2016年9月19日(月)

『ガルパン』や『はいふり』とコラボする狙いは? Wargamingの今後をエライ人に聞いてみた【TGS2016】

文:田中尚道

 WargamingのCEOであるビクター・キスリー氏と、eスポーツなどの施策を世界規模で担当する“ヘッド オブ グローバル コンペティブ ゲーミング”のモハメド・ファダル氏のインタビューをお届けしていく。

Wargaming
▲ビクター・キスリー氏(左)とモハメド・ファダル氏(右)。

 Wargamingといえば、『World of Tanks』や『World of Warships』など、戦車や軍艦を操作して戦うゲームで知られるゲームパブリッシャーだ。

 また日本国内では、『ガールズ&パンツァー』や『蒼き鋼のアルペジオ ‐アルス・ノヴァ‐』、『ハイスクール・フリート』、そして新作アニメ『終末のイゼッタ』などとコラボするなど、一定のラインを保ちつつも、人気のあるコンテンツとタッグを組むなど柔軟な試みを行っている。

 そんなWargamingが、日本における今後の展開においてどんなことを考えているか? 同社が昨今注力しているeスポーツを含め、日本での施策についてお話を聞かせていただいた。

――今年もお会いできて光栄です。今回のTGSでは、いろいろな作品とのコラボを発表されていましたね。これらについての狙いを聞かせていただけますか?

ビクター・キスリー氏:我々の中で、アジアはひとくくりの場所ではなく、日本もあれば韓国もあり、ベトナム、シンガポール、タイなどもあります。

 そういうわけで、あるひとつの施策だけでアジア全体を喜ばせることは難しいと我々は知っています。アニメ関係のコラボレーションを進めさせていただいたのは、日本のユーザーに受け入れてもらえるように、との狙いが一番にあります。

――昨年お話しを聞いた際には、eスポーツをメインに進めていくと伺いましたが、実際のところ手ごたえはいかがですか?

モハメド・ファダル氏:もちろん宣言させていただいた通り、eスポーツに力を入れております。この1年でさまざまな技術の進歩であったり、システムの進歩もありました。ゲームのシステムもそうですし、トーナメントのシステム、レギュレーションも大きく変わっています。

 具体的な話ですと、最近新しいリーグが始まりましたが、大きく2つ変更点があります。1つは、最上位のゴールドチームはこれまで12チームだったものを、8チームにしたこと。チーム数を減らすことで試合の間隔をあけて選手にベストなパフォーマンスで試合に臨めるようにとの配慮です。これはプレイヤーからの要望だったのですが、それを聞いて反映した結果です。

 もう1つは、放送や試合の時間をすべてピークタイムに移動させたことです。具体的に言うと、社会人でも参加しやすい20時くらいの時間帯ですね。おかげで視聴者の方々が3倍ほどに増えました。

――日本でも徐々にeスポーツが認知され始めてきましたが、日本市場に向けてeスポーツを盛り上げていくような施策はお考えでしょうか?

キスリー氏:確かに成長している市場だと思いますが、まだまだゲーム用途のPCの普及が十分ではないと考えています。反面、日本ではモバイル端末の普及が著しいですよね。ですから私たちは『World of Tanks Blitz』に新しいトーナメントシステムを実装する予定です。

 これによって、今まで手作業で行っていたトーナメント表が効率よく自動的に作成できるようになります。より多くのトーナメントを皆さんに提供できるようになるわけです。多くの人員と手間がかかっていたトーナメントが、新システムにより100倍、1000倍の数行うことができるようになるんです。ちょっと大げさですけど(笑)。

――新たなシステムの実装で、どのようなことが起きると考えていますか?

ファダル氏:多くの人が多くの試合に参加することで、ゲームの裾野が広がり、(eスポーツの)土台ができあがっていくのではないかと考えています。たくさんの試合で競い合うことは、より強く、さらに上手くなりたいと考える方の助けになると考えています。

 『Blitz』での反応を見て、好評の様ならこのシステムをコンソールに移植することも考えています。日本ではPS4などのコンソールの普及率も高いですからね。そうすることで、より多くの方にeスポーツの体験を提供したいと思っています。

――今年のTGSはPS VRをはじめVRが話題になっていますが、Wargamingが提供するゲーム体験に、このような新しいテクノロジーを使用されるご予定はあるのでしょうか?

