2016年8月23日(火)

『パズドラクロス』は10年かけて育てる作品。山本P&金田DがRPGへのこだわりと展望を語る

文:麦茶ん

 ガンホー・オンライン・エンターテイメントから発売中のニンテンドー3DS用冒険パズルRPG『パズドラクロス 神の章/龍の章』について、開発陣にインタビューを行いました。

『パズドラクロス 神の章/龍の章』
『パズドラクロス 神の章/龍の章』

 『パズドラクロス 神の章/龍の章』は、パズルの楽しさはそのままに、RPG要素をより強めた『パズル&ドラゴンズ(パズドラ)』シリーズ最新作。新たな冒険の舞台で、新たな主人公たちが壮大な物語を紡いでいきます。

 お話をうかがったのは、『パズドラ』シリーズの生みの親にして本作でもプロデューサーを担当する山本大介さんと、ディレクターとして開発の指揮を執る“グラス金田”こと金田元貴さん。開発秘話から今後の展望まで、さまざまな質問にお答えいただきました。

『パズドラクロス 神の章/龍の章』
▲金田元貴ディレクター(左)と山本大介プロデューサー(右)。※インタビュー中は敬称略。

1つのRPG作品として完成した『パズドラクロス』!

――まずは『パズドラクロス』発売されての率直な感想をお聞かせください。

山本:ゲーム内容的にはとても満足なものに仕上がっていて、手に取っていただいた方の評判も良好です。これからコラボや降臨クエストも配信していく予定なので、まだプレイしていない方に魅力が伝わるようにしっかりとプロモーションをしていきたいですね。

金田:任天堂が提供している“Miiverse(ミーバース)”というサービスを使ってプレイ中の画面などをアップロードできるのですが、多くの方が『パズドラクロス』の画像を載せていて、それを見るのが楽しみになっています。

 あとは、20~30時間でクリアしている方が多くいることに驚きましたね。クリア後に手に入るモンスターを複数体ゲットかつ、全部をスキルレベルマックスにする方もいたりして、やり込み要素も楽しんでいただけてうれしく思います。

――開発期間や作品コンセプトについて教えていただけますか?

山本:『パズドラZ』の制作段階ですでに「次回作を作ろう!」という案がありまして、そこから数えると開発期間は2年ほどになります。

 これまでの2作品は『パズドラ』のよさをニンテンドー3DSに移植するような形でしたが、『パズドラクロス』は「しっかりとした1つのRPG作品として完成させよう!」というコンセプトをもとに制作しました。そのような経緯があったので、開発は完全に0からのスタートとなりました(笑)。

金田:フィールドもかなり広く、探索要素も盛り込んでいます。RPG作品としての魅力を第一に考え、さらに『パズドラ』の要素を取り入れました。

『パズドラクロス 神の章/龍の章』
▲非常に立体感のある『パズドラクロス』のフィールド。

――メインターゲットはどういったプレイヤー層なのでしょうか?

山本:メインは10~12歳くらいの小学生を対象にしています。しかし、『パズドラ』をプレイしている方でもそうでない方でも幅広く遊んでいただけるように作りました。

金田:『パズドラ』や『パズドラZ』でおなじみのモンスターがたくさん登場することに加えて、新モンスターやモンスターモーションも『パズドラクロス』の魅力です。

 『パズドラ』を遊んだことのない方には1つのRPG作品として、『パズドラ』をプレイしたことのある方には他の『パズドラ』作品とは異なる楽しさが味わえるように仕上げてあります。

――小学生向けという前提はありながらも、大人がクスっとしてしまうシーンも多く用意されているように思います。

金田:やはり小学生でも年上の人に憧れるという心理はあると思います。小学生でも理解できるような展開にしつつも少し大人なカッコよさを混ぜ込んでいますね。

――山本プロデューサーは制作ラインのどういったところまで携わられたのでしょうか?

山本:ガッツリと参加したのは、最後のチューニングでしょうか。全体の流れを僕が管理しつつ、開発はほぼ金田にまかせていました(笑)。

金田:開発に関してはほぼ自由に作らせていただきました。方向性がずれていないかなどを、定期的なタイミングで山本がチェックした形ですね。

 最後のバランス調整の部分にも山本に手を加えてもらいました。やはり山本に参加してもらうとバランス調整が仕上がる速度が目に見えて早く、とても心強く感じましたね。

山本:『パズドラクロス』の独自要素として対戦プレイがありますが、テストで対戦を行ってみるとバランスがちょっと悪かったんです。かといって、対戦用にバランスを取ったら今後は冒険にうまくマッチしなくて……。

 最終的に、どちらも楽しめる調整を行うために『パズドラ』の開発スタッフや『パズドラ』ランカーの方々(LUKAさんやとうふさんなど)にも協力してもらい、総力を尽くして打ち込みました。

