2016年8月6日(土)
2011~2013年にインディーズゲームシーンを盛り上げた『彼岸花の咲く夜に』、『ファタモルガーナの館』、『ワールド エンド エコノミカ』。
この3作品を第1弾タイトルとして、フリューがインディーズADV移植レーベル“カタルヒト”を立ち上げました。
1人のADV好きとして、カタルヒトの動向が見逃せない! ということで、本プロジェクトのプロデューサー・大地将さんにインタビューを実施。新レーベルの立ち上げ経緯や意図、タイトルの選定理由、配信頻度について語っていただきました。
▲カタルヒトのプロデューサー・大地将さん。 |
――新レーベル・カタルヒトを立ち上げた経緯と意図を教えてください。
大きくは2つあります。まずアドベンチャーゲーム/ノベルゲームの現状を見て、需要と供給が合っているのかな? という思いがずっとあったんです。
ADVを望む声は多いのに、制作する側もユーザーさんも、リスクを恐れてなかなか開発できないし、購入に踏み切れない。
そこで、すでに内容面で高い評価を受けているインディーズゲームを移植し、かつユーザーさんにも安価でさまざまな作風にチャレンジしていただけるよう、レーベルとして並べてみようと考えました。
そしてもう1つ。“一寸のゲームにも五分の魂”という思い。これは前職・前々職と、いわゆる管理する側にまわる前に、開発の現場作業をボロボロになりながらやっていたころから自分で実感していたことなんですが、どんな規模の小さいゲームでも、何も考えなかったら仕様ができるわけがないんです。
すべての仕様には、それを考えた人の魂が宿っている。もしかしたらそのスタッフの能力不足のせいでおもしろさが足りていないかもしれないけど、それでも何も考えないで作られていくものなんて1つもなくて、それをユーザーさんに評価していただく、覚悟を持って世に問うのが物を作るということなんです。
少なくとも自分はそう信じています。その究極にあるのがインディーズゲームで、商業作品ではないので、納期だったり予算だったりという、外部のしがらみから極めて解放された環境で、純粋に“表現したい”、“読ませたい”という思いで納得のいくまで作り込まれた創作者魂の結晶だと思うんですね。
荒削りかもしれないけど、超絶魂のこもったゲームがあるところにはあるんです。知らない人は多いけど、こんなにもスゴい結晶があるんだぞ、と。
その思いが先ほど言った1つ目の理由とかみ合った。読みたい人がいる、読ませたい人がいる。だったらそこをつないだら喜んでもらえるんじゃないかと。そう思って立ち上げたのが今回のレーベルです。
――レーベル名にはどのような意味が込められているのでしょう?
創作者たちが各々の作品に込めた“物語る魂”をより多くの人に届けたい。カタルヒトというレーベル名にはそんな意味があります。
カタルヒト公式サイトでは、そんな創作者たちの作品にこめた思いをインタビューという形で公開していく予定です。ストーリーの副読本として、また、読みたいタイトルを選ぶきっかけとして、彼らの声に耳を傾けていただけると幸いです。
――機種に3DSを選んだ意図を教えてください。また、他ハードやスマートフォンで展開する予定はありますか?
カタルヒトの意義として、普段インディーズADVに触れる機会が少ないと思われるユーザーさんに名作を紹介したいという意図が強くあったので、いわゆるライト層のユーザーさんが多いと思われる市場を選びました。
インディーズ市場で良作を探すのって手がかりが少ないし、まずダウンロードサイトにクレジットカードを登録して……みたいな手間もあるので、普段から慣れ親しんでいる人でないと相当にハードルが高いと思うんです。
なので、“インディーズゲーム”っていう存在は知っているし、たまにそこから名作がブレイクしたりするのも知っている、でもどれを、どこで、どう買っていいのかわからないって人はたくさんいるはず。そんな人たちにこそ、ぜひ試してみてほしいですね。
他プラットフォームを含む今後の展開についてですが、個人的にはすごく前向きです。でもいくらノベルゲームとはいえ、PCでごりごり動かしている物を3DSで再現するための手間が予想以上にかかってしまって(苦笑)。
実情を言うと、反響しだいですね。インディーズゲームの移植を望む声がたくさん後押ししてくれれば、今後も前向きに検討していきたいとは思っています。
――第1弾タイトルとして『彼岸花の咲く夜に』、『ファタモルガーナの館』、『ワールド エンド エコノミカ』の3タイトルを選んだ理由を教えてください。
当然、どのタイトルもここ数年のインディーズシーンを盛りあげた、インディーズ界隈の有名タイトルだからというのも理由としてあります。
それもあるんですが、この3作を最初に持ってきたのは、それぞれのタイトルの“テーマ性”が特に色濃く出ていると感じたためです。
これらの作品が強烈に描き出すテーマ性は、流麗な文章、綺麗なグラフィック演出の商業作品に劣るものではないな、と。今までインディーズゲームに触れてこなかったユーザーさんに「こんなスゴい作品があるんだぞ」とお伝えするのにふさわしいラインナップになったと思います
――大地さんが思う3タイトルそれぞれの魅力について教えてください。まずは『彼岸花の咲く夜に』からお願いします。
“いじめ”という、本当に難しい学校問題をテーマとした作品で、表現的にもかなり心にくる描写があったりもする、いわゆる問題作です。
人の心がけだけで簡単になくせるものではない“いじめ”という現象の原因を“怪談”や“妖怪”に置き換えることで、“いじめっ子”=悪を打倒して解決、といった安直な構図で描かずに、ホラーのエンタメ性を持ちつつ、テーマを深く考えさせられる内容となっています。
●【カタルヒト】『彼岸花の咲く夜に 第一夜』(07th Expansion)紹介映像
――7月27日時点では『彼岸花の咲く夜に』と『ワールド エンド エコノミカ』はそれぞれ第一夜とEpisode.1のみの配信ですが、第二夜とEp.2以降の配信はどれくらいの時期をお考えですか?
