2016年12月8日(木)
タイトーが11月30日に配信を開始したiOS/Android用アプリ『period zero(ピリオドゼロ)』。その制作陣にインタビューを行った。
動画:『ピリオドゼロ』プロモーションムービー
今年さまざまなゲームが登場し、活気づいたデジタルカードゲームというジャンルだが、2010年ごろに一度サービスを終了した本作を新たに作り直し、ぶつけてきた狙いはどこにあるのか? 本作のキーマンとなるタイトー・清水プロデューサー、シナリオ担当のクオリア・新間一彰氏、ゲームシステム担当の遊宝洞・前川勝氏に『ピリオドゼロ』の展望や、“お手軽戦略カードゲーム”と銘打った本作の魅力についてお話を伺った。
▲インタビューした制作陣。左から新間一彰氏、清水プロデューサー、前川勝氏。 |
――今年は数多くのデジタルカードゲームがリリースされました。デジタルカードゲームというジャンルの認知が広がり、市場が拡大する一方でライバルとなるタイトルも数多く登場しています。その中で『ピリオドゼロ』という作品を再び世に送り出したのには、どういう狙いがあるのでしょうか。
清水氏:今の時代に『ピリオドゼロ』が合うようになったことが大きい点ですね。かつて『ピリオドゼロ』を配信していた時期は、戦略的なカードゲームが少なく、また技術的な問題もあってジャンルとして確立できませんでした。
今だったらユーザーさんもこういったゲームを受け入れられるようになっているだろうし、当時はできなかった表現などもできるようになっているので、ぜひ再チャレンジしたいなと思ったんです。
――再スタートを切るにあたって、意識された点などはありますか?
清水氏:シナリオを重視することですね。カードゲームというと、対人戦がメインと受け取られる方も多いと思いますが『ピリオドゼロ』はCPU戦とストーリーを楽しむシミュレーションゲームに近いタイトルです。
なので、シナリオが魅力的でないといけないと考えたんですよ。そこで今回はクオリアの新間さんのお力を借りて、シナリオは相当力を入れて作っています。
新間氏:今年の5月くらいに依頼を受けて、まずはゲームを触らせてもらいました。その時はまだデジタルではなくて、紙のカードを使って「こういうゲームなんです」って遊んだんですが、これがすごくよくできていて。このゲームに熱中するキャラクターたちの話をぜひ書きたいなと思いました。
それと個人的な話になりますが、私はその時に管理者としてシナリオ作りに携わることが多く、ライターとして関わる作品に飢えていたので、うれしい話でした。
――飢えていたところに、絶好のタイミングでお話がやってきたわけですね。
新間氏:そうですね。それにデジタルカードゲームに限らず、最近はSF系のシナリオはウケないと言われているんですが「バリバリのSFでいいです!」と言ってくださったのもうれしかったですね。ファンタジーよりもSFの方が得意という気持ちがあったので。
清水氏:新間さんのプロフィールにそう書いてあったから依頼したんですよ。
新間氏:書いておいてよかった(笑)。
――『ピリオドゼロ』ではシナリオが大事な要素と話していただきましたが、実際にはどのようなストーリーなのでしょうか?
新間氏:一言でいえば“近未来を舞台にしたジュブナイル”ですね。“ゼロ区”という電脳空間内にある都市の秘密に迫っていく話になります。
清水氏:このゼロ区は池袋がモデルになっているんですよ。もともと現実にある街をモデルにする予定でどこがいいかいろいろ協議した結果、池袋にしようということになりました。
――池袋にどういう魅力があったのでしょうか?
