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2016年10月21日(金)

『グリムノーツ』開発者インタビュー。新たなマルチプレイのボスラッシュが登場!

文:イズミン

 スクウェア・エニックスのiOS/Android用アプリ『グリムノーツ』。おとぎ話を新解釈した独特の世界観を持つ本作に関する開発者インタビューをお届けします。

『グリムノーツ』

 お話を伺ったのは、『グリムノーツ』のプロデューサーの石井諒太郎さんと、シナリオを担当している小説家の大泉貴さん。東京ゲームショウ 2016の際に配信された“『グリムノーツ』TGS2016特番~石井Pにみんなの声を伝えてみた!”ではファンの皆さんから募集した質問について伺いましたが、そこでは時間の都合で聞けなかった質問を中心に聞いてきました!

 さらにインタビュー中には、今後の実装予定のシステムに関するお話も聞くことができたので、ぜひ最後までチェックしてください。

『グリムノーツ』
▲左はプロデューサーの石井諒太郎さん。右はシナリオを担当している小説家の大泉貴さん。

10月にボスマルチが実装予定。追加は難易度よりもバリエーションを重視

――細かいことから大きなことまで、TGS生放送では聞ききれなかった質問を中心にお聞きしていきます。まず、710tkさんからの質問で「フレンドがプレイしている時の表示を、最終プレイ1分以内からプレイ中に変えて欲しいです」。

石井:技術的には可能です。ただ、厳密に何分以内か、今何をしているのかによってプレイ中にするシステムに変更する方がよいので、もしやるとしたら、いろいろと考えないといけないですね。

 ただ、対応の優先度を考えると、他にやりたいことが多く、現状は他の要素を優先していくつもりです。

――くろさんからの質問で「ストーリーのフルボイス化して欲しいです。ここ、しゃべっていたら面白いのにって思うことが多々あります。難しいかもしれませんがよろしくお願いします!」

石井:要望は多いですし、自分としても声がつくと物語がよりおもしろくなりそうだと思っています。ただ、ボイスを収録するために新ストーリーの実装が遅れることは避けたいと考えています。

 また、フルボイスにしてしまうとアプリの容量がかなり大きくなってしまいます。ストーリーが追加されるたびに通信量と端末容量に大きな負担をかけることになるので、今はまだ慎重に考えたいところです。

 ただ、最近は端末の容量も増えてきているので、容量的な問題は近いうちに解決するかもしれません。そういった状況の変化を見つつ、フルボイス実装については引き続き検討していこうと思います。

――アンドリュー・熊沢さんからの質問で「星3キャラ増えませんか? 星3キャラだけ追加がまったくないのですが…」。

石井:追加することは可能ですが、今のところは考えていません。限界突破の詩片はキャラクターが重なるごとに入手可能で、星3を集めれば星4、星5も強化できるようになっています。

 星3を追加していくと入手できる限界突破の詩片の総量が減ってしまい、結果的にゲームの難易度が上がってしまうので、ユーザー様の需要とあっていないんじゃないかと考えています。

『グリムノーツ』
▲星3の限界突破の詩片でも、数を集めれば星4、星5ヒーローの強化に使えます。

――個人的には、篭手のような新武器が出た際には、入手しやすい星3キャラが増えてほしいと思いましたが、いかがでしょうか?

石井:ギリギリまで検討しましたが、キャラを仲間にする前に“お試しバトル”で実際にプレイできる要素を追加したので、新武器に触りたいというニーズについては、そこで解決できるかなと。

 新キャラを増やすためには、どうしても労力がかかってしまうこともあり、どうせなら星3よりも、星4や星5のキャラとして実装するほうが、より多くのユーザー様に楽しんでいただけるかと思っています。

――chamさんからの質問で「愛でお馴染みヨリンゲル君の恋人、ヨリンデちゃんが実装されましたね!! ヤンデレ(?)属性のヨリンデちゃんのストーリーでの活躍を見たいです」。

大泉:豆の木イベントが実装された時に、「ヨリンゲルはまだですか?」というお問い合わせをいただいたこともあるので、『グリムノーツ』の運営への意見や要望として送っていただければ、より実現の可能性が高まると思います。

