2016年7月27日(水)
『フィリスのアトリエ』アーティスト鼎談。長年愛される『アトリエ』サウンドの秘密とは?
コーエーテクモゲームスから、9月29日に発売されるPS4/PS Vita用ソフト『フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~』。本作のアーティストインタビューをお届けします。
『フィリスのアトリエ』は『アトリエ』シリーズの最新作。主人公の少女・フィリスが一人前の錬金術士を目指すため、不思議な世界を旅して物語を紡いでいく錬金術再生RPGです。
シリーズ屈指の広大なフィールド、選んだ道によって変化していく物語、旅先の環境に合わせた衣装の登場、規格外のアイテムを作り出す超弩級調合など、新たな要素がふんだんに盛り込まれています。
お話を伺ったのは、本作でボスバトル曲のボーカルを担当した悠花(ゆか)さんと、『アトリエ』シリーズ第1作の『マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~』からシリーズにかかわっている阿知波大輔さんです。
岡村佳人プロデューサーも参加した鼎談形式で、本作のサウンドの魅力に迫ります! 記事の最後に、悠花さん、阿知波さんのサイン色紙プレゼントもありますので、お見逃しなく!
▲左から阿知波さん、悠花さん、岡村プロデューサー。サウンドに関する興味深いお話をたくさん語っていただきました。 |
※インタビュー中は敬称略。
あるキャラクターの心情を表現したボスバトル曲
――まずは皆さんの自己紹介からお願いします。
悠花:ボスバトル曲『Ressurection』のボーカルを担当させていただきました、悠花と申します。よろしくお願いします。
阿知波:そのボーカル曲の作詞作曲と、BGMで主にキャラクターテーマを中心に作曲しました、阿知波です。
岡村:『フィリスのアトリエ』のプロデューサーを担当しています岡村です。今まではディレクターをしていました。
阿知波:何か違うんですか?
岡村:肩書が違うかな(笑)。やっていることは同じです。
阿知波:悠花さんは今回はボーカルですが、『アトリエ』シリーズ自体は元々楽器で参加していたんですよね。
悠花:はい、最初は『エスカ&ロジーのアトリエ ~黄昏の空の錬金術士~』のアニメの時に、何曲かオーボエを演奏していました。それから、『ソフィーのアトリエ ~不思議な本の錬金術士~』ではコーラスでもBGMに参加させていただきました。
なので最初にお話を聞いた時に、今回も楽器かコーラスでの参加かと思っていたんですが……。
岡村:最初に「今回はボーカルで!」と話を聞いた時はどう思いました?
悠花:とにかくびっくりして……不安も大きかったですけど、オファー自体はすごく光栄だったので、できる限りの力で頑張ろうと、引き受けさせていただきました。
――ちなみに悠花さんをボスバトル曲の歌唱担当に選んだ理由はどこだったのでしょうか?
阿知波:先ほどもお話にありましたが、悠花さんは以前コーラスでも『アトリエ』シリーズの楽曲に参加していただいていたので、ボーカリストとしての力量はある程度把握できていました。
また、『Ressurection』は単なるボスバトル曲ではなく、あるキャラクターのイメージに寄ったボーカル曲なので、歌っている方もキャラクターのイメージが重なる人がいいということで、声質などを考えて、悠花さんがいいんじゃないかと決めました。
●『Ressurection』試聴
悠花:歌詞も、じっくり見るとキャラクターのことがわかるようになっているんですよ。
ただ激しいというだけの曲じゃなくて、そのキャラクターのことを知った状態で歌詞を読み解くとすごく深みがあって、「なるほど」と思えることがあると思います。
阿知波:そうですね。ちなみにボスバトル曲になりますが、戦闘のバックに歌詞入りの楽曲がかかるのは、まずは盛り上げるためというのが1つ。
あと、ガストでいえば『アルノサージュ ~生まれいずる星へ祈る詩~』みたいに、劇中音楽というか、実際にゲームの世界で鳴っている歌であるというパターンもあるんです。
今回はその中間くらいのイメージです。ゲームとまったく関係ないこともないんだけど、ゲームの世界で聞こえている音でもないと。あるキャラクターの心情を表現したものになっているので、歌詞もシナリオを吟味しつつ、仕上げていきました。
悠花:ちなみに作詞をしたのは?
