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2016年9月5日(月)

『トゥモロー チルドレン』配信直前緊急インタビュー。共産主義をテーマにした、ほかにはないゲーム性とは?

文:電撃PlayStation

 9月7日よりPS4で配信がスタートする『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』。全世界のプレイヤーとともに“人類の復活”のため、労働に勤しんでいくソーシャルアクションゲームとなっている。

『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』

 配信が迫るなか、本作の開発を手掛けるQ-Gamesのディラン・カスバート氏、前田和志氏に話をうかがった。βテストなどをへて、これまでからどのような調整を行ったのか? 配信後の運営は? それぞれ気になる部分を聞いてみた。

『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』
▲前田和志氏(左)とディラン・カスバート氏(右)。

オープンβテストから製品版への調整点

──9月7日に配信が決まった『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』ですが、αテストとβテストをへて、どのようなことを調整されていたのでしょうか?

ディラン・カスバート氏:ゲームバランスと町作りの自由度を上げるために、いろいろといじりました。αテストのときは、町がテンプレートのように展開していて、3段階程度に変化するだけだったのですが、βテストでは町を自由に作れるようになっていきました。たとえば、クリスタルを集めるだけではなくて、□ボタンを押すと光るクリスタルになり、それをボイドに投げ込むと地面を固めることができたり。いろいろなことを増やしました。

 あとは、プレイヤーが増えるほど“悪質行為”をする人も増えるのですが、βテストでは悪質行為に対する制限をあまり入れなかったんですよ。そこはβテストをへて、うまく調整できたと思います。

──ユーザーの間で悪質なプレイヤーに対する対処法を増やしてほしいという意見を聞きました。最終的に、どのような対処法が用意されたのでしょうか?

ディラン:NPCの警察官を増やすほど、ほかのプレイヤーを捕まえるようになりました。これは、悪質行為をするプレイヤーを見て、早めに導入することにしたものです。

前田和志氏:悪質行為で受けるペナルティが増えたのとあわせて、“悪いね”を悪用して、ほかのプレイヤーをトラップにかけるプレイヤーにも対処しました。製品版では、有権者(その町に個人住居を建てているプレイヤー)ではないと“悪いね”の効果が強く出ないようになっています。その町に実際に住んでいて愛着を持っているかどうかで“悪いね”の効果に強弱をつけ、“悪いね”を悪質なプレイに使っている人にも対応しました。

ディラン:βテストではカンタンに建物を解体できたので、そこもいじって、簡単には解体できなくなりました。基本的に有権者が権利を持てるようになっています。もちろん、悪いことをしようとすればいくらでもできますが、あとはプレイヤーにまかせたいんです。ロールプレイとして、数名のプレイヤーがシークレットポリス(秘密警察)のように行動して、気がついたら“悪いね”をつけるような状態が理想的だと思っています。

前田:そういう意味では、有権者になる意味が増えています。また、製品版では“悪いね”をつけると警察官が自動的に悪質なプレイヤーを捕まえてくれるので、警察署を増やすことにも意味があるようになりました。

『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』

──βテストでは労働局が壊れて困ることが多かったのですが、製品版では労働局が壊れにくくなっているといった変更もあるのでしょうか?

前田:施設に関しては、プレイヤーからのダメージを調整しています。プレイヤーが壊すこともできるのですが、βテスト版よりも壊しにくくなりました。ブラックマーケットのツールなどを使って、意図的に壊そうとしない限り、なかなか難しいと思います。壊そうとしている間に“悪いね”をつけられて、その町からキックされるというケースが多くなるのではないでしょうか。

ディラン:βテストだとブラックマーケットで使う外貨を無料でもらえましたが、外貨がこのゲームのマネタイズ部分になってくるので、外貨=現実のお金になります。そういう意味でも、悪いことをするためにブラックマーケットを使う人は少ないと思います。

──ゲームとしては基本無料で遊べて、課金は外貨のみという形式でしょうか?