石井:公式生放送でも人気でしたし、前向きに検討しようと思います(笑)。ヨリンゲルやヨリンデにかかわらず、ユーザー様から大きな反響をいただいているものはどんどん取り入れていきたいと思います。これ以外にもこんなキャラクターを見たいというものがあれば、ご意見をいただけるとうれしいです。

 豆の木イベントは、もともとのレアリティが低いキャラを優先して考えているので、ヨリンゲルは可能性が高そうですね。

『グリムノーツ』
▲生放送でも人気だったヨリンゲル。

――MPTさんからの質問で「豆の木イベントは、必ず豆の木じゃないといけないのですか? 城とかではだめなんですか?」。

石井:決してそんなことはありませんが、現状は“豆の木イベント”という1つのルールや仕組みとして展開しているので、お城を使った時は、また別の“お城イベント”としてのルールや展開になると思います。

 例えば、“豆の木イベント”と同じルールで背景を城に変えるだけという対応もできますが、遊び方が同じで背景を変えるだけでは、あまり意味がないかなと思っています。もちろん、豆の木のように城が伸びていくのは変なので、また違う設定を考える必要があるかなと。

『グリムノーツ』
▲豆の木が伸びていくという仕様上、かなり力が入っているようです。

 空に伸びていく豆の木とは逆に、地中に伸ばしていく洞窟のような形も考えられますし、攻めてくる敵から防衛するような砦での戦いなんかもおもしろいかもしれません。

 新しい遊び方やルールについてもいろいろと検討中ですので、豆の木以外のイベントについてもご期待ください。

――ZAQさんからの質問で「想区を選ぶ画面で、ずっと右に進んでたのが左に進み始めたってことは終わりも近いのでしょうか?」

石井:表示で折り返しがあると、物語的にも折り返しだと感じる方も多いようですね。

 ただ、これについては、右にスクロールし続けるのが大変なので適度に折り返しただけです(笑)。折り返しながらどんどん続けていきますので、物語の半分が終わったということではありません。

『グリムノーツ』
▲『西遊記』の想区から左に進み始めました。しかし物語はまだまだ続くようです。

――せるしおさんからの質問で「100waveボスラッシュマルチクエストお願いします。報酬はランダムで稀に属性コアIIIが出るとかでどうでしょう」。

石井:考えたことはありますが、100waveともなると、同じことの繰り返しになって、新しい遊びにつながりにくかったんですよね。

 もちろん、プレイ時間が長くなるので、他のクエストとの差別化になる部分もありますが、プレイ時間が長くなること=難易度が高くなる=よりよい報酬を用意するという流れで考えるかどうかは、なかなか難しいところもありまして。

 それならば、プレイ時間は短いけれども高難易度のクエストを用意したほうがおもしろそうだという判断もありまして、10月末には複数のボスが登場する高難易度のボスラッシュ的なマルチクエストが登場します。かなり密度が濃いバトルを楽しんでいただけると思いますよ。

 それから100waveという長さになると、ちょっとマルチプレイとの相性が難しい部分もありまして。移動中の空き時間に遊ぶ方も多いですし、マルチプレイの新たな遊び方については、いろいろと検討しながら進めていくつもりです。

――loadstormさんからの質問で「ハロウィン衣装以降はクリスマスとか時事ネタものになりそうですか?」。

石井:特にそうとは決めていないです。基本的に毎月ペースで追加をしていきたいのですが、時事ネタや季節ネタはどうしても数に限りがありますから。

 例えば私服やドレス姿みたいなものを考えた時、それは別に何月であってもいいと思うんですよね。

 もちろん、季節ネタというのも当然人気のある衣装が多いので、定番は入れていきたいですが、お正月は必ず振り袖が来るかと言われると、そんなつもりはなく、季節ネタを必ず追いかけるというつもりはないです。

 TGSの生放送で話が出たように、野獣ラ・ベットの人間バージョンを追加衣装として出すなど、いろいろなバリエーションで着せ替え衣装を用意できたらいいなと考えています。

