2017年4月28日(金)
4月28日に配信1周年を迎え、ますます盛り上がりをみせる『VALKYRIE ANATOMIA ‐THE ORIGIN‐(ヴァルキリーアナトミア ‐ジ・オリジン‐)』。
今回はそれを記念して、ゲームのメインシナリオを手掛ける藤沢文翁さんと、木村和道プロデューサーへの直撃インタビューを敢行! 運命の3女神よろしく、『ヴァルキリーアナトミア』の過去、現在、そして未来について存分に語っていただいた。
▲藤沢文翁さん(写真左)、木村和道さん(写真右)。 |
【お話しを聞かせてくれた人】
・木村和道さん
スクウェア・エニックス所属。『ヴァルキリープロファイル』シリーズのプロデューサーを務めた山岸功典さんから引き継ぐ形で、『ヴァルキリーアナトミア』の2代目プロデューサーに就任した。生放送などでファンとも積極的に交流を図っていきたいとのこと。
・藤沢文翁さん
劇作家・演出家。本作で、自身初となるゲームのメインシナリオを担当した。北欧神話に造詣が深く、また『ヴァルキリープロファイル』のファンとしても知られている。
――『ヴァルキリーアナトミア』のサービス開始から1周年、本当におめでとうございます。まずは木村さんに、現在の率直な心境をお聞きできればと思います。
木村:ファンの皆さんへの感謝の気持ちでいっぱいです。私は山岸さんからプロデューサーを引き継いでまだ日は浅いですが、『ヴァルキリーアナトミア』については、開発のかなり初期の段階から携わっていたこともあって、とても感慨深いですね。
――今回、ゲームのメインシナリオを劇作家の藤沢文翁さんが手がけておられるわけですが、