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2016年9月15日(木)

『ReCore』の魅力を稲船敬二さんが紹介。コアボットの幅広いカスタマイズとシンプルなシステムに注目

文:イトヤン

 日本マイクロソフトより、9月15日に発売されるXbox One/PC用ソフト『ReCore』。本作のクリエイターである稲船敬二氏に、このゲームの魅力や開発時のエピソードを聞くことができました。

『ReCore』

 『ReCore』は、『ロックマン』や『鬼武者』などで知られるゲームクリエイターの稲船敬二氏と、『メトロイドプライム』を手がけたスタッフが設立した“Armature Studio”が制作した、新世代のアクションアドベンチャーです。

 ロボットが支配する惑星“ファー エデン”で、わずかに残された人類の1人であるヒロイン“ジュール・アダムス”が、ユニークな能力とパワーを持つ勇敢な仲間ロボットたちと友情を育み、人類の滅亡を企てる敵ロボットに立ち向かいます。

 今回の稲船氏のインタビューを行うにあたって、Xbox OneおよびWindows 10向けのゲームラインナップを紹介するイベント“Xbox Showcase”の会場で、『ReCore』を実際に試遊することができました。その感想をもとにして、稲船氏にゲームのお話を伺っています。

『ReCore』
▲画面の中央左にいるのが、ヒロインのジュール。そして中央右が“コアボット”と呼ばれる仲間ロボットです。なお、試遊台はE3バージョンとのことで画面表示が英語になっていますが、製品版は英語音声・日本語字幕でプレイできます。

●動画:『ReCore』ゲームプレイ トレーラー

敵ロボットの倒し方によって、どのようにレベルアップさせるかを選べる!

――実際にプレイしての感想ですが、敵ロボットをただ撃って攻撃するだけでなく、敵の色にあわせてこちらの攻撃を変えるなど、頭を使う要素も盛り込まれていますね。

 はい。ですが、やるべきことはわりとシンプルに決まっているんです。敵のコアの色にあわせて攻撃を変えるのも、たとえば敵のコアが赤色なら攻撃も赤を選べばいいといった具合に、シンプルにプレイできます。

 もしこれが属性の関係で「火に効果的なのは水」などと言われると、そこでもう一回考えなくてはいけなくなりますよね。そうではなくて、赤には赤をあわせればいいんです。そういうところはシンプルにしながら、撃つ前にちょっとだけ考えるという形ですね。

『ReCore』
『ReCore』
▲青いコアを持つ敵ロボットには青色を、赤いコアを持つ敵には赤色をという具合に、ライフルの弾を変更することで効率よくダメージを与えることができます。弾の色は十字キーを押すことでワンタッチで変更可能です。

 そうやって敵を連続して撃つと、コンボがどんどん増えていきます。コンボを増やすとただ点数が上がるだけでなく、敵ロボットがお腹を見せるようになり、コアを引き抜きやすくなるんです。

――“エクストラクター”で、コアを引っ張り出せるんですね。

 通常は、敵のコアを引き抜くにはテクニックが必要なんです。しかし銃撃でのコンボがある程度決まると、100パーセント引き抜けるようになります。そのためにコンボをどこまでつなげればいいのかは、ゲージをよく見ればわかるようになっています。

――なるほど。ところで引き抜いたコアは、どのように使うのですか?

 同色のコアを集めることで、その色のコアを強化できます。主人公の仲間になるコアボットたちにもコアがあり、コア自身にパーソナリティが存在します。

 コアの外側の犬やゴリラの姿を形作っているフレームには、性格はありません。コアを犬のフレームにはめ込むことで、性格が発揮されるようになります。

 また、コアを集めてレベルを上げることで、コアボットを強化できます。たとえば青のコアを強化したいと思ったら、敵から青のコアをどんどん抜いて集めればいい。でも赤のコアを抜いても、青のコアは成長させられないんです。

『ReCore』
▲ヒロインのジュールは、“エクストラクター”と呼ばれるワイヤーのような道具で、敵のコアを引き抜いたり、写真のように閉ざされた扉を開いたりすることができます。

 一方で、敵ロボットからコアを引き抜かずにそのまま倒すことで、パーツを拾うことができます。そのパーツはコアボットたちのフレームのカスタマイズに使えます。しかしコアを引き抜くと敵ロボットは爆発してしまい、パーツを拾うことができなくなります。

――つまり、コアを集めるかフレームのパーツを集めるかは、敵の倒し方によって変えられるんですね。

 そういうことです。敵の倒し方によって、2種類のレベルアップをプレイヤー自身で選ぶことができます。このように、本作でプレイヤーがやるべきことはたくさんあるんですけれど、基本的にはどれもシンプルなんです。

 赤いコアの敵を攻撃する際は赤の弾で撃つ、青いコアを強化する際は青のコアを集める。非常にシンプルですよね。

――シンプルな要素がいくつも重なることで、奥行きが出てきているように感じました。

 プレイヤーさんを飽きさせないためには、いろいろな要素があったほうがいいわけです。しかし要素がありすぎると「わからない。できない」となってしまうこともあります。それを避けるのがこのゲームの特徴でもあるので、1つ1つの要素はシンプルにしています。

コアとフレームの組み合わせを自由に楽しんでほしい

――それにしても、動物の姿をしたフレームではなく、コアのほうに性格があるというのはおもしろいですね。コアの性格には、どんな種類があるのですか?

