGDC 2016ですでに行われておりましたが、今回のE3では正式な発売日を発表しました。

 発売日や価格、どんなタイトルが出るか、どのような形で展開していくかなどを、日本の皆様にしっかりお伝えするのが、映像施策の意図ですね。

――なかなか予約できなかった人も多いようですが、PS VRの反響はいかがですか?

 まず今回予約できなかった方に対して大変申し訳なく思っています。我々も準備してきたのですが、それを上回る勢いでした。

 当日、私も何店か見させてもらったのですが、あんなにたくさんの方たちに予約しよう、体験しようと思っていただけたことが、非常にうれしかったです。

 PlayStationの新しいプラットフォームを発売するときは、いつも我々はドキドキしながら朝お店を見に行くんですけど、今回同じような盛り上がりがあったということは、本当にうれしかったですね。

 どのようなやり方がいいかというのは内部でも議論してきたのですが、このPS VRというものは、まずちゃんと体験していただいて、「こういうものだ」と理解されたのち、予約の判断をしていただくのが一番いいと思っています。PS VRはおかげさまですごく盛り上がっていて、E3でもたくさんブースがありました。

 ただ、あまり盛り上がり過ぎると“ブーム”になり、いろんな方たちが参入してくると思います。もちろん市場が活性化するという良い面もあるのですが、ブームになり過ぎると“飽き”がきたり、あるいは体験した方が「VRってこんなもんだったのか」とか「もう十分」だと思われてしまうのではないかという懸念もあります。

 そう思われないように、大事に展開していくというのが我々のなかにある考えです。単純に今年の売り上げだけを考えるのなら、やり方もまた違ってくると思います。

 そうではなく、我々はVRには、まだまだ無限の可能性があると考えています。その1歩目となる今年は、“とりあえず買っておこう”という形ではなく、とにかく“ちゃんと体験していただきたい”と考えておりましたので、こうした形を選ばせてもらいました。

『SIEJA』
▲PlayStation VR。

――PS VRはこれからどんなプロモーションをし、誰に買ってほしいのかというビジョンを教えてください。

 本格的なプロモーションはもちろんこれからになります。まだ具体的なゲームの価格も出ていませんしね。ただ我々は、PS VRの展開はすでにスタートしていると考えていて、まずはちゃんと体験していただく場を少しでも広げていくということが大切だと思っております。

 現状はお店も絞った形で展開していますが、これからはそれらをもう少し広げていく、あるいはもう少し大掛かりな展開のイベントも含めて、出来るだけユーザーの皆さんに触っていただくチャンスを作っていくのが、第一のプロモーションだと考えています。

 次はコンテンツも含めて、ユーザーのみなさんに具体的な見せ方をしていくという段階になると思いますが、これは2つあると思っています。

 1つはPS4をすでに楽しんでいただいている方に向けて、PS VRを購入いただくためのプロモーション。もう1つは、PS VRの今後も含めたゲーム以外の楽しみ方をお伝えし、これを期にPS4も合わせて購入いただくためのプロモーションです。私はPlayStation 4で楽しめるゲーム以外のエンタテインメントの幅を広げていきたいと考えています。

 その展開をより端的にわかりやすくお伝えできるのがPS VRだと考えています。「PS VRで将来こんな楽しみ方ができるようになるなら、PS4を買っておこうか」と感じていただけるようにしたいですね。両方を、しっかり行っていきたいと考えています。

――一般層にも認知されるような手段やタイミングというと、発売日付近のCMなどになるのでしょうか?

 そうですね。ただこれは本当に難しいのですが、この体験をいかに映像や言葉で伝えるかという課題があります。やはり体験とセットになって、いろいろなプロモーションが連動していくべきと思っています。

――PS VRの本質は実際に体験しないとわからないと思いますが、そこを必ずわかったうえで手に入れてほしいということでしょうか?

 そうですね。今年は単純に数を最大化するというより、PS VRの楽しみをいかに多くの方に伝えるかが大事です。体験したうえで購入し、実際に使って楽しまれた方に、その体験をさまざまな手法で多くの方に伝えていただくのが、今年やらなければならないことだと考えています。

――具体的なタイトルは、いつごろ発表されるのでしょうか?

 一番適切なタイミングがいつか、検討中です。タイトルの開発がもう少し具体化してきて、我々の展開も見えてきたところで発表するのがいいと思っています。

――PS4は5月22日の段階で、全世界累計実売台数が4,000万台を突破しました。この原動力となったのはどのようなものだとお考えですか?