阿知波:クレジットは女性名になっていますが、すみません、僕です(笑)。Twitterなどでも公表しているので、ご存じの方も多いと思いますが。
アーティストの意外な一面を出したい!?
――悠花さんは、曲を初めて聴いた際にどんな感想を抱きましたか?
悠花:『アトリエ』シリーズらしいほんわかした曲かと思っていたら、まさかのバトル曲で! 最初に音源を聴いた時に「おおっ!」って声がでちゃいました。
普段、自分で作曲もするんですけど、そういう時はだいたい静かなファンタジー系な楽曲が多いので、大丈夫かなと少し心配でした。
阿知波:もちろん、悠花さんの普段のスタイルが穏やかなことはわかっていたのですが、僕はその人のイメージとは違う曲を歌ってもらって、びっくりさせることが趣味なので(笑)。
ゲームのキャラクターでも、ギャップを見せると奥行きが出るじゃないですか。ちょっと不遜ではありますが、そういったことをアーティストさんでもできるかなと。悠花さんのファンの方にも、こういう世界も持っているんだと思って楽しんでもらえるのではと思います。
岡村:悠花さんの例だけでなく、『アトリエ』シリーズでは声優さんでも、その人が今までやってきたキャラクターとは違うイメージのキャラクターを演じてもらうことも多いんです。それで新しいおもしろさや魅力に気付いてもらえるので、わりと声優さんファンに好評だったりします。
阿知波:一応自己弁護しておくと、当てずっぽうでギャップを出すように選んでいるわけではないですよ(笑)。試聴サンプルをいろいろ聴いて、「いけるな」という裏をとってからやっています。ある程度は石橋を叩いている部分もあるんです。
岡村:どんな風になったかは、ぜひ試聴して確認してみてください。
阿知波:“あるキャラクター”のことがわかる“歌詞”……と言ってしまったので、大深読み大会が始まるかもしれないですね(笑)。それはそれで楽しんでいただければと思います。
歌い手のこだわりと歌詞にこめた想いとは?
――『Ressurection』を収録した時のエピソードは何かありますか?
悠花:確か、最初は1番だけ音源をいただいて、その時にキーが2種類用意されていました。どっちがいいか相談を受けて両方録ってみたんですよね。
阿知波:その時点では1コーラスしかないですし細部は違うんですが、「こういう歌ですよ」ということはわかる感じにしたくて。先に2種類のキーを聴きたかったのは、よりキャラクターのイメージに近くなるのはどちらか確認したかったからなんです。
悠花:その時はまだビジュアルもなくて想像しながらだったんですが、あとでビジュアルを見て「なるほど」と思いましたね。
その後の収録では、私からもキャラクターのイメージから「こうしたほうがいいんじゃないですか」といろいろ提案させていただいて、今の方向に落ち着いた感じです。
岡村:収録の際は、これまで数限りなく『アトリエ』シリーズの収録をしているスタジオで、エンジニアさんも勝手知ったる仲なので、阿吽の呼吸みたいなのはできていましたね。
阿知波:時間をかけるべきところはかけて、だけど打ち上げの時間はちゃんと確保してと(笑)。
悠花:私もこだわる部分があって、何度も収録し直してごめんなさいと思ったら、「これくらい普通だよ」って言ってくださいました。
阿知波:いや、むしろ短かかったくらいです(笑)。
――ちなみに、その“こだわったポイント”とはどんなところだったのでしょう?
