2016年9月18日(日)
過去最大の来場者数で幕を閉じた“東京ゲームショウ2016”。会期中に実施したソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏へのインタビューを掲載する。発売を目前に控えたPS VRで吉田氏が注目するタイトルとは? また、新ハードPlayStation 4 Pro(PS4 Pro)についての素朴な疑問を聞いてみた。
──NYのカンファレンスでPS4 Proが発表されました。非常に高いスペックを有したハードですが、PlayStation 4(PS4)開発当初のように“開発者の意見を反映した”ハードなのでしょうか?
要望を受けたから、ということではありません。現行PS4のアーキテクチャをPCベースにすることで、以前のようにPlayStation用にカスタムしたチップではないため、自然にアップデートされるようになりました。
▲11月10日発売のPlayStation 4 Pro。 |
そういったPCの代替わりの良さを取り込みつつ、互換性を保ちながら同じプラットフォームのなかで、ハイエンドマシンとして提供できるチャンスが生まれたということです。PS4 ProのプロジェクトはPS4発売後に始まっていますが、そのときに4Kテレビが普及するだろうとわかってきました。4Kテレビ向けにハイレゾのレンダリングもできますし、フルHDテレビのユーザーにも解像度とは違った部分で、ゲーム体験のクオリティを上げることができます。このように幅広いユーザーから支持されるという、技術側からの思想から始まっています。
──HDRの映像技術は既存のPS4も含め対応ということですが、これまでHDMIでプレイをしていたユーザーが受けられる恩恵もあるのでしょうか?
かなり大きいと思います。デベロッパーさんがどこまでPS4 ProのパフォーマンスをフルHDバージョンのゲームへ適用してくれるかによりますが。すでに『ライズ オブ ザ トゥームレイダー』は4K画質で遊ぶこともできますし、フルHDの解像度でグラフィックやフレームレートを上げて遊ぶ、といったオプションが用意されています。このようなデベロッパーさんが増えてくるとフルHDで遊んでいる人のメリットも大きくなると思います。
PlayStation VR(PS VR)も同じで、現行のPS4向けに最適化したタイトルをGPUが倍になったPS4 Proで表現すると一味も二味も変わってくる。ひとつの使い方として、レンダリングするターゲットの解像度を高くして、最終的に小さくして映すと同じVRハードでもより高精細に見えるです。この手法はPS4向けに使用しているタイトルもあるので、そのようなタイトルは解像度を上げずにライティングなどのエフェクトを追加することで、よりキレイに表現できることが分かってきました。
PS VRのローンチタイトルがマスターアップしていくなかで、PS4 Pro向けにいろいろ挑戦しているところです。タイトルにもよりますがビックリするほどの効果がある場合もあります。もちろん、PS4でも素晴らしいVR体験が楽しめますが、比較するとやっぱり差が出ますね。壁に描いている文字がみえるとか。4KテレビがなくてもPS VRに興味があるならPS4 Proを購入する価値はあると思います。
▲PlayStation VRは10月13日に発売にいよいよ発売となる。 |
──PS VRとPS4 Proを使って通常のゲームをシネマティックモードでプレイするとどうなるのでしょう?
ゲーム側の解像度が上がっていればクオリティはアップすると思います。
──今後は高品質で作られたタイトルを、現行のPS4用に調整するというイメージで開発していくのでしょうか?
そういうわけではありません。PS4 Pro専用タイトルもありません。PS4は全世界で4000万台以上(2016年5月22日時点)普及していて、それだけ多くのユーザーさんが遊んでくれているハードです。デベロッパーさんやパブリッシャーさんは現行のPS4をターゲットにしつつ、PS4 Proならではのパフォーマンスを活用して4Kテレビ向けやHDTV向け、PS VR向けとプラスアルファを追加する流れになると思います。HDRに関しては両方で対応できるので、HDR対応するタイトルに関しては関係なく楽しめるようになると思います。
──そのあたりについて、ユーザー側としては有償アップデートになるのでは、という懸念もあるようですが。
弊社の『The Last of Us』や『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』といった過去のタイトルに対してのパッチについては無償で行います。ライセンシー様に関しては、現状で有償パッチという話は聞いていません。このパッチは過去のタイトルで新しいユーザーを開拓したいという思いもあります。
──すでに発売されている各タイトルでPro用にアップデートをしていこうというデベロッパーさんがいたらやってくださいという認識でいいですか?
