2017年4月18日(火)
オンラインゲームの描く新しい形とは!? 『PSO2』とゲーム版『SAO』の開発者による鼎談を掲載
『ファンタシースターオンライン2』の酒井智史プロデューサーと木村裕也ディレクター、ゲーム版『ソードアート・オンライン』の二見鷹介プロデューサーによる開発者スペシャル鼎談を実施した。
鼎談は、お互いのタイトルの印象や、今後の展開についてトーク。さらに3人の“オンラインゲーム”に対する考え方やコミュニケーションの在り方など、さまざまな話題についてふれている。
ここでしか読めない貴重な話が詰まっているので、『PSO2』とゲーム版『SAO』ファンだけでなく、“オンラインゲーム”を遊ぶプレイヤーにぜひご覧いただきたい。
なお、インタビュー中は敬称略。
鼎談参加者
『PSO2』シリーズプロデューサー・酒井智史
『ワールドアドバンスド大戦略』や『AZEL-パンツァードラグーン RPG-』を経てソニックチームに合流。
『ファンタシースターオンライン』ではメインデザイナーとして多数のエネミーを生み出した。現在は、『ファンタシースター』シリーズ全体のプロデューサーを務める。
『PSO2』シリーズディレクター・木村裕也
『PSO』や『ファンタシースターユニバース』ではプランナーとして活躍。初のディレクションを担当した『ファンタシースターポータブル2』で頭角を現す。
『PSO2』では初期ディレクターであり、エピソード2以降はシリーズディレクターとして酒井氏の右腕となる。
『SAO』ゲームシリーズ総合プロデューサー・二見鷹介
ノベル作品を原作に持つタイトルを数多く手がける。『SAO』シリーズは第1作『SAO─インフィニティ・モーメント─』からプロデューサーとして活躍し、現在は『SAO』のゲームシリーズ全体を総括する。
ゲーム開発者の願いは“ユーザーからの称賛”!?
――まず初めに、それぞれ自己紹介とお仕事の内容をお願いします。
二見:バンダイナムコエンターテインメントの二見です。昔からノベル系作品に多く携わっていて、一番最初は『涼宮ハルヒの憂鬱』、それから『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』、『アクセル・ワールド』、『ソードアート・オンライン(SAO)』といったように、原作のあるタイトルをゲーム化することが多いですね。
直近では、『ソードアート・オンライン -ホロウ・リアリゼーション-(SAO HR)』や『アクセル・ワールド VS ソードアート・オンライン 千年の黄昏(ミレニアム・トワイライト)』といったタイトルのプロデュースをしています。
▲『アクセル・ワールド VS ソードアート・オンライン 千年の黄昏』 |
酒井:セガゲームスの酒井智史です。セガに入ってもう22年になりますが、そのうち18年くらい『ファンタシースター』シリーズに関わっていて、現在は『ファンタシースターオンライン2(PSO2)』のシリーズプロデューサーをやっています。
木村:同じくセガゲームスの木村です。ボクもセガに入って15年目ですけど、ずっと『ファンタシースター』しか作っていません。セガというよりは、『ファンタシースター』に就職したような人生を送っています(笑)。
元々は『PSO2』初期のディレクターをやっていたんですけど、今は『PSO2』のシリーズディレクターということで、各エピソードはそれぞれのディレクターに任せて、全体のディレクションをやっています。
――お三方は面識があると伺いましたが、そのきっかけは何だったのでしょうか?
二見:酒井さんとは昨年12月の“PlayStation Awards 2016”ですね。
酒井:そのパーティーのなかで、こちらから二見さんに話しかけました。
二見:友だちいなくて孤立していたところに、酒井さんからお声がけいただきました。じつはボク、プライベートで酒井さんを一方的に知っていたんです。
酒井:共通の知り合いがいたんですよね。
二見:それでその知り合いの話で盛り上がって、その後Facebook(フェイスブック)でやり取りして、今度飲みに行きましょうということで飲みに行ったのが年明けくらいかな。木村さんは、酒井さんに「ちょっと会社に遊びに行かせてもらいます」と言って、その時にお会いしたのが初めてで、今日が2回目になります。
――改めておうかがいしますが、PSアワードを受賞した感想はいかがでしたか?
二見:やはり、原作のパワーが今の時代に受け入れられているなという認識ですね。PSアワードは国内+アジアの売上で決まるそうで、『SAO』は海外展開がうまくいっていることもあってゴールドプライズをいただきました。
過去の名だたるタイトルの中で『SAO―ロスト・ソング―』が受賞したのは時代の流れで、ゲームユーザーが世代交代して若くなっているなと感じました。
▲電撃文庫『ソードアート・オンライン』第1巻の表紙画像。4月25日の増刷発行分をもって単巻で100万部を突破。全世界累計発行部数が2,000万部を突破。 |
――1作目の『SAO―インフィニティ・モーメント―』のころと現在では、『SAO』のゲームに対するユーザーさんの反応は変わりましたか?
二見:だいぶ変わりましたね。以前は、ノベル原作のゲームが骨太なRPGとして出ること自体が珍しいことで、ユーザーさんはそれを応援してくれました。ボクらもそれをモチベーションにして頑張っていたのですが、最近は求められるものがどんどん高くなっているんですよ。
『ニーア』や『FF』といったすごいシリーズタイトルと比較されるようになってきています。いきなりそんな頂上は無理ですから、もう少しゆっくりとステップアップさせてほしいですね。
▲『SAO―インフィニティ・モーメント―』 |
――その反応は、これまでいい作品を知っているユーザーさんの信頼の現れでもあると思います。
二見:皆さんの期待値が上がってきたのはうれしいことですけど、それと同時にプレッシャーだなと感じるようになりました。
木村:RPGというジャンルは、国内ではひとつ上に見られる傾向にあると思います。特に一度人気が出ると、求められるところがそのRPGという高いステージの視点からになってくるんじゃないでしょうか。
二見:確かに『FF』や『DQ』という数多の名作を生んできたジャンルであるからこそですね。ボクは参考のために『PSO2』をプレイしているのですが、基本プレイ無料であのボリュームはすごい。
『SAO』と『PSO2』はコンシューマゲームとオンラインゲームという違いはあるものの、さまざまな形のRPGがあるなかで質や量が求められていると感じました。
木村:昨今のRPGに求められるボリュームが、100時間は当たり前って感じですからね。
――『PSO2』は昨年、アニメやPS4版、エピソード4の開始などでユーザー層が拡大したと思いますが、その手ごたえはいかがでしたか?
