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2016年10月31日(月)

『サガ スカーレット グレイス』オーケストラの豪華な生演奏に大興奮!! 楽曲収録現場に潜入

文:まさん

 スクウェア・エニックスが12月15日に発売予定のPS Vita用RPG『サガ スカーレット グレイス』。その楽曲収録が今年6月に“かながわアートホール”で行われました。

『サガ スカーレット グレイス』

 皆さん、こんにちは。『サガ』シリーズ担当ライター・まさんです。待望の『サガ』シリーズの新作『サガ スカーレット グレイス』の曲を、ひと足早く聞けると言われ、さっそく収録現場であるかながわアートホールにお邪魔してきました。

 ホールに入ると、ちょうど主題歌のリハーサルをやっているところでしたが、いきなり日本語のボーカル曲が流れてビックリ。『ロマンシング サガ ミンストレルソング』では山崎まさよしさんが主題歌『メヌエット』を歌っていましたが、今回の主題歌は『メヌエット』とはガラリとイメージが違います。

『サガ スカーレット グレイス』

 女性ボーカルの美しい歌声がピッタリはまっていて、オーケストラに合った非常に壮大で美しい曲という印象を受けました。楽曲の収録時点ではゲーム画面を見せてもらってはいないのですが、曲を聞くだけでもワクワクしてしまうんですよ!

 また、収録中は本作のサウンドコンポーザーのイトケンさんこと伊藤賢治さんやスタッフの方がやり取りをしつつ、その場で細かく楽曲を修正している場面も見られました。

 イトケンさんの要請を聞いて、すぐに想定通りの曲として反映できるプロのスゴさにただただ感嘆。最初に通しで聞いた時点ですごいと思っていたのですが、修正するたびに「あ、確かにこのほうがカッコいいかも」と思えるくらい、まさに楽曲がその場で作られていく様子を見ることができました。

『サガ スカーレット グレイス』

 ちなみに、収録現場を見せていただけたのは主題歌だけでしたが、収録予定表を見て他の楽曲を収録しているのも確認。●●●●●バトルとか何ですか、その初耳の単語。滅茶苦茶気になるんですけど!

 ああ、聞きたい、詳細を聞きたいと思いつつもガマンしつつ、プロの仕事を堪能させていただきました。う~ん、気になる。

『サガ スカーレット グレイス』

 会場には関係者の方々も多く来られており、次の楽曲を収録するまでの休憩中、軽いインタビューができることになりました。と言うわけで、休憩の間に本作のプロデューサーである市川雅統さんと、『サガ』シリーズの生みの親である河津秋敏さん、音楽を手掛けられたイトケンこと伊藤賢治さんに、今回の楽曲についてお話をうかがってみました。

 お三方ともサービス精神あふれる方で、いろいろと気になる話が飛びかっていますのでシリーズファンはぜひチェックしてみてください。

※インタビュー内容はすべて2016年6月時点のものです。

河津さんが自ら実作業に参加している『サガ スカーレット グレイス』の開発現場

――本日は『サガ スカーレット グレイス』の楽曲をオーケストラで収録中ということで、大変感激しています。これは『サガ スカーレット グレイス』の完成が近づいてきた、と考えてよろしいのでしょうか?

河津秋敏さん(以下、河津):う~ん、それはどうなんでしょう。完成が近づいてきたのかな?

伊藤賢治さん(以下、伊藤):えっ、ボクが詳細を言っていいんですか?

河津:今日は、一番作業が遅れてる2人(河津、伊藤)がここに来てるんですよ。

市川雅統さん(以下、市川):いやいや、私は河津さんが土日もPCの前でひたすら作ってるところを目にしてますから(笑)。

 実際に見て、河津さんってこんなに実作業にかかわる方だったのかと驚いているんですよ。偉い人だと、指示だけ出していると思われがちじゃないですか。本作に携わって横から見ていてわかったのですが、本当に河津さん自身が作っているんです。

河津:それは、私が作らなきゃ完成しませんから(笑)。

伊藤:昔、別の『サガ』シリーズを作っていた時は、河津さんが徹夜してそのままソファにゴロンと寝て夜を明かしてましたね。他の人が出社してきた時に「河津さん起きてください!」って、よく言われてました。

市川:さすがに、今はもう徹夜をされていませんよね?