 コアには赤、青、黄の3種類があるので、性格も3種類です。赤はアグレッシブで豪快な性格、青はスピード重視、黄色は臆病な性格ですね。

 ちなみにフレームに黄色のコアを入れると、前には出ないで後ろから飛び道具で攻撃するようになりますよ。青だとどんどん敵に突っ込んでいくし、赤だと炎で一気に焼こうとするようなパワフルな攻撃を繰り出します。ちなみにフレームは5種類用意されています。

――このキービジュアルに登場している5種類でしょうか。

『ReCore』

 はい。犬には青のコア、ゴリラには赤のコアといったようにベースはありますが、それを入れ替えるのもプレイヤーの自由です。犬に黄色のコアを入れると、後ろから電撃で攻撃したりするようになります。

 ですので、どのコアとフレームを組み合わせると自分のプレイスタイルにあうんだろうだとか、このボスにはどの組み合わせが戦いやすいだろうといった具合に、いろいろと考えてみてください。

 “この敵にはこいつを連れていかないと絶対に勝てない”といったような、厳密なものはありません。あくまでサポートキャラクターとして、こいつと一緒だと戦いやすいなぁ、と思えるような形にしています。

――まさにペット感覚ですね。

 そう、あくまでもペットのように接していただければと思います。

――フレームのデザインも、個々のパーツを切り取るとあまり動物らしさを感じないのですが、すべて組み合わさるとまさにペットのようで、すごく愛着がわく感じですよね。

 その点も強く意識しました。パーツの顔自体は、ぜんぜん犬やゴリラには見えないですよね。でも動きや仕草を上手く作ることによって、ちゃんと犬に見えるようになるんです。

 犬のロボットを作るのは簡単ですがロボットで犬を表現するのは難しいので、今回は“ロボットで犬を表現する”ということにチャレンジしてみました。

『ReCore』

――フレームのほうは、パーツを集めることでカスタマイズが可能とのことですが?

 フレームは5種類ですが、パーツをカスタマイズすることで、犬でもぜんぜん違った外見の犬になります。犬なのにカラスの頭がついていたりとか(笑)。この世界には、変なレアパーツを作っている伝説の博士がいるんです。

 そういったパーツを入手することでおもしろいフレームを作ることもできますし、普通にかっこいいパーツを組み合わせることもできます。カスタマイズで自由にコアボットを作り、SNSなどで自慢してもらえたら嬉しいですね。

――ところで、先ほどコアが3種類でフレームが5種類と仰っていましたが、なぜ数に違いが?

 コアが5つでフレームが5つですと、コアを入れ替えなくてもいいですよね。しかし、コアが3つしかないのにフレームが5つ手に入ったら、入れ替えて試してみたくなるじゃないですか。

 そういったことも考えて、フレームとコアの数を変えたんです。これも自分としては、シンプルに物事を考えた結果ですね。あと、一度に連れていけるコアボットは2体までなんですが、1体が出ている時にはもう1体は引っ込んでいます。

――試遊ではプレイヤーがボタンを押すことで、2体を自由に交替させることができました。

 ちなみに敵がいるところにたまたま交替したロボットが落ちてくると、敵にダメージを与えられます。どこに落ちるのかは分からないので、そこは偶然なんですが(笑)。

 実は最初は、2体を同時に登場させていたんです。しかしそうしてしまうと、どちらのコアボットに命令を出せばいいのかなど、そういったことで悩み始めてしまいます。シンプルにしようというゲーム性からズレてくるんですよね。

 しかも、2体のコアボットたちが勝手に攻撃してしまい、プレイヤーが何もやってないような感じになってしまった。

 そこで、一度に登場するのは1体にして、その1体にアタックボタンで攻撃の指示を出す。そしてもう1体と交替させるという風にしたら、ゲームとしてはよりシンプルでわかりやすくなったんです。

シンプルにそぎ落とすことで、わかりやすいゲーム性に

――お話を伺っていて感じたのですが、本作の開発では“シンプル”という考え方を大事にされているように思いました。

 本当のことを言うと、最初は「あれも入れたい、これも入れたい」といった大きな構想で、マイクロソフトさんに提案していました。でもそれだと「あと1年かかります、あと何億円かかります」という話になってしまうんです。

 このゲームはXbox OneとWindows 10のクロスデバイスで遊べるタイトルの第1弾ということもあり、発売時期が確定していたんです。予算のほうもAAAの超大作クラスではなかったですから。

 その限られた枠の中でやっていくとなると、何を削って何を残すかというのが、すごく重要になってくる。たとえばこのゲームには、オンライン要素はまったくないんですよ。

――えっ、そうなんですか!?