酒井:オンラインゲームは長く運営していると、徐々にユーザー数が下がっていくものです。そんななかで新しいハードをサービスしたということもあってユーザー数が伸びて、最高同時接続者数を更新できたことはうれしかったですね。
オンラインゲームの運営は、ユーザーさんから褒められることってあまりないんですよ。基本的に誰にも褒められないけれど頑張らなければいけない仕事なので、PSアワードのような賞をいただけるのはすごくありがたいんです。
年明けにいただいたウェブマネーアワード(※1)では、ユーザーさんの投票理由が書かれているのですが、そういうコメントを開発チーム全員で共有して暖かい気持ちになってます。
※1:ウェブマネー社主催のPCオンラインゲームのユーザー人気投票イベント。『PSO2』はサービスインから4年連続でGRAND PRIXを獲得した。このイベントでは、結果に加えて各ゲームに投票したユーザーのコメントが掲載されている。
木村:評価の高いアップデートができた時のツイッターなどの反応は「おう、よくやったな」って感じですけどね(笑)。
酒井:基本的に上から目線なんですよね、なぜか。
二見:ボクも上から目線でいいから褒められたい(笑)。
酒井:『PSO2』は1年目から我々が想像していた以上の大きな利益を出すことができて、今はセガ社内でも柱になるタイトルになりました。つねに結果を求められるプレッシャーはあるんですけども、それに対して結果を出し続けられているのはよかったと思います。
――社内でそういう風に認められて、逆にやりやすくなったこともあるんじゃないですか?
酒井:確かに、基本的にやりたいと言ったことはやらせてもらえるようになりましたね。
木村:『PSO2』の企画の段階では、この規模で基本プレイ無料のタイトルというところは会社に説明するのに時間がかかりました。以前はプレゼンで逐一細かく説明していたのですが、今は実績があるので年間のアップデートの予算申請でも「任せてみるわ」って感じで承認されるようになりました。
酒井:社外でもボクらが思っている以上に『PSO2』が広がっています。最近、「アークス(※2)はどこにでもいる」という言葉があって、いろいろなところに『PSO2』をプレイしている方がいます。コラボのお話をいただく場合でも、「こんなところからコラボの話が!?」って思うとだいたい裏にアークスがいます。先方にそういう方がいると説明の手間が省けるので話が通りやすいですね。
※2:『PSO2』のプレイヤーキャラクターたちが所属する組織とその人員の名称。転じて、『PSO2』プレイヤーのことをアークスという。
二見:オフラインでもシリーズものって段々と売上が下がっていくものなんですが、『SAO』は毎回シリーズの売上を更新しています。現時点で『SAO HR』が国内で32万ぐらいですね。『SAO』を1本のゲームとして興味を持って、RPGとして買いたいと思うユーザーさんが増えています。ゲームをプレイした方が逆に原作を読んだりアニメを観たり、そういった広がりを感じます。
ボクはアニメの製作委員会にも入っているので、原作やアニメに興味を持ってもらうにはどうしたらいいかは考えていて、それがちゃんとユーザーさんに伝わっているのがうれしいですね。
木村:新規ユーザーはどれくらいいるんですか?
二見:原作を知らない人が約3割ってところですね。
木村:そんなにいるってすごいことですよ。
二見:先ほども言ったとおり、シリーズを重ねていくとユーザーさんは減っていくことが多いと思います。そういったなかで新しい人が入ってくるというのは1本のゲームとして魅力を感じてくれているんだと思います。
▲『SAO HR』 |
酒井:二見さんの手がける『SAO HR』をプレイしたんですけど、こんなところまで作らなくていいのにって思うようなところまで作っているのが凄い。“疑似MMO”という空気感を作りこんであってオンラインゲームに対する愛が詰まっていると感じました。
――確かに『SAO』はオンラインゲームのエッセンスが詰まってますね。
二見:原作を読むとMMORPG(※3)がすごくやりたくなるんです。ただ、実際にMMORPGをやるとなると以前は環境の敷居が高かったり、月額利用料もありました。
ゲーム版『SAO』を作る時に考えたのは、読者がゲームをやるにはどうしたらいいのかというところで、原作を読んで自分が肌で感じたことをできるだけオフラインゲームで再現しています。
ボクもゲームが大好きなので、プレイしていただいたユーザーさんが『SAO』だけではなく、いろいろなゲームを楽しんで、オンラインゲームを活性化してほしい。それでまた新しいユーザーが入ってきて、ゲーム全体が広がっていくようにしたいと思っていました。
※3:多数のプレイヤーが1つの世界を共有して遊ぶRPG。一方、MORPGはロビーで少人数のプレイヤーを募り、その参加者だけが共有できるエリアがあるのが特徴。ただし、昨今ではMMOのなかにMO要素があるもの、またその逆のゲームも存在するため、明確な区切りはない。
――オンラインゲームの活性化ですか。
二見:ボクは過去に『ファンタシースターオンライン(PSO)』もやっていたのですが、当時は1人で遊ぶことが多かったんです。その時はコミュニケーションが怖いと感じていたのですが、『FINAL FANTASY XI』などもやり始めて次第に抵抗感がなくなっていきましたね。
同じように抵抗感のあるコンシューマユーザーはたくさんいるのではないかとボクのなかで仮説を立てて、『SAO』は逆にオフラインの疑似MMOとしてオンラインゲームをプレイしている感をどう出すかを考えました。『SAO』でその雰囲気に慣れたら、本流のMMORPGに行って楽しんでもらえればいいかなと思っています。
▲『PSO』 |
酒井:そうしてオンラインゲームに来てくれるユーザーがいるなら、オンラインゲームを作っている側としてはすごくありがたい話ですね。
木村:『SAO』シリーズはほぼ1年に1本作っているのにボリューム凄いですよね。シリーズを重ねるごとにクオリティーもアップされていて。
酒井:ハードも内容も変わって、毎回全然違うゲームを作ってますよね。
二見:努力と根性で作ってます。今は開発に2年くらいかけるような体制になってきたのですが、以前は同時期に3本くらい企画が走ってました。会社のなかで楽になったことがないですよ。前作の発売前に次の企画のプレゼンをしたので売上を盾にはできなかったのですが、それでも会社を説得できたのはよかった。
オンラインゲームに求めるコミュニケーションとは?