河津:……今日は音楽の収録なので音楽の話をしましょう、音楽の! 汗臭くなる話はやめましょう(笑)。

伊藤:音楽の話で言えば、今日の収録でボクの担当する作業は終了します。それ以降はチェックですね。いろいろな確認作業をする予定です。

河津:今回は、イトケンに何曲くらい書いてもらったんでしたっけ?

伊藤:何曲くらいだったかなあ……。主題歌も含めて、結構書かせていただきました。かなり、バラエティに富んでいるんですよ。

 アレンジ自体も『インペリアル サガ』の時のように、自分だけではなくて上倉紀行くんや成田勤くんといったアレンジャーを立てているところもあるので、そういう意味では新しい『サガ』の血を感じていただけるのではないかと思っています。

『サガ スカーレット グレイス』
▲『インペリアル サガ』半神アデルのイラスト。

市川:曲数だけで言えば、たぶん40曲以上ありますね。

河津:今日の山下康介さんを含めて、アレンジャーは複数の方にお願いしていただいているので、今までとはちょっと違うのではないでしょうか。

伊藤:今回は歌も入ってますからね。『ロマンシング サガ ミンストレルソング』の主題歌は山崎まさよしさんでしたが、今回は自分が作っているので家内制手工業のような感じで作っています。

――さきほど、主題歌を録音していましたが、歌っている野々村彩乃さんはどんな方なのでしょうか?

伊藤:主題歌を作ろうと決まって歌手を誰にしようかと探した結果、たまたま彼女と出会いました。河津さんにどうですかと推薦したところ、ひとめぼれ、いや“ひと聞きぼれ”みたいな感じで彼女に決まったんです。

河津:甲子園で『君が代』を歌われて注目を浴びていた方で、スポーツイベントで国歌を歌われていることが多いようです。イトケンがどこで探してきたのかはわからないのですが、聞いてみて「ああ、この人がいいな」と。

 きちんとした歌を歌っていただけそうな方だったので、今回は、お聞きいただいた感じのような主題歌、テーマ曲を作ってもらいました。

市川:ゲームのイメージにも、すごく合っていますよね。

河津:そこは意識しました。スクウェア・エニックスには海外のアーティストを含めて、いろいろなタイトルでいろいろな楽曲、いろいろな主題曲がありますが、今回は『サガ』らしい感じの曲に歌い手さん。オーケストラで、イイ感じにできたのではないかなと思っています。

――ちなみに、主題歌の歌詞は、どなたが作詞されたのでしょうか?

河津:歌詞は……たぶん、スクウェア・エニックスという表記になるんじゃないですか?

伊藤:ちょっとダサいですよ、それは(笑)。

河津:よくあるじゃないですか。権利関係の問題で(笑)。実際は複数人で作っています。ベースは『ファイナルファンタジーXI』の佐藤弥詠子が歌詞を考えてくれました。

 あとは、片岡正博。『ファイナルファンタジー クリスタルクロニクル』シリーズのディレクターをやっていただいた人です。それから、最後にちょっと自分が手を入れて作っています。

――主題歌はすごく素晴らしい曲でしたが、他にも作中でボーカル曲を使っている場面があるのでしょうか?

河津:作中で歌を使っている場面はないです。基本的に主題歌だけですね。ちなみに、主題歌がどこで流れるのかはネタバレなのでお話しできません。そこは、皆さんの楽しみを奪ってしまうことになりかねませんので。

伊藤:つまり、主題歌の歌詞を聞くとストーリーが理解できるということですか?

河津:いや、そういうことがないように意識しています。歌だけを聞いてもいい曲になるように、あまりゲーム内容に引っ張られないようにしています。

市川:そうですか? 今日、自分は初めて聞きましたけど、イメージが膨らみましたよ。

河津:それはゲームの中身を知ってるからですよ。ゲームが終わったあとに聞き直してもらえば、また違う感じを受けると思います。

伊藤:ボクは、最初に野々村さんの歌を聞いた時に歌の力がすごいなと思いました。当初、主題歌は違うメロディだったのですが、ボーカルが野々村さんに決まった後、デモ曲を作って河津さんに聞いてもらったら「このメロディーは彼女に合わない」と言われて……(笑)。

 根底から覆されちゃったので「えぇー」ってなりましたね。「じゃあ、どういう曲が欲しいのですか?」と聞いたら、彼女にはこういう感じの歌が合うというリクエストがあって、今の主題歌になるまで、かなり作り直しました。だから、そういう意味では彼女のための歌みたいなものです。