『グリムノーツ』
▲追加されたハロウィン衣装。

――ニワトコさんからの質問で「マルチの充実をするという案はありますか? ソロでやるよりもマルチのわいわい感とかが好きなので、反映していただけたら嬉しいです」。

石井:マルチにもきちんと力を入れていきます。先ほどお話したように、10月末にはボスラッシュのマルチクエストが新登場するので、ぜひ挑戦してみてください。ボスが2匹同時に出たりするので、なかなか凶悪な難易度ですよ。

 他には、生放送でも出たマルチプレイ用のチャットスタンプ的なものの準備を進めています。ただ、マルチプレイ中の要素を増やすと、どうしても処理が重くなり、デメリットも多くなりがちなので、慎重に調整中です。

――グリミアさんからの質問で「絶級より高い難易度のクエスト実装はありかすか?」。

石井:単純に敵のステータスを上げていく形の難易度調整よりも、ボスラッシュのような形で、新しい遊び方とあわせた難易度調整を模索しているところです。

 それよりも今のマルチのクエストは、曜日クエストと素材のクエストだけで偏っていて更新が遅めなので、その中身の見直しというのは定期的にやりたいと考えています。同じことを繰り返すのも疲れるので、難易度よりもバリエーションなどを優先して手を付けたいという状態です。

 単純に固いとか、攻撃力が高い敵と戦うよりは、いろいろな種類の敵と戦えるほうが楽しいと思うので、そういうところをイベント的にやれたらいいですね。

――plan7さんからの質問で「切り替え技を増やす予定はありますか?」。

石井:今のところ具体的なものとしてはありませんが、アクション要素が強いゲームですし、切り替え技を増やしていく可能性はあります。

 個人的に考えているのは、今後、主人公の成長システムを入れたいと思っていまして、それを組み合わせるとおもしろそうな気がしています。

 エクスやタオなどの主人公を育てていくことによって、新たな職業・武器別の切り替え技を習得していき、それをセットできるような流れですね。

 今は操作キャラクターと武器と、2つの成長軸がありますが、そこに“主人公の成長”を加えると、より育成やプレイの幅が広がるんじゃないでしょうか。

――これは編集部からの質問ですが、TGSの生放送で“今後実装してほしい童話キャラクターランキング”を発表したところ、かなり反響がありました。なかでも“ごんぎつね”の反響が大きかった印象がありますが、いかがですか?

石井:そういった意見をいただいて、うれしく思っていますが、ごんぎつねは普通に実装するとただの狐になってしまうところと、狐がメインキャラとなる童話が多いなかでの差別化など、いろいろと難しいところがある印象です。

『グリムノーツ』

 擬人化をすると対応しやすい部分もありますが、あまり多用すると、そのキャラである必然性が薄れてしまうこともあると思いますので。脇役的なキャラを中心に何度か擬人化をしてきましたが、主役級は、より慎重に考えたいと思っています。

 そんなわけで、ごんぎつねを出してみたいという気持ちはありますが、現状では少し難しいという状況です。とはいえ、ユーザー様から反響をたくさんいただいていることは認識しているので、何かいい形を考えていきたいと思っています。

これからの想区追加は? 過去に登場した人気キャラクターの想区も登場予定

――ここからは、主に大泉さんに対するシナリオ関連の質問です。混沌女のい子さんからの質問で「今までのストーリー、キャラクターで一番好きなのは何(誰)ですか?」

大泉:個人的に気に入っているイベントは、人気投票で2位になったキャラクターイベントの“長靴をはいた猫VSファントム”です。世界観とキャラクターの見せ方が、やりたいと思っていた形に一番きれいにはまったと思っています。

『グリムノーツ』
▲人気投票で2位になった“長靴をはいた猫VSファントム”。2人の戦いは意外な結末を迎えました。

 それから、“赤ずきん、ゴーホーム”も好きですね。赤ずきんの想区のマップをベースにするということで、ストーリーの導線とあわせて、僕のほうでマップ上の動きも提案させていただきました。

『グリムノーツ』
▲収集イベント“赤ずきん、ゴーホーム”。2人の赤ずきんが登場するなど印象に残るストーリーでもありました。

 おばあさんの家から赤ずきんの村に帰る形で提案させていただいて、それがある種のRPGらしさを実現できたかなあという意味で気に入っていますね。キャラクターはもう、単純に好きなのはカオス・シンデレラですね。

