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2016年7月25日(月)

電撃PSプレミアムイベントのインディーズステージを振り返る! もっぴん氏が語るゲーム作りに大切なコト

文:電撃PlayStation

 2016年7月24日に開催された“電撃PlayStationプレミアムイベント2016夏”。会場では、MCを務める声優の広橋涼さんのもと、豪華ゲストを招いたステージイベントが多数行われた。ここでは第1部となる“PlayStation×インディーズゲームステージ”の模様をお届けする。

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『電撃PSプレミアムイベント』
『電撃PSプレミアムイベント』

 このステージでは『Downwell』の開発者もっぴん氏とSIEワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏、そしてSIEで『人喰いの大鷲トリコ』や『GRAVITY DAZE』といったファーストパーティタイトルとインディーゲームのプロモーションを担当している北尾泰大氏を招いて、電撃PlayStation編集長・西岡美道とのトークショーが行われた。

『電撃PSプレミアムイベント』
▲もっぴん氏
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▲吉田修平氏(左)と北尾泰大氏(右)

貯金残高5000円の状態からリリース!? 『Downwell』開発秘話

 第1部のステージは、全世界でヒットを記録した日本初のインディーゲーム『Downwell』についてのトークからスタート。まずは、開発者のもっぴん氏自らが『Downwell』の内容を解説してくれた。

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▲横スクロールではなく、下方向へ攻撃しながら進んでいく斬新なアイデアと、何度も繰り返したくなる中毒性が世界的に評価された『Downwell』。

 もっぴん氏の解説の中で、本作の主人公名が“Downwell太郎”であることが判明。これは、Twitterで適当に答えたら定着したそうで、冗談交じりに語るもっぴん氏が印象的だった。

 話題はそのまま開発の経緯へと移り、もっぴん氏は最初から『Downwell』を作ろうとしていたわけではなく、何でもいいからゲームを作りたかったと語った。創作のきっかけとしては、尊敬するインディースタジオのVlambeerが1週間に1本ゲームを作る“1週間1ゲーム”(game-a-week)というやり方を記事に書いており、それを読んで作り始めたとのこと。

 最終的に13本目となる作品で、下へ潜っていく『Downwell』の原型が生まれたそうだが、これは狙ったものではなく、偶然に思いついたものだと語っている。

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▲自らのゲーム制作を語るもっぴん氏。上半身だけのキャラが歩き回るゲームなど、思いついたアイデアを1週間に1本ゲームとして形にしていたそうだ。

 『Downwell』のサウンドはEirik Suhrke氏とJoonas Turner氏というインディーゲームで有名な2名が手掛けているが、これは昨年のGDC2015でノミネートしたときに、その場でVlambeerの開発者と合う機会があったことがきっかけだという。

 開発中の『Downwell』をJoonas氏に見せたところ、「おもしろいゲームだけど音がショボいね。俺がサウンドを担当してあげようか」と言われ、サウンドを任せたそうだ。それまでは、全部もっぴん氏1人で作っていたことに、会場のゲスト陣も驚きを隠せずにいた。ちなみに、音楽に関するオーダーは基本的に相手に任せていたが、1点だけ「白黒の画面はリアルな音だと合わないので、音質を意図的に下げてほしい」と頼んだとのこと。

 ほかにも、ステージではインディーデベロッパーと資金の問題について触れられていた。本作の開発期間は1年と3~4カ月という期間だが、これは資金が尽きかけたためマスターアップしたという事情もあるようだ。インディーゲームは上司からの催促もなく、いつまでも開発し続けることができる代わりに、どうしても資金繰りの問題が出てくると語るもっぴん氏。彼自身も『Downwell』のリリース前は限界まで作り込んでいたが、貯金残高が5000円まで減ったことでリリースに至る決意をしたようだ。

 北尾氏は「すでに開発初期の段階で、ゲームとして完成していたように見えた」と『Downwell』の感想を述べると、もっぴん氏は下に行くというギミック自体は決まっていたが、1本のゲームにするには内容が少なかったと回想。GDCでノミネートしたあとは商品にするため、ステージや敵を追加していたと語った。吉田氏によれば、もっぴん氏が尊敬するVlambeerもコアの部分を完成させるのは早いが、肉付けが丁寧だそうだ。

 さらに、話は進み『Downwell』に登場するアイテムに関する話に。なぜ、りんごや寿司(まぐろ)といったアイテムが登場するのかという疑問に対し、もっぴん氏はゲームの中で白と黒と赤しか色を使えないという制約から、その色で表現できる食べ物として、まぐろの寿司とりんごを出したと試行錯誤の経緯を明かした。また、ゲーム中に登場するショップの店員は思いつきから地蔵にしたが、海外の人には突っ込まれていないのでオリジナルキャラだと思われているのかもしれないと冗談めかして語る場面も。

