2016年10月8日(土)
2017年1月19日にセガゲームスから発売予定のPS4/PS Vita用ソフト『蒼き革命のヴァルキュリア』の“国歌斉唱イベント”を都内で実施した。
このイベントは、抽選で選ばれた約50名のユーザーに協力してもらい、ゲーム中の要所に流れるユトランド王国の国歌について収録するというもの。
チーフプロデューサーの下里陽一さんは、この企画がディレクターの小澤武さんの発案であることを説明。あいにくの雨だったため、当選者が来ないことも考えたが、大勢の人がイベントに参加するために集まったことについて「皆さまの意気込みを感じます!」と感動していることを告白した。
小澤さんは、企画当初はプロのアーティストに、わざとヘタに歌ってもらうことを考えたという。しかし、この歌はヒロインであるオフィーリア姫、さらには戦闘部隊・ヴァナルガンドを助けるために国民が歌うため、ヘタに歌った場合は情熱が足りないと考えたとのこと。そこで愛を込めて歌ってもらえる人を募集したのだという。
収録する国歌が劇中の重要な場面で使われることを、集まった参加者に改めて小澤さんが説明すると、光田さんは後方の高い場所を指さしながら「あのあたりにオフィーリア姫がいると、想像してください。皆さんは城の中庭にいて、姫や国に届けたいという気持ちを込めて歌ってください」と続けた。
▲右の写真は想像を具現化したイメージ画像。参加者の歌声はオフィーリア姫に届くのか!? |
まずは、機材の確認もかねてテストで歌ってみることに。光田さんを始めとする開発スタッフは、参加者は緊張して声がしばらく出ないことを想定していたようだが、あまりに最初から声が出ていたため、そのまま収録することになった。
▲指揮をした光田さん。「皆さんのうまさが予想以上で驚いています!」とコメントしていた。 |
ノイズが乗ったり、少し歌うテンポが早まったりすることもあったが、全員で行われた収録はスムーズに終了。収録に参加していた開発メンバーも笑顔を浮かべていた。
続いて、複数グループに分けて何度か収録が行われた。10人、次に20人、別の20人とわけて収録したのには理由があり、別々にとった音声を重ねていくことで、国民が増えていく演出を光田さんが想定しているためだという。
最後に再び全員で収録することに。特に3番は「感情が高まっているため、そのようなイメージでお願いします」というアドバイスが飛んだ。
収録を終えた光田さんは、「このような収録は初のこと。いろいろとご迷惑をおかけしましたが、皆さまのおかげでスムーズに進みました。ありがとうございました」と参加者にあいさつ。参加したファンと交流しながら、最後の1人まで見送っていた。
イベント後に、報道陣を対象にしたインタビューが行われたのでその模様をお届けする。
――収録を終えられて、いかがでしたか?
光田:想像をはるかに超えるいい形で終えられたと思います。皆さん、このような場に慣れていなかったり、緊張したりして最初はうまく歌えないと思っていましたが本当にスムーズでした。
先ほどお話を聞いたところ、普段から歌を歌われている方や、コーラス隊をしていた方がいらっしゃいました。本当にうまくて驚きましたね。リハのつもりだったのですが、「これでもういいんじゃないかな?」と思うくらいでした。
下里:当選者は抽選で無作為に選んでいます。そもそも、歌がうまいか、そうでないかはわからないのですが、応募してくれた方は、もともと歌に自信がある方が多かったのかもしれませんね。ユトランド国民は歌がうまいということで!
(一同笑)
光田:そうですね。驚きました!
下里:私もこのようなことは初めてのこと。先ほども言ったのですが、もともと小澤が言い出したこと。こういう場合は、プロにお願いすることが多いのですが、重要なシーンであるうえに、うまく聞こえてしまい、リアリティがなくなってしまう。そこで応募して収録したのですが、予想以上の大成功だったと思います。
小澤:プロの方に、素人っぽく歌ってもらったとしても“プロの下手な歌い方”でしかないんですね。今回のように、国民の合唱というシチュエーションを考えるとそぐわない。
使われるシーンは、国や歌っているオフィーリア、さらに戦っているヴァナルガンドを思う場面。必要なのは歌のうまさではなく感情です。熱い思いを持っている方が、熱い思いを持っているユトランド国民とシンクロするんではないかと思い、下里及び開発スタッフに相談しました。さらに、国歌を作る流れで光田さんに相談しました。
――光田さんの反応は?