――酒井さんたちは『SAO』の人気を肌で感じることはありますか?
酒井:キリトというキャラ名だったり、「俺TUEEEE!!」(※4)ってしたい人がすごく増えました。
※4:敵に圧勝、あるいは大ダメージを出して自己陶酔している状態。
▲キリト(『SAO HR』より) |
木村:『PSO2』はキャラクター名が被っても登録できるので、キリトという名前のキャラクター数は、サーバー全体で上位に入ってきますね。ただ、キリトは原作初期こそ1人で戦っていたけれど、徐々に仲間と共闘していくようになっていきました。『PSO2』でもキリトのようにソロで頑張るんだって人がいるんですけど、後々は同じくキリトのように、積極的に共闘するようになってほしいですね。
昔から、オンラインゲームを1人で遊ぶ人は意外と多くて、そこはボクらも理解しているところなので『PSO2』は1人で遊べるように作っています。でも、仲間を作って遊んでほしいですね。
二見:ボクもソロプレイヤーなのでそういった方の気持ちはよくわかります。以前、吉田さん(※5)と対談した時に、「他のプレイヤーはNPCぐらいの軽い気持ちのほうがいい、そういう感覚で気軽に付き合ったら価値観が変わるんじゃないか」という話がありました。何かきっかけがあれば変わるんじゃないかと思います。
※5:吉田直樹さん。『FINAL FANTASY XIV』のプロデューサー兼ディレクターをつとめる。
木村:たしかに、向こうに誰かいると身構えないほうがいいかもしれませんね。
――過去に比べて、ユーザーがオンラインゲームに求めるコミュニケーションのあり方が変わってきているのでしょうか?
酒井:緩めのコミュニケーションを求めている、あまり深く繋がりたくないというように、社会全体がそうなってきていると感じています。そういったところで、マルチパーティー(※6)のような、なんとなく繋がっている感覚は『PSO2』を作るうえでこだわってきたところです。
※6:『PSO2』独自のマッチングシステムで、同じクエストを選択したプレイヤー同士が最大12人のマルチプレイで遊べる。パーティーを組まずにマルチプレイできるため、1人でも気軽に参加できるのが特徴。
木村:単純にユーザーの母数が広がったことも大きいと思います。昔はオンライン環境を整えるのも一苦労だったので、プレイする人自体のリテラシーが高かった。今は手軽に遊べるようになって、そういう人ばかりではなくなってきました。あとは今のトレンドとして、世界的に見て1人でも遊べるものが主流です。
酒井:スマホのタイトルをプレイしている人が増えて、そういったところの浅いフレンド関係をオンラインゲームにも持ち込んでいるところがありますね。
木村:そういう意味ではスマホのタイトルよりも、オフラインゲームである『SAO』をプレイしたほうがオンラインゲームを遊んでいる感はありますね。フレンドの作り方やパーティーの誘い方などうまく再現されていると思いました。
10年前に『ファンタシースターユニバース』というタイトルを作ったんですけど、あれにもオフラインモードがありました。オフラインで疑似MO的なものがやりたくて、NPCとフレンド関係になる時にパートナーカード(※7)を交換するようにしました。
オンラインではそれを交換してフレンドを作るのですが、オフラインでもそれと同じような流れにして、パーティーの組み方がわかるようにしたのを『SAO』をプレイしていて思い出しました。
※7:他のプレイヤーに向けて自己紹介を書くためのシステム。ただのゲームシステムではなく、『PSU』では存在理由や使い方がストーリー上で語られている。
二見:本来、オンラインゲームをプレイしていると、何回か出会うタイミングがあったり、コミュニケーションをとって、その積み重ねでフレンドになりますよね。『SAO HR』でもちょっと面倒だけど、そういった流れを体感してもらおうという認識で作りました。この人と一緒に冒険したいとか、そういう感覚が疑似的にでもできたらなと。
ただ、『SAO』にはAIが否定的なことは言わないというルールがあります。敵と戦って失敗した時でも「何やってるんだよ」みたいなことは絶対に言いません。
木村:あえてムカつくキャラは置いてないんですか?
二見:ゲームとして倒すべき相手ではいますが、周囲のメンバーにはいませんね。そういったところはこだわって作りました。
――ゲームでは緩いコミュニケーションを求めてるとのことですが、『PSO2』のオフラインイベントなどを見るとユーザーさんのアツさを感じます。本音の部分ではそういったものを求めているのではないでしょうか?
二見:『PSO2』はリアルでのイベントや生放送を頻繁に行っていて、開発とユーザーさんとのコミュニケーションだったり、ユーザーさん同士が繋がる可能性があったりする瞬間というのは憧れます。ボクも電撃祭などのイベントでユーザーさんとお会いすることはあるんですけど、そこで一緒に何かをやるとかはないですから。
酒井:開発者とユーザーさんが会う機会はオフラインゲームでもあると思いますが、プレイしているユーザーさん同士がコミュニケーションをとるのはなかなか難しいかもしれませんね。
二見:『SAO』関連のツイートを見ていても「オレ、友だちいないしな」って人がけっこういて、だから友だちを作ってほしいんです。同じ『SAO』をやっている仲間なんだから、きっと友だちになれるはず。
ボクらは疑似MMOを主体としているので、ガッツリとしたオンライン機能ではないんですけど、それでもハードルは高いみたいです。先ほども言ったように、『SAO』でコミュニケーションを経験して『PSO2』や『FFXIV』に巣立っていく、それでいいと思っています。
オンラインゲームでコミュニケーションを楽しんで、頭をからっぽにしてゲームを遊びたい時は『SAO』に戻ってくる。そういう価値観で見ていただけると、もっとおもしろくなるんじゃないかと思います。
木村:『PSO2』ももうすぐ5年目になるので、これ1本だけ遊ぶというのはありえないと思っています。ボクらもいろいろなゲームを遊んでいただいて、ふとしたきっかけでまた帰ってきてもらえればいい。そういうサイクルとして、ゲーム全体を好きになってもらったほうがゲーム業界としていいことだと思います。
――『PSO2』は特に入りやすく、戻ってきやすいゲームだと感じますが、そういったところは意識して作られているのでしょうか?
