2017年2月3日(金)
ガンホー・オンライン・エンターテイメント(以下、ガンホー)から好評配信中のスマートフォン用アプリ『セブンス・リバース』。本作の開発者インタビュー連載企画の第2弾をお届けします!
『セブンス・リバース』は、荒廃した村の復興を目指す若き村長となって冒険を繰り広げるオンラインRPG。自分の村に集まった多くのプレイヤーとともに、広大な土地“ソラス” に数多あるダンジョンを攻略します。
インタビュー第1回は、“世界観・ストーリー”についてお届けしました。第2回のテーマは、“キャラクター・背景デザイン”について。キャラクターデザインを担当した山下修平氏と、背景デザインを担当した津田幸治氏(ともにブラウニーズ)のおふたりにお話を伺いました。
デザイナーというお仕事についても語っていだきましたので、デザイナー志望の人も一見の価値あり! また、記事の最後にはおふたりに描いていただいたイラストサイン色紙の読者プレゼントも用意していますので、ぜひご覧ください!(※記事中は敬称略)
▲左から山下氏、津田氏。 |
――まずは、おふたりが本作で担当された部分を教えていただけますか。
山下:僕が担当したのはジョブとNPC、あとはモンスターからドロップする装備品のデザインです。モンスターの一部や髪型も担当しています。
津田:といいますか、背景以外はほぼ山下がメインでやっていました。背景周りは僕がディレクションを担当して複数人で描きました、施設やフィールドのステージがそうですね。
実は立ち上げの時点で、僕は参加していなかったんです。その時は若手の女の子が入っていまして、彼女のイラストをベースに世界観を膨らませながら背景を描いていきました。
――依頼から完成まではどのような流れだったのでしょうか?
山下:ジャンルやコンセプトの提示以外は、オベリスクと異界の人がいるくらいのふんわりとした設定だけありました。そこから想像を膨らませて、という感じですね。
津田:最初の顔合わせのときにプロデューサーの田中さん(※編注:ガンホー 田中弘道氏)から聞いたことは、キャラクターはあまりリアルにならず、それでいて子ども向けのようなかわいらしい感じにもならないように、というざっくりとしたイメージでした。
弊社が開発に携わった某作品ほどはかわいくならないかなとおっしゃっていたので、その辺りの落としどころを山下が頑張って模索していましたね。
――ガンホーさんとは、結構密なやりとりをされていたのでしょうか。
山下:僕は2回目の会議から参加したのですが、何点か描いたものを持っていったんです。そのときにディレクターの廣瀬さん(※編注:ガンホー 廣瀬髙志氏)にいい感じだと言っていただいたので、そのテイストでいこうと進めていきました。
津田:僕は以前スクウェア・エニックスにいたとき、田中さんに『聖剣伝説』でお世話になっていまして。田中さんがスクウェア・エニックスを離れられたあとの1作目でうちに声をかけていただいたので、またご一緒にできると非常に楽しみでした。
山下:田中さんが津田さんの背景を推していたので、それに合わせたキャラをどうしようか悩みましたね。
津田:自分なりの背景を描くにも落としどころに悩んだのは、絵の立ち上げのときに僕は他のプロジェクトを手がけていたので、『セブンス・リバース』に取りかかることができずにいたんです。山下と背景の女の子が描いたものは、自分や亀岡(※編注:ブラウニーズ代表 亀岡慎一氏)が描くものとは違うテイストで、これはこれでいいなと思っていたんですね。
やはり若い世代を伸ばしていきたいという思いもあったので、そこに自分の絵をどんなタッチで描いたらいいのかなと悩みました。あと、田中さん的には最初ざっくりながらも想像していたものがあるようでしたので、その辺りの模索で右往左往しましたね。
最初は水彩というか淡い感じでいこうかなとラフを描いていたのですが、気がついたら今のような感じになっていました。背景の女の子が森のステージの絵を描いていたのですが、雰囲気がすごくよかったので、それを残したほうがいいかなと。それをベースに僕も作業を進めていった感じですね。
山下:その名残はステージ1に残っていますね。
――おふたりがデザインをする中で、意識された部分はどこでしょうか?