 ゲームでは、シンデレラが最初の想区なんですが、最初の想区はゲームのチュートリアルみたいな位置づけなので、主人公たちがメインになってシンデレラのお話があまり書けなかったことが心残りでもありました。

 その心残りをはらせたという意味でも、カオス・シンデレラは気に入っています。

『グリムノーツ』
▲大泉さんお気に入りのカオス・シンデレラ。

――ちなみに石井さんは、印象に残っているキャラやストーリーはいますか。

石井:壮大な物語も楽しいのですが、各話完結のオムニバス的な楽しさも『グリムノーツ』に合っていると感じています。そういう意味で、序盤の展開は特にオムニバス形式の雰囲気があったので好きですね。

 なかでも、ドン・キホーテの想区が好きです。展開も元の童話をモチーフにうまくはまったなと感じていますし、ストーリー展開も好きです。

 あとは、カオス赤ずきんのストーリー展開はとてもよくできていたので僕も“赤ずきん、ゴーホーム”が印象に残っています。詳細は話すとネタバレを含む話になっちゃうので、言えませんが(笑)。

『グリムノーツ』
▲石井さんお気に入りのドン・キホーテの想区。

 キャラクターについては、あえて言うならアリスですね。看板的なキャラクターで、ユーザー様からの人気も非常に高いので。ユーザーの皆さんに愛してもらえるキャラは、開発スタッフとしてもありがたいですし、うれしいものですね。

――葵佐倉さんからの質問で「短編のイベントシナリオで登場したキャラクターたちは今後想区に登場しないのでしょうか?」。

石井:それはもちろん、ありえます。実は、今後は少し続編展開のシナリオを増やしていこうかと考えているんですよ。人気のある童話の数は限られていて、新しい童話を出すハードルは上がってしまっているので、既存のキャラクターをもうちょっと掘り下げていきたいと思っています。

 多くのキャラクターが人気を博している現状で、キャラクターを見たい・知りたいという要望があることも感じています。例えば、ヘンゼルとグレーテルやマッチ売りの少女など、1回で終わってしまうのはもったいないので、キャラクターをもっと深堀りしていきたいと考えています

『グリムノーツ』
▲ヘンゼルとグレーテル、マッチ売りの少女は“マッチの勇者伝説・エピソード0”に登場。今後、活躍の機会があるかもしれません。

 なので、今後の想区にでも、新しい想区だけでなく、長靴をはいた猫の想区など、単発で出てきたキャラクターや過去に登場したキャラクターが出せたらいいなと考えています。

 人気投票を行って、人気のイベントを復刻させてもよいかもしれません。

大泉:長靴をはいた猫の“フリー相談屋”としての別の物語を読んでみたいというご意見もありましたね。

――なのかけいさんからの質問で「一番大泉さん自身に近いキャラクターは誰だと思いますか?」。あの、こちらのなのかけいさんって、もしかして『グリムノーツ』で美女ラ・ベルや野獣ラ・ベットを描いたイラストレーターさんなのでは?

大泉:そうですね。本人から、TGS生放送用に質問を投稿したという連絡がありました(笑)。

 答えは悩みますけど……やっぱり主人公キャラたちですかね。シナリオを一番たくさん書いているからということもありますが、自分の考え方などがいろいろと盛り込まれていると思います。すごく恥ずかしいですね、こういう質問に答えるのって(笑)。

『グリムノーツ』
▲エクス(主人公)。

石井:大泉さんと話していると、「僕はエクスっぽい」と言ってますね。「自分だと思って書いてるんですよね」って。

大泉:確かに最初のころはエクスが近いかなって思ってたんですけど、もしかしたら最近はレイナが一番近いんじゃないかなって思っています。

 後からシナリオを読み返すと、レイナの欠点や抱えている問題に共感する部分も多いんですよね。レイナについてはユーザー様から寄せられるさまざまなご意見を聞くたびに、他人ごとではない気持ちになります(笑)。

『グリムノーツ』
▲レイナ。

石井:自分から見た印象として、ドン・キホーテは大泉さんが好きに書いていたと感じています。似てるかどうかは別として、すごくスムーズに書いているから、考え方は大泉さんと近いのかなあと思いました。