ユーザー目線で“イトケン節”にこだわった河津さんとのやり取り

市川:今回、イトケンさんはかなり河津さんとやり取りされたようです。これまで作ったシリーズの中でも、やり取りが相当多かったと聞いています。

河津:基本的にダメ出しすることはないのですが、今回はなかなか曲があがってこなかったんですよ。「真面目にやってるの?」みたいな感じでプレッシャーをかけないと、クオリティが上がってこないなと思ったんです(笑)。

市川:それ、お互いさまですよ(笑)。

河津::音楽に限らないのですが、デザイナーも言いすぎると迷路に入っちゃうことが多いから、あまり言わないほうがいいんです。ただ、最初の路線が決まってくるまで時間がかかったので、そこはかなりやり取りしました。

市川:自分は「こんなやり取りをされてるのか」と、横で見ていてうれしかったんですけど……(笑)。

伊藤:『サガ』と言っても新作のタイトルなので、そういう意味では『ロマンシング サ・ガ』や『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』に引っ張られないようにしようと思っていました。

 少しでも似ていると、河津さんに「うーん、いいんだけど、なんか似てるよね」と言われるので、新しいところも見せようと。でも、新しいところばかりだと「ちょっと違うな。合わないね」と言われそうで、そのバランスが難しかったです。

河津:ユーザーは、やっぱり“イトケン節”を期待しているところがあるんですよ。とはいえ、当初からイトケンはちょっと新しいことをやりたい、同じことをやってもしょうがないので違うことをやりたい、と言っていました。

 だから、最初のうちは「これは狙いすぎなんじゃないかな。これはユーザーが期待してないんじゃないかな」と思うような違う路線の曲ができてきて、だいぶ時間がかかりましたね。

 ユーザーが「イトケン!」と叫ぶようなコンサートのファンを見ていると、その路線だと「これは俺たちが期待しているイトケンじゃない」となっちゃいそうなので、ユーザーを代弁する形で「もうちょっと、普通のイトケンでいいんじゃない」とやり取りしました。

伊藤:それでも『サガ』はサウンドを含めて許容範囲が広いんですよ。だから、いろいろ実験もできるし、いい意味での遊びもできる。自分はフリーの作曲家なので、他のプロジェクトも同時進行していますから、そこで影響し合う部分もあります。

 「あれ? 今はどっちの曲をやっているんだっけ?」みたいになる時もあったので、今まで作った『サガ』の曲を引っ張り出して「ああ、こういうテイストだった」と思い返しながら作っていました。

――期待しています。本日は、主題歌以外にどのような曲を収録されたのでしょうか?

河津:オープニングとメインテーマ。あと、ボス戦の曲ですね。これから収録するのがエンディング曲になります。

市川:自分たちも新曲が収録されていない状態でプレイしているので、今日オーケストラでボス戦の曲を聞いて、あらためてわかるところがありました。

 迫力がすごいですし、イトケンさんのバトル曲はオーケストラに合うんですよ。過去作の曲も、オーケストラで収録した『サガオケ!』というCDを出させていただいたりはしていますが、新曲が最初からオーケストラで収録されているのは、かなり新鮮でした。

『サガ スカーレット グレイス』

伊藤:今回、コーディネートをしていただいた方々と一緒に、スタジオでオープニング曲などを収録しながら聞いていたのですが「カッコイイですね」と誉めてくれました。第三者の方から、そういう反応がくるのはうれしいですね。

市川:いや、本当にカッコいいですよ。特に、今日収録したボスバトルの曲がよかったです。

伊藤:オーケストラだと迫力が違いますよね。アレンジャーは『サガオケ!』の山下康介さんにやっていただいたのですが、彼の本領が発揮されたと思います。

――河津さんは、オーケストラの楽曲を聞いていかがでしたか?