悠花:あるキャラクターの資料を拝見した時、自分が思っていたイメージとちょっと違う部分があって、そこにグッときたんです。
具体的に言うとバレてしまうのであまり言えませんが、例えば、強さの中にも儚さがあるみたいな、ギャップの部分を表現できたらいいなと思い、そこにこだわりました。
阿知波:曲の題名が『Ressurection』なんですが、個人的な傷だけでなく、自然災害で受けたダメージだとか、いろいろな痛みから復活、復興するというイメージで作りました。
何かダメージを受けることがあった時に、その災いや相手など、原因に対して憎しみを向けたり、撃退しようと考えるよりも、新しいものを作ることで傷を和らげていきたいという、思いを込めています。
また、僕自身『アトリエ』シリーズで作詞する場合、どこかに錬金術のイメージをあてはめているんですが、今回はそのつくる力=錬金術で、痛みや傷を回復させていこうというイメージで作りました。
悠花:すごい、初めて知りました(笑)。
阿知波:事前に悠花さんにはそこまで詳しいことは言っていないんです。イメージがあったところで、それが歌詞に表現できていなければないのと同じなので。
悠花:歌詞の読み方は、ある程度まかせていただけた感じですよね。もちろんフォローはしてもらっていましたが。
阿知波:そうですね。作詞したのは僕で、僕の中には僕のイメージしかないのですが、悠花さんがこの歌詞を読んで、自分の経験や考えを投影することで、僕が考えていなかったフィードバックが得られて、それがまた魅力になっていくと思うんです。
せっかく魅力のある方を起用するのであれば、その人自身の経験を反映させると、いいものができるんじゃいかなという思いがありましたね。
――サウンドについて、岡村プロデューサーから何か注文はしたのですか?
岡村:そこら辺はもう長い期間阿知波さんとは一緒にやっているので、全体的な方向性を決めたら、あとはそこに合う形で基本おまかせしています。だいたい、いつもそうですよね。
阿知波:『アトリエ』シリーズのサウンドの根底にある部分を長い間担当させてもらっているので、変えないところは変えず、新しくするところは新しくチャレンジていくという形でやっています。そこは信頼関係でうまくやっていると思います。
悠花:お2人のお付き合いはどれくらいになるんですか?
阿知波:ほぼ13、4年以上になります。僕はずっとサウンドなんですが、彼はみるみる出世してえらくなっていきました(笑)。
現在、僕はガスト(現・コーエーテクモゲームス)を退社していますが、その後も色々とお仕事をいただいている状況であります。今後ともよろしくお願いします。
岡村:そこはもちろん、むしろお力を借りている状況ですので、こちらこそお願いします!
『哀 戦士』が“バックに歌がかかる戦闘”の原点!?
――日本語歌詞の歌がボスバトル曲になっているのも、『アトリエ』シリーズならではと言えますよね。
阿知波:僕が子どものころに、“バックに歌がかかる戦闘”というものに強烈なインパクトを残してくれたアニメがあって、それが劇場版『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』での『哀 戦士』だったんです。これは日本独自のよさかもしれませんが、本当に衝撃でした。
僕がそのアニメに影響を受けて以来、自分でも何回も“バックに歌がかかる戦闘”に挑戦してきましたが、いまだに「よし、大成功だ!」と思えたものはないですね。
岡村:『イリスのアトリエ グランファンタズム』のバトルでオープニングの曲を流したら、すごく燃える戦闘になったものがありました。演出的には紙一重みたいなものでしたが、うまく状況と楽曲がハマってくれましたね。
阿知波:アッシュ戦ですね。あれは確かに一番しっくりきましたね。でも、その感じ方も人それぞれで、ストレートに「恥ずかしいからやめて」と思う人もいるんです。あとは、英語や造語だったら許せるとか。
そういった意味では、今回の『Ressurection』はキャラクターの心情をがっつり日本語で歌うという、かなりゲームに寄った曲になっているので、ちょっと踏み違えると恥ずかしく感じる人もいるかもしれませんね。
そのあたりがうまくいっているかどうかは、ぜひゲームを遊んで確かめてもらいたいなと思います。
悠花:ちなみに私、大抵のRPGでボス討伐にすごく時間がかかるんですよ。『フィリスのアトリエ』でも、ずっと自分の歌を聴きながら戦わないといけないのかな(笑)。
阿知波:そこはフルコーラスが終わるあたりで倒せるように頑張ってください!