木村:そうですね。ほとんどのオンラインゲームでは、アップデートでどんどん難しくしていったり、レベルキャップ(※8)を解放したりということが行われていると思います。『PSO2』では2年半ぶりにレベルキャップ解放があるんですけど、なぜそんなに期間が空いたのかと言うと、プレイヤー間で差が広がってしまうから。
差が広がってインフレしていくと、しばらく離れていた人が帰りづらくなってしまうので、ゲームの難度やキャラクターの成長といった要素の拡張は必要な時だけにして、横軸の遊びや楽しさを広げていくようにしています。新しいクラスやレベルキャップ解放は、ずっと遊んでいる方が一番求めていることと理解していますが、長い目で見ると優先度は低いですね。
※8:キャラクターレベルの上限。その上限が引き上げられることをレベルキャップ解放という。オンラインゲームでは段階的に引き上げられていく。現在の『PSO2』ではLv.80がレベルキャップになっている。
二見:その話、開発に持ち帰ります。「アップデートでレベルキャップ解放しろ」って言われていて、それじゃあ解放しようって安易に決めたことを反省しました。
木村:でも、オフラインのゲームではまた違ってくると思いますよ。
二見:いや、今回は2年~3年のタームで長く遊んでもらえるように計画していたんです。
酒井:ユーザーさんの消費スピードってメチャクチャ速いですよね。自分たちが思っている2倍も3倍もいくじゃないですか。だからと言って、こちらが2倍、3倍のボリュームは作れないというのが悩ましいところです。
――『SAO』ではオンラインゲームと同じように、アップデートという形で新しい遊びを提供していますが、そこはやはりオンラインゲームを参考にしたのでしょうか?
二見:『PSO2』や『FFXIV』など、どういう形でアップデートを見せていくのか、どういう内容を包括して決めていくのか、どういう遊びを提供しているのか、そういったアプローチは参考にしています。オンラインゲームって、アップデートが来たらワクワクするじゃないですか。それをどう疑似的に感じてもらうかはつねに考えています。
▲『SAO HR』の無料大型アップデート“蒼空の闘士”では、ゲームシリーズの人気キャラ・セブンとレインが登場した。 |
――『PSO2』ではPVや“PSO2 STATION”(※9)がありますが、どういったところに気を配っているのでしょうか?
※9:ニコニコ生放送で配信している『PSO2』の情報番組。それとは別に、“アークスライブ!”というコアユーザー向けの放送がある。
酒井:PVも『PSO2』のコンテンツの1つだと思ってやってるんです。アップデートの告知やPV、情報を出していることも、何がくるんだろうワクワクという気持ちも含めて『PSO2』というコンテンツだと思うんです。
新情報については、ボクはわりと全部見せたいタイプなんですけど、ネタバレが嫌だと思うユーザーさんもいますので、ここは守りたいというところを木村と相談しながら、出すところと隠すところを決めてますね。ここは推していきたいというところはできるだけ見せてる。
特にボスを出す時に気を使っているのは、ボスを強そうに見せること。撮影班が普通にプレイしたうまいプレイでは、強さを感じないので、攻撃でやられてるところを撮るように指示しています。
――最近のPVを見ると感じるのですが、ひとつひとつの紹介が短い気がします。
酒井:なるべく5分以内にPVを収めたいというのもありますし、ダラダラと見せて見せすぎになっては意味がないので、本当におもしろいところをかいつまんで見せてあげたい。だから絵的に映えないところはワードだけバーンと見せてます。
後で見返せるのもWEBの良いところですから、何度も見て隠された情報を推測するというのも楽しみの1つですよね。
二見:そういうところは参考にしています。細かい数字のところはパンッて飛ばして、でも伝えたほうがいいのでカットはしません。
酒井:ないよりはあったほうがいいですから。
木村:今の世代の人は特にそうなんですけど、文字はあまり読まない。ただ、動画は見る。そのシーンを静止画にして見れば文字を読むのと変わらないんですけど、動画という媒体のほうが見るんですよね。
酒井:生放送は長いと思う人もいるでしょうからね。まとめだけ読みたいという人もいるのは確かだと思う。やっている方としては話の微妙なニュアンスが伝わらないので、できれば全部見ていただきたいんですが。
『FFXIV』の吉田さんの“パッチノート朗読会”(※10)、あの発想はすごいですね。『PSO2』ではできないと思います。
※10:吉田さんが『FFXIV』のアップデートパッチの内容を雑談や解説を交えながら読む生放送。内容のみならず、“パッチノート朗読会”という飾らないタイトルもユニーク。
メディアミックスで供給し続けることの意味
――『SAO』も『PSO2』も、ゲームだけではないさまざまなコンテンツへと広がっていますが、その感触はいかがでしょうか?
酒井:“境界を超えるRPG”ということを意識してメディアミックスやオフラインのイベントなどさまざまにやっていますが、すべてを受け入れて楽しんでくださるユーザーさんも多い反面、ゲームにしか興味がないという方は、こういうことを余計なものと思うようですね。そういう方からは「余計なことに金を使ってないでゲームをちゃんと作れよ」という声もあるので、そこはバランスかな。当然、ゲームをマジメに作ってないわけじゃないですよ。
ただ、そのように広げていくからこそ、『PSO2』というコンテンツが多くの方に知られて、皆さんがゲームを楽しむ場を維持していけるということもわかっていただければうれしいんですけどね……。
今の日本ではゲームだけを作り続けていてもなかなか広がりを作るのは難しいんですし、特にオンラインゲームは長く続くとアップデートだけでは話題性に欠けてきます。ユーザーに忘れられないよう、話題性のあるニュースをどのように出し続けていくか、という点にプロデューサーとしては苦心しているわけです。
木村:ボクと酒井の2人が表に出てやっているだけで、現場はしっかり作ってます。ただ、現場のディレクターやプランナーには新しいコンテンツを作る時に、PVになったときにどう見えるかも考えて作るようには伝えています。どう訴求するのか、それも含めてデザインしなければいけない。
――やってもらえればわかるではダメなんですね。
木村:どのゲームでも同じですけど、特にオンラインゲームは遊んでいるユーザー前提になりがちです。それではダメで、休止している方や新規の目を引くものでなければいけない。
二見:新規ユーザーさん向けの情報と、既存のユーザーさん向けの情報を提供しないといけないじゃないですか。その温度感をどう分けているんですか?
