2017年2月19日(日)
2017年2月18~本日19日まで開催中の“FINAL FANTASY XIV FAN FESTIVAL 2017 in Frankfurt”。基調講演の行われた1日目の最後に、スクウェア・エニックス代表取締役社長・松田洋祐氏の挨拶と、本作のプロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏による、全世界のメディア合同の質疑応答が行われた。
ここでは、4.0『ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター』についての興味深い情報が多数飛び出した本インタビューの様子をお届けする
松田洋祐氏(以下、敬称略)
今日のファンフェスティバル、いかがでしたでしょうか? 非常に盛りだくさんなプログラムで、大変盛り上がった1日だったと思います。明日もたくさんの楽しいプログラムを用意しておりますので、ぜひご覧になっていただければと思います。それでは、『FFXIV』プロデューサー兼ディレクターの、吉田直樹をご紹介したいと思います。吉田さん、よろしくお願いいたします。
吉田直樹氏(以下、敬称略)
みなさん、非常に遅い時間まで、まことにありがとうございます。あらためまして、『FFXIV』プロデューサー兼ディレクターの吉田です。よろしくお願いします。
『FFXIV』のファンフェスティバル2016~2017、昨年の10月にラスベガスからスタートして、ようやくこの2月、フランクフルトまでたどり着くことができました。3つのファンフェスで、順次、最新のエキスパンションである『STORM BLOOD 紅蓮のリベレーター』のいろいろな情報をみなさんにお伝えしてきました。そしてこのフランクフルトで……まぁまだ、出してない情報、出さなきゃいけない情報がたくさんありますけれど、ひとまず、大きなフューチャーに関しては、メディアのみなさん、プレイヤーのみなさんにお伝えすることができたんじゃないかな、と思っています。
ただ、みなさんのほうからも、ご質問は多々あるかと思います。時間の許す限り、できる限りお答えさせていただこうと思いますので、ぜひ、ご質問のほうよろしくお願いいたします。
――ファンフェスで世界中のプレイヤーと触れ合ってこられたと思いますが、どんな印象でしたか?
吉田:ファンフェスを行う意義に関しては、もちろんプレイヤーのみなさんに楽しんでいただくのが第1なんですが、僕を含め、開発チームのモチベーションの維持にもつながっています。世界中のプレイヤーのみなさんのお顔を拝見し、直接お会いすることが、なによりも、開発を続けていくエネルギーになっています。このヨーロッパのファンのみなさんも、北米や日本に負けず、本当に熱気がすごくて、僕らの背中を押してくれていると思っています。
――『紅蓮のリベレーター』では、東洋風のカルチャーを多く取り入れているという印象を受けました。日本の開発会社として、東洋の文化というのをどのように認識(重要視)されていますか?
吉田:今回、“ひんがしの国”やドマを舞台にするときに、当然日本を意識しなかったわけではありません。ただ、日本という国も非常に歴史が古くて。みなさんが想像する日本が、たとえば江戸時代の人もいれば、それ以降の幕末と呼ばれる時代でもあったり、もっと昔の戦国時代の様子を思い浮かべる人もいるでしょう。そしてそれぞれの時代のビジュアルは、まるで違います。なので今回、“ひんがしの国 クガネ”のビジュアルを作る際に意識したのは、純和風というよりは、エオルゼアという世界のさまざまな国の文化が融合した“和”であるというふうに定義して、色使いやオブジェクトの作り方、1つ1つ開発チームと話し合って、こだわって作りました。
ぜひ6月にその目で、我々開発チームがどのように“ひんがしの国”を作ったのか、確かめていただければと思います。ちなみに、1つだけ補足ですが。ドマという国は“ひんがしの国”ではなく、もっと大陸側……現実世界だと中国やモンゴルあたりにあるような国です。“ひんがしの国 クガネ”とはまったく違う文化で、こちらもかなりユニークなテイストになっていますので、ご注目ください。
――『紅蓮のリベレーター』で実装される新ジョブとして、“赤魔導士”と“侍”が発表されましたが、パッチ2.4で“双剣士/忍者”が実装されたように、パッチ4.Xシリーズでさらに新ジョブが追加される可能性はありますか?
吉田:……今のところ予定はありません(笑)。もちろん、新ジョブを期待するのは、僕もプレイヤーなのでよくわかります。ただ、バランスをとれない状態でジョブを増やしても、結局プレイヤーのみなさんのストレスになるので。今回は大きなバトルシステムの変更もあるため、まずはバランスを徹底的に調整し、どのジョブを遊んでも楽しめる環境を作りたいと考えています。それを達成できたあと、開発チームのなかからもそういった意見がでてくれば、検討していこうと思います。
――今後、クロスワールドに対応したシステムの拡張などは予定されていますか? 例えば、リンクシェルやフレンドリストなど……。
吉田:フレンド機能の対応作業はすでに始まっています。4.0にはちょっと間に合いませんが。フリーカンパニーとリンクシェルに関しても、仕様の策定が始まっていますので、時期は未定ですが、いずれ対応させようと思っています。
――吉田プロデューサーが着ている装備(侍装束)の着心地はいかがですか? また、開発チームの士気を上げるために、会社で着用する予定は……?
