2016年10月17日(月)

野村哲也氏が『FFVII リメイク』『ワールド オブ FF』の開発秘話を語る。『KH』HD版のパッケージには秘密が?

文:電撃オンライン

 10月27日発売のPS4/PS Vita用ソフト『ワールド オブ ファイナルファンタジー』をはじめ、数多くの注目タイトルを発表・展開しているスクウェア・エニックス。同社より発売されるタイトルの数々を手がける野村哲也氏にインタビューを実施したので、その内容をお届けします。

『WOFF』の原型はまったく別のゲームだった!?

――“E3 2015”での発表から始動した『ワールド オブ ファイナルファンタジー(以下、WOFF)』がいよいよ発売ですが、そもそもこの作品の誕生経緯というのは?

 公式ツイッターに初期のコンセプトアートが載っていますが、もともとはあのような世界観の別のゲームを作ろうとしていました。『WOFF』とはまったく違う、もっとシミュレーション寄りのゲームでしたね。

『スクウェア・エニックス』
▲公式ツイッターに掲載された初期のコンセプトアート。

 その別ゲームの開発中に、現在のプリメロとオオビトにあたる2つの頭身のキャラが作られて、両方をゲーム中の状況に合わせて自由に切り替えられるシステムを提案しました。

――プリメロとオオビトは、最初は違うゲームのシステムだったのですね。

 紆余曲折あってそのゲームは一旦白紙になり、大量にデザインされていたちびキャラたちは『ピクトロジカFF』の方に先行して使用することになりました。その後、新しく立ち上がった『WOFF』で千葉(ディレクターの千葉広樹氏)がプリメロとオオビトのシステムを含めた設定を移行することになったわけです。

――『WOFF』で野村さんがデザインしたキャラは誰でしょうか?

 主人公のラァンとレェンにエナ・クロ、あとはもうひとりキーキャラクターとなる女性の4キャラですね。キーキャラクターの女性はPS Vitaの刻印モデル『オオビト エディション』にも描かれていたりします。ちなみにエナ・クロは先ほど言った別のゲームの開発時に描いたキャラなので、かなり昔から存在するキャラですね。

『スクウェア・エニックス』
▲『オオビト エディション』。

――これらのキャラのデザインでこだわった部分はありますか?

 自分が描いたキャラ4人にはすべてまだ明かされていない設定があるんですが、それが作中でどこまで触れられているのか千葉しだいになっています(笑)。千葉の頭のなかには、キャラデザインの設定も含めた壮大な全容があるので。

――歴代『FF』キャラもボイスつきで登場しますが、『WOFF』で新しくボイスがついたキャラというのも多いのでは?

 そうですね、エドガーやファリス、あとは、キャラクターではありませんが、サボテンダーなどもいますね。エーコのように、原作ではボイスがなかったけど他作品(エーコの場合は『ロード オブ ヴァーミリオン』が初)でボイスがついていたキャラもいますね。

『スクウェア・エニックス』
▲エドガー(声優:三木眞一郎)。
『スクウェア・エニックス』
▲ファリス(声優:田中理恵)。

――キャスティングは野村さんが決めていったのでしょうか?

 そうですね。キャスティングと収録はほぼかかわっています。過去の『FF』キャラにボイスをつける際は、ユーザーさんの意見などもチェックしてます。「このキャラに声がつくとしたら、あの声優さんのイメージ」といった意見はけっこう見かけるので。

 自分が制作に携わっていたものについては、そのときのイメージを重視しています。例えば『FFVI』のシャドウのボイスは、ケフカ同様当時から僕のなかでイメージがあったので、『ディシディアFF オペラ オムニア』ではそのイメージにあった、安原義人さんにお願いしました。

――ゲーム部分に関しては、野村さんから要望した箇所はありましたか?

 内容については、ほとんど現場に一任しています。途中経過を見せてもらうことはありますが、そこで何か指摘するかというよりは、問題がないかチェックする程度です。ただ、バトルのテンポ感やUIの見やすさなどは細かくつついたかな。

――イベントシーンで印象に残っている部分はありますか?

 シナリオ上で描かれるシリアスなシーン全般でしょうか。というのも、今までの『FF』作品は全編通してシリアスな物語にたまにユーモアが入っていましたが、『WOFF』はほぼユーモアなノリのなかに、たまにシリアスが入る作りなので(笑)。シリアスな場面が逆に引き立っているんじゃないかと思います。

――PVなどは、その数少ないシリアスシーンを集めて作られたのでしょうか?

