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2016年10月10日(月)

“マチ★アソビ Vol.17” 松山洋氏が司会を務めたクリエイタートークの模様を紹介。開発陣の意外な過去も?

文:イトヤン

 徳島県徳島市で9月24日~10月10日に開催された“マチ★アソビ Vol.17”。ここでは10月8日に新町橋東公園ステージで行われた、“ゲームクリエイタートークライブ”の模様をお届けします。

『クリエイタートーク』

 サイバーコネクトツー代表取締役の松山洋さんによる司会のもと、ゲーム業界の最前線で活躍しているクリエイター陣が集結して、愉快なトークバトルを繰り広げる“ゲームクリエイタートークライブ”は、“マチ★アソビ”恒例のイベントとなっています。

 今回はゲストとして、アークシステムワークスの森利道さん、カプコンの野中大三さん、江城元秀さん、日本一ソフトウェアの菅沼元さん、ノイジークロークの坂本英城さん、バンダイナムコエンターテインメントの門田研照さんという6名が登壇しました。

『クリエイタートーク』
▲司会進行を務めた、サイバーコネクトツー代表取締役の松山洋さん。
『クリエイタートーク』
▲写真左より松山洋さん、カプコンの野中大三さん、江城元秀さん、日本一ソフトウェアの菅沼元さん、ノイジークロークの坂本英城さん、バンダイナムコエンターテインメントの門田研照さん、アークシステムワークスの森利道さん。

ゲームクリエイターになる前に働いていた、意外な仕事が明らかに!

 最初のトークのテーマは、「社会人として最初に携わったお仕事を教えてください」というもの。“ゲームクリエイターとして”ではなく、“社会人として”というのがこのテーマのポイントで、ゲストのみなさんがゲーム業界に入る前の意外な職歴が明かされることとなりました。

 ちなみに司会の松山さんは、大学卒業後にコンクリート業界に就職し、そこから一念発起してゲーム会社を設立したのだそうです。

 カプコンから12月8日に発売・配信予定の3DS用ソフト『めがみめぐり』のプロデューサーである野中さんは、かつては玩具メーカーに就職していたそうで、最初の仕事は「倒産したおもちゃ屋さんに残った在庫を回収する」というものだったとか。

 『逆転裁判』シリーズのプロデューサーである江城さんは、カプコン入社以前に“コピー機の修理屋さん”で働いていたとのこと。どうしてもゲーム業界に入りたかった江城さんは、ゲーム専門学校に通い、雑誌の求人広告でカプコンの募集を見つけて合格して、今年で入社26年目になったそうです。

『クリエイタートーク』

 日本一ソフトウェアから11月24日発売予定のPS Vita用ソフト『プリンセスは金の亡者』のプロデューサーである菅沼さんは、社会に出てすぐ日本一ソフトウェアに入社したそうで、同社で最初に手がけたのはビデオゲームではなく、“ビックリマンのカードゲーム”を制作する仕事だったとのこと。

『クリエイタートーク』

 DMM GAMESのPC用ブラウザゲーム『文豪とアルケミスト』をはじめ、さまざまなゲームの音楽を担当している坂本さんは、中学生の時からゲーム音楽家になりたいという夢を持っていたものの、ゲーム会社の入社試験はことごとく落ちてしまったそうです。

 かろうじて入社できた会社で最初に手がけたのはゲーム音楽ではなく、“京本政樹さんのCD”だったとか。その会社は1年で辞めて、フリーの作曲家として8年ほど活動したのち、ゲーム音楽制作会社であるノイジークロークを立ち上げたと語っていました。

 iOS/Android用アプリ『GOD EATER ONLINE』のプロデューサーを務めている門田さんは、新卒でバンダイナムコエンターテインメントに入社し、『GOD EATER』シリーズと『アイドルマスター』シリーズの宣伝担当となったそうです。この回答に対して司会の松山さんは「普通すぎる」とツッコミを入れていました(笑)。

 アークシステムワークスのFTG『ブレイブルー』シリーズのプロデューサーとしておなじみの森さんは、ゲーム会社の入社試験に落ちてしまい、スーパーの婦人服売り場でアルバイトしていたとのこと。そのため、リングハンガーにスカートを並べる技術はゲーム業界でも一番だそうです(笑)。

 その次に森さんがアルバイトとして勤めた仕事は、熱帯魚飼育ソフトのデバッグだったそう。PCのウィンドウ内で熱帯魚を仮想飼育できるというソフトなのですが、そのデバッグ作業は熱帯魚がおかしな動きをする瞬間を確認するために、ひたすら画面を見続けるというもので、とにかく眠かったと語っていました。

 その後、ゲーム専門学校に入学した森さんは、そこで出会った仲間たちと『ギルティギア』シリーズを作るようになったとのこと。こうしてお話を聞いてみると、ゲームクリエイターの皆さんは、本当にいろいろな経歴の持ち主だということがよくわかる内容でした。

20年前の自分に渡したいものとは!?