ディラン:そうですね。9月7日に出す有料の『建国者パック』には、免許や外貨といったゲームに役立つ物が最初から入っています。そして後日、オーソドックスに無料でダウンロードできる『入植者版』を用意する予定です。また、βテストの時点では地面に落ちている“外貨”が少なかったのですが、製品版では長く遊ぶと拾った外貨だけでもブラックマーケットでいろいろ買えると思います。もちろん、せっかちな人はリアルマネーを使って買うこともできます。外貨をリアルマネーにするのは、すごくゲームの世界観にあっていると思ったので、最初から用意しました。

──先ほど、町を自由に作れるようになったということでしたが、どのように広がるのか教えてください。

ディラン:プレイヤーがクラフトマシンで建物を作って、好きな場所に置くことができます。建設には“建設リミット”があるのですが、デフォルトが1000くらい。その1000という数値のなかで、自由に建てたり、解体したりすることができます。建設リミットは、プレイヤー同士の協力によって増やすことが可能です。

 町にはモニュメントがあるのですが、これにはそれぞれ達成目標が設定されています。たとえば“500回いいねを送る”という目標を達成すると、モニュメントが自動的に町に出現するなど。その町全体のグループトロフィーみたいな感じですね。モニュメントに対応した数値のぶんだけ、建設リミットが増えたりします。みんなの努力で町を大きくしていくわけですね。

前田:あとは“タウンホール”ですね。タウンホールにメタルを詰めていくと成長するのですが、タウンホールの成長に応じても建設のリミットが増えていくので、モニュメントとタウンホールの2つで、町をどんどん大きくしていただけたらと思います。βテストでいただいた意見に「タウンホールを壊されたときのダメージが大きすぎる」というものがありましたので、製品版ではそれに対応して、解体できない重要施設になりました。タウンホールが維持されるようになったので、遊びやすくなっていると思います。

ディラン:タウンホールが壊れていたのは、当初は永遠に同じ町で遊ぶゲームだったので、タウンホールがどんどん大きくなって、どこかで成長が止まってしまうとおもしろくないと思ったからなんですよ。ただ、βテストで町をクリアできるようにしたほうがいいというアイデアが多く出たので、ステージクリアにすることでタウンホールも壊れない重要施設にしました。

 ステージクリアの条件は、マトリョーシカを集めて、決まった数の“人民”を復活させることです。条件を満たすと町が“復興”してステージクリアになり、ボイド(地面)が芝生に変わります。ちょっとした演出とともに、誰もいじることができない町になるんです。クリアした町はイズベルグ(敵)に襲われることもありません。

前田:今までは、ストーリーで町の復興という話がよく出てくるのですが、何が復興なのかというところは、よくわからなかったんですよ。やはり、このゲームで“復興”と言えば、人口を復活させることでしょう。以前TGSなどで、何人かを復活させることが目標というイベントを行ったのですが、やはり目標があったほうが集中して遊んでもらえることがわかったので、今回ステージクリアの要素を入れさせていただきました。

『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』
『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』

──クリアしたら、また新しい町を1から復興させていくことになるんですよね?

ディラン:そうです。フレンドの町など、好きな町に行けます。βテストで長く遊んでいる人の行動を見てみると、フレンドの町に行ったり、自分の町に戻ったり、同時に3つくらいの町で遊んでいる人がいたんですよ。そういう感じのプレイが、一番望ましいし、一番楽しいと思います。それぞれの町に参加して、クリア時にトップ100になるとポイントが手に入るので、ほかの町を手伝うメリットもありますよね。

──流しのスペシャリストとして、いろいろな町をわたり歩くのも楽しそうですね。

ディラン:秘密警察のように悪い行動をしている人を探して、町をわたり歩くのも楽しいと思います。

──キャラクターの成長要素としては、最終的に全スキルをMAXにすることはできるのでしょうか? それとも、特化させたほうがいいのでしょうか?