 そうなりますね(笑)。千葉のシナリオのギャグはどれも長いので、1つのやり取りをオチまですべて見せようとしたらトレーラーでは尺が足りないんですよね。イベントシーンをチェックするときも、「さっきのところがオチでいいんじゃないの!?」とか思いながら見てました。

●動画:『ワールド オブ ファイナルファンタジー』TGS’16トレーラー

――実際にプレイしたとき、意外なシナリオのノリに驚く人が続出するかもしれませんね。

 主人公が壮大な運命を背負ったシリアスな物語は世の中にあふれているので、『WOFF』もそういう設定はありますが、たまにはこんなノリでもいいんじゃないかと思っています。ディレクターの“色”ということです。

――発売を待つユーザーさんにメッセージをお願いします!

 年末年始は各社さまざまなタイトルが発売されると思いますが、『WOFF』はそのなかに埋もれないくらい長く楽しめる作品になっています。PS Vita版なら外出してでも手軽に遊べますので、ぜひ遊んでみてください。

『キングダム ハーツ』HD3作のパッケージは“ソラ”と“空”に意味がある!

――『キングダム ハーツ HD 2.8 ファイナル チャプター プロローグ(以下、KH2.8)』の発売日が、9月のSIEプレスカンファレンスにて発表されましたね。

 当初の2016年12月から2017年1月に発売が延びてしまったことは、本当に申し訳ありませんでした。ツイッターの公式アカウントで載せたコメントにも書きましたが、近接するタイトルがいくつか重なってしまった調整によって、このような形になりました。

――豪華なパッケージイラストも公開されましたね。

 じつは『KH1.5』と『KH2.8』のパッケージイラストには2つの秘密があります。考察が得意な『KH』ファンの方は気づかれているかもしれませんが、1つは、ソラたちの動きが座り→立ち→歩きへと変化していく点。もう1つは、3つのイラストを並べると背景の空が時間の流れにそって変わっている点。

『スクウェア・エニックス』
▲『キングダム ハーツ -HD 1.5 リミックス-』パッケージ。
『スクウェア・エニックス』
▲『キングダム ハーツ -HD 2.5 リミックス-』パッケージ。
『スクウェア・エニックス』
▲『キングダム ハーツ HD 2.8 ファイナルチャプタープロローグ』パッケージ。

 『KH1.5』で夕暮れから夜になり、『KH2.5』で真夜中、そして『KH2.8』では夜から夜明けになっている流れです。最終章の『KH III』に向けてのメッセージが3作品のイラストには込められています。

――それは当然『KH1.5』のときから想定していたということですよね?

 『KH2.5』のパッケージをデザインする時に結構悩んで、3つの連作を思い付いて着々と仕込んでいました。ソラの動きに気づいた方はけっこういたみたいですが、背景のつながりにまで気づいた方は多くなかったようですね。“ソラ”と“空”で二重の意味が存在したというわけです。

――今回のイラストは東京ゲームショウのブースにも大きく飾られていたので、かなり目立っていましたね。

 ゲームショウで大きく飾りたいから間に合わせてほしいということを言われていたので、気合を入れて描きました。その結果、過去前例のないほど段取りよくパッケージイラストが完成しましたね。

――東京ゲームショウに出展された試遊は、基本的には“E3 2016”と同じだったようですね。

 そうですね。“E3”出展後にすぐ手を加えた部分は反映されたバージョンになっています。『KH ドリーム ドロップ ディスタンス HD』の新しいショートカット機能などがそれですね。

『スクウェア・エニックス』
▲画像は『KH ドリーム ドロップ ディスタンス HD』のもの。

 マスター版は、TGS出展バージョンからさらにいろいろとブラッシュアップされていますよ。開発は予定通りに進行しているので、まもなくマスターアップです。

――TGS出展の『KH0.2』ではPS4で進化したアクションを味わえましたが、『KHIII』はあそこからさらにアクションが奥深くなっていくのでしょうか?

 そうなりますね。『KH III』のソラのほうがプレイ時間的にも、アクアよりやれることが圧倒的に多いですから。アクアはストーリーの関係上キーブレードを変えらにれませんが、ソラはキーブレードを変えられ、アクションそのものが変化していきますので。

――最新PVにあった探索や戦闘は、TGS出展版で橋をわたったあとの展開なのでしょうか?

 そうですね。試遊でプレイできたような、広がりのあるマップがあの先も待っています。大阪の開発チームは、オブジェクトを巧みに配置して、探索しがいのあるマップを作るのがうまいんですよね。

●動画:『キングダム ハーツ HD 2.8 ファイナル チャプター プロローグ』TGS2016 Trailer

――『KH キー』関連についてもお聞かせください。まずブラウザ作品『KH キー』が9月末でサービス終了となりましたが、3年間サービスを続けたご心境は?

 想定していたより早くサービスが終わってしまったのは残念ですが、3年間運営を続けたというのは大きな力になったと思います。ユーザー数を見てもスマホ版『KH アンチェインド キー』のほうが多くなっていたので、今後はこちらに注力します。

 すでに告知しているように、『KH アンチェインド キー』はシーズン2を予定していて、今後もサービスが続いていきます。10月からは新ワールド、来年1月予定でマルチプレイも実装されるので楽しみにしていてください。

――『KH キー』では最終章が描かれましたが、あの展開は『KH アンチェインド キー』でも展開するのでしょうか?