小澤:光田さんは音については本当に貪欲で、ほとんどのことにおもしろがられるんですね。最初はセガの1階で収録する予定でした。
下里:収録するところまで行ったのですが、ノイズが入るという問題があったので止めることになりました。
小澤:スタジオで収録することを決め、募集をかけてトントン拍子で進みました。……ただ、どれだけの人に来ていただけるのか、正直わかりませんでした。ふたを開けてみると、ありがたいことに400名近い人にご応募いただきました。製作者としては本当にありがたかったです。
――光田さんは話を聞いて、いかがでした?
光田:おもしろい試みだと思いました。歌が流れるのが、本当に重要なシーンなので、スタジオで何人かを呼んで多重録音するよりも、このように一度に同じ場所に集まり、この雰囲気で歌うことが重要。
50人が入れるスタジオは日本でも限られています。機材をふくめて検証して、下里さんにできるだろうということを報告しました。前もって準備をしていたのですが、しっかりとれたので一安心といったところです。
――これまでにこのような収録のご経験は?
光田:いや、ないですね! プロのコーラスの方を呼んでも通常は30人くらいがマックスです。プロの方でも50人はないですよ。
下里:終わったから言えるのですが、かなり無茶なことをしたんですよね。その時は勢いで頼んだのですが。
(一同笑)
光田:でも僕としてもいい経験になって、おもしろかったです。
――参加者の反応はどうでしたか?
光田:皆さん、最初は少し緊張されていたと思うのですが、最後のワンテイクはそういうのがまったくなく、吹っ切れていました。指揮をしていても、感情が出ているのを感じられた。この場面には、こういう思いが欲しかったんだろうなと思いました。やってよかったです。
小澤:ちょっと、感極まりましたね。
光田:グッとくる部分が僕も何回かありました。そこを皆さんが理解して歌ってくれたのはよかったです。さらに、帰りに「楽しかった」と言ってくれた。そのような感情は音に出るのがおもしろいですよね。
下里:こちらとしてはお願いしている立場。申し訳ない気持ちがあったんですが、皆さんが笑顔で光田さんとお話しているのを見て、うれしかったです。
光田:実は、先導役として僕の友だちのボーカリストに来ていただいていたんです。皆さんが緊張して声が出なかった時のために、お願いしていたのですが、そんな必要がないほどにうまかった。オペラをやられていたという男性は声量や迫力がすごかったです。指揮をしながら「ガチな人だなあ」と感じました。
小澤:皆さん、いい意味で照れがなかったです。こちらとしては、恥ずかしがっているのを光田さんとほぐしていき、何回かやって慣れてきてからリハーサルに入るつもりだったのですが、まったく想定と違いました。
下里:そうですね。皆さん、意気込みが違いました。それはこの雨で出席率100%というところにも表れていると思います。
――収録した国歌はどこで流れるのでしょうか?