――ボス曲を作る際に苦労する点はありますか?
阿知波:まずはボスそのものについて、どういう敵で、そいつとどういう経緯で戦うことになって、最終的にそいつはどういうやつなのか、果ては動くのか、飛ぶのか、地に潜るのか。あらゆることを根掘り葉掘り聞きますね。それでうんざりされると(笑)。
岡村:細かく聞くのは大事なことですからね。
悠花:動くかどうかも聞かれるんですか?
阿知波:動くかどうかはすごく重要なんです。例えば、動かないボスでロック調にしてしまうと合わないので、そこは壮大な感じを出さないといけません。
戦闘において、モンスターはもう1人の主役みたいなものなので、音楽にもそちらの目線を表現してみたりだとか、いろいろな選択肢があるので、戦闘曲作りは楽しくもあり難しくもありますね。
悠花:曲を作る時点ではボス戦の動画を見ることができないので、大変ですよね。歌う時もいろいろ想像しながら歌っていました。ちなみに私が想像していたのは、紫色な感じで霧かかった背景です。
阿知波:いわゆる異空間ですね。困ったときの異空間(笑)。『アトリエ』シリーズの場合、背景もシナリオの都合で変わったりすることもあります。
普通のRPGでは絵を先に作るからなかなかないんですが、『アトリエ』シリーズではシステムの整合の結果シナリオが変わることがままあります。
岡村:システムでやりたいことにシナリオをあわせるという作り方をずっとしてきたので、そこは仕方ないところではありますね。結果ギリギリでシナリオが変わって、バカでかいボスなのに戦うのは屋内で、みたいなことも……。
阿知波:そこで異空間ですよ(笑)。
その人が暮らしている場所を反映できるように
――今回は旅がテーマですが、旅を意識した楽曲作りはされましたか?
阿知波:BGMで主に担当したものがキャラクターテーマなのですが、『フィリスのアトリエ』では気候や風土が違っているところに暮らしている人がフィリスにかかわるキャラクターとして登場するので、キャラクターたちが住んでいる場所をちょっとでもテーマ曲に反映できるように気をつけています。
もちろん街や各エリアのBGMもありますので、キャラクターテーマはそういうところで変化をつけて飽きないようにさせています。
岡村:今作のBGMは、基本的には晴れ渡った空のもとで駆けていくようなさわやかな感じになっているので、ゲームのビジュアルと一緒に楽しんでいただきたいです。
阿知波:あと僕が言う必要はないかもしれないですが、『ソフィーのアトリエ』でも昼と夜でシームレスにアレンジが変わっていました。今回もさらに進化したシステムが盛り込まれています。
サウンドトラックCDでは味わえない、ゲームの中でダイナミックな変化を楽しめると思いますよ。
岡村:もちろん、サントラにはそれぞれのアレンジの完全版が入っているので、それはそれで楽しんでいただけるといいですね。
悠花:CDとして曲だけ聴くのと、ゲームをプレイしながら画面とあわせて聴くのではかなり違いますよね。
阿知波:そうなんです。テレビゲームの音楽がおもしろいのは、いろいろなものが複合されて楽しめることなんですよね。
ビジュアルがあって、背景があって、キャラクターの声があって、さらに効果音があってと、全部が一体となって楽しめる。そこまではアニメや映画でもそうなんですが、ゲームではそれらの複合的な要素が、人によってすべて違うんです。
プレイごとに自然に生成されて、複合したものを1つの作品としてとらえるなら、二度と同じ作品には巡り会えないんですよね。それが絶え間なく生成されていくのが、ゲームの魅力だなと考えています。なので、そこをぜひゲームで楽しんでほしいと思っています。
広大なフィールドで旅の雰囲気を味わえるゲームビジュアル
――サウンドとは離れますが、キャラクターのビジュアルやゲーム内のイメージ画像を見た印象はいかがですか?