 その後、会場では『Downwell』の1‐3までをプレイして入手したジェムを競うスコアアタックを開催。勝った人にイベントで配布していた10種類の缶バッジをプレゼントすることになり、2名の来場者が挑戦していた。

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▲会場内では巨大なプロジェクターにゲーム画面を映していたため、スクリーン特有の遅延が発生。挑戦者たちは『Downwell』の経験者だったようだが、慣れない環境に苦労していたようだ。

 どちらの挑戦者も健闘していたが、会場内では遅延が発生するプロジェクターで操作せざるを得なかったため、1‐3をクリアする前にゲームオーバーになってしまった。最終的には難しい条件のなかがんばってくれたということで、挑戦してくれた2名の両方に缶バッジをプレゼントすることとなった。

インディーを超えた大作感! 『No Man’s Sky』が魅せる壮大な宇宙の神秘

 タイムアタックのあとは、SIEが2016年8月25日にリリースするインディーゲームの最新作『No Man’s Sky』のステージに移行。最初に本作のPVが流れたあと、北尾氏からゲームについての解説が語られた。

 本作は非常に広大なゲームであり、1800京個以上の惑星を探索したり、資源を集めてトレードしたり、敵対するグループと戦ったりと、サバイバルしながら惑星を探索していく作品とのこと。

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▲1800京個以上の惑星を探索する『No Man’s Sky』。インディーズゲームながらパッケージとして売られることからもわかる通り、大作感のある仕上がりになっている。

 北尾氏によれば、本作は2年以上前の発表の時点から大作感があって注目されているが、もともとは5人の小規模なチームで作っている作品だそうだ。現在は開発人数が増えているが、壮大さがあって全世界でも注目されており、もっぴん氏も「一生をかけてもすべての惑星をめぐり切れないような広大なゲームは初めて」だと興奮を隠しきれずにいた。

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▲吉田氏ももっぴん氏も注目している『No Man’s Sky』は、今回のイベントが日本初試遊! どんなゲームだったのか、遊んでみたユーザーの感想を知りたいと北尾氏は述べていた。

 本作では、ゲームのスタート地点となる惑星がプレイヤーによって異なっており、訪れた惑星にほかのプレイヤーがいなければ、第1発見者として惑星に自分の名前をつけられる仕組み。惑星だけではなく生き物などにも命名することが可能で、名前のデータはオンラインで共有される。

 マルチプレイヤーの作品ではないが、全世界の人とつながりがあるゲームになっており、そこも見どころのようだ。また「惑星から宇宙に飛び出す演出や、惑星へ降り立つ演出がシームレスなのに、みなさん驚かれるでしょう」と北尾氏は語っていた。

 なお、訪れる惑星はアルゴリズムによって生成されており、ゲームデータ自体は数GB程度。惑星の生成は自動生成ではなく、アルゴリズムのひな形を開発チームで作っており、開発スタジオではモニターを大量に用意して結果を確認しながら作っていたとのことで、絶対に進行できない惑星は出現しないようになっているそうだ。

 さらに、北尾氏によればRPGのような探索要素もあり、なかなか過酷になっているとのこと。燃料や寒さ、暑さといったスーツの管理など、構造物を解体してスーツや宇宙船をアップグレードしながら進んでいくゲームになっていると話し、コーナーを締めていた。

インディーゲームに関する質疑応答 “おもしろいゲームを作るためには?”

 続いて、インディーゲームに関する質問コーナーとして、MCの広橋涼さんから質問が読み上げられた。

Q1:将来クリエイターの仕事につきたいのですが、ゲームを作るうえで一番大切なことはなんですか? ゲームクリエイターを目指しているのですが、おもしろいものを作るために普段心がけていることはありますか?

もっぴん氏:自分もまだ1本しか出していないので、そこまで考えが固まっているわけではありませんが……自分が作りたいものを自分のビジョンのままで作ることも大切ですが、それだけだと自分にしか理解できない作品になってしまうので、他人がプレイしても理解できる作りにしなくてはいけないと思っています。

 おもしろいものを作るために心がけていることは……『Downwell』のときは単純に自分が面白いと思えるものを作っていました。自分がツボだと思う要素、たとえばガケに立ったときにキャラクターが「おっとっと」とよろめくモーションですね。そういうのがあるとうれしいので入れました。自分でも、お金を払って買えるものを作ろうと心がけています。

吉田氏:開発の人は、いつも作っているものを自分で見て自分で触っているので、ほかの人が初めて遊んだときにどこでつまずくのかわかりにくいんですよ。よく開発のところに行ってダメ出しをするのが私の本来の仕事なのですが、そうやって、ほかの人に遊んでもらうことが大事ですね。