 やはりPS4の魅力を引き出せるタイトルがたくさん出てきていて、それらをユーザーさんに評価いただいているのが1つ。2つめとして、ネットワークとの親和性の高さがすごく受け入れられています。

 それを楽しみたいという方が本当にたくさんいたというのが、ワールドワイドの状況だと思っています。

――日本の市場で言うと、9月から大型タイトルの大攻勢が始まる印象ですが、プラットフォームとしてはどんなことをしていくのでしょう?

 大型タイトル、あるいは日本市場に欲しいと考えていたタイトルは、ほぼすべて発売もしくは発表されました。正攻法ではありますがタイトルラインナップとその楽しさを訴求していかなければならないと思っています。

 もう1つは、昔はゲームを遊んでいたけれど、今は仕事が忙しかったり、家庭を持ってゲームから離れてしまった方たちに、もう一度ゲームを楽しんでもらうこと。

 ゲーム機がほとんどの家庭にあって、学校のクラスでは大半の子どもがゲーム機を持っていて遊んでいた年齢層の方にもう一度遊んでもらうために「ゲームってこんなに楽しいんだ」あるいは「楽しい体験ができるんだ」ということを訴求していく。

 これを「できないことが、できるって、最高だ。」というキャンペーンとして去年から継続していますが、今年もコンソールゲームの魅力をきちんと伝えていきます。

●動画:CM「できないことが、できるって、最高だ。」篇

――今後もタイトルを軸にやられていく予定ですか?

 まずはタイトルが軸だと思っています。ただプレイするだけではなく、一緒に遊ぶ、あるいは見て楽しむ、それから参加するという、また新しい楽しみ方が出てきていますので、そこは今年も訴求していこうと考えています。

――PS4の新バージョンである“ハイエンドPS4”の存在がアンディ・ハウスさんから語られましたが、今お話しできることは何かありますか?

 アンディが言った以上のことはとくにありません。今までのコンソールゲームのサイクルは、5~6年くらいで、新しいジェネレーションが出てくる流れでした。

 でも今は、スマホも含めて、速いサイクルでテクノロジーが進化したり、新しいプロダクトが出てきたりという状況です。

 そのなかで、PS4ハイエンドモデルを出して、PCのユーザーやコアなゲーマーの方たちに訴求するのが、今回の意図だと思っています。

 我々の新しい試みではありますが、ゲームをさらに高いクオリティで楽しみたい方にとっては、いい提供ができるのではと思います。

――マイクロソフトさんも“Project Scorpio”というハイエンドXBOXを発表しましたが、そちらでは下位互換があるようです。ハイエンドPS4はこれまでのハードより“速く”なるものだと思うのですが、互換という点はどうなるのでしょうか?

 アンディが話した“ハイエンドPS4は新しいジェネレーションではなく、PS4というプラットフォームのなかでのハイエンド機なので、当然今楽しんでいるユーザーが遊べなくなるということはありません。PS4のタイトルは今までどおり全部遊べるようにします。違うプラットフォームが出るというわけではありません。

――ハイエンドPS4はいつ発売されますか?

 もちろん言えません(笑)。

――TGSでは毎年カンファレンスを実施されていましたが、今年も予定されていますでしょうか?

 まだ最終的に決定はしていません。今年は大型のタイトルが夏から続々と出てきますので、TGSのタイミングは、ポイントの1つだと考えています。

 ただ、TGSは何かをやる1つの“点”ではなく、この大きな流れのなかでユーザーさんに「こんなに楽しいゲームがたくさんあるんだ」ということを伝える1つの大きなイベントと位置付けていますので、そこはちゃんと展開しようと考えています。

 最終的に、そのなかでカンファレンスをやることが一番盛り上がると考えればやりますし、違う方法が適切だと思ったらやらないかもしれない。それはトータルのなかで考えたいと思っています。

――今年のPlayStationはすごく盛り上がると思っているのですが、それらを期待しているゲームファンに向けてメッセージをお願いします。

 私は2016年頭に、今年はすごくいい環境が整うので、全力で走ろうと考えていました。みなさんの期待に応える自信はあるので、それをいかにユーザーのみなさんに一番うまく伝えられるかということを、ずっと考えています。

 ぜひ楽しみにしてほしいですし、期待していただきたい。早くPlayStation 4を買って、楽しんでいただきたいなと思います。

 PlayStation Vita(PS Vita)の展開もしっかりやります。PS Vitaは去年『マインクラフト』によって子どもたちの層へ大きく広がり、我々が本当にやりたかったことが今達成できている状況です。

 その方たちに継続的に楽しんでいただく、あるいはさらに層を拡大させていくことが、今年のもう1つの重要なポイントだと考えています。そこも思いっきりやっていきます。

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