 あのラストは『KH キー』だけの展開です。『KH アンチェインド キー』のお話は、途中から別の展開に分岐しています。

――『KH キー バックカバー』の最新映像では、5人の予知者とは別に新たな黒コートの人物が出てきましたが……?

 『KH キー』のほうですでに登場した、ルシュという名のキャラですね。黒コートを着ているせいで、一時期ルシュとマスター・オブ・マスターが同一人物だと思われていたようですが、2人は別人です。

 トレーラーやパッケージでタンポポを持っているのがマスター・オブ・マスターで、それとは別の黒コートの人物がルシュになります。このあたりの関係図は、『KH キー バックカバー』でわかりやすく描かれています。

――『KH III』への導入として、『KH2.8』に収録される作品は、どれも見逃せませんね。

 ユーザーさんのなかには、今回のゲームショウで初めて『KH2.8』の存在を知ってとまどっている方もいたみたいですが、ぜひ『KH2.8』はプレイしていただきたいです。タイトルにもあるように『KH III』のプロローグとなる作品なので、『KH III』をスムーズに楽しむためにも!

『スクウェア・エニックス』

――最新映像で初公開されていた宇多田ヒカルさんの新アレンジの“光”も、今後の期待をかきたてられます。

 宇多田さんが活動を再開するというの聞いていましたので、ちょうどタイミングもよかったのでぜひアレンジをとお願いしました。『KH III』の主題歌はまだ未定です。

――ちなみに『KH2.8』はPS4 Proにも対応しているのですか?

 4K対応なので、画質は間違いなくキレイになります。そのほかの詳しい対応については、順次発表していきます。

――そして、気になる『KH III』の新情報はいつごろ発表になりますか?

 E3の時にもお話ししましたが、『KH III』の情報に関しては『KH2.8』の発売以降とお伝えしていましたので、新情報のアナウンス時期は現在検討中です。今しばらくお待ちいただければと思います。

――来年2017年は『KH』15周年なので、さまざまな展開を期待しています!

 15周年に向けて企画はいろいろと考えています。来年1月の『KH2.8』を皮切りに、3月からはフルオーケストラのワールドツアーも控えています。『KH』の情報が絶えない1年になると思うので、また改めてよろしくお願いします。

『FFVII REMAKE』は従来のファンが遊んでも楽しめるものに

――アーケードの『ディシディアFF』は11月で稼動1周年を迎えますね。イベントなどは予定していますか?

 詳しくは間(プロデューサーの間一朗氏)に聞いてもらえればと思いますが、ちょっとしたイベントは予定しているようですよ。公式全国大会で発表したご当地称号も、描き終えました。企画がスタートしたら、誰が一番早くご当地称号をコンプリートするか楽しみですね。

『スクウェア・エニックス』
▲こちらがご当地称号とのこと。

――1周年記念で追加されるであろう新キャラも気になります。

 エース参戦の生放送でも話題になりましたが、残念ながらあれ以上のヒントは言えません(笑)。

――最後に、世界中が注目する『FFVII REMAKE』の進捗も教えてください。

 『KH』のように過去作があれば基準もわかりやすいし、超えるハードルもスタッフは把握できるのですが、なにぶん『FFVII』のバトルはオリジナルから大きく変わり、アクションに近いものになっていますので。

 次に『FFVII REMAKE』の情報を公開するときは、やはりバトルがどういうものになるのかユーザーのみなさんに具体的なものが伝わるものでないとダメだと思っています。今のところみなさんも具体的なバトルのイメージができないと思いますので、「こういうバトルです」と製品レベルでお見せできる段階まで引き上げている最中になります。

『スクウェア・エニックス』

――もともとがコマンドバトルだっただけに、アクションバトルに作り直すのは骨が折れそうですね。

 『FFVII』ファンの方からは、原作どおりATBで遊びたいという声も聞きますが、リメイク版はアクション性が高い方向で進めています。もちろん、従来のファンのみなさんが遊んでも楽しめるシステムも入ってますので、アクションが苦手な方も安心してください。

 アクションが得意な方には、そのシステムを利用した違った楽しみ方もできるようになっています。つい最近、序盤のガードスコーピオン戦をチェックしたのですが、あの臨場感を味わうと納得してもらえると思っています。

――2017年は『FFVII』20周年でもありますね。

 『KH』15周年と合わせて、何かしら計画したいと考えています。ただ、しばらくは今回ご紹介した『WOFF』含めて作品が少々立て込んでいる状況なので、情報解禁はそのあたりが落ち着いてからになると思います。

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