キスリー氏:VRは大きな市場となっています。ただ我々は、現状ではVRでの開発を行っておりません。理由としては、技術的な土台がないこと、そしてユーザー層もまだ見えないことです。

 かといって、まったく興味がないわけではありません。わが社ではVRを使用した映像コンテンツを提供しています。戦車の中を360度見ることができるものや、ドキュメンタリー風のものであったり。

 また、今年のわが社のブースでは、戦艦大和に乗っているかのような、VR技術を使ったアトラクションを提供したり、わが社のゲームの中に入れるようなコンテンツを用意したりしています。

――では、今後WargamingのコンテンツとしてVRを使用したものが出てくる可能性はあるというわけですね。

キスリー氏:仮にゲームに入れるとしたら、最初にやりたいのは“VRでの試合観戦”ですね。そうすることで目の前で戦車戦が繰り広げられているかのような感覚が得られるわけです。またこれは夢物語ですが、わが社が製作委員会に参加している『終末のイゼッタ』をVRで楽しめるようにしたいですね(笑)。

Wargaming
▲『終末のイゼッタ』キービジュアル。

――『終末のイゼッタ』には制作のサポートとして参加されるわけですが、気になる『World of Warplane』はいつごろ日本で遊べるようになるのでしょうか?

動画:World of Warplanes:Trailer

キスリー氏:とてもいい質問ですね。前にも言ったことがあるかも知れませんが『World of Warplane』は大変開発が難しいタイトルです。人間は空を飛ぶ生物ではありませんから(笑)。

 それを克服し、いかにゲームにするか? 他のタイトルとは異なるベクトルで考えないといけません。またわが社のタイトルは基本的にPvPです。対人戦のバランスの難しさや、複雑な操作系などといった問題が出てきました。

 ですから、我々はイチから開発をし直しているところです。そうすることでより多くの方々に遊んでいただけるように改良し、完了次第アジアの皆さんに遊んでいただけるようにしたいと考えています。

 また、これは確約できるものではありませんが、現在PvEで開発をやり直しております。これがテストでどうなるか、またPvPに戻るかもしれませんが、まったく違う何かを提供できるのではないかと思っております。

――ちょうど先月『Master of ORION』が全世界同時にリリースされましたがご感想はいかがですか?

動画:Master of Orion Release Trailer

キスリー氏:『Master of ORION』はわが社のタイトルとしては珍しく、“Free to Play”ではありません。本作は私が大好きだった作品のリメイクです。それが現在の技術でよみがえりました。ぜひ皆さんのお子さんであったり、今のゲーマーの方々に触っていただきたいと思っています。

 なぜこのゲームをリメイクしたかといえば、子供のころさんざん遊んだゲームだからです。それを皆さんにも同じ経験をしていただきたかったんです。

――ユーザーからの反応はいかがでしたか?

キスリー氏:大きく分けて2種類の方がいらっしゃいました。

 まず、私同様昔遊んでいたユーザーからは、「よくリメイクしてくれた!」とポジティブな意見をたくさんいただいております。もう一方の意見は、かつて本当にやり込んでいたユーザーになります。

 元の『MoO』は、非常に展開の遅いゲームだったのですが、そこを調整して遊びやすくしたところ、「なぜ昔のままにしないんだ!」とお怒りの声もいただいております。リリースされて1カ月ですが、多くのユーザーに楽しんでいただけていると思っています。

――『MoO』以外に昔のタイトルでリメイクされたいものはありますか?

キスリー氏:『Panzer General』と『Doom2』です。現在の技術で遊びたいですね。あ、別にリメイクするという話ではありませんよ(笑)。

――Wargamingはeスポーツを中心にさまざまな施策を展開してきたわけですが、日本のユーザーは『ガールズ&パンツァー』で入ってくるなどライトなユーザーも多いです。そういったユーザーに向けて、コラボ以外のフォローはあるのでしょうか?

ファダル氏:今まで我々が提供してきた施策やコンテンツ、プロジェクトはバラバラでした。なにがバラバラなのかといいますと、それぞれ好きな人が何かを選んでやっているという点です。

 今、私たちが計画しているのは、それらをちゃんとつなげることです。プレイヤーの皆さんには、それぞれについて遊ぶのではなく、ひとつを遊べばより多くの経験になるような形にしたいと思っています。

 ゲーム内にストロングホールドであったりクランウォーだったりというものが実装されていますが、それは一部の方が楽しむだけのコンテンツになってしまっていました。初心者や中級者がもっと気楽に遊べるようにしていきたいと考えています。

■“東京ゲームショウ2016”開催概要
【開催期間】
ビジネスデイ……2016年9月15日・16日10:00~17:00
一般公開日……2016年9月17日・18日10:00~17:00
※一般公開日は、状況により9:30に開場する場合があります。
【会場】幕張メッセ
【入場料】一般(中学生以上)1,200円(税込)/前売1,000円(税込)
※小学生以下は無料

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