 昔、『グランツーリスモ』の山内さんが「ゲームはプレイされる人がプレイして初めて完成する」と言っていました。彼は若い頃からカッコいいことを言うのですが……ユーザーにゲームを遊んでもらって初めて完成するということですね。

北尾氏:開発では、実際に多くのテストプレイを行うのですが、作った物をほかの人に遊んでもらうことは大事だと思います。インディーズタイトルだとそういう機会が少ないかもしれませんが、イベントに出展してフィードバックをもらうべきですね。

もっぴん氏:自分はイベントに出展して人の意見を聞くのですが、面と向かって「おもしろくない」といったキツいことを言う人はいないんですよ。だから、ユーザーがプレイしているのを横で見て、どこでつまずくかを観察していました。あとは、ネットで知り合ったゲーマーや開発者の方などにフィードバックをもらっています。

Q2:ゲーム作りは人の意見を聞くことが重要だと思いますが、どこまで意見を聞くのか、どうやって判断していますか?

もっぴん氏:「この武器を入れろ」とか「ここはこうしろ」といった、ゲームを具体的にどう変更するかと言う意見をもらえるのですが、そういう意見に従ってしまうと自分のゲームではなくなってしまいます。そこは捨てていますが、抱いている不満感はくみ取るようにしています。

Q3:『No Man’s Sky』のゲームの目的は宇宙にいくことなのでしょうか。銀河の中心に行くことなのでしょうか? 気になって夜も眠れません。

北尾氏:開発は宇宙の中心に行くことが目的だと言っていますね。宇宙の外側で自分の宇宙船が壊れているところから始まって、それを直して旅立つことになります。進めば進むほど難しくなっていきますが、目的としては宇宙の中心に行くのが目的です。あとはゲームをやって確かめてみてほしいですね。これでよく眠れるのではないでしょうか(笑)。

BitSummit 4thを振り返りつつ、盛況のうちに幕を閉じた

 第1部のラストでは、7月9日と10日の2日間、京都のみやこめっせで行われたインディーゲーム最大のお祭りイベント“BitSummit 4th”をスライドとともに振り返るトークイベントが行われた。

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 2日間という短い開催期間でありながら、大盛況に終わったBitSummit 4th。今年はPlayStation VR(以下、PS VR)に対応したタイトルも出展されており、なかでも対応が発表されたばかりのリズムゲーム『Thumper(サンパー)』に人気が集まっていたとのこと。『Thumper』は北尾さんも大プッシュしており、日本でもPS VRとの同時発売か、ほぼ遅れていない状態での発売を目指していると述べた。

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 さらに、キュー・ゲームスが作った『Dead Hungry』というVRも会場内で人気を博していたとして話題に。これは、ゾンビにハンバーガーを食べさせて人間に戻していくという一風変わったゲーム。VRなので具材が実際に目の前に存在するような感覚があり、まるで調理のバイトをしているような気分になれる作品だ。

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▲BitSummit 4thで行われていた吉田氏と『パラッパラッパー』の生みの親、松浦雅也によるトークセッションの様子。壇上にSIEAのスタッフもあがってにぎやかなトークイベントとなっていた。

 最後に、北尾氏からBitSummit 4th会場で詳細が明らかになった“Made With Unity Contest with PlayStation VR”の企画意図を解説する一幕があった。これは、PS VRでコンテンツを作りたい方々をサポートしていくという企画であり、Unityを使って開発した物や企画書を送ることで、SIEと特別審査員が審査。優秀な作品を商品として世の中にリリースするサポートをしていくという企画だ。

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▲1日目ラストのトークイベント内で、SIE主導によるVRのコンテストが明らかに。クリエイターが多い会場では、かなり多くの興味感心を集めていた。

 パブリッシャーが決まったら、開発機材を貸し出すことも視野に入れており、これからクリエイターを目指す人にも必見の企画となっている。吉田氏と北尾氏も、VRは少人数&低コストで作れることと、コンテストに応募して受賞することで発売元を提供できると発言。これからゲーム開発を目指す人は、VRがチャンスだと語った。

『No Man’s Sky』をはじめインディーズタイトルの試遊が大盛況!

 ステージ終了後に行われた『No Man’s Sky』をはじめとするインディーゲームの試遊会。日本国内で初めて体験することができるとあって、開始直後から多くの人が試遊台に詰めかけていた。ステージで紹介された『Downwell』はもちろん、『東方深秘録』や『宇宙戦士ガラクZ』など、注目タイトルを遊ぶことができた。

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▲試遊開始直後の様子。『No Man’s Sky』を筆頭に、それぞれ興味のあるタイトルをプレイしていた。
『電撃PSプレミアムイベント』
▲『東方深秘録』
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▲『宇宙戦士ガラクZ』。