悠花:キャラクターデザインが『ソフィーのアトリエ』と同じイラストレーターさん(ゆーげんさんとNOCOさん)なので、雰囲気は同じになるのかなと思ってたんですが、想像以上に全体の雰囲気が華やかでカラフルなのがとても印象に残りました。
とくにフィリスちゃんの衣装がとても華やかでかわいらしいので、その華やかさも歌で表現できたらなと意識していました。
岡村:女性の方に華やかでかわいいと言っていただけるのはうれしいですね。
悠花:見た目はかわいいと思っていたのですが、設定ではフィリスちゃんはあまりおしゃれじゃないと聞いていたんですよ。お姉ちゃんのリアーネはおしゃれなんですよね? 実はフィリスの服はお姉ちゃんが見繕っていたり……。
岡村:設定的な面は、ご想像におまかせします(笑)。ゲーム内では、単純に買って手に入れる衣装もあれば、イベントなどでプレゼントされる場合もあったりと、いろいろです。
悠花:いろいろな衣装を自由に変えられるんですね。
岡村:はい、変えられます。なので、ロケーションにあった衣装は用意されていますが、皆さんの好きな服でプレイできます。衣装にはそれぞれ固定の効果があるので、効果も考えて選んでいただければと思います。
悠花:フィリスが背負っているリュックもかわいいです。
岡村:旅らしさを演出するためにすべての衣装にリュックを用意していて、それぞれデザインがちゃんと違っています。フィリス自体の衣装は要素が少なめになっていて、リュックで個性が出るようにしています。
悠花:ゲーム内の画像もすごくきれいなので、フィリスちゃんがどんな衣装でどんなところを旅していくのか、実際にプレイするのが楽しみです。
岡村:今回は旅がテーマなので、フィールドも含めてビジュアルには力を入れています。
悠花:生放送(ニコニコ生放送 第1紀行のこと)では、オープンワールドではないと言っていましたね。
岡村:そこはちゃんと言っておかないと(笑)。ただ、実際オープンワールドではないのですが、それに近い広さはあります。
以前は全体マップがあって、拠点に入ると小さなくくりのフィールドを動けるという感じでした。今回は全フィールドが完全に地続きでつながっていて、かつ街もフィールドの中に一体化した状態ですので、その広さは確実に実感できると思います。
阿知波:歩いてみたくなるマップですよね。僕はサウンドなので、ビジュアル面は公開された画面しか見ていませんが、今回はとにかく雰囲気が明るいです。
RPGという性質上、悪いやつをやっつけにいくものだったり、責任のある旅が多いじゃないですか。そういった物語は『アトリエ』シリーズでは縁がないですが、こういう明るくてきれいな景色を、ピクニックのように歩けるというのはいいなと思いました。
岡村:まさにそういった雰囲気を目指しているので、だいぶ頑張っています。ロケーションは旅情感があるものを用意しています。
悠花さんと阿知波さんが思い入れのある『アトリエ』シリーズは?
――先ほどからお話を伺っていて思ったのですが、悠花さんはかなりゲームがお好きなんでしょうか。
悠花:はい! もともとゲームが大好きで、もちろん『アトリエ』シリーズもプレイしています。シリーズ全部はプレイできていませんが、実は『マリーのアトリエ』のころから楽しませていただいてます。
――『アトリエ』シリーズで思い入れのある作品はありますか?