ちょっとまだ未定です。もちろん開発は進めているので未発表ってだけですが(笑)。
――続いて『ファタモルガーナの館』についてお願いします。
とある“館”を舞台に、各章ごとに異なったストーリーが語られる作品です。
すべての章で一貫して描かれる“主観の違いによる真実の違い”と、そこに起因して生まれる“悲劇”の物悲しさに胸を打たれ、館にまつわる登場人物の在り方には共感と、同情の涙を禁じ得ません。
作品の主題となるテーマは、ネタバレになってしまうので言いにくいのですが(笑)、ゲーム体験を説明しようとしても、言葉で説明できない――ぜひともプレイしてください! としか言えない感動体験ができるのも魅力じゃないかと思います。
全体としては陰鬱なテイストであるにもかかわらず、読み終えた時には、各章ごとの話の化学反応なのか、ゲームエンド時に気持ちよくて前向きな心になれる、筆舌に尽くしがたい体験ができる、そんなストーリーテリングをお楽しみください。
●【カタルヒト】『ファタモルガーナの館』(Novectacle)紹介映像
――『ファタモルガーナの館』はファンディスクである『Another Episodes』がありますが、こちらの移植の予定は?
ど~しよっかなぁ~? ……読みたいですよね?
――本編をプレイした人は読みたくなると思うので、ぜひ! 最後は『ワールド エンド エコノミカ』について教えてください。
“株式投資”という一見堅苦しそうなテーマを舞台としたタイトルですが、マネーゲームの世界でありながらも、“お金”を“夢をかなえる切符”と捉え奮闘する主人公たちの人間性や、少年漫画のような“友情・努力・勝利”という構図から、独特な爽快感のあるストーリーとなっています。
もちろん彼らを取り巻く現実は甘くはなく、主人公もいろいろな意味での成長を余儀なくされるのですが、その過程がまたワクワク、ゾクゾクさせてくれるんです。
本タイトルを第一部として、第二部、第三部と続く三部作になっているのですが、本当に、ぜひすべて読み切っていただきたい作品ですね。
●【カタルヒト】『WORLD END ECONOMiCA Episode.1』(Spicy Tails)紹介映像
――カタルヒトの作品配信頻度について教えてください。
現状、隔月リリースくらいのペースを考えていますが、これもユーザーさんの反応を見ながらですね。原作の味を損なうような移植はしたくないので、じっくり移植していきます。
――今回配信された3タイトル以外で、どのようなタイトルの移植をお考えですか?
今後の発表にご期待ください。
――最後に読者へメッセージをお願いします。
第1弾の3タイトルだけでなく、インディーズのアドベンチャーゲームには、ユニークで素晴らしい“作品性”や“テーマ性”をもつ宝物がたくさん埋まっています。
カタルヒトでこれらのタイトルを初めて知った! という方々には、ぜひともいくつかプレイしてみていただきたいですし、「これ知っているよ」「これはすごかった」という人には、ぜひ友だちにおすすめしていただけると大変うれしいです。
ダウンロード専用タイトルなので気軽に遊んで、広まってもらいたいです。カタルヒトを通して、皆さんにその魅力をご紹介していけたらと思っていますので、これからも応援よろしくお願いします。
(C)竜騎士07/07th Expansion
(C)Novectacle
(C)2011-2016 Spicy Tails
(C)FURYU Corporation.
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