山下:ガンホーさんのMMOということで、『ラグナロクオンライン』のような雰囲気がいいのかなと多少意識はしています。かわいらしすぎないように、少しだけリアル寄りにという絶妙なところが大変でした。
津田:僕は背景の上にキャラクターやオブジェクトを置くことになるので、その際にキャラクターが引き立つような描き方を意識しました。本作はアプリということもあり、いろいろアップデートで追加されるじゃないですか。ですので、量産できるような感じの描き方というのでしょうか、そこを模索しました。
今回、全面的に行ったのが、色合いの変更ができるように絵の描き方をフォトショップのレイヤーで分けて、いつでも好きな色に切り替えられるようにしたんです。そこを開いていじるだけで絵がきれいに差し替えられます。昔はイチからベタで描いていたので、色を変えるだけでもなかなか大変な作業でしたからね。
――なるほど。今回描かれた中で、苦労されたことはありますか?
山下:本作のキャラクターはアバターなので、服の切れ目が決まっているんです。そこが不自然にならないように表現するのは苦労しましたね。あと、田中さんからなるべくデザインをシンプルにしてほしいという依頼があったんです。シンプルでいいものって結構難しくて……そこも苦労しました。
津田:背景については、本作のバトルステージはある程度フォーマットが決まった作りになっているんです。各エリアの差別化といいますか、いろいろな地域がある中で、オブジェクトが手前にくるものとか、奥にある背景物にどんなものを持ってきたらいいのかを考えさせられました。
あとは量産するにあたって、他の方が描いたものとの絵柄合わせですね。かなり似せて描いていただいているのですが、どうしても並べたときに手を加えないと難しいかなというところがでてきてしまいますね。
山下:背景は当初、オブジェクト自体も手前のものは3Dにするという話もでましたよね。
津田:でも3Dは3Dで立体物と後ろのベタ描きとの整合性が難しそうかなと思いまして。
山下:2Dの上に3Dのキャラクターをのせることに対して、色味を合わせるなどいろいろやりましたよね。
――それぞれ担当された部分で、ユーザーに注目してほしい部分はどこでしょうか。
山下:下半身の装備に靴下をはいているものがあるのですが、普通に作ると足先ははだしになってしまうんです。そうならないように、足先まで靴下を描いていることですかね。
例えば、スリッパのような防具を作って装備させたときに、足先だけはだしにならないようにしているんです。すごく細かなところになってしまうのですが、見た目が不自然にならないように装備のデザインを設計しています。
津田:僕は1カ所こだわりがありまして。バトルフィールドは舞台のセットみたいに何層かにして奥行きをだしているんですね。その中でもこだわっているのは、氷の城の中です。ただの空間だけだとさみしいかなと思いまして、他ではあまりやっていないのですが橋を実際に3Dで作ってスクロールしたときに動くようにしています。
あと、ドラマチックに見せたいところはすごく遠景の距離をもたせて、雲も迫ってくるような演出的な効果をしています。ワールドマップの未開のエリアには雲がかかっているじゃないですか。当初3Dで組んでいたのですが、僕自身3Dのノウハウがあまりなくて苦労していたんです。
途中からガンホーさんのベテランの3D担当の方が入られて、僕のイメージ通りになるように処理していただきました。さらに奥のほうはぼやけた感じにもしていただいて、予想以上にいい効果が出た仕上がりになりました。何カ所かでそういう遊び的なものを導入しています。
――1枚完成するまでに、ラフはどのくらい描かれるのでしょうか。
山下:ものによりますが、まずは案出しとして5枚ほど描いて、そこからポーズを3枚くらい描きます。ひと通りそろうのに2日はかかりますね。絵を描く以外にもいろいろやっていたので、合間合間の作業になりますが。
津田:僕は早いものだと数時間で描いちゃいますね。最初のステージイメージを描いたものがあるのですが、これは2~3時間でさくっと描いています。打ち合わせがあるんだけど、ちょっと背景を描いてくれと言われて描いたものです(笑)。ワールドマップのイメージは、確か別のプロジェクトがまだ忙しいときの休日に、隙間を見て1日~2日くらいでやりました。
――個人的に気になっていることがあるんですが、本作の“文字”は津田さんが考えられたのですか?