酒井:PVの中では分けてないです。コアな情報も出してますが、そういったところは扱う時間が短いので気にはならないと思います。
木村:昨年、生放送を“PSO2 STATION”と“アークスライブ!”の2つに分けました。ひとつは元々の番組のテイストを引き継いだバラエティ的なノリで、新情報をバンバン出していく。もうひとつは、“PSO2 STATION”で出たアップデート情報を掘り下げる番組。そういった形でそれぞれの層に対応を始めたところです。
二見:なるほど。『SAO』ではどこから入ってきてもいいように、タイトル名に“2”とか付けないことを考えています。
酒井:順番がわからなくなりません?
二見:なります(笑)。
木村:ボクもナンバリングを付けるのは本当は嫌なんです。エピソード4が配信中ですが、PS4ユーザーさんが新しく入ってくる時に「エピソード4から始められるの?」って思われただろうし、そもそも『PSO“2”』ですからね。
アニメの時も、初のアニメ化なのに“2”っていう。ちなみに『ペルソナ4』もそうだったらしいです。確かに、ナンバリングを付けるのはいいことばかりじゃない。
▲TVアニメ『PHANTASY STAR ONLINE 2 THE ANIMATION』 |
二見:ボクはエピソード4から始めたんですけど、すんなり入っていけましたよ。
酒井:エピソード4はちょうど話がガラッと切り替わるタイミングで、入りやすいようにしました。
木村:それ以前は遊んでなくてもいいような作りにしました。毎エピソード意識はしているんですけど、アニメやPS4があったので特に意識しましたね。
――『SAO』は原作との兼ね合いという要素も大きいですよね。原作との整合性であるとか、そういったところで苦労されることはありますか?
二見:『SAO』はゲームとしては特殊な作品で、原作の川原礫先生や担当編集の三木さん(※11)に許容していただいて、原作の時間軸とはズレているんです。原作がα線だとしたらゲームはβ線というようなイメージです。
原作の『ソードアート・オンライン』は75階でクリアされる話ですが、ゲームはそこから100階までの話なんです。また、β線の世界でも原作の出来事がニアイコールで起きているのですが、そこはプレイするとなんとなくわかるだけで、新しい物語として進んでいる形です。
ですので、そこは自由にやらせてもらってます。ただ、原作の世界観のカーディナルシステムをなるべく守るように、そこは外さないようにしています。比較的ドラマに注力できるという認識ですね。あと川原先生に言われたことは、原作で死んだキャラクター・ユウキは、ゲームでは元気な姿を見せたいと。
※11:担当編集の三木一馬さん。ストレートエッジ代表取締役社長。
▲ユウキ(『SAO HR』より) |
酒井:パラレルだからできるってことですね。
二見:ユウキはすごい人気のあるキャラクターで、ゲームで出会ったり一緒に遊びたいという気持ちはわかります。原作やアニメはひとつの作品として完成しているので無理ですが、ゲームではある程度設定を落とし込んでユウキが登場するようにしました。川原先生には、ゲーム内で会えるというのは非常に強いツールとして見ていただいています。
酒井:川原先生自身がとてもゲームをプレイされている方なので、そういったところには理解があるんでしょうね。
木村:原作がある作品では、内容に忠実なものとifのゲームがある。『SAO』は後者ですが、ユウキの元気な姿が見られるというのはユーザーさんにとってもうれしいところですよね。しかもそれが公式のメディアとして楽しめる。それが原作付きのゲームのいいところだと思います。
二見:ボクは原作をお借りしてゲームを作らせてもらっている立場ですが、自分のなかで決めていることがあります。それは、必ずオリジナルの体験をさせること。原作が一番おもしろいのは当然で、それをどう脚色してアニメなら映像としての最大限、ゲームならゲームとしての最大限を引き出すか。
それをどうしたらいいのかと言うと、毎回絶対にゲームオリジナルのヒロインを入れる。あなたがそれを救ってくださいという、プレイアブルな『SAO』をテーマにしているんです。キリトになって原作をなぞる形のゲームだと、絶対に原作のほうが楽しめる。ゲームでやるならオリジナルでカワイイ子を作ったり、自分が世界を救うほうがいいじゃないですか。
▲画像のストレアをはじめ、フィリアやセブン、レイン、プレミアといったキャラクターが『SAO』のゲームシリーズに登場している。 |
――先日、『SAO HR』にアリスとユージオの参戦が発表されましたが、ゲームの声優さんはどのような方針で決めているのでしょうか?
二見:ゲームのオリジナルキャラクターについては完全にボクの趣味です。今後、原作やアニメに関わるキャラクターに関しては、関係者全員に確認しています。川原先生にキャラクターの声にどんなイメージがあるかも聞いてますね。ユージオの島﨑信長さんは、キリトの松岡禎丞さんと同時期くらいだったかな、かなり前から決まっていました。
酒井:『SAO』は本当に幸せなメディアミックスですよね。アニメもゲームもオリジナルとして成功しているじゃないですか。
二見:『SAO』のメディアミックスは今後の参考例になると思っています。原作はちゃんとしっかりクオリティコントロールするんですけど、あとはそれぞれの媒体で最高を目指すスタイル。現場のプロデューサーは、何をやったら最高のものを作れるのか考えているので、お互いにケンカせずにやっています。
あとはウチの会社のいいところなんですけど、絶やさない。アニメをやっても時間が空いちゃうと忘れられてしまいますが、『SAO』はそこをすごく考えられているので、ボクも毎年ゲームを出すことを心掛けています。
▲『SAO』ゲームシリーズでは、アリスやユージオの他にも、キズメルをはじめとした小説には出てきたもののアニメなどにはまだ登場していないキャラクターが登場します。 |
木村:バンナムさんの昔からのスタイルですよね、IPを絶やさないという。『SAO』は原作が続いてますが、他のタイトルで原作に動きがない時でもつねに展開されている。
酒井:セガは絶やしまくるから……。
二見:いやいや、名作ばかりじゃないですか。
木村:止まっちゃうから「あれは名作だった」で終わっちゃうんです。
二見:『ファンタシースター』はずっと続いているじゃないですか。
木村:それはほぼ毎年何かゲームを出していたおかげで、ゲームが途切れていたら間を埋めるものがなかったと思います。
二見:ボクはセガさんのゲームをよく遊ばせてもらっていて、『パンツァードラグーン』が好きで、なかでも『AZEL』がすごい好きでした。いつかああいう作品を作りたいんですよって酒井さんに話したら、それオレが作ってたよって(笑)。
ゲーム業界にはいい作品がいっぱいあって、ただそれがコンテンツとしてないと忘れられていってしまう。そういったものを思い出してほしいという気持ちがあって、『SAO』にはボクが昔の作品で思ったこと、やりたかったことを盛り込んでます。
それがよかったと言われたので、皆さんに興味を持ってもらえるような仕掛けは今後も入れたいと思っています。そして酒井さんには『パンツァードラグーン』の続編をぜひ。
(一同笑)
――さまざまな形でメディア展開を続けるというのは、作品を存続させるひとつのあり方なんですね。