 続いてのトークのテーマは、“次世代のクリエイターに求められる要素とは?”というマジメなもの。しかし、この内容でトークをおもしろくするのは難しいということで、なんと次の話題に移ってしまいました(笑)。このあたりはいかにもトークライブらしい、“空気を読んだ”展開です。

 改めて次のトークのテーマは、“タイムスリップできるとしたら、20年前の自分にどんなおみやげを渡しますか?”というもの。これに対して20年前は20歳だという野中さんは、『こち亀』の200巻をチョイス。まさかこれが最終巻になるとは! というタイムリーな話題で、大のマンガ好きである松山さんと一緒に盛り上がっていました。

『クリエイタートーク』

 20年前は28歳だという江城さんは、当時カプコンでアーケードゲームのプログラマーとして活躍していたそうです。ところが江城さん本人によると、当時の江城さんはかなりわがままで、一時は社内で仕事がなくなったこともあったとか。そんな当時の自分に対して、今の自分から“説教”を送りたいと語っていました。

 20年前には7歳だった菅沼さんは“ゲームボーイの通信ケーブル”と回答。当時は『ポケットモンスター赤・緑』が大人気で、多くの子どもがゲームソフトを持っていたものの、ポケモンを交換できる通信ケーブルは持っている人が少なかったとのこと。そのため、これを持っていればクラスの英雄になれるからだそうです。

 20年前には23歳の坂本さんは、“健康診断の紙”と回答。坂本さんは20年前に比べて体重が25kgも増えてしまったそうで、当時の自分に今の自分の診断書を見せて節制するように伝えたいとコメントしていました。

 20年前は9歳だという門田さんは“クレジットカードの明細”と回答。なぜそれを9歳の自分に見せるのか? との松山さんの質問に対して、門田さんの答えはなんと、スマホゲームのガシャの回しすぎを、子どもの頃から戒めたいというもの。とはいえ門田さんは、たぶん20年前の子どもには理解できないはず、とも語っていました。

『クリエイタートーク』

 20年前には24歳の森さんは、“人気のスマホゲームが入ったiPhoneを渡す”と回答。当時の自分がどれぐらいハマるのか見てみたいそうです。この答えに対して司会の松山さんからは、そんなにスゴいものを渡してしまうと、『バック トゥ ザ フューチャー』みたいに歴史が変わってしまうのでは? というツッコミが入っていました。

『アイマス』の“ガミP”こと坂上陽三さんも登壇!

 最後のテーマは“今後やってみたいこと”という、かなりザックリとした内容です。こちらもテーマを変えたほうがよいのでは? との声が参加者から出ていたのですが、どうやら用意していたテーマはこれだけしか残っていなかったようです(笑)。

 野中さんは「やりたいというより、すでにやっているんですが」と断りつつ“完全新作タイトル”と回答。

 カプコンに限らずゲーム業界ではシリーズタイトルが多くなっていて、野中さん自身も『戦国BASARA』シリーズなどを手がけています。それはそれで好きなのだそうですが、やはり完全新作にこだわっていきたいと、現在も『めがみめぐり』を手がけているとのこと。

 一方、江城さんの回答は“他社のIPとのコラボレーション”。『逆転裁判』シリーズには『レイトン教授VS逆転裁判』がありますが、これはたまたま江城さんが担当していなかったとのことで、江城さん自身ではこうしたコラボの経験がないのだそうです。

 菅沼さんの回答は“映画を撮ってみたい”というもの。それは学生時代からの夢なのか? という松山さんの質問に対して、菅沼さんの返事は「『シン・ゴジラ』や『君の名は。』を観て、いいなぁと思ったので」とのこと。これには松山さんから「めっちゃ最近やん!」とツッコミが入っていました(笑)。

 坂本さんは「堂の浦(※注:徳島ラーメンの有名店)」と、やってみたいというよりこのあとやる予定のことを披露して客席を沸かせたあと、一転してマジメに“ゲーム音楽を文化として後世に残す試み”と回答。

 現在ではオンラインゲームのようにサービスが終わってしまうと音楽を聴く手段すらなくなってしまうことがあるなかで、ゲーム音楽を後世に残していく活動を、作曲家自身としても行っていかなければいけないと語っていました。

『クリエイタートーク』

 ズバリ“結婚”と回答した門田さんは、もうひとつマジメな回答として、“アプリの世界進出”を挙げていました。現在手がけている『GOD EATER ONLINE』は日本だけでなく海外でも展開したいと考えているそうです。

 森さんは、これまでずっと1対1の格闘ゲームを作ってきたので、今度は「多対多のゲームを作ってみたい」と回答していました。それも1万vs1万や10万vs10万といった、戦争クラスのスケールのゲームを作ってみたいそうです。

『クリエイタートーク』

 またトークの最後には、バンダイナムコエンターテインメントで『アイドルマスター』プロジェクト総合プロデューサーを務める坂上陽三さんが、門田さんの会社の先輩としてステージに登壇することに。

 「出演すると思っていなかったから、自分のテンションを上げるのが大変」と言いながらも、過去のマチ★アソビでの門田さんのエピソードを語って、しっかりと会場を盛り上げていました。

『クリエイタートーク』

 今回のステージではカプコンのお2人をはじめ、トークの上手い方が多く出演されていたこともあって、テーマから外れたフリートークも大いに盛り上がり、客席は常に爆笑に包まれていました。ここでは書けないようなゲーム業界の裏話も飛び出すなど、まさにゲームファン必聴のトークライブとなっていました。

 このトークライブは、マチ★アソビの名物企画となっているだけに、次回の開催も楽しみです!

『クリエイタートーク』
『クリエイタートーク』
▲トークの合間に各出演者が自分のゲームを宣伝していたため、最後の告知タイムを省略するという松山さんの指示が。そこで自分のゲームの告知文をそれぞれ掲げて、しっかりとアピールしていました。