大泉:これは似ているかどうかというよりは、『ドン・キホーテ』は元々テーマやキャラクターがものすごく好きでしたね。物語に取りつかれた人物が現実と抗うというモチーフが『グリムノーツ』のストーリーで目指しているテーマとすごく一致していて、書きやすかったです。

石井:逆に『オズの魔法使い』は苦戦しているように見えました。

大泉:コンセプトは決まっていましたが、主人公とのドラマもからませる必要があったので、その点では苦労しました。話の組み立て方として、ユーザー様のハードルが上がっていた部分もありましたしね。

 『雪の女王』も大変でした。原作がすんなり入り込める作品だとスッと入れるのですが、テーマをとらえるのが難しい原作だと大変ですね。

石井:カイとか、ある意味で大泉さんとは一番遠そうなキャラクターだもんね(笑)。

大泉:クールすぎて、僕とは合わないです(笑)。

――オリジナルキャラのシナリオもありますが、そちらは書きやすかったりするんですか?

大泉:書きやすい部分もあるのですが、元の原作がそもそもないので、ユーザー様が読んだ時に何が正しい話でどこが狂った話なのかわからないんですよね。その部分の見せ方が大変でした。

――ナオさんからの質問で「シナリオを書く際に注意していることはなんですか?」。

大泉:原作ありきという点と、ゲームシナリオにおける一般論になってしまいますが、例えば豆の木イベントのシナリオなら“キャラクターを連れて豆の木に登る”といったような“イベントそのものの目的とシナリオのゴールを絶対に外さない”ことが第一と思っています。

石井:どうしてもシステム的な制約があるので、そこを外れないようにしないといつまでたっても完成しないというのはあります。

大泉:ただ、小説にも小説の制約はありますしゲームは制約が特殊な面もありますが、どの媒体でも制約はつきものです。最近はその中でベストなものを表現すればいいと思っているので、そこでやりにくいというのはあまり感じなくなりました。

――『グリムノーツ』だと、童話の原作があるという点が特殊ということでしょうか。

大泉:そうですね。絶対外しちゃいけないポイントなどがあるので、そこをどう見極めるか、どこを無視するかということですね。こだわりすぎると、逆に原作のパブリックイメージから外れてしまうことにもなりますしね。

石井:シナリオの展開上、どこかで狂わないといけないのですが、その狂うシーンはユーザー様にとって納得がいくシーンでなければ、どこでおかしくなったのかがわからなくなってしまいます。

 そういった点では、ある程度ユーザー様が印象に残っている、物語の正となっているところとの違いを作らないといけないという点が難しいと思っています。

石井:原作を知っていないとそれだけで楽しめないというのは、このテーマの難しいところかなとは思います。物語が狂って、かぼちゃの馬車が大根の馬車になったと言われても、よくわからないでしょうし(笑)。

――おいひと@弓アリスくださいさんからの質問で「運命の書の表紙ってキャラとか想区ごとに違ってたりするんですか?」。

大泉:運命の書をどのように生活の中で使っているかという設定まではありますが、表紙までは考えたことはなかったですね。

 想区ごとにストーリーテラーが違うので、想区ごとに違うのかなと思います。どこかでそんな話を出せたら、おもしろいかもしれないですね。

石井:運命の書を与える存在がいるので、それが違えばそれぞれ違うものになる気はします。運命の書はストーリーテラーが与えているので、いわば出版社が違えば装丁が異なるように、表紙についても画一的なものではなさそうですね。

――編集部からの質問です。小説の連載を始めて、より思い入れが深くなったキャラクターはいますか? また、小説オリジナルのシーンやセリフで、お気に入りのものを教えてください。

大泉:小説で気を付けている点として、ゲームの際のバトル部分はユーザー様が実際にプレイする部分なので、ゲームではそれを反映したシナリオを書くことはできないんです。でも、小説は逆にそこを書かないといけません。例えば、コネクトをどう表現するかというところに悩みました。

 小説でコネクトの描写が最初に出てくるシーンでは、ゲーム本編の流れと同様にジャックを登場させました。そこで本編ではでてこないコネクト中のジャックの心情を描写できたという意味でも、このシーンは思い入れがありますね。