前田:サービスが続いていくうちに、いつかは到達できるかもしれませんが、現状ではできないようになっています。

ディラン:基本的には、すべてのスキルをMAXにしようとするのではなく、自分に向いたスキルにポイントを振って、自分の方向性を決めたほうが、ロールプレイっぽくていいかなと思っているんです。全員がスキルMAXで同じだと、おもしろくないじゃないですか。

──そうなると能力のリセットができるのかも気になるところですが?

ディラン:将来的には考えています。βテストで慣れたユーザーさんからは、そういうリクエストがすごくきているんですよ。

前田:マッチングの関係上、1アカウントにつき1キャラクターになっているので、能力の振り直しについては、いろいろと考えています。

──そのほかに、製品版から入る要素があったら教えてください。

ディラン:βテストではあまり話題にならなかったのですが“ストレッチガン”がおもしろいんですよ。壁を狙って撃つと土を伸ばしてステップを作れます。これが結構楽しいんですよ。

──コミュニケーション手段は、今までと変わらない形になるのでしょうか? 製品版でも、文字を打ったりチャットしたりといった要素は導入しない予定なのでしょうか?

前田:そうですね。コミュニケーション手段に関しては、今後もいろいろと対応したいとは考えています。もともと、少し不自由なコミュニケーションでやり取りすることがコンセプトなので、チャットなどを入れる予定はありません。

 ただ、もう少し、プレイヤー同士が直接コミュニケーションを取りやすいツールであったり、ギミックであったりといったものは検討しています。

──オープンβであった意見で、町に着いて、まず何をしていいのかわからないという意見をいくつか聞きました。

前田:じつは、クローズドβだと町に説明用の“国民百科端末”を配置していたんですよ。ユーザーさんがその施設を調べて、どういうゲームなのかを把握していたのですが、オープンβだと開始してすぐに国民百貨端末が壊されてしまって、説明を読む機会がなくなってしまったんです。製品版では壊れない初期施設として配置されているので、迷ったときには“国民百科端末”を見てください。どんなプレイをすればいいのか把握できると思いますよ。TVモニターのような大きな端末です。

──ユーザーさんのプレイ動向を見ていると、1つのことに集中して遊んでいる人が多いみたいですね。

ディラン:日本人に限った話ではないですが、みなさん作業をするのが好きみたいで、ずっと同じことをしてますね。ストリーミングを見ていても、ずっと木を作るだけの人や木を植えるだけの人がいたりして、おもしろかったです。

 人によって違うといえば、自分のいる町ごとにランマーで地面にブロックを作ると色が変わるようにしました。今までは赤ピンクのブロックだけだったのですが、自分の町でスクリーンショットを撮るとカラフルになるので、ちょっとしたところですが楽しめるところですね。

前田:別の町にある木の苗を持ってきて植えると、持ってきた町特有の形をした木が生えるのもちょっとした違いの部分ですね。別の町と行き来することで、町づくりのバリエーションが増やせるようになっているんです。

──オープンβでは、資源が足りないと言いつつ、みんなメタルをムダ遣いしている様子も見られました。資源のバランス調整は大変だと思いますが、製品版ではどのようなバランスに調整されているのでしょうか?

ディラン:少しだけ調整していますが、タウンホールを作る条件になっているので、メタルに関しては基本的にオープンβのときと変わりません。ただ、タウンホールを作りたいのにムダ遣いをされてしまったときも、建物を解体すると資源が半分戻るようになりました。

前田:資源が戻るようになったので、βテストのときよりも町づくりを間違えてしまったときのフォローはしやすくなったと思います。

ディラン:嫌がらせプレイで看板を適当に作られてしまっても、そこまで痛くないようになっています。

前田:ムダな物を建てられることに関してはSIEさんとも検討しました。一番問題なのは労働局がたくさん建つことなので、これ関しては1つしか建てられないように制限をかけています。製品版ではムダに労働局が作られて、建設リミットを圧迫したり、資源が使われたりすることはないと思います。

ディラン:細かい部分をいろいろといじって、最終的に発売できるようにバランスをとりました。そこはβテストをやってよかったところですね。自由度を残しつつ、できるだけプレイに支障がないようにしています。

サービス開始後の運営について

──これまでαテストやβテストをされてきましたが、聞こえてきた意見で一番多かったものを教えてください。

ディラン:βテストだと、一番多かったのは悪質行為に対する意見です。あとは、基本的に自分の町をもっと自分の町らしくしたいという声がありました。

──同じ町をずっと作り続けたいという意見もあったのでしょうか?