吉田:着心地はものすごくいいです。基調講演のときのみ着る予定でしたが、あまりにも着心地がいいので、これで通すことにしました(笑)。非常に気に入ったので、日本に持って帰りたいのですが、「ドイツのチームの方々が一生懸命クラフトしたものだから、置いていけ」と日本のチームに言われたので、残念ながら持って帰ることはできません……。ただ、もしこれを着て日本の開発チームのところへ行ったら、喜ばれるどころか「吉田、遊んでるんじゃない!」と怒られると思います(笑)。
――早く“グランドカンパニー小隊”とともに冒険したいのですが、ダンジョンなどにはいつごろ行けるようになりますか?
吉田:こちらも仕様は決まり、彼らがダンジョンで戦えるようにするためのAIの開発が始まっています。今は『紅蓮のリベレーター』の開発に注力しているので、4.0には間に合いませんが、準備は進んでいます。
――今回のファンフェスで得た経験のなかで、次のファンフェスで生かせることはありますか?
吉田:……まだドイツのファンフェスは、2日目がありますからね(笑)。ただ今回、リハーサル2日、本番の1日目が終わってみて、テクニカルスタッフ、エンジニアスタッフの方々にはとても柔軟に対応して頂いています。非常に質の高いファンフェスが行えたんじゃないかと思っています。2日目も、来場されたプレイヤーの方々に、最高の笑顔で帰って頂けるように頑張ります。
その次の目標は……冒頭で挨拶したCEOの松田に「次のファンフェス、やってもいいよ」と言ってもらえるようにすることです(笑)。
――『紅蓮のリベレーター』で追加されるエリアのビジュアルが新たに公開され、プレイヤーの注目が完全にオサード小大陸やひんがしの国に向いています。アラミゴのことが忘れられているような気が……。
吉田:すでに映像でも紹介されていますが、アラミゴにも多くのエリアがあります。ボリュームとしては、半分がアラミゴで、半分がドマやひんがしの国という感じなので、アラミゴでの冒険もけっこうアツいですよ。それ以外のエリアに関しては、シナリオのネタバレになりますので、これ以上のことはお答えしないでおきます。
――PlayStation 4 Proに対応したバージョンアップは考えていますか? また、Nintendo Switchへの移植の可能性はありますか?
吉田:PS4 Proを使って、単純に解像度を上げるのではなく、高いパフォーマンスを生かす方向で開発を進めています。すでにテストは始まっているので、近いうちに新しい情報を発信できるんじゃないかなと思っています。
Nintendo Switchに関してですが、僕としては、1つでも多くのハードに対応していきたいと考えています。どのハードで遊んでも同じ世界にログインできることを目指しているので、それが解決できれば可能性はあるんじゃないかと思いますが、現時点でこれ以上言えることはありません。
――新たなエリアでは、“泳ぐ・潜る”といったことが可能になりますが、もちろん“ブリッツボール”はあるんですよね?
吉田:正直に言うと……企画はしてます。ただ、難航していて……。『FFX』のブリッツボールをそのまま実装してほしいという方もいると思いますが、1回遊んだだけで、あまりプレイしなくなってしまうのでは、という懸念があります。逆に、MMOならではのブリッツボールを作ろうというアイデアももちろんありますが……。はたしてそれが、みなさんの思い出の中にあるブリッツボールなのか? という問題がでてきます。どういった形で実現させるのがベストなのか悩んでいる段階で、企画としては止めてあります。ただ、せっかく水の中にまで冒険が広がるので、いずれ実現はしたいと思っています。
――主に新規プレイヤーへ向けた、使用すると一気にレベルを上げられる“ジャンピングポーション”の導入を検討している、と以前おうかがいしましたが、パッチ4.0で実装する予定はありますか?
吉田:今、開発チームで、仕様などの詰めの議論をしているところです。現時点ではこれ以上お答えできませんが、決まり次第PLLなどでお伝えする予定です。
――パッチ4.0で大きく変更される予定のバトルシステムは、どのような形になるのでしょうか?
吉田:バトルシステムの改修を行う目的は、大きく2つあります。ひとつは、3.Xシリーズになって、各ジョブのアクションのローテーションが難しくなりすぎたため、プレイヤースキルによってDPSの差があまりにも大きくなりすぎていました。改修を行うことで、カジュアルなプレイヤーにもある程度までは使いこなせて、コアプレイヤーはさらに上を目指せる。難しくなりすぎた操作を楽にして、全体の底上げになるような調整を行います。
もう1つは、パッドによる操作への配慮です。『FFXIV』はパッドでプレイされているプレイヤーが非常に多いのですが、あまりにもアクションが増え、使いこなすのが難しくなってきています。今回、レベルキャップが70になりますが、最終的なアクション数が現状とほぼ同等になるよう、効果の近いアクションの統合や、使われないアクションの削除などを行います。
また、それぞれのジョブの特性に合わせたUIを作り、多数のバフを管理しながら戦う形から、よりわかりやすいシステムに変更します。これ以上の説明は実際のゲーム画面が必要になりますが……。よりよいものにするためリリース直前まで調整を続けるため、お見せできるのは5月中旬~下旬になりそうです。ギリギリになってしまいますが、ちゃんとお伝えする機会は作ろうと思います。
――今日のファンフェスで、ドマがオサード小大陸にある、ということがわかりましたが、アラミゴに関してもう少し知りたいです。例えば、“アラミゴ”という街に、プレイヤーは入れるようになるのでしょうか?
吉田:さぁ……どうでしょう?(笑)。その答えは、みなさんがドマやアラミゴを奪還した先にあると思うので……。今はガレマール帝国に支配されているので、そもそも入ることすら難しい。まずはみなさんが“解放者”になる、ということを念頭に置き、プレイしていただければと思います。MMOらしからぬ新しい仕掛けを用意してありますので。MMOでありながら、ストーリーもしっかり楽しめるように開発を進めています。
――新ジョブの侍が、(タンクではなく)DPSになった理由はなんでしょうか?
吉田:近接DPSを増やそうとする予定があったから、それに侍をあてたわけではなくて、「侍を実装するなら、タンクではなくDPS」だと何年か前から考えていました。僕のなかで、“戦国時代の将軍”はタンクだけど、“幕末の侍”はどちらかというとDPSというイメージがあります。
タンクを実装するなら、和風だと将軍になるんじゃないかなと思います。なので、理由は単純に、侍をタンクであるべきと認識している方々とは、イメージの参考にしている時代が違うのかな、と思います。
いい例があった。開発チームが考えている侍は、黒澤明監督の『七人の侍』なんです。なので、タンクじゃないんです。
――『FFXIV』と、ほかのMMORPGとの一番の違いはなんだと思いますか?
吉田:いろいろあると思いますけど、おそらく、メジャーアップデートのひん度の高さとボリューム。あと、エキスパンションをちゃんとリリースして、世界各地でファンフェスを開催しているところでしょうか。それらが、ほかのタイトルより優れているところかもな、という気がします。
――現状、ボス以外のモンスターとのバトルが長く感じられることがあるのですが、バトルシステムの変更により、戦闘時間は短くなるのでしょうか?
吉田:どうでしょうね……ちょっと3.Xシリーズはやりすぎたかな、と思うところはあるので、今よりは多少短くなるんじゃないかな、とは思います。
――『FFXIV』のコミュニティはとても活発で、全世界のファンが一緒に遊んでいる感覚がとても強いです。さまざまな国のファンがゲーム内で出会い、今回のファンフェスのよう場で実際に会い、友情を深めています。これらの交流をさらに深めるサービス、例えばモバイルアプリなどを配信する予定はありますか?
吉田:ゲーム内でのフレンドなどと、エオルゼアの外でコミュニケーションをとるアプリケーションの開発を、現在進めています。4.0には間に合いませんが、そう遠くないタイミングでリリースできるのではないかなと思っています。
――PS VRの対応について、なにか進展はありますでしょうか?
吉田:……うーん、テストはしたんですけど、うーん……。VRの場合だと、最低でも60フレーム、できれば120フレームないと酔ってしまう、というのが問題で。そうなると、それ専用のコンテンツを作らないと快適には遊べない。そして、PS VRを持っていないと遊べないコンテンツを、非常に多くのコストをかけて開発する必要があります。多分、多くのプレイヤーは、それに時間とコストをかけるよりも、みんなが楽しめるコンテンツを作ってほしいと望んでいると考えています。また、その開発費は誰が払ってくれるんだ? という問題も……。
以前、いくつかのメディアの方からPS VRの対応について聞かれたときに、「唯一、可能性があるとすれば、美男美女のミコッテがたくさんいる建物があり、そのミコッテたちと仲よくなる、ミコッテパラダイスみたいなVRコンテンツを作る。ただ、その部屋に入るためには、5000円くらい払う必要がある」みたいな仕様なら、できるのかもしれない、と答えた記憶があります(笑)。この話は開発チームにもしているんですが、ゲームデザインチームから「それオレが担当します!」というヤツがまだ出てこないので。そういうスタッフが出てくることを祈りたいですね(笑)。
世界各国から、『FFXIV』のファンフェスティバルにお越しいただき、今日もこんなに遅い時間まで残っていただいて、本当にありがとうございます。本日、時間の都合上できなかった質問は、各国のPRチームに連絡いただければ、できるだけメール等で回答させていただこうと思います。
また、『紅蓮のリベレーター』のリリースまでに、メディアツアーとして世界中をまわる予定でいますので、そのタイミングでまたみなさんの声を聞かせていただけると幸いです。今度は僕から、みなさんのところにお伺いしてお話をさせていただく機会を必ず作りますので、引き続き、『FFXIV』をよろしくお願いします。本当に最後まで、遅い時間までありがとうございました。明日もよろしくお願いします。
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