はい、どうぞやってくださいという認識です。
──4K画質の将来性やPS4 Proが出ることについて各メーカーさんの反応はどうですか?
4Kでできるのか、という最初の疑問は当然だと思います。ドット数で4倍、GPUで2.3倍ですからね。ところが、いろいろ工夫していくと4Kと完全に同じではなくても、それに近い映像を作れることが分かってきました。
PS4 Pro自体が、4Kテレビ向けのクオリティを含めて考えられていました。開発中は検証していくプロセスはありましたが、やればやるほど効果が出せることがわかって、開発陣も自信を深めています。ちょっと手間はかかりますし、試行錯誤も多いのですが、やればやるほど効果を出せる。解像度をただ上げただけではないと分かっていただけたので、評判も上々です。
ただ展示していた『DAYS GONE』や『Horizon Zero Dawn』もまだまだ試行段階です。『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』や『The Last of Us』はパッチ対応のタイトルはもう最終段階に入っていますが、来年発売するタイトルは時間があるので、現状よりキレイになっている可能性もあります。そこはライセンシー様のタイトルも同じだと思います。
▲2017年3月2日発売と発表された『Horizon Zero Dawn』。 |
──環境がそろっている人にとって11月10日の時点で4K対応のタイトルはどのぐらいの数が楽しめるのでしょうか?
弊社ですと数タイトルといったところです。まだマスターアップしていないので、確実に11月10日にパッチが出るとは言えません。『コール オブ デューティー モダン・ウォーフェア』や『ライズ オブ ザ トゥームレイダー』など、他社さんを含めるともっと多くなります。
──PS VR発売まで1ヶ月を切りました。『サマーレッスン』なども具体的な製品仕様が公開されました。まだユーザーには初めてのハードということもあって、ゲームのボリュームや「どう楽しんだらいいのか」がわからない人も多いと思います。吉田さんが注目しているのはどのタイトルですか?
▲『サマーレッスン:宮本ひかり セブンデイズルーム』。 |
PS VRは特定のIPが大好きな人にはたまらないと思います。『アイドルマスター』も完成度が高いと評判です。『ダンガンロンパ』もシリーズファンならさらに楽しめると思います。自分が好きなIPのタイトルがあれば、まずはそれをオススメです。
▲『アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション』。 |
それを言ったうえで、何がオススメですか? と聞かれたときに私が答えるのがまず『サマーレッスン』ですね。デジタルのキャラクターが本当に“そこに居る”と思える。この存在感は未知の体験だと思うので、1人でも多くの方に体験してドキドキしてほしいですね。
もう一つは『PlayStation VR WORLD』というオムニバスのゲームです。これは過去にものすごく評判の良かったデモ『Ocean Descent』や『The London Heist』といったクオリティの高いコンテンツが5本入っています。これらは今までのデモではお見せしていないフルバージョンが入っています。これ一本あれば人を呼んでプレイする時に接待としては完璧です。
▲『The London Heist』。 |
三本目はゲーム好きにオススメしたい『RIGS Machine Combat League』です。VRの場合はゲームよりも体験を良くする傾向があるので、何度も遊ぶものでなかったり長く遊ぶものでなかったりするものもあります。ですが『RIGS Machine Combat League』はオンラインシューターでチーム制のeスポーツのようなゲームです。やればやるほどうまくなって、知っている人と遊ぶと戦略を組むのも面白い。ゲーマーやシューター、あるいはロボットに乗ってみたいという人にもオススメです。
▲『RIGS Machine Combat League』。 |
