News

2017年2月12日(日)

【電撃PS】SIE・山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』を全文掲載。テーマは“松下君と大村君”

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 この記事では、電撃PS Vol.630(2017年1月12日発売号)のコラムを全文掲載!

第99回:松下君と大村君

 皆さん、明けましておめでとうございます! 2017年の幕開けですね。VR元年と呼ばれた昨年に続き、今年のゲームシーンにはどんな驚きが待っているのか。作り手として遊び手として、僕も楽しみです。

 と言いつつ、これを書いているのはまだ2016年なんですけどね。いやー、今年も残すところあと10日。年の瀬といえばそう、忘年会です。2016年は、トータルで11件の忘年会がありました。部の忘年会、プロジェクトの忘年会、生放送運営チームの忘年会、業界の方との忘年会、などなど。実は僕、11月に受けた人間ドックの結果、肝機能障害で再検査の指導が入っていて、あまりガバガバ飲めない身なので気持ち酒量は抑えつつ、それでもそのどれもこれもが楽しかった。というわけで新年一発目の今回は、そんな数ある忘年会の中でも特に思い出深かった会について書こうと思います。

 このコラムでも何度か書いていますが、僕はかつて、“ゲームやろうぜ! 2006”と“PlayStation CAMP!”という、2回のクリエイターオーディションを運営し、全国を行脚し募った合格者たちと、11本のゲームを制作しました。新規性の高いフレッシュなコンテンツを制作するというミッションのもとに行われたそれら施策は、一定の成果を達成し、残念ながら5年前に解散となりました。もともとは僕らが集めたメンバーだとはいえ、SIEやPlayStationフォーマットだけに固執するのではなく、将来的にはあちこちのゲームシーンでまた面白いコンテンツを作ってくれればいい、という思想を持った施策だったので、解散と同時に、他のコンシューマメーカーに行ったヤツもいれば、モバイルメーカーに就職したヤツ、また、自分で会社を立ち上げたヤツ、個人で活躍するヤツ、みんなそれぞれの道を進み始め、そして数名はSIEの内部制作チームにアサインされ、ビッグタイトルの『人喰いの大鷲トリコ』や『GRAVITY DAZE2』に関わったヤツもいたのでした。そんな中からまた2名、新たな道へと進む彼らを称え、開いた飲み会の写真がこちらです。

『ナナメ上の雲』

 まず、写真の左下。絶妙な怪獣顔で映っているのが、松下君。松下君は、ジェットレイロジックという3人で構成されたチームのメンバーで、プログラムを担当していました。彼は、物理演算を使ったおバカな落ちゲー、PS3の『ゴミ箱』や、思えばARの先駆けだったPS Vita『箱 .OPEN ME.』というタイトルを手掛け、その後、『人喰いの大鷲トリコ』にも参加しました。彼は、プランナーにとってはとてもありがたいタイプのプログラマで、いわゆる“四の五の言わずとりあえず画面に出してみる”ということをやってくれるプログラマでした。ゲーム制作って、最終的にはプログラマがデータをまとめて動く状態のモノとして画面に表示することで成り立っているので、特に僕らがやっていた、スクラップ&ビルドを頻発させるような作り方には非常に相性の良い存在だったのです。

 そしてもう一人、僕の隣に座っている若手が大村君。彼は、大学卒業後、“ゲームやろうぜ! 2006”の存在を知り、企画者として応募してきた男でした。面接のとき、これまで遊んだゲームで自分の人生を変えたゲームってありますか? という質問に、僕がプロデューサーだったとは知らずに、僕の初プロデュース作品、初代『天誅』を挙げてくれたこともいい思い出です。大村君は、先ほどの『ゴミ箱』『箱 .OPEN ME.』に加え、『勇なま』シリーズ三作すべてにも参加してもらっています。で、11本の中で一番売れた『TOKYO JUNGLE』にもプランナーとして入ってもらい、ディレクターの(株)クリスピーズ片岡君の陰で、あのユニークタイトルを支えてくれたのでした。

 そんな二人が、2016年を境にまた別の現場に旅立った。彼らとの出会いは、僕にとってかけがえのないものでした。年齢も、育った場所も、好きなことも、何もかもが違う彼ら。でも、“面白いゲームを作りたい”という気持ちは、まぎれもなく一緒でした。夜な夜な会社に泊まり込み、必死こいてデバッグをし、飲みに行ってはゲームの話をし、くだらないことを分かち合い、一緒に生活をしたのです。あの楽しさは、家族とすら共有できない思いとして、僕の中に燦然と輝いています。

 出会いは別れの始まりかもしれませんが、別れは出会いの始まりでもあります。彼らや先に卒業していった才能溢れる連中と、またどこかで一緒にゲームを作りたい。それを夢見て、僕は僕でまた、新しい一年を歩いていこうと思うのでした。松下君、大村君、またな! オメーらが作る爆裂に面白いゲーム、楽しみにしてるぜ!

ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ 部長兼シニア・プロデューサー。PS CAMP!で『勇なま。』『TOKYO JUNGLE』、外部制作部長として『ソウル・サクリファイス』『Bloodborne』などを手掛ける。現在、『V!勇者のくせになまいきだR』を絶賛制作中。公式生放送『Jスタとあそぼう!』にも出演中。

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.632』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2017年2月9日
■定価:694円+税
 
■『電撃PlayStation Vol.632』の購入はこちら
Amazon.co.jp

関連サイト