悠花:個人的には『ソフィーのアトリエ』に現在進行形でハマっています。一緒に協力してプラフタの身体を作ったりして、人々のつながりがすごく感じられて素敵な物語なんですよ。
自分でレシピを思いついていく要素だとか、パズルのように調合していくのがすごくおもしろいなと思っています。
――阿知波さんはいかがですか?
阿知波:僕は、個人的にはやはり最初の『マリーのアトリエ』ですね。『アトリエ』シリーズがすごいなと思うのは、ゲームの見た目は変わっていても、システム的な部分の根幹は19年経った今でも変わっていないことです。
考えてみると20年近くシリーズが続いていて、その根幹を変えず受け継がれているというのは、本当にユーザーさんに支えられてきたからなんだなと強く思いますね。
悠花:当時は珍しかったですよね。女の子が主人公で、かといって男性向けではなくて、女の子も遊んで楽しいゲームは。それから約20年、こんなに長くシリーズを出し続けているゲームって他にないですよね。
阿知波:大体1年に1作ですもんね。そんなに出たら普通は飽きますよ(笑)。
なのにこのシリーズが続いているのは、やはりファンの皆さんに支持をいただいているからだと感じています。これまで支えていただいた人に恩返しするためにも、新しいものを用意して、それをまた楽しいんでいただければいいなと思っています。
長年愛される『アトリエ』シリーズのサウンドの魅力
――『アトリエ』シリーズは音楽の評価もとても高いですよね。シリーズならではのサウンドの魅力はどこにあると思いますか?
阿知波:『アトリエ』シリーズのサウンドは、郷愁的な音楽とか民族的とかいろいろ特徴はあるんですが、それをやっているゲームは他にもいっぱいあるんですよ。
じゃあなぜ高い評価をいただけているのかと考えたら、やはり音楽がやや前に出ているからだと思うんですね。僕はこれを意図的にやっていて、キャラクターを通して楽曲が主張しているんです。
基本的にそういうのはディレクターさんやプロデューサーさんは嫌がる人が多いんですが、そこは岡村さんの寛大な心で許してもらっています(笑)。
悠花:ゲーム画面とBGMのバランスが他のゲームと違いますよね。音楽がしっかり耳に残りますし、ゲーム内の風景を見てその場所のBGMをすぐ思い出せたりします。そういった意味でもサウンドが注目されているのではないでしょうか。
阿知波:これくらいのスケール感のゲームとしては、かなりメロディが立っている部類ですね。いわゆる映画などのフォーマットよりはアンバランスになっていて、それがゲーム音楽らしいちょうどいい具合になっているのかなと思います。
岡村:出過ぎなものは調整していますが、音楽の聴きどころもたくさんあるので、うまく混ぜ合わせています。
阿知波:公式サイトなどで先にBGMを公開すると、よく「『アトリエ』シリーズらしいね」と言われますが、これが一番うれしいです。アイデンティティというか、キャラクター性みたいなものが音楽にもあるといいですね。
ただもちろん“らしさ”だけではなく、そこに新しいものを盛り込んでいかなければいけないと思っています。
――阿知波さんの曲といえばどこかコミカルな曲も印象深いです。
阿知波:コミカルな曲は過去作でいろいろ作ってきましたが、1つの作品で1曲だと間に合わないですね。いろいろアレンジはしているんですが、毎回毎回ギャグシーンのBGMが足りないと言われます。
そういう時は、1曲の中でもアレンジで変化していくものを作って、曲が始まるところを変えてバリエーションを作っています。
悠花:BGMの数もすごいですよね。例えばバトルでも楽勝、通常、強敵で変わるじゃないですか。さらに時間でも変わったり。
岡村:BGMの数については、このタイトルはサウンドを評価していただいているので、変えるべきところではないと思っています。毎回サウンドチームから数が多すぎるって怒られますけれども(笑)。
阿知波:多すぎるね(笑)。せっかく作ったのにほとんど使われていなかった曲があって、結構切ない気持ちになることもあります。