河津:今日は、普段お客さんが入るようなところまで全部使って収録しているのですが、そういう環境で聞ける機会はなかなかないですよね。

 音が全然違っていて、すごくよかったです。携帯ゲーム機では、どうしても圧縮音声になってしまうので完全に再現するのは難しいのですが、本当の音はサントラで供給させていただきたいと思っています。

 作っている最中は過去作の音をダミーで流しているのですが、新しい曲に差し変わるとテンションが上がるんですよ。そこは、ユーザーの方も同じ気持ちになってもらえると思っています。

伊藤:途中から制作画面やバトル画面を見せてもらっているのですが、かなりカッコいいです。場面を見て「ああ、こういう動きをするんだ」、「こういうシーンなんだ」と感動しました。

河津:イトケンの曲でボス戦になると、それだけで「おぉーっ」という説得力があるんですよ。

市川:曲の差し替えが済んでいる場面はテンションが上がりますね。普段は聞いたことのある曲で遊んでいるので……(笑)。

河津:「キターッ!」って感じがしますね。これはいい物だと、それだけでテンションが上がる。

伊藤:これは裏話なのですが、実はデモで作っていた曲をスタッフに複数渡していて、どっちを使ってもいいですよという扱いをしていたんですよ。

 正式に採用するつもりはなかったのですが、後から連絡がきて、スタッフに「あの曲はどうなったのですか」と言われて正式に作ることが何回かありました(笑)。

――ちなみに、今回のオケは12型ですよね。日本のスタジオは8型で取ることが多いとお聞きしましたが、やっぱり『サガ』は豪華ですね。

河津:今回はホールなので『インペリアル サガ』の時よりも大きな編成ができるようになりました。

伊藤:ちなみに、今回フィルハーモニーと名前が付く方々との収録は初めてでしたね。今まではスタジオミュージシャンの方々でしたから。

河津:海外を含めていろいろと選定したのですが、ハンドリングやアレンジしている山下さんのことをよくわかっているということを含めて、今回は神奈川でやることになりました。

伊藤:指揮もちゃんと組み立てていただいてるし、本当によかったです。こちらのやり方を把握していただいているので、そういう意味でもやりやすかったです。

――いろいろありがとうございました。では、最後に『サガ スカーレット グレイス』を待っているユーザーに向けて、ひと言ずつメッセージをお願いします。

伊藤:フルオーケストラのようにクラシック的な曲もあれば、まったくベクトルが違う、それこそ打ち込みバシバシな曲があったりもしますし、ユーザーの皆さんが「えっ」と思うような曲もあると思います。

 河津さんから「お前、苦しんでるな。大丈夫か?」というメールがきて、そんなこともないんですけど、そう聞こえちゃったかなと思われるような曲もあったり……(笑)。そういう意味ではかなりバラエティに富んでいると思いますので、音楽的な楽しみも含めて期待していてください。

市川:イトケンさんと河津さんを横で見ていると本当に大変そうだったのですが、今日のオーケストラ収録を聞いて自分自身もすごくワクワクしています。早くプレイしたいと思っていますし、ぜひ皆さんも期待して待っていてください。

河津:今日収録した曲の一部は公式サイトで聴けますので、ぜひ聞いていただければと思います。

 上記のインタビューから6カ月経過していますが、何故このタイミングで公開したのかというと、“サガオーケストラコンサート 2016”(11月23日に東京公演、12月10日に大阪公演)が開催されます。

 本公演では、『サガ スカーレット グレイス』の曲も聞けるとのこと。『サガ』シリーズの楽曲をフルオーケストラで演奏&歴代の作曲家陣もゲスト出演するファン必見の公演です。

■“サガオーケストラコンサート 2016”公演概要(※敬称略)
公演名:サガオーケストラコンサート 2016
指揮:山下康介
演奏:【東京】東京フィルハーモニー交響楽団、【大阪】日本センチュリー交響楽団
チケット料金:全席指定S席 8,500円(税込)/A席7,500円(税込)
※未就学児の入場はお断りしています。チケットは1人1枚必要です。
主催:株式会社スクウェア・エニックス
制作:プロマックス

■東京公演
日時:11月23日
【昼公演】13:00開場/14:00開演
【夜公演】18:00開場/19:00開演
会場:Bunkamura オーチャードホール(東京)

■大阪公演
日時:12月10日16:00開場/17:00開演
会場:ザ・シンフォニーホール(大阪)

 さらに、『サガ スカーレット グレイス』の楽曲を収録するサウンドトラックもゲーム発売の翌週、12月21日に発売されます。伊藤賢治さんが全曲を作曲したサントラは、サガファン必聴の1枚になること間違いなしですので、ぜひチェックしてみてください。

【サガ スカーレット グレイス注目記事】

(C)2016 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. ILLUSTRATION: TOMOMI KOBAYASHI

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