ディラン:それは、あまりなかったですね。条件を満たしてステージをクリアするほうが、達成感があって気持ちいいと思うんですよ。最初は1つの町だけでがんばろうと思ってしまうみたいですが、βテスト後半などでは、別の町を冒険したり、フレンドの町に行ったりと、けっこうみなさんいろいろな町を行ったり来たりしていましたね。

前田:同じ町でずっと遊びたいという方もいるとは思うのですが、アップデートでクリアした町にも入れるようになるところで対応したいなと思っています。今後のアップデートで、この町は長くプレイできるとか、この町は難しいといった差別化もできるようになるのではないかと思っています。

──難易度が違うほうが、より長く楽しめそうですね。

前田:そういう意味では、参加人数自体が少ない町、といったようなものもできたらいいな思います。あとは、ユーザーさんからの意見で多かった、貢献度のバランスについてですね。「バス停で待ち構えて、他人が掘ってきたものを倉庫に入れるのが一番得なのではないか?」と言う意見がすごくありました。そこはバランスを調整して、島で作業する人などにも貢献度がプラスで入るようにしていますので、貢献度のバランスに関してもよくなっているのではないかと思っいます。

──でも、このゲームは共産主義がモチーフですから、あまり効率で考えてほしくないところですね。

前田:自分たちもそう考えていたのですが、みなさん思いのほか、しっかり貢献度を把握しているようなんです。全員で町を運営するゲームと言ってはいるのですが、やはり気になる人は気になるようですね。

ディラン:どこの国の人でも、最初の3時間は、このゲームのエッセンスである“社会主義のもと、全員で手伝うゲーム”という部分がなかなか理解できないみたいです。普通のゲームだと自分が神様で、自分がすべてという感じですからね。このゲームは、少しずついろいろな人と協力するのがうれしくなる作品なんです。

 最初の数時間は「え? なんで自分のアイテムが取られちゃうの?」と思うのですが、すぐに「自分が投げたアイテムを誰かが拾ってくれた」という方向に考え方が変わると思います。そこが、本作のいいところだと思いますし、ほかのゲームと比べても違うところなのではないでしょうか。

『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』

──そこは普通のゲームとはかなり違いますよね。だからなのか、イベントなどでの試遊の様子を見ても、普段ゲームを遊ばないような人たちが気にしていたように見受けられました。

ディラン:そこが不思議なところです。見た目も違うし、遊び方も全然違うのが理由なのではないでしょうか。うちの会社でも、技術者の奥さんに遊ばせると、普段ゲームを遊ばないのに1日中遊んでいたそうです。

 そういう様子を見ていると、意外とゲーマーじゃない一般の人にも受ける気がしますね。このゲームは操作が複雑ではないので、小さな子どもでもすぐに理解して、世界観に吸い込まれるような感じで遊んでいるように見えました。

──βテストのときに小さなお子さんたちが、バスで運ばれてきた資材を資材置き場に繰り返し持っていく姿なども見られました。

ディラン:5才くらいでも、作業の効率に気づけば、そればかりやって楽しめると思います。そこは『マインクラフト』などのサンドボックス型ゲームに近いところがあるかもしれません。サンドボックス型のゲームではないのですが、掘って作業するところは似ているのかも?

──いよいよサービスが始まるわけですが、運営についてはどのように考えられているのでしょうか?