『パズドラクロス 神の章/龍の章』

――『神の章/龍の章』のWパッケージを制作された狙いを教えてください。

山本:まず前提として『パズドラクロス』では通信機能を使ったマルチプレイを主軸に遊んでもらうというコンセプトがあって。その時に同じバージョンのソフトで友だちや家族などと遊ぶよりも、別のバージョンのほうがマルチプレイの喜びをより持たせやすいと考えました。

 また、降臨クエストはそれぞれのバージョンで配信される内容が異なるので、お互いに自分のバージョンで出ないモンスターを協力してゲットする達成感を味わってほしいですね。

金田:メインターゲットを小学生に置いているので、『パズドラクロス』で友だちと交流したり、『パズドラ』をプレイしている親と子どもがそれぞれ別のバージョンで協力したりしている姿をイメージして分けることにしました。

山本:現在だと2本立てのソフトは数多く存在しますが、配信されるコンテンツがそれぞれのバージョンで完全に異なるゲームは少ないかと。そのような意味でも『パズドラクロス』は楽しんでいただけると思います。

『パズドラクロス 神の章/龍の章』
▲協力プレイを駆使すれば、持っていないバージョンの専用コンテンツも遊ぶことができます。

――制作するうえで楽しかったこと、大変だったことなどはありましたか?

山本:素直にRPGというジャンルの作品を作ることが大変だと感じましたね(笑)。この規模のゲームを制作したことが少なく、「少し手を加えるだけで、ここまでやるべきことが増えるのか!」と四苦八苦していました。しかし、『パズドラ』シリーズでありながらも完全新作を作れた手応えはあるので満足しています。

金田:モンスターやソウルアーマーに加えて、対戦や協力プレイなどのさまざまな要素をフルに詰め込んだ作品なので、それらをうまく組み込むためのテストやバランス調整が大変でしたね。「いつ終わるんだろう……」と考えながら調節していました(笑)。

 しかし、そこが楽しめた部分でもありますね。社内の人間に「えっ? ここまで作り込まれているの?」と言ってもらえたのもうれしかったですね。

山本:あとは『パズドラクロス』の発売日を発表するタイミングが、ガンホーとしてはかなり早かったことですね。いつもなら夏や秋というフワッした形で発表するのですが、今回は発売日の発表が早かったので、かなり早い時期から期限に追われていました(笑)。

――特に力を入れて開発した要素をおしえてください。

山本:RPGはストーリーや世界観、登場キャラクターといったさまざまな要素が複合して1つの作品になります。しかし、僕の中では“数字のやり取り”が一番重要だと考えています。かっこいいイラストや世界観があっても、攻撃や回復をする時に一喜一憂できなければおもしろさが激減してしまいます。

 これは『パズドラクロス』だけではなく、すべてのタイトルで重要視していると思います。ゲームバランスを整っているからこそ、そのゲームが楽しめるのだと思うので、僕はチューニングに命を捧げていますね(笑)。

金田:イラストやシステムが細かい関係上、必然的にロード時間が長くなったので「意地でもロード時間を短くしよう!」と頑張りました。現在はそれほど気にならないレベルまでロード時間を短くしましたが、開発当初はロード時間との長い戦いがありました。

山本:モンスターを育成する時に同じダンジョンを周回すると思いますが、そこで読み込み時間が長いと途中でやる気がなくなってしまうはずなので、かなり力を入れてロードを短くしました。

『パズドラクロス 神の章/龍の章』
▲素材やモンスターを集める時にサクサク周回できるのはうれしいポイント。

――冒頭で20~30時間でクリアした方がいるとおっしゃっていましたが、ゲーム全体のボリュームはどの程度でしょうか?

金田:こちらの想定では、『パズドラ』をプレイしたことのある人が適切なチームを組むと40時間前後でクリアできるように設計しました。しかしユーザーさんの様子を見ると、それよりも早くクリアしている方が多くいらっしゃいますね。

山本:早くクリアしている人はパズル力があって、アヌビスやラー、ホルスなどの火力があるソウルアーマーを使いこなしているのだと思いますね。あとは1つのチームを中心に育成するか、さまざまなチームを育成するかでも変わりそうですね。

 クリアは1つの通過点に過ぎないので、そこからさらに難しいダンジョンや対戦プレイを深く楽しんでほしいです。

金田:対戦に関しては、チームによって無限の戦い方があるといっても過言ではなく、今後配信されるモンスターによって流行りのチームも変化していく予定なので、長く楽しめるコンテンツになると思います。

――アプリ版『パズドラ』と本作で遊び方の違いなどはありますか?