石井:ジャックは主人公感がありますからね。普通の少年が大きな物語に巻き込まれていく感じで、いわゆる“主人公らしさ”が強いんですよね。しかも、まっすぐな性格をしているし。

大泉:そうなんですよ。決めどころですごく使いやすいキャラクターだと感じましたし、ジャックへの思い入れは深いですね。

『グリムノーツ』
▲ジャック(天空)。

 それから、エクスの生い立ちに関する部分ですね。ゲームの中でほぼ触れていませんでしたが、小説ではしっかりと描くことができたので、エクスというキャラクターの立ち位置が深められたと思っています。

 小説オリジナルのシーンだと、赤ずきんの話のクライマックスのシーンで、カオステラーになった赤ずきんとエクスが戦うところがすごく気に入っています。

 少しネタバレになるんですけど、エクスがコネクトするのがTVCM放映記念で配布された剣を持った赤ずきんで、その赤ずきんのスキルである“経験値↑大”をイメージした展開も入れ込むことができたので、すごく気に入っています。

『グリムノーツ』
▲赤ずきん(CM記念)。

――コネクトなどの設定は、小説という形式で説明があると、より頭に入ってきやすかったです。

大泉:あとは心情描写がしやすかったですね。このキャラがあの時どう考えていたかなどは、小説のほうがやりやすかったです。

今後の展望は? 新たなミニゲームやキャンペーンの情報が明らかに

――今後の展開について教えてください。新たな想区やキャラクターはどのようなものになりますでしょうか。

石井:新しい想区に関してはシナリオにからむ感じで、過去に出てきたキャラクターが再登場する予定になっています。

『グリムノーツ』
▲新しく追加された“青髭”の想区。

 それは主人公たちのメンバーの1人の過去と大きく関係しているシナリオになるので、ぜひ楽しみにしてもらいたいなと考えています。

 今後も、新しい想区を追加していく予定ですし、キャラクターについても新キャラはもちろん、今まで登場はしていたけどスポットライトが当たっていなかったキャラクターについてフィーチャーしていきたいなと思っているので、そういったところを楽しみにしていただければと思っています。

――衣装替えのシステムや新職業の実装など、さまざまな大規模アップデートがなされてきましたが、今後はどのような部分に注目してアップデートを行っていく予定でしょうか?

石井:ゲーム体験というところで新しいものを追加していきたいと思っています。

 現在、衣装や職業を追加しましたが、大きな部分のゲーム性としては、シナリオを進めてバトルをするという形を繰り返して、レベルを上げる、装備を集めるという形に落ち着いてしまっているので、もう少し違ったゲーム体験を追加していきたいと考えています。

 何がベストかというところはまだ検討している状態なので、少しずつ新しい体験を実装していければ、というところです。すでに発表したPVP(対人戦)が楽しめる闘技場は開発を進めているので、まずそこが第1弾だと考えていただければ幸いです。

――PVPが入ってくるとまたパーティの組み方も変わってきますね。

石井:少し違うルールのバトルなど、別の体験ができればいいと思っています。

――小説的にはメインストーリーを追っていますが、将来的にはいわゆるキャラクターイベントみたいな短編読み切りみたいなものとかも書かれるんですか?

大泉:機会があればそういう短編も書いてみたいですね。また、ご質問をいただくことも多いのでこの機会に。最近は僕だけでなく、SOWさんもストーリーを担当していますが、僕がメインの想区イベントと豆の木のイベントを、SOWさんが収集イベントとキャラクターイベントを担当する形で分担しています。

 それぞれ書き方のタッチが違う部分もあるので、より幅広いストーリーの魅力についても、楽しんでいただければうれしいですね。

――それでは最後に、ファンへのメッセージをお願いします。

石井:“コッコちゃんアタック”に続く、新しいミニゲームを作り始めました。内容に関してはまだ言えませんが、年内には追加できたらいいなという進捗です。今後も定期的にミニゲームを増やしていけたらいいなと思っています。

 それと、1,300万ダウンロードを突破したので、そのキャンペーンを開催します。詩晶石のプレゼントだけじゃなくて、もう少しみなさんに喜んでいただけるようなことをやりたいと思っていますので、お楽しみに。

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