津田:いえ、文字は別のUIのスタッフが書かせてくださいというので任せました。書いてあるのは地名とかですね。アルファベットに合わせて文字フォントをちゃんと作って、読めるようにしてあります。……でも書いてあるのを訳すと、変なことばかり書いてあるんですよ! 井上さん(※編注:『セブンス・リバース』シナリオ担当・さよならおやすみ株式会社 井上信行氏)が地名を考えているのですが、ろくでもないようなことしか書いていないという(笑)。
▲メインビジュアルにも、特別に作られたというフォント文字が! 気になった方は、ぜひ解読に挑戦してください! |
津田:実は異界のデザインも苦労したものの1つですね。異界は通常の世界とは違ったイメージを作らなくてはいけないと思って、機械と自然物が融合したものになりました。オベリスクの模様が幾何学っぽい感じだったので。
山下:オベリスクも最初いろいろ案があったんです。
津田:幾何学と自然物の融合というイメージを、背景を描いてもらう人たちに伝えるのが大変でした。これがなかなか伝わらないんです。
自然物の中にあえて人工的な幾何学模様が自然に溶け込んで入っているみたいな感じなんですが。次のエリアでは、ナスカの地上絵みたいなみたいなものや、植物が異様な感じで生えているものが描かれています。
山下:モンスターにも異界由来のものに模様が入っているんですよ。氷の城の敵がまさにそれですね。そもそも語られるかもわからないのですが……。そういうものをひもといていくと、おもしろいかもしれないです。オベリスクの模様は、さっきのルービックキューブみたいな敵の模様と似ているんですよ。もう少しあとに出てくる敵ともリンクさせているので、注意して見てみてください。
――今あるものをじっくり見て考えてみると、公式が発表する前に見えてくるものがあるかもしれないですね。
津田:先ほどお話しした文字も、解読するといろいろなメッセージが見えてくると思います。
山下:ちなみにこれは、僕が担当した妖精のラフです。何かをもらえる妖精というオーダーがきて、何種類かを提案したんです。
▲イベントで登場した妖精のラフ。山下氏の推しはひげの妖精とのこと。 |
▲その後、魔法少女っぽさや羽を描いてほしいというオーダーがあり、方向性が決定。 |
▲方向性が決まると清書し、三面図を描くという流れに。 |
山下:それで、こちらが戦闘の初期イメージです。
▲初期イメージのラフ。 |
――この頃に出た案で、ボツになったものはありますか?
山下:バトルは試行錯誤しましたね。誰でも思いつくようなものはあらかた試して、それで今のシステムに落ち着いたんです。パーティの4人全員を操作するという案もあって、操作がすごく忙しい時期がありました。バフもしっかり管理する必要があって……個人的にはすごく好きなバトルシステムだったのですが、慌ただしすぎるということで没になりました。
立ち位置問題もありまして、自分の操作しているキャラクターが前にいるのがいいんじゃないか派と、自分がプリーストだったら後ろにいる派に分かれて、実際は後者になったという感じです。一時期は、立ち位置も前衛・中衛・後衛の概念があったこともありました。
津田:我々はアプリゲームを手がけるのは初めてということもあり、家庭用との違いを意識しました。
山下:私を含めて開発者にはコアなゲーマーが多いので、一時期はどんどん難しい方向に寄っていったというのはありますが、最終的に今の形が生まれました。
山下:これはモンスターのラフですね。僕が描いたのはカニとスライムとコウモリかな。あと、ケトゥスも描きました。このビッグスラッグは先ほどお話した背景の女の子が描いてくれたものなのですが、僕の推しモンスターです。
▲山下氏の推しモンスター・ナメクジ。 |
津田:僕も1体ゴーレムを描いたんですよ。描いていて楽しかったですね。
▲津田氏がお気に入りのデザインは、下段の真ん中にいるゴーレムだそうです。 |
――ここからはパーソナルな質問になるのですが、おふたりがデザイナーを目指そうとしたきっかけを教えていただけますか。
山下:僕は高校が美術科で、そのときから絵の仕事がしたいと思っていました。ただ、当時めちゃくちゃうまい奴がいたんです。それで一度心が折れちゃったんですよ。
その後、大学は美術ではなくて建築学科にいきました。でも絵を描きたいという気持ちがどんどん膨らんできたんです。ゲームも好きでしたし、『聖剣伝説 ~LEGEND OF MANA~』も好きだったので!