ディラン:できるだけ多く更新したいと考えています。少しずつ更新しながら、ときどき大きな要素を用意していく予定です。プレイヤーの遊び方を見て、調整していこうと考えています。バランスも少しずつイジると思いますが、バランスだけではなくて新しい島など、少しずつ新しい要素も入れようと思っています。できるだけユーザーさんと一緒に作っていきたいですね。今の段階でも、プレイした日本人や外国の人と直接話して交流するようにしています。

前田:意見が多いものほど、アップデートでの対応も早くなるとは思います。そういう意味では、先ほどのコミュニケーションツール関係がそうですね。これは、要望が多かったので、アップデートで入れたいと思います。

──ユーザーの意見を取り入れたいとのことですが、ユーザーとのコミュニケーションの場は、既存の掲示板やSNSになるのでしょうか?

前田:現状、掲示板を設ける予定はありません。ただ、運営としてコミュニティサイトを立ち上げる予定はあります。運営側から毎月施策を出して、ユーザーさんとやり取りをしていく形になるかと思います。

 例を挙げると“政策投票”というものがあるのですが、それを月1でやりたい。たとえば、ツイッターを通して今月はこういう施策が3つあると発表します。「ユーザーのみなさんはどれがやりたいですか?」という投票をツイッターで募集して、1位になったものをゲーム内で反映させていく形ですね。「メタルをたくさん出現させる」とか「ブラックマーケットの値段を安くする」とか、そういった施策をいろいろ出して、毎月投票を行おうと考えています。ほかには「今月一番採掘した人は誰でしょう?」といったランキングを行い、トップに入ったユーザーさんにはプレゼントを送らせてもらうといったことも考えています。

──要望があったら、コミュニティサイトに送ればいいんですね?

前田:サイトのご意見箱的なところに投稿してもらうか、公式ツイッターにメッセージを送ってもらう形になると思います。

──あらためて現在の心境を教えてください。

ディラン:運営タイトルは初めてです。全然先が読めないですね。ただ、βテストの反応がすごくよくて、SNSなどでみなさんがいろいろと語ってくれているのがうれしかった。そんな反応を見ても、まだリリース後の想像はできていません。みなさんが喜んで遊んでくれたらうれしいですね。

前田:開発5年間ぶんの想いがありますからね。ここまでくるのに、いろいろありました。

ディラン:リリースしてからも、みなさんが遊んでいる間にどんどん更新していければと思います。そういう意味でも、まだ仕事は終わっていません。やっとみなさんに遊んでもらえるというところだけは、ちょっとうれしいかな? まだまだ入れたいものやいじりたいところもあるので、ユーザーさんの反応を見て運営していくことが楽しみですね。

前田:今の仕様は最初から提案していたものだったのですが、技術的に難しくて途中であきらめて、全然違うゲームジャンルになっていた時期があったんですよ。それが、技術的な解決によって実現できた。これだけの多人数で非同期、でも世界が共有しているという実験的なタイトルが、やっと発売できることになりました。5年ぶんの苦労が、やっと報われる感じがしています。

ディラン:いろいろなゲームがありますが、このゲームは完全にオリジナルです。この形にしたかったという一貫した理由はなくて、いろいろなことをやりながら、まとまりました。

 町を作って作業をするという行為が、こんなに楽しくなるとは思わなかったですし、自分でも後からわかったこともあって興味深かったですね。地味な作業の繰り返しでも、人間は楽しめるのだとわかりました(笑)。

──共産主義がルールになっているのは新鮮ですよね。

前田:今のゲームシステムになる前から共産主義というビジュアルイメージだけで進めていたので、ゲームの仕様ができたときに、共産主義がものすごくマッチすることに気づいたんですよ。ある意味、偶然でできあがった部分だとも言えます。

──自分が作ったものが他人に使われてしまう感覚は、共産主義ならでは。町共有のものになってしまうという感覚は、日本に生きる自分たちだと慣れないところがあるように感じました。

ディラン:ホバーカーを勝手に乗って行かれてしまうところもそうですね(笑)。自分は持っていかれないように隠して、基本的には歩いて採掘しに行きます(笑)。マトリョーシカは2個しか持てないので、自分のぶんは隠しちゃったりとか。