小澤:終盤のほうの重要なシーンとだけ、お話しておきます。
下里:聞くと「ああ、なるほど!」と思うかと。
光田:一番いいシーンですよね。
――小澤さんが国歌の作詞をされていますが、そちらの経緯やテーマなどを教えてください。
小澤:もともとの話ですが、サラさん(サラ・オレインさん)が歌われているメインテーマがあったうえで、ある意味で対になるオフィーリアの曲のイメージを光田さんに相談していました。
オフィーリアの曲は、国歌か、古くから歌われている民謡にしたかったんです。国歌に決まった時に私が歌詞を書くことになりました。
下里:光田さんから「作詞、どうしますか?」と聞かれた時に、一番ユトランドを知っている人が書くべきと思ったので、小澤に歌詞を書くように伝えました。
小澤:本当にいきなり来ましたからね(笑)。
下里:ただ、シナリオを読んで、世界観を把握してから作詞に入ると思いが入らないと思った。国歌ですから、一番思いがある人が書くべき。それで初めての作詞をまかせました。
小澤:あらゆる国の国歌を聞いて勉強しました。国歌にも傾向がありまして、イケイケドンドンで“我が国最強!”というものか、“自分の国は最高なので誇ろう”というものがある。ユトランドは後者だろうと思い、ユトランドがどんな国かを表現する曲、もしくは歌った時に誇りを持つような曲にしたいと思いました。
3番まであることは決まっていたので、1番、2番、3番それぞれにテーマを決めて、まとめていきました。歌詞を書くことについて素人なので、物語や設定など思いを込めるしかないだろうと。
ちなみに光田さんは、国歌を作られたことは?
光田:国歌はないですよ!
(一同笑)
下里:国歌は難しいですよね。最初は校歌っぽかったのですが、いろいろアレンジしていただきました。
光田:実は校歌と国歌はテーマとしては近いんです。学校をまとめるのか、国をまとめるのか……求めているものは同じ。最初はピヤノで書いていたところ、小澤さんから「校歌っぽいですね」と指摘がありました。「オーケストラでアレンジし直すと、国歌になるから大丈夫です!」と返しましたね。
下里:できたものを受け取ってビックリしましたね。我々が素人なので伝わりきりませんでした。
小澤:下里からオーダーがあったのは、「口ずさみやすいものにしてほしい」ということ。それは結果として今日の間違いが少なかったことにつながったのかなと思いました。
――参加者に体験版が配布されました。全国でも体験会が行われるということで、今後の展開についてお話いただけますか?
下里:6日から体験版のVer.2.0を配信しています。これは以前の体験版を入手している人、もしくは東京ゲームショウ2016でプレイされた方、もしくは体験会に来られた方に配布しているダウンロードコードで遊んでいただけるものです。
ただ、もう1つ体験版を考えています。そのバージョンは一般的に広く配布する予定です。開発は佳境ですが、もうゴールが見えてきているので、安堵する直前まで来ています。
小澤:難しいところですが、ソフトの開発的には85パーセントくらい……ゲーム要素はすべて入っています。あとはバグとりと調整という、ブラッシュアップになります。
光田:体験版を遊ばせていただいたのですが、何曲か僕の曲を聴けます。
小澤:実はヴァルキュリアの曲が間に合わず仮のものなんですが……でもヴァルキュリアの曲はすごくいいので、ぜひ製品版を楽しみにしてください。
光田:ラストバトルのヴァルキュリアの曲は……ちょっと自信作です。そのサラさんの歌は明日収録します。
――それは楽しみです。では最後にメッセージをお願いします。
小澤:これまでのコメントとかぶるのですが、こんなわがままなイベントに参加していただき、本当にありがたかったです。また、残念ながら選ばれなかった人には、本当申し訳ないと言いたいです。期待に応えられるように最後まで頑張っていくので、ぜひよろしくお願いします。
下里:ゲームシステムやグラフィックなど新しい試みをしています。音楽についても同様で、光田さんにお願いする際には「PS4で最高の音楽をお願いします」とオファーをしました。かなり音楽にこだわっていて、いいものになっています。
光田さんにもオーケストラを撮り終えた際に、「こんな音はこれからもとれないかも!」とおっしゃっていただきました。音楽にもぜひご期待ください。
光田:いろいろな試みをしました。多分、ゲーム音楽をやってきた中で、一番盛りだくさんだったと思います。歌唱イベント、オーケストラもそうですが、ゲーム中にもおもしろい音楽方法を入れるなど、チャレンジしています。それがいい形で納まっているので、シナリオやグラフィックだけでなく、音楽もぜひ楽しんでいただければと思います。
(C)SEGA
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