新間氏:池袋っていろいろな顔があるんですよね。たとえばサンシャイン通りの辺りは若者の街ですが、2駅も離れればおじいちゃんおばあちゃんの街である巣鴨なんかがあります。
“ゼロ区”はシナリオに従って変化・成長していく街なので、そのイメージと池袋は重なる部分が多かったですね。ゲーム内にも現実の地名が出てくるので、『ピリオドゼロ』を遊んで池袋を訪れる機会があれば、注意して歩いてみてほしいですね。
清水氏: また、ただモデルにしているだけじゃなくて実際に豊島区の区議さんにも協力し ていただいています。今後も実際の都市の模様をゼロ区の中に加えていき現実と見比べるようなおもしろさを引き出せたらと考えています。
――それはおもしろいですね! いわゆる“聖地巡礼”が楽しくなりそうです。続いてゲームシステムについで、見どころなどをお話しいただけますか。
清水氏:『ピリオドゼロ』がメインとターゲットと考えているユーザーさんは、ガチガチのカードゲーマーよりもいわゆるライト層と言われる方々です。こういった人たちに“カードゲームのおもしろさを抽出して楽しんでもらうこと”が『ピリオドゼロ』の狙いです。
新間氏:ヒロインの友香がそれを象徴しています。彼女はカードゲーマーとしては上手なほうではありませんが、とにかく『ピリオドゼロ』のおもしろさにハマっているキャラクターです。
▲いつも前向きな佐々木友香。ゲームでは、プレイヤーを導いてくれることも。 |
清水氏:そうなると「カードゲームのおもしろさって何?」という話になりますが、それは“戦略を立てること”だと思うんですね。
しかし40枚、50枚でデッキを組むゲームだと戦略の核になるカードだけではデッキにならないので、核となるカードを引くためのカードやコンボが決まるまで時間を稼ぐカードでデッキを整えなくてはいけない。これがカードゲーム初心者には大変です。
ですので『ピリオドゼロ』ではそれらの“脇を固めるカード”を排して、戦略のキーとなるカードだけでデッキを作れるようにしました。“やりたいことをやる気持ちよさ”を優先した形ですね。
前川氏:ただ、その方向を突き詰めすぎると将棋や囲碁などの“二人零和有限確定完全情報ゲーム”に近づいてしまいます。なのでデッキの速度による先攻後攻判定や、クリティカルコア周りのシステムであえて運要素、ゲームが揺らぐ要因も取り入れています。不利な戦いだったけれど、偶然先攻を取れたから勝てたといった要素も、カードゲームのおもしろさの1つだと思うので。
――デッキ枚数を極力しぼることによってプレイヤーの思い描く戦い方が実行しやすいのが『ピリオドゼロ』の魅力ということですが、実際にはどのような戦略を立てるのがいいのでしょうか。初心者のプレイヤーさんに向けてお話しいただけますか。
前川氏:一番に考えてほしいことは“やりたいことをやる”ですね。つまり相手のデッキはともかく“自分のデッキのベストムーブ”を意識しておくことが大切です。そうすることで相手のデッキによって出力100パーセントのベストムーブを決められそうか、それとも80パーセントくらいの対応型の手を打つのかといったプラン立てができるようになります。
――「ベストムーブでは5ターンで勝利できるけど、相手のカードを見ると8ターンくらいかかりそうだ。だからここはあえてこっちのユニットを出そう」というようなことがプラン立てですね。
前川氏:はい。そこで大事になってくるのが“ターン経過でたまるAPのやりくり”です。ゲームが決着するターンを想定することでこのユニットのスキルを使えるのは1回か、それとも2回か、2回使えるならどこで使うか……と思考を広げていきましょう。
――事前に決めておいたベストムーブ、最速のパターンから、相手の動きを見て実際にゲームが決着するターンを予測して、戦略を現実的な路線に修正していくことが大事なわけですね。ではそれを前提にもう一歩、具体的なアドバイスをいただけますか。
前川氏:今の環境では、属性はなるべく散らしておいたほうがいいでしょう。これはデッキの対応力を上げることで、どんなに相手に対してもベストかそれに近い動きを取れるようにするためです。
――属性を統一するメリットよりも、属性を散らすことで対応力が高まる恩恵の方が大きいわけですね。
前川氏:現環境ではそうですね。属性相性で有利になったときに追加で得られるクリティアルコアの数が多いため、多少運は絡むとはいえダメージの底上げを狙えます。
清水氏:ちなみにですけど、クリティカルコアの判定、CPU側だけ優遇とかしてないですからね。完全に抽選でやっています。これだけは言っておきたかった(笑)。
――確かに、速度で勝って属性相性有利でクリティカルコアの数に大きな差があるのに、結局双方の倍率は同じ、みたいなこともありますよね。
前川氏:ゆくゆくは後攻時に有利な能力を持つカードなどもデザインしていく予定ですが、今は属性を分散させることでなるべくクリティカルコアを多く得ることを考えましょう。
――カードの中には種族を参照する能力を持つものも多いですが、種族のシナジーは重視したほうがいいのでしょうか。
前川氏:種族シナジーはカードが増えていくと『ピリオドゼロ』のキーとなるデッキタイプになります。さまざまな種族デッキが組めるようにするつもりなので、お気に入りのカードを見つけておいてほしいですね。
――カードの追加によって種族デッキの本格化など、戦略性がより深まっていくことになるわけですがカード第2弾のリリースはいつごろを予定されていますか。
清水氏:第2弾のリリースは12月中旬を予定しています。カード枚数としては15枚予定です。今後も基本セット45枚とエクスパンション15枚という組み合わせをベースにカードプールを増やしていきます。第3弾のリリースは2月予定ですね。
――ローテーションで古いカードが使えなくなることはないのでしょうか?