 はい。オンラインランキングのようなものもありません。オンライン要素を入れてしまうとチェックにすごく時間がかかってしまうので、そのぶんの時間と予算を別の要素に生かしたかったんです。

 決められた枠の中でやっていくには、優先するべきもの以外をどんどんとそぎ落として、シンプルに物事を考えていかざるを得ない訳です。

――“Xbox Showcase”のプレゼンテーションで稲船さんは、「『ReCore』の開発は“西洋と東洋の融合”だ」と語られていましたが、そぎ落としてシンプルにしていくというのは、非常に日本的な発想ですよね。

 そうですね。決められた枠のなかで作るというのが、日本人は得意じゃないですか。そういう意味で、日本的なゲームの作り方はできたかなと思います。

 でもそのなかで、アメリカ的なゴージャスなところは残す。予算自体はAAAタイトルほどではないですが、グラフィックスの見た目はAAAに見えるように頑張りました。

 もちろん、もっとこういうふうにしたいという発想もたくさんあり、それを入れられれば良かったという部分もあります。しかし、これまでお話ししたようにシンプルに考えたからこそ、わかりやすいゲーム性になったとも思いますね。

『ReCore』

アクションRPGとして高い完成度に仕上がっているので先入観を持たずに楽しんでほしい

――ちなみに、ゲーム全体のボリュームはどのくらいなのでしょう?

 実はゲームを最初から最後までつなげた形でのチェックは、僕らもなかなかできなかったんですよ。各パートごとにチェックしたイメージで計算すると、だいたい10時間ぐらいかなと思っていました。

 ところが先日、すべてがつながったバージョンをcomceptのディレクターが遊んだら、なんと40時間かかりました(笑)。しかしそれは「このダンジョンではアイテムを全部取ってない気がする」だとか、いろんなものに手を出していった結果ではありますが。

 ですので迷わずに進めば10時間ぐらい。いろいろと探索したり迷ったりすると40時間ぐらい、といった感じだと思います。

――すごいボリュームですね。なお、この作品のキーワードをあえて挙げるとしたら、どういったものになるでしょう?

 本作のタイトルの『ReCore』は、“コア”という言葉からきています。そもそもロボットのコアをどのように集めて、どのように使っていくのかというのが、ゲームの部分でもストーリーでももっとも重要なことですから。

 それと同時にこのストーリーでは、人類のなかで生き残った人たちがコアとなって、これが再び広がっていくということも表しています。ですのでタイトルを決める際、コアという言葉を取り入れた『ReCore』というのは、わりとすんなり決まりましたね。

――ちなみに、先ほどお話しを伺ったコアに感情を入れるというのは、当初からあった発想なのでしょうか?

 実はこれは、ロボットのデザインから思いついたんです。どんなロボットを作っていくのかとデザインしたなかにコアの要素があって、これを入れ替えるとおもしろくなるね、と。ですのでデザインのほうからの発想です。

『ReCore』

 「ゲームの発想はどのようにして考えられるんですか?」とよく聞かれるのですが、僕の場合は絵であったり、シチュエーションであったりというのを思い浮かべて、これをやりたいと考えることからスタートします。

 このゲームであれば、砂漠にたった1人、女の子がポツンと立っていて、その周りにロボットがいるという、こういったシチュエーションのゲームを作りたいなという発想がまずありました。

――まさにキービジュアルのような光景ですね。

 発想というのは、理論からは生まれないんです。発想から生まれたものをおもしろくしていくために、理論が必要になる。

 その最初の発想はビジュアルから来ます。このビジュアルをどうおもしろくしていくか、というように、ビジュアルからアイデアが膨らんでいくことが多いですね。

――発売を楽しみにしている人に向けて、ぜひ注目してほしいという点がありましたらお聞かせください。

 本作はアクションRPGとして、かなり完成度が高いものになっていると自分では思っています。あまり意識したわけではないんですけれど、『ゼルダの伝説』のような肌触りになっていると思います。

――アクションだけではなく、そこに頭をちょっとひねって考える要素が加わっているところですよね。

 開発を担当したアーマチュア・スタジオが、『メトロイドプライム』を作ったスタッフというのも影響しているのかなと思いますね。

 海外のゲームのような部分もあるんですが、その一方で日本的なゲームだなと感じられるところもあるので、あまり先入観を持たずに楽しんでいただけたらうれしいです。

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