山本:主人公が戦うことですね。RPGなので「主人公を立ててフィールドを歩かせよう!」と言う基本的なことから始まりましたが、歩かせるだけではRPG感が出せませんでした。

 RPGというゲームジャンルに共通するかもしれませんが、新たな街やダンジョンで強力な武器を手に入れた瞬間というのは気持ちが高ぶりますよね。そう思って、『パズドラ』シリーズで初めて主人公自身を戦闘に参加させました。

金田:実はソウルアーマーもそこから生まれたものなんです。やっぱりRPGの主人公はゲームが進むにつれて装備品を切り替えていくべきだなということで、開発途中で追加することになって。ソウルアーマーが起因となって対戦のアイデアも生まれたので、結果的に『パズドラクロス』のボリュームアップにもつながりました。

『パズドラクロス 神の章/龍の章』
▲本作には400種類以上のソウルアーマーが用意されています。

――RPG作品として、ストーリーを進めていくうえでの注目ポイントを教えていただけますか。

山本:RPGだからというわけではありませんが、さまざまな場面にワクワクできる仕掛けを用意しました。例えば、覚醒スキルを付けるのに必要な“ほしのかけら”はフィールドを歩くと集まりますが、他のRPGではフィールドを歩くだけで何かが得られる要素はあまりないと思います。

金田:最速プレイを目指すとフィールドにある道を歩いて敵と出会わないようにすると思いますが、画面の端にキラキラ光るものが見えて思わず寄り道をしたくなる。そうして冒険の一歩一歩にワクワクして、かつそれがゲームプレイに役立つように仕上げました。

山本:それと、ゲーム序盤からいるグランドボスやダンジョンにいるヌシなどの強敵は「どこまで進めたら倒せるのだろう?」と、ゲームをやり込みたくなるような目標がはっきりと見える設計にしてありますね。

――確かにグランドボスはもっともわかりやすい目標になりますね。実際のところ、どのくらいで倒せるようになるのでしょうか?

金田:水の街周辺にいるメガロドランであればドロップが火、水、木、回復の4種類なのでコンボがしやすく、うまく弱点を突けばゲーム中盤くらいで倒せます。すぐに倒したいのであれば、協力プレイを利用するのがおすすめですね。

『パズドラクロス 神の章/龍の章』
▲ゲーム序盤でグランドボスの洗礼を浴びた方も多いのでは?

――対戦プレイの注目ポイントはいかがでしょうか。

山本:開発メンバーの中で耐久やコンボ、多色などのさまざまなチームで対戦を行い、いずれかのチームが飛び抜けないように三すくみのようなバランスにしています。もちろん有利不利はそれぞれのチームでありますが、自分の好きなチームで戦っても勝つチャンスがあるように調整したので、安心してください。

 対戦のアドバイスとしては対戦プレイでは効果が変わるスキルがあるので注意してほしいです。例えば、毒ダメージを与えるスキルは対戦プレイだと相手に毒ドロップを降らせるスキルに変化しています。

金田:対戦で勝つためには、その時に流行しているチームが何なのかを把握して、対策を用意しておくことが重要になります。大会当日に覚醒スキルをチューニングするようなこともあるかもしれないので、ほしのかけらはぜひ集めておいてください。

『パズドラクロス 神の章/龍の章』
▲対戦では覚醒スキルの読み合いがかなり重要になってきそう。

――覚醒スキルの付け替えは、対戦プレイのために考えられたシステムなのでしょうか?

金田:それは対戦のアイデアが生まれる前からあり、もともと自由にカスタマイズして付与できるように考えていました。ほしのかけらの収集と覚醒スキルの結びつきも早い段階で構想を練っていましたね。

――序盤のモンスターでドロップ変化スキルを持つものが多くいますが、こちらは調整された結果なのでしょうか?

山本:序盤のモンスターのスキルも最後にかなり調整しましたね。序盤のモンスターでチームを編成した時に「これで戦うのは厳しいなあ」という状態だったので、ほぼ全スキルを差し替えました。

――ライフが一度の攻撃ですべて減らない仕様ですが、これはすぐに対戦が終わらないようにするためでしょうか?

山本:チームにもよりますが覚醒スキルをスキルブースト中心にすることで、対戦が開始した瞬間からスキルが発動できる状態になり、そこから全スキルを発動すると1回の攻撃で対戦が終わってしまいます。

 さすがにそれは対戦として味気ないので、少なくとも3ターンは駆け引きなどを楽しめるような形を模索した結果、現在の仕組みに至りました。

金田:3ターンだと「このターンは捨てるけど、次のターンに総攻撃を仕掛ける!」というように駆け引きが生まれるので、うまく試合が楽しめるように調整できたと思います。

『パズドラクロス 神の章/龍の章』

――『パズドラクロス』から『パズドラ』に逆輸入したい要素があれば教えてください

山本:実は協力プレイが『パズドラクロス』で発案した要素だったのですが、おもしろそうだなと思い『パズドラ』に先行導入しました(笑)。

――オロチやハーデスなど、一部のモンスターはイラストが刷新されています。何か意図があるのでしょうか?