二見:メディア展開の仕方は今後も検討していきたいですね。ゲームに関して言えばコンシューマゲームとアプリで展開するビジネスサイクルを見直していきたいと思っています。
――ユーザーさんは豪華なものを求めている反面、あまり長くは待ってくれないですよね。
二見:本当にいいものを提供していきたいというのは、作り手として皆さんが思っていることです。一方で、コンシューマゲームはどんどんハイエンドになっていて、作るのが困難になってきている。その間、皆さんを満足させるものは何なのかを考えないといけない。
昨日、『PSO2』で2B(※11)のコスチュームが欲しくてスクラッチを引いた時に思ったんですけど、衣装を作るのにもお金がかかるんですよね。今後、オフラインでどうやって開発費を回収しようかなって考えた時に、参考にしようと思いました。
※11:『NieR:Automata』の主人公ヨルハ二号B型のこと。『PSO2』ではコラボレーションで2Bや9S、2Aのコスチュームなどが登場した。
木村:それをパッケージタイトルでやるとけっこう反発があるかもしれませんね。
二見:いや、やります! 『PSO2』は無料での体験なので、次にいいものを作るためにもどこかしらで開発費を回収しなければいけないじゃないですか。ああいうのは今後、オフラインのゲームでも必須になってくるんじゃないかと考えてます。
いいものはユーザーさんに還元したいし、新しいコンテンツを提供したい。だけどお金がない、開発費がとれない。ですので、これだったらお金を出してもいいよっていうものを提供できればと。
――今は昔ほどDLCに対する抵抗感は少ないんじゃないですか?
二見:ボクが言うのも何ですけど、DLCじゃ無理です。継続的・計画的にユーザーさんがお金を出していただいて、遊んでいただけるのであれば続けられます。
木村:ゲームはどんどんハイスペックになっていくんですけど、ボクら開発のスキルはそんなに早くスペックアップしないので、いいものを作ろうとすると当然コストはかかります。ただ、ソフトの値段って昔とあまり変わらないじゃないですか。
それに対して開発費だけがどんどん肥大化していくのが現状です。たくさん売ればいいと言っても限界があるので、ビジネススキームを変えていかなければいけないですね。
酒井:ボクらも過去にいろいろと失敗しているんです。『ファンタシースターポータブル』シリーズのときはDLCで衣装を売っていましたが、値段を安くしすぎてDLCの開発費すら回収できなかった。たしか1着300円でした。買う側からすると「これくらいで欲しい」という価格にしたつもりでしたが、厳しかったですね。
二見:DLCを作るにもコストがかかりますからね。
酒井:一方で『PSU』をずっと運営してきて、このままでは厳しいなという時に無料化して、オプション課金という形でコスチュームのガチャを入れたんです。そうしたらそっちはそこそこ成功することができました。その経験があって、『PSO2』ではゲーム自体はできるだけ無料で遊んでもらうようにして、コスチュームのほうでお金をいただくというスキームにしました。
二見:うちは無料のアップデートもいろいろやっていますが、『SAO HR』以降は止めようと思ってます。
木村:でも1回無料でやっちゃうと、今度は何で無料じゃないんだって言われませんか?
二見:はい、だからすでに無料アップデートを配信している『SAO HR』が最後です。アップデートをやりすぎて開発は疲弊しているし、ユーザーさんからは叩かれる。「なんだこの運営は」って言われるんだけど、ボクらは運営じゃないですからね。『SAO』は疑似MMOですから。
――武器の見た目が変わったり、DLCが入ったり、実際のオンラインゲーム並みだから勘違いするのもわかります。
二見:『PSO2』や『FFXIV』のようなオンラインゲームをニアイコールで体験させるというお話をしましたが、DLCに関しては『ウィッチャー3』に影響を受けました。『ウィッチャー3』では、新規のDLCコンテンツを入れる時にさまざまな技術検証しているんですよね。
もちろん、ユーザーさんにおもしろい体験を提供したいというのもありますが、『SAO』を次に続けるためには、いろいろなことをやってノウハウをためたかったんです。何かしら新しいチャレンジをして、ユーザーさんの反応を見たうえで次のステップへ行きたい。
オンライン対応もそういったことの一環です。今後、オンラインとどう向き合っていくのか、その方向性を決めて行こうと思っています。運営が続くオンラインゲームと違って『SAO』のいいところは、オフラインだから1回そこで切って次に反映できることです。そこは生かさないともったいない。
▲『アクセル・ワールド VS ソードアート・オンライン』のDLC『異世界からの漂流者』では、妖精王オベイロンや、先ほど触れたアリスとユージオが登場する。 |
――『PSO2』には先日バトルアリーナが実装されましたが、プレイヤー同士の協力が主体のゲームにPvP(※12)を入れた狙いはどういったところにあるのでしょうか?
※12:プレイヤーVSプレイヤーの略で、対人要素を指す。対戦相手がコンピュータの場合はPvE(プレイヤーVSエネミー)という。
木村:一番は、先ほども言ったとおり横の広がりを作りたかったんです。今までもたくさんのものを入れてきて、いろいろなタイプのクエストがあって、協力して戦うというスタイルはひととおりやりました。じゃあ違うものをということで、満を持して対人要素を入れました。
酒井:もともと『PSO2』は海外展開も目指していたので、PvPは昔からアップデートコンテンツの候補として考えていました。いつ入れるかのタイミングを検討していたのですが、SOA(セガオブアメリカ)やアジア展開の不調など、海外展開の雲行きがあまりよくなかったというのもあって、日本向けのアップデートを優先するようにして、まだ後でもいいねという話をしながらこれまで後ろ倒ししていたんです。
――内容はわりとライトなPvPですよね。
木村:そこは難しかったところです。対人要素を入れたいという話が出た頃は、まだライトなのかコアなのか全然決め切れてなくて、オンラインの対人だからコアなのかなという話もあったくらいでした。
今のトレンドの流れで言うと、『スプラトゥーン』や『オーバーウォッチ』が出てきたなかで、こういうカジュアルな対人戦も受け入れられつつあります。昔は対人と言うとFPSやMMOのギルド戦といったガチなやつしかなかった。
世の中的にこういうゲームも楽しんでもらえるようになったという流れも見つつ、あとは『PSO2』に今から入れるとしたらどのあたりだろうと考えて、結果ライトになったという感じですね。
――確かに最近は対戦でも緩いものが受け入れられていますね。
木村:対人系のゲームもユーザー層が広がっていってどんどんカジュアルになっているのかなという感覚です。
二見:『オーバーウォッチ』もプレイしましたが、ロールがあってFPSのMMOみたいな感じですよね。
木村:FPSでアバターを見せるというのは過去になかったですね。勝利ポーズがほしくてゲームを頑張るとか、そういうモチベーションって他にはない。そもそもFPSってキャラクターが見えないのにね。
今後の時代の流れ、そして気になるコラボは!?