 持ち物といえば、今回追加した要素として、作業するときに自分の手持ちの資源も計算に入るようにしました。例えばメタルが3つ必要な場合、町の資材としては2つしかなくても、自分の持ち物内に1つあれば、手持ちも合わせて計算され、作れるようになっています。

前田:あとメタル3個でタウンホールを作れるなら、メタル3個を所持した状態で作業場に行けば、タウンホールを自分で作れるわけですね。

ディラン:「自分が作りたかったのに、別の人が作っちゃった……」という気持ちを、ちょっとだけ回避することができるでしょう。

前田:ゲームの設計自体が、あまり便利にし過ぎないという変わった調整をしているんです。バックに入れられる資源の数を増やしたときもあったのですが、それは不便じゃないので問題だということになりました。なるべくゲーム内での仕事を増やしていく方向に調整しています(笑)。

ディラン:多少は不便にしないと、みんなで協力しなくなってしまいますからね。どんな要素でも、「これはプレイヤーにとってどんな仕事になるの?」と考えて、「ちゃんと仕事になるの?」と聞くんですよ。ちゃんと仕事になると、ゲームが楽しくなってくるんですよ。

『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』

──このゲームは考え方の時点から、ほかのゲームとは違いますよね。

ディラン:作業台でモノを作るのにも、15パズルを解かないといけませんからね(笑)。じつは作業台で行う15パズル単体のスマホアプリも配信予定なんです。ゲーム本編と連携するものではなく、あくまでもパズル練習用のアプリ。15パズルはそこまで難しくないとは思うのですが、苦手な人たちのために練習がいつでもできるようにと用意しました。

──黙々と遊んでしまいそうですね。

前田:自分も最初はパズルが解けなくて、インターネットで15パズルの解き方を調べて練習しました。セオリーを知ってからは解けるようになりましたが、ディランの解き方とは違うんですよね。自分は2列目までは数字通りに組んで、最終列だけは決まった法則で解いているんです。

ディラン:自分は最後の数字だけをちょっと入れ替えています。最後のステップは、人によって違うみたいですね。

前田:ただ、自分が解いているセオリーはこのアプリだと使えないので、このアプリは、自分にとってはすごく難しいですね(笑)。

ディラン:アプリは、練習のために穴がランダムで出現するようになっています。ゲーム本編よりも難しくなっています。

──パズル中、後ろで待っている人がいるとプレッシャーになって焦ったりもしますよね。パズルをしているときにその上に乗って見えなくするといったイヤがらせをする人もいたようですね。

ディラン:捕獲ツールを置いてジャマをする人もいましたが、そうしたイヤがらせは対策させてもらいました。

──サービスが開始すると、悪質行為をするユーザーの行為も、またいろいろと変わってきそうですね。

ディラン:こちらも対策はしてあるのですが、そういう人たちは対策をしても、また別の違うやり方を見つけてくるでしょうね。でもそこは、みなさんで協力して、どう対処するか考えていけばいいと思っています。

前田:単に悪質行為だからと厳しくしてしまうと、今度は自由度が失われてしまいます。そこのバランスは難しいですね。

──サービス開始が非常に楽しみです。最後にひとことずつメッセージをお願いします。

前田:人の数が少ないときは歩いているシルエットなどが表示されるようになっているので、βテストのときは閑散としている印象を持ったユーザーさんもいたかと思いますが、もう少しだけ、ほかのプレイヤーの存在を感じられるようになっています。本当に細かい部分をいろいろと調整していますので、そのあたりは運営が始まってから改めてお話させてもらえればと思っています。

ディラン:このゲームは、自分が作ったゲームのなかでも一番長時間遊ぶゲームになっています。βテストでも、本当に長時間遊んでくれているのを見かけました。サービスが始まるのが本当に楽しみです。

(C)Sony Interactive Entertainment Inc.

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