山本:『パズドラ』に関しては時代とともにイラストレーターさんの色を出していただくようにしていますが、コンシューマーは1つのパッケージとして世界観を統一するためにイラストを刷新しています。

『パズドラクロス 神の章/龍の章』
▲『パズドラクロス』版のオロチ。

――モンスターの総数は500体以上と、かなりのモンスターが登場しますが好きなモンスターを教えてください。

山本:僕はキングメタルドラゴンが好きなのですが、『パズドラクロス』ではアニメの影響もあり、ソニアが推しキャラになりました。ちなみにソニアは『龍の章』の最初の降臨クエストで入手できます。

 それと、アニメで主人公・エースが装着していた影響で、エンシェントドラゴンのソウルアーマーもお気に入りです。ゲーム内でも同じソウルアーマーを装着して、なりきり気分を満喫しています(笑)。アニメの影響は僕が想像していた以上だなと感じましたね。

――今後、ソニアに限らずモンスターがたくさんしゃべるところを見られる可能性もあるのでしょうか?

山本:今回、登場人物の1人として抜擢されたソニアは、制作当初に人気アンケート投票で一番人気だったのでキーキャラクターとして選択しました。もし、次回作を制作するなら同じようにアンケートを行い、なるべくユーザーに人気のあるモンスターをキャラクターとして登場させたいですね。

『パズドラクロス 神の章/龍の章』
▲本作の主要キャラクターとして活躍するソニア。

――お二方が考える、『パズドラクロス』のおすすめの遊び方を教えてください。

山本:僕のおすすめは本編をゆっくり進めつつサブクエストでたくさん遊ぶことですね。さまざまなモンスターが手に入るのはもちろんですが、モンスターを強化したり、クレーネを入手したりと、複数のことを並行で進めつつ楽しめると思います。

 あとはおすすめという意味とは少し異なりますが、“ストーリーを進めるうえで有利な覚醒スキル”と“対戦で必要になる覚醒スキル”は別物なので、その時々で覚醒スキルの構成をどのようにするかまで考えていただけるとうれしいですね。

金田:のんびりプレイできるような要素がたくさんあるので、その要素をゆっくりと味わいつつ遊んでほしいです。また1人で遊ぶのもいいですが、やはり友だちや家族と協力プレイを使ってワイワイしてもらいたいですね。

山本:言い忘れていましたが、ゲーム内に“命の石”というコンテニュー用のアイテムがそれなりの値段で売れます。……が、売ってしまうともしもの時にコンテニューできないので、自信のある人以外は売らない方がいいと思います(笑)。

金田:ほしのかけらや命の石といったアイテム毎週水曜日に週替わり配信していく予定なので、入手すればゲームが進めやすくなると思います。

『パズドラクロス 神の章/龍の章』
『パズドラクロス 神の章/龍の章』
▲たっぷり用意されたサブクエストをクリアしていくことも本作の楽しさのひとつ。

――本作はゲームだけでなく、アニメや玩具などさまざまなクロスメディア展開がなされていますが、どのような経緯や狙いがあるのでしょうか?

山本:『パズドラクロス』は『パズドラZ』の続編ではなく10年、20年と続いていく新たなシリーズとして立ち上げたので、力を入れてメディアミックスを行わせていただきました。まだ発表していないコラボレーションなど、これからもユーザーの方が喜ぶようなコンテンツを準備しています。

――『パズドラクロス』は長期的に運営していくご予定と伺いましたが、今後どのように展開していこうと考えていますか?

山本:まだ確約はできませんが、ユーザーの方から「オンライン対戦がしたいです!」というご要望が多いので検討しています。すぐにオンラインの対戦環境を整えるのは難しいですが、ぜひ実現したいですね。あとは僕が長年思い続けていることですが、『パズドラ』のテーマパークを作りたいなと(笑)。

金田:もとから定期的なアップデートで新要素を加える計画なので、直近の目標は『パズドラクロス』のボリュームアップになりますね。続編に取り掛かるとしても『パズドラクロス』の運営がひと通り落ち着いてからになりそうです(笑)。

――最後に、読者へメッセージをお願いします。

金田:とにかく早く手に取っていただきたいという思いが一番です。先ほども言いましたが、買っていただいた方に長く遊んで行けるように、これからもしっかりと運営を行っていきますので、よろしくお願いいたします。

山本:今後さまざまなクエストを配信していきますが、配信期間が過ぎたクエストは再配信するとしてもかなり先になるので、できるだけ早めに入手していただけると取り逃しがなくなると思います。絶対に損をさせないような内容になっていますので、ぜひよろしくお願いします。

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