そのうち、イベントを作るスクリプターのリーダーが、きちんと全部使っているかをチェックしてくれるようになりました。何回使ったかもわかるので、あまり使っていない曲はもっと使うようにしましょうと。
岡村:そういった工夫も、“飽きない”というところにつながっていくと思います。イベントが多くなると、どうしても使いやすい曲を使ってしまいがちなので。
阿知波:それは仕方ないんですけどね。それならそれで、こういう曲が好まれるのかと、次の作品にもいかされるわけですし。
悠花:でも『アトリエ』シリーズって、特定の場所に行かなくてもクリアできるじゃないですか。そうするとユーザーさんによっては、一部のBGMしか聴いていない可能性があるわけですよね。
阿知波:BGMだけでなく、そこのビジュアルも背景も敵も全部ですね(笑)。
岡村:もちろん、プレイスタイル的にはそのようなプレイもできるようにしていますが、最近の作品ではできる限り用意したものは楽しんでほしいと思って、なるべく多くの場所へ行けるように誘導はしています。
阿知波:昔から『アトリエ』シリーズはユーザーが自由に遊べるようにしていて、どこへ行っても何かが起こるというスタイルなんですが、これを数珠つなぎでフラグを踏む形にすれば、余裕で大作RPG1本分の量はあるんですよ。
一時期はもったいないから、全部フラグを管理して踏んで行くようにしようかという話もあったんですが、どうしても自由度との綱引きになるんですよね。
自由度が高いことでイベントが無駄になることもあり得るのですが、最近ではノウハウがたまってきて、なるべく全部を楽しんでいただいたうえで、自由度が確保されている流れになっていると思います。
岡村:やはり『アトリエ』シリーズならではのゲームの流れがあって、なんでもできるけどしっかり盛り上がりもあって、1つのお話として整合しているというのが理想ですね。今回の『フィリスのアトリエ』では、それがかなり実現できているのではないかと思います。
――それでは最後に、『フィリスのアトリエ』を期待して待っているファンにメッセージをお願いします。
悠花:ボスバトル曲を歌うという大役で緊張マックスな状態なんですけど、ボス曲ならではのカッコよさだけじゃなく、強さの中に儚さや弱さを表現したつもりなので、ぜひそこを聴いていただきたいなと思います。
繊細な歌詞だとか、間奏のギターソロやベース運びとか、聴きどころはたくさんあると思います。私がどこまで表現できたか不安なところもありますが、一生懸命頑張ったので、まずはゲームで聴いていただいて、気にいったらサントラCDでゆっくり曲だけを聴いていただければうれしいです。
阿知波:これまでのユーザーさんのご意見をもとに、チューニングしたり、新しいアイデアを投入したりしているので、ぜひお買い上げいただいて、プレイした感想を聞かせていただければと思います。
おもしろかったところの他、不満なところとか、ここはこうしたほうがいいんじゃないのというアイデアもいただいて、ユーザーさんと一緒に作っていく感じでシリーズが続いていければと思います。ぜひ、よろしくお願いします。
岡村:おかげさまで『ソフィーのアトリエ』は好評で、今作はだいぶハードルが上がってるなと感じています。そうした中でも、期待に応えられるものを目指して頑張っています。
サウンド面も、旅をテーマにした曲を取りそろえていますので、BGMで旅情感を感じてもらえると思います。ぜひ楽しんでいただけたらありがたいです。
悠花さん、阿知波さんのサイン色紙をプレゼント
悠花さんと阿知波さんから、インタビューを読んでくれた電撃オンライン読者に寄せ書きサイン色紙のプレゼントをいただきました。
1名に抽選でプレゼントしますので、ご希望の方は下記のフォームに必要事項を記入のうえご応募ください。締め切りは2016年8月11日24時です。
▲悠花さんが描いてくれたかわいいフィリスのイラスト入りです。 |
『フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~』注目記事
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