――劇場版『SAO─オーディナル・スケール─』のインタビューで、伊藤智彦監督から『PSO2』を参考にしたところがあるとお伺いしました。どういったところを参考にしたのでしょうか?
▲『劇場版 SAO─オーディナル・スケール─』のキービジュアル。4月6日時点で国内劇場観客動員数が160万人、国内興行収入が23億円を突破している。 |
二見:ARで出てくるモブは『PSO2』を参考にしたそうです。トラが銃を撃っていたりとか、ああいうバラエティ感があるところです。『PSO2』はバラエティー感がすごいですよね。こんなのまであるのってくらいに。
酒井:最近はアクセサリーの位置やサイズが変更できるようになって、どうやって作ってるんだって思うようなキャラクターがすごい増えました。バトルアリーナでも傘を前後に差して、どこから撃っているかわからないようにしたりね。
二見:そこまでできるのも、キャラクタークリエイトの幅が広いからできる遊びですね。
木村:キャラクタークリエイトがあれだけ自由な対戦コンテンツは他にないと思います。ものすごい大きなキャラクターも作れちゃう。ただ、コリジョンは一緒なので物陰からはみ出て当たっているようで当たらないみたいなこともできます。
酒井:けっこうトロスーツ・ミニで行く人が多いんですけどね。コリジョンは変わりません。
――将来的にVRのMMOは出てくると思いますか?
二見:VRのオンラインゲームは出てくるんじゃないでしょうか。たぶん、そんなに遠くない未来に。『SAO』のようなフルダイブMMOとは違う体験になるとは思います。
VRMMOという単語だけで言えば、ここ5年、10年の間に出てくるでしょう。ただ、それで凄い体験ができるか、『SAO』みたいなことができるかと言えば2022年にはできないと思いますね。
酒井:バンナムさんは今一生懸命VRやってるじゃないですか。
二見:そうですね。新宿にもできますし。でも、VRでMMOをやれと言われても大変じゃないかな。オンラインゲーム開発の経験が長い酒井さんたちのほうがそのハードルはわかると思います。
木村:今のVRインターフェースでも技術的には作れます。でも、最終的にビジネスにならないといけないわけで、そこが難しいところですね。VRインターフェースは売れてますが、PS4本体の普及率ほどではありません。プラットフォームが広がらないとビジネスとして成り立たないので、オンラインゲームがVR化するのはもっと先の話だと思います。
ただ、オンラインゲームも最初から今の形だったわけではなく、ちょっとした対戦などから始まってそれが進化してきました。まずはアミューズメント施設を使った対戦だとか、そういったところから始めていくのがいいんじゃないでしょうか。
酒井:一番問題になるのは時間だと思うんですよ。オンラインゲームは時間のかかるゲームですが、今のVRだと長い時間はプレイできません。もっとVRがカジュアルになって、3D酔いなどが解消されないとVRMMOという形にするのは難しい。
『PSO2』なら、マイルームで寝そべっている自分のキャラを見るだけをVRにするくらいならすぐにできると思いますが。……これってけっこう需要あるんじゃないかな。
二見:VRは体感のあるコンテンツなので、コンシューマで長時間遊ぶタイトルが対応するにはまだ時間がかかりそうですね。
酒井:ぜひ、アーケードにやってほしいですね。昔、アーケードでできたことが今はほとんどコンシューマで遊べてしまう。VRはアーケードのような特殊な環境で、そこでしかできない体験が作れるものだと思います。
二見:体感機と言われたものがVRと一緒になって、もっと進化する可能性はあります。まあ、いずれVRで『SAO』を再現できればいいですね。あと、VRよりもAIがあるといいとかな。AIとVRが密接にかかわって仮想空間としてどうやって進化していくのか、その提案はしていきたいです。
――『PSO2』のアニメと『SAO』の“ファントム・バレット”以降の時代が2026年近辺で一致しているのですが、2026年はどうなっていると思いますか?
木村:9年後かあ。逆にこの9年間の世の中のイノベーションというとスマホ、あとは動画の生配信があったくらいかな。
うーん、AIは可能性があると思っています。オンラインゲームがなんで長く遊べるのかと言うと、それはユーザーさんがいるからです。対戦ゲームがわかりやすいんですが、CPUとの戦いではある程度パターン化してしまいます。そこにプレイヤーさんが加わるとずっと遊んでいられるじゃないですか。
ただ、ものすごくAIが進化していって、AIが演じる疑似プレイヤーがたくさんいるゲームができたら、プレイヤーが1人でもオンラインゲームとして成り立つんじゃないかな。極論ですが。
二見:ボクは半分プレイヤー、半分AIで誰がプレイヤーかわからないゲームがやってみたいですね。それでプレイヤーが1人になったらサービス終了。最後の1人が「えっ、みんなAIだったの!?」ってなったらおもしろいな。
木村:最近、オンラインゲーム開発者のなかで言われているのは、運営をAI化できないかということ。KPI(※13)を見て施策を入れたりバランス調整したりするんですけど、それをある程度AIで判断できるのではないか、そのほうがスピード感があるし正確だし。
そういった部分でAIの活躍があるかもしれませんね。AIと言えば、緊急クエスト(※14)を作ったのはAI的な考え方で、サーバが勝手にイベント起こしてくれないかなあと思って、ボクの初期構想のなかではもっと高度なものでした。
※13:重要業績評価指標。ビジネスの現状を測定したもので、今後の対応策を決めるうえで指標の1つとして多くの企業で導入されている。
※14:『PSO2』のシステムで、1時間ごとにランダムで発生する可能性のある特別なクエスト。現在はランダムだけでなく、公式サイトであらかじめ発表された時間に発生する予告緊急クエストも存在する。
酒井:企画書の段階ではシップAIとか書いてあったね。
木村:例えばエネミーの種族が何種類いる中で、特定の種族がたくさん倒されるとその種族に関する緊急クエストが自動的に発生するとか、サーバ全体のパラメータを見て起こすイベントを自動で判断するような、そういうのがやりたかった。
まあ、ユーザーさんにとっては、ランダムで発生しているのと違いがないので今とあまり変わらないかもしれませんが。
――『PSO2』ではオフラインイベントを毎年やっていますが、『SAO』でもユーザーを集めて何かしらイベントを企画しないのでしょうか?