津田:おお、『聖剣伝説』をちゃんと押さえてきましたね(笑)。
山下:ゲームも作れるし、絵も描けるしということで、とりあえずゲーム会社にいってみようと受けました。イラストレーターになりたいというよりは、ゲームが作りたいという感じで弊社に入社しました。
津田:僕は結構古くて、ゲーム業界に入ったのが1988年で、当時はファミコンでしたね。最初に入った会社は製版会社でゲームとは関係なかったのですが、絵は好きで描いていたんです。
ゲームも好きでやっていたのですが、当時のファミコンソフトは1本5,000円くらいで、高いけれどいいゲームだなというものもあれば、何だこれはというのもあったわけですよ。自分だったらせめてグラフィックはこんな感じに変えるのになぁと思ってしまうソフトも、たくさんありました。
すごいゲームだと、ファミコンのスペックの限界を超えるようなこともやっていて、こういうことをやっている会社は楽しんで作っているんだろうなと思ったわけです。自分もユーザーをすごいなと思わせるゲームを作りたいと思い、「経験はないですけど絵を描かせてください」とゲーム開発会社の門をたたきました。
――おお、すごくゲームの歴史を感じるお話ですね! おふたりは普段どのような機材でお仕事をされているのですか?
津田:今は液晶タブレットですね。
山下:あとはフォトショップです。
津田:液晶タブレットは一昨年くらいに使い始めたのですが、断然直接描いている感じでよかったです。
山下:普通の板タブよりも線が引きやすくなりますよね。
津田:僕が使っている液晶タブレットは、回転させることができまして。長いストロークも傾けてできるのが使いやすいです。
山下:液タブを使ってから1つ大変なことがありまして……板タブはモニターが自分に対して垂直になるからいいのですが、液タブは若干斜めにして使うので、画面にパースがかかるんです。モニターに出したときに、自分の目のパースが傾いているんですね。なので、たまに確認しながら作業しています。
津田:僕が困ったのは、色味ですね。通常のモニターも置いてやっているのですが、液タブとモニターの色合いの見え方が違っていて、調整には苦労しています。
――では、デザインをされるときに心がけられていることを教えてください。
山下:僕は小学生がまねできるようなデザインのほうがいいと思っているので、なるべく描きやすいデザインを心がけていますね。個人的に、ディック・ブルーナが描くミッフィーの絵は最強だと思っています。
誰にでも描けるけど誰も描けないといいますか、それを思いつくのは容易ではないといいますか。そこにたどり着きたいなと。要素を足していくのはそれなりに描ける人はできることなので、どう減らしていくのかが難しいですね。
津田:気を付けているのは、物1つにしても見て落ち着けるバランス取りですね。ディズニーの背景はデフォルメされてはいるものの、すごく計算されているといいますか、見ていて安心できるんですよ。バランスもですし、“美味しい”色合いという意味でもですね。
――おふたりから、デザイナーを目指している人にアドバイスをお願いします。
津田:デザイナーといえども絵を描きたいというだけでなく、自分の描いた絵がゲームにどう出てくるのかを意識する感覚を養うことが重要だと思います。あとはゲームだけを遊ぶのではなくて、いろいろなものを見て引き出しを広げておくことが大切かなと。
例えば「こんなのを描いて」と言われたときに、引き出しの数が多ければもう少しこういうテイストを加えようとアイデアが出てくるんです。誰かの受け売りではなく、オリジナリティというものを持って、ユーザーが遊んでくれるときの喜びをイメージできれば、モチベーションになるのではないかと思います。デザイナーを目指している人には頑張っていただきたいですね。
山下:ゲームのキャラクターを描きたいという人はたくさんいると思うのですが、ゲームに出てくるキャラクターというのは少しなので、モンスターを描けるようになっておくといいかもしれません。モンスターを描くのも楽しいですよ。人って形は決まっていますが、モンスターはどこに足を生やそうが手を生やそうが顔が何個あろうが自由ですからね。
――それでは最後に、『セブンス・リバース』をプレイしている人にメッセージをお願いします!
津田:『セブンス・リバース』はまだまだでてきていない世界やらキャラクターがたくさんいます。ゲーム自体誰でもプレイしやすいですし、お話も濃厚でこれからどんどん深みに入っていきます。ご自分の気に入ったところがあったら、そこをいろいろ楽しんでもらえたらと思います。
山下:僕はジョブの装備も担当しているのですが、実はジョブの装備はそれぞれ意味を持たせて描いています。細かなところは語られることはないと思うので、そこの謎を考察しつつ妄想しながら楽しんでいただけるとうれしいです。
――ありがとうございました!
インタビュー後、山下氏と津田氏になんとその場でイラスト入りサイン色紙を描いていただきました。山下氏には「お気に入りのキャラ」を描いていただき、津田氏には「お気に入りの背景を……」という無茶ぶりに応えていただきました!
▲山下氏には先代の村長を、津田氏には施設の酒場を描いていただきました! |
▲ストライプの浮き輪がイカす先代村長。 |
▲暖かみがあって“美味しい”色合いの酒場。 |
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