ほかにも、特にゲーマーでなくても楽しめるのが、無料でついてくる『THE PLAYROOM VR』です。VRヘッドセットをかぶった人とそうでない人が同じ部屋でマルチで遊べます。これはユニークなコンセプトだと思っています。VRが引きこもってプレイするものというイメージでいる人に対して、みんなでワイワイ遊べるものだというのを知ってもらうために無料で配信します。
▲『THE PLAYROOM VR』。 |
──『RIGS Machine Combat League』はマルチ対戦というのもすごいですが、遅延などの対策もされていますよね。
それを証明したかったんです。オンラインで遠くの人と遊ぶのは楽しいですし、それをVR空間で体験できたらこれ以上ないエンターテイメントですよね。あとVR空間で難しいとされていた“自由自在に動き回る”ことにも挑戦しているのですが、これがものすごく大変でした。
──やはり酔いですか。
そうですね。“右スティック問題”というのがあって、左スティックによる前進後退は問題ないのですが、右スティックで自分の向きを変えるととたんに気持ち悪くなってしまう。これを解消するために本作ではチュートリアルで“右スティックによる方向転換”と“頭の向きに連動”という2つのモードを用意して、その人に合ったモードを選んでもらっています。最終的に千人以上のテストを行ってかなり苦労したのですが、最初からアリーナオンラインシューターが楽しめることを証明したかったのです。
──かなり敷居の高い挑戦だと思いますが。
いきなり挑戦してしまいました。結果としてかなり成功したと思っているので発売が楽しみです。
──今回、SIEさんから『V!勇者のくせになまいきだR』が発表されました。オリジナルのVRタイトルとして期待が高まるのですが、今後、SIEではどのぐらいのタイトルが控えているのでしょうか?
▲カンファレンスで発表されたシリーズ最新作『V!勇者のくせになまいきだR』。 |
タイトル数は決めているわけではありませんが、VRは金脈だと思っています。どこを掘っても金が出るゴールドラッシュといった感じ。開発を少し進めただけでもおもしろいことがドンドン出てくるので、これだというものがあれば、規模は小さくても速いペースで出していきたいですね。また、違ったアプローチをするタイトルが多いほうがいいと思っています。
──『V!勇者のくせになまいきだR』もかなり異色のタイトルになっていました。
プロトタイプを見た瞬間に「コレだ!」と思いました。テーブルトップにゲームのフィールドを置いて、小さいキャラがちょこちょこ動くのを見るのが楽しいですよね。あまり他社さんでも作られていなくて、しかも『ゆうなま』のIPを使っている。アイディア1つで勝負できるのも魅力。最初に見せてもらったデモは二週間ぐらいで作ったそうです。Q-GAMESの『Dead Hungry』も短期間で作っているのですが、すごくおもしろい。
また、私がすごく好きで最終的にまだ出すかは決めていないのですが、デモとして作っている『ソーシャルVR』というのがあります。GDCとE3でデモが出展していたもので、どこかの島にオンラインで遠く離れた場所にいる人がいっしょに入って、会話ではなくムーブを使って遊ぶのがおもしろいんです。身振り手振りでその人となりがなんとなく伝わる。これもなんらかの形で出したいんですよね。ほかにも『RIGS Machine Combat League』などのオンラインタイトルの待ち時間に交流できるとか。他社さんの刺激になると思うし、こういった挑戦がファーストパーティーの役割だと思っています。
──『人喰いの大鷲トリコ』の発売延期は残念でした。吉田さんがコメントでご説明されていましたが、現在の開発状況としてはいかがですか?
ゲーム自体は完成しています。ただデバックが想定したより時間がかかってしまっています。ゲームとしては素晴らしいと思うのですが、細かいバグが取り切れていません。ここまでお待たせしているので、カンペキなものにしたいと延期させていただきました。
──それはトリコ自体のバリエーションの広さの証ととらえてよろしいのでしょうか?
トリコは生きてますからね。今もリハーサルを重ねているところなので、もう少し時間をください。
──ありがとうございました。
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