二見:オフラインイベントはやりたいですね。今後、今年もしくは来年かわかりませんが、どこかしらでコンシューマの『SAO』オフラインイベントはやりたいなあと思っています。
それがコンシューマだけなのか、アプリも含めてのイベントにするかはわかりませんが、『SAO』のゲーム主体でやれたらいいですね。ボクらもそこでユーザーさんにお会いして、お礼を言いたいです。
――今年の1月に『SAO─コードレジスタ─』のイベントがありましたが、規模はそれと同じくらいでしょうか?
二見:もうちょっと大きく。
酒井:じゃあ有明コロシアムで。
二見:もうちょっと小さいかな。MAX500人くらいを目指します。
――『PSO2』では今年の夏に向けてそういった動きもありますよね。
酒井:はい、今年も全国5都市で“ファンタシースター感謝祭2017”をやります。そこでエピソード5の情報を出していく予定です。今年はいつものタイムアタックのアークスグランプリではなく、アークスバトルトーナメントというバトルアリーナをメインにした公式全国大会を開催します。
木村:大会のプレイ環境はPS4オンリーになるので、ユーザーさんの環境差は一切なくなります。対戦は4対4のチーム戦。1チーム6人だと、メンバーを集めるのが大変だろうと考えて4人にしました。
酒井:今年の感謝祭は『PSO2』5周年でもあるので、これまでのものとは変えていきたいですね。大々的にいろいろやっていきたいと思います。
――当日の生放送は“PSO2 STATION”のほうでやるのでしょうか?
酒井:“PSO2 STATION”のコーナーと“アークスライブ!”のコーナーを用意して、質問なら“アークスライブ!”のコーナーといったように、分けていこうと考えています。
――『SAO』も今年で5年目ですが、今後の予定を言える範囲でお聞かせください。
二見:ボクがかかわっている間は、ブレなく『SAO』のゲームを作るために邁進していきます。あと作ってないのが“ファントム・バレット編”と“アリシゼーション編”の2つくらいなので、残りの5年の間に頑張ります。
――『PSO2』の今後の展望はいかがでしょうか?
木村:エピソード4の完結が4月に予定されています。約1年半やってきた集大成で、ストーリーだけでなくその後に出てくるレイドボスもかなり力が入っているので、ぜひ楽しんでほしいですね。バトルアリーナもアップデートするのでそちらもご期待ください。
酒井:実は『PSO2』のコラボ希望アンケート『SAO』は毎回不動の1位なんです。『PSO2』も5周年ですし、今回、『SAO』の二見さんと鼎談させていただいたので、満を持して、何かしらの形でもコラボができたらいいなと思っていますが、どうでしょうか?
二見:『SAO』は若い子、特に中高生が多い作品で、そういう子たちにもっとゲームのおもしろさを知ってほしいということを酒井さんとは以前からお話していました。ボクらもゲーム業界を一緒に盛り上げていくように、何かしらユーザーさんに喜んでもらえる形で実現できればいいですね。
これがきっかけで、そういった話ができればいいと思っています。皆さんも長い目で『SAO』と『PSO2』の2作品を応援してください。
――ありがとうございました。
8大特典付き電撃屋限定版が数量限定で販売中!
電撃屋だけの8大特典が付属するPS4/PS Vita用ソフト『アクセル・ワールド VS ソードアート・オンライン 千年の黄昏(ミレニアム・トワイライト)』の電撃限定版が発売中! 特設ページは下記バナーから。
この限定版ではゲームソフトに加えて、abec先生&HIMA先生描き下ろし限定収納BOX、サウンドトラックCD、スペシャルコンテンツBlu-rayディスク、CD&BD収納用スペシャルケース、特別小冊子『電撃Nerve Gear VS』、ミニクリアポスター、描き下ろしSDキャラアクリルキーホルダー、ゲーム内で使用できる“情熱の装備 水着《ソレイユ》”の衣装がダウンロードできるプロダクトコードが付属。
これら特典アイテムは、本限定版を購入することでしか入手できないものばかり。abec先生&HIMA先生ファンや、松岡禎丞さんをはじめとした出演声優のファンにとっては見逃せないアイテムとなっています。
▲ 画像をクリックすると特設ページに飛びます ▲
電撃限定版だけの声優陣座談会映像をチラ見せ!
もちろん、通常版に付属する初回封入特典“プレイアブルキャラクター「サチALOver.」が使用できるダウンロードコンテンツ”と“プレイアブルキャラクター「ユナ」が使用できるダウンロードコンテンツ”、“ゲーム内で使用できる『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』の衣装”も付属します。
この限定版は電撃屋のみの販売となっていて、通常の量販店やネットショップでは購入できません。特設ページから注文できますので、気になった人はぜひアクセス!
電撃限定版セット内容
・ゲームソフト本体(PS4版またはPS Vita版)
・abec先生&HIMA先生描き下ろし限定収納BOX
・サウンドトラックCD
・スペシャルコンテンツBlu-rayディスク
・CD&BD収納用スペシャルケース
・特別小冊子『電撃NerveGear VS』
・ミニクリアポスター
・描き下ろしSDキャラアクリルキーホルダー
・ゲーム内で使用できる「情熱の装備 水着≪ソレイユ≫」の衣装がダウンロードできるプロダクトコード
・初回封入特典 プレイアブルキャラクター「ユナ」が使用できるダウンロードコンテンツ
・初回封入特典 プレイアブルキャラクター「サチALOver.」が使用できるダウンロードコンテンツ
・初回封入特典 ゲーム内で使用できる『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』の衣装
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