清水氏:それはありません。ゲーム終了時に手に入るカードが変わるだけです。当然、古いカードも継続して入手する手段を用意します。
――オンライン対戦を実装される予定はありますか?
清水氏:はい、あります。まずは、先ほども言ったようにカードゲームにあまり触れたことがないプレイヤーさんにカードゲームのおもしろさを十分に味わってもらって、そこからオンライン対戦への導入をしていければと考えています。その場合ももちろんプレイヤーレベルなどによって有利不利が出ないように調整もしますよ。
――1人用のシナリオで腕を磨き、オンライン対戦に挑戦という導線が引かれたら、ゼロ区にいるという感覚も増してきそうですね。今後はイベントなども開催される予定なのでしょうか? その報酬などについてもお話しいただければと思います。
清水氏:ゲーム内イベントはもちろんやります。報酬はPLカードですね。基本的な報酬は全ユーザーさんが手に入れられるようにしますが、上位報酬的なものも用意します。カードの性能は同じだけどイラストがパラレル仕様になったものなどを想定します。
▲前川さんがオススメカードとして挙げていたイラスト違いのトール。こちらもPRカードの1枚だ。 |
――カードの追加と同じようなペースでシナリオも展開していくのでしょうか?
新間氏:シナリオも随時追加していきます。メインストーリーに登場するキャラクターを掘り下げる、各キャラクターごとのシナリオも遊べるようになるので、そこでメインストーリーでは見られなかった一面などを描いていきます。
清水氏:牛丼(※“牛丼片手に世界を救えるカードゲーム”は本作のキャッチコピーにも なっている)もシナリオに登場しますよ(笑)。
――あれはインパクトのあるキャッチでした。どういう経緯で採用されたのでしょうか。
前川氏:ノリ的には長い会議の末、いわゆる深夜テンションから出てきたような感じですけど。
清水氏:実はそうなんです。でも、後になって見返しても「これ、いいじゃん」ということになって、正式に採用されました(笑)。
――では、最後になりますが『ピリオドゼロ』を遊んでいるユーザーに、皆さんからそれぞれ一言メッセージをいただけますか?
清水氏:昔と違って、今はデジタルに限ってもいろいろなカードゲームがあります。そんな中で『ピリオドゼロ』は1人ででも、凝縮されたカードゲームのおもしろさを味わえるものになっています。
最近デジタルカードゲームが流行っているけど、いまいち戦い方がわからないという人は、きっと楽しみながらカードゲームの魅力に触れられるのでぜひ遊んでみてください。すでにカードゲームを遊ばれている人も“やりたいことをやる”というカードゲームの原点にある楽しさを味わえます。『ピリオドゼロ』“だけ”遊べばいいなんて言いません、どうか『ピリオドゼロ』“も”遊んでみてください!
新間氏:シナリオもキャラクターもリビルドとなって『ピリオドゼロ』は新たなスタートを切りました。昔やっていた方はニヤリとできる演出なども入っていますので、懐かしいと思った方にもぜひプレイしてもらえればと思います。ボイスを担当してくれた声優さんたちも、私たちの作ったシナリオを実に魅力的に演じてくれていますので、カードゲームとしてももちろんですが、シナリオもぜひ楽しんでほしいです。
前川氏:『ピリオドゼロ』が再び広まっていけるかは、私たちの努力はもちろんですが、ユーザーさんの応援が不可欠です。ゲームを複雑にしすぎないため、今はまだカードプールも広くはありませんが、今後の新カード追加でどんどんとゲームの深みが増していきます。ぜひ『ピリオドゼロ』を遊んでいただき、応援してもらえればうれしいです!
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