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2017年4月29日(土)

【電撃PS】高橋慶太氏のコラム『電撃ゲームとか通信。』全文掲載。大自然の中で 考えたのはゲームのこと

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している高橋慶太氏のコラム『電撃ゲームとか通信。』。ゲームデザイナーとしての日常や、ゲーム開発にまつわるエピソードを毎号掲載しています。

『電撃ゲームとか通信。』
『電撃ゲームとか通信。』

高橋慶太氏PROFILE

 バンダイナムコゲームス(現BNE)時代に『塊魂』、『のびのびBOY』を制作。その後『Tenya Wanya Teens』を発表。現在は新作『Wattam』と、GoogleのARプロジェクト“Tango”向けに『WOORLD』を開発中。

 この記事では、電撃PS Vol.636(2017年4月13日発売号)のコラムを全文掲載!

『電撃ゲームとか通信。』

第九十回:キャンプに行きました。大自然の中で考えたのはそこでもゲームのことでした。

 どうも。とうとう長年続いたMacだけの生活に別れを告げ、Windowsのゲーミングラップトップを購入した高橋です。買ったのはAlienwareの13インチ有機液晶モデル。

 やったー、有機液晶だー! とウキウキしていたのですが、いざ蓋を開けてみるとゲーム制作には、綺麗すぎるというか色が派手すぎ。オフィスで使ってる液晶モニターとの色の差がなんとも、ということで、有機液晶のRGBの色調をすごく抑えることで他のモニターの色味を実現することに成功。

 有機液晶である意味あったのか? という疑問はのこりますがこれで一安心。なぜ有機液晶のモニターにこだわるのかというと、昔ナムコに勤めていた時に初めて自分で購入したテレビがSONYのXEL-1という有機液晶のテレビだったのです。

 テレビと言っても、11インチという一般的な液晶テレビとは比較にならないほど小さいものだったんだけど、画面の美しさは素晴らしいでものでした。時々流れる桜の開花のニュースなんて最高にきれいでした。

 とまあ、それがあったからこそ、ちょっとお値段が張るけど有機液晶のオプションを選んだのです。ちなみにそのXEL-1は実家の2階で今も時々サブのTVとして利用されています。そして今回購入したAlienwareですが、今のところメールやら何やらは設定しておらず、もっぱらゲーム開発専用マシンとして使っています。

 時間が許すならSteamでPC用のゲームを遊びたいとも思うんですが(『INSIDE』やりたい)、ファミコンミニで週末攻略中の初代ゼルダもクリアしないと気持ち悪い。

 そもそも『Wattam』開発用に買ったものなので、しばらくはゲーム機として使う機会はないと思います。このコラムは叩きなれたキーボードと薄い筐体で手が疲れない今年の秋で満5歳を迎えるMacBook Airで書いているわけですが、、、やっぱり使い慣れたMacの方が使いやすい。

 と、WInとMacの比較論を始めるとキリがないのでここで終了。そしてSteamで思い出したのが『EVERYTHINIG』。以前『Mountain』というシミュレーションゲームをつくったDavid O’Reillyさんの新作。

 彼とはドイツのアニメーションフェスティバルで一回会って以来、時々ゲームのイベントで顔を合わせて話をする程度の知り合い。で、その『EVERYTHINIG』のSteam版がまだリリースされていないので遊べていないんだけど、発売済みのPS4版のプレイ動画などを見る限り、今自分達がつくってる『Wattam』となんとなく似てる部分が見え隠れするのです。

 ゲームプレイ自体は全然違うのだけど、そのコンセプトというか、やりたいこと/見せたいものが結構似てると思う。今度あった時に色々と聞いてみたいと思います。日本のPSストアではリリースしてないかもしれないけど、興味があったら遊んでみてください。

 おっと、コラムの最初からゲームとかコンピュータとか、全くネイチャーとは関係ないことを書いてきたけど、今回のコラムで書きたかったことはそういうことではないのです。先日、友人家族達と行ったキャンプのことを書きたかったのです。

 ネイチャーと言っても、皆子供連れの初心者キャンパーなので、いわゆる森の中でランダムにテントを張って行うサバイバル度の高いものでは無く、Coyote lake(コヨーテと発音すると思いきやカヨゥティ)という湖がある広大な公園のキャンプグランドの一画を予約してのファミリーキャンプでした。

 たったの1泊だったけど林の中にテントを張って、寝袋の中で寝てきたのです。一番楽しそうだったのはやはり子供たち。夜まで友達と遊び続けることができたのはすごく楽しかったみたい。

 友人家族が持ってきたハンモックにみんなで乗ってすげー遊んでたし、暗くなった後も懐中電灯を持って周囲を探検してはしゃいでました。彼らはキャンプというか友達と遊べた事が楽しかったんだと思います。

 自分はというと、物心がついてからも家族でキャンプした記憶はなく、今回のがほぼ初めてのキャンプ体験なんじゃないかと。

 ナムコで働いていた時は、よくデスクという名のテントの下にもぐり、モニターやPCの電源ライトの星空を眺めながら寝袋で寝ていたので、キャンプのメインイベントである”寝袋で寝る”こと自体にはあまり新鮮味を感じませんでした。

 が、聞こえてくる音は全然違いました。PCのファンノイズや、電子音ではありません。自然の音です。虫の鳴き声や、風で揺れる木々の音、カエルも鳴いてたし、中にはコヨーテか狼の遠吠えを聞いた人もいたそうです。

 その中に混じって、どこからかイビキが聞こえてきたこともあったらしいけど、自分的に“キャンプに来てよかった”と思えたのは、渡り鳥と思われる大きめの鳥が湖めがけて鳴きながら飛んでる音で目覚めたこと。

 羽を動かす音や鳴き声から、アヒルや白鳥くらいの大きさであることや、それが自分の寝ている上空を左から右に抜けていくことが手に取るようにわかるのです。文章で書いたところで上手く伝わらないけど、あれはすごかった。

 聴覚だけでそのボリューム感や距離感が体感的に伝わって来た事に感動しました。音というのはつまるところ振動な訳で、耳以外でもその振動を受け取ることでリアルに感じたのかもしれません。

 それにしても渡り鳥が鳴きながら飛ぶだけでこんなに存在感が伝わってくるんだから、もしもゴジラが歩いて吠えた場合、それだけで人間なんて気絶すると思う。

 そして話を無理やりゲームに戻すと、今遊んでる初代ゼルダの持つNOヒントでオープンワールド感が、ある意味サバイバルキャンプみたいなんだけど、この渡り鳥の鳴き声で目覚めるという体験から『風のリグレット』をやってみたいと思いました。セガサターンないけど。それにしても、色々なところに創作のヒントが落ちてますね。

 今年の夏は、あと2回キャンプに行く予定です。

(C) Keita Takahashi

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.636』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2017年4月13日
■定価:694円+税
 
■『電撃PlayStation Vol.636』の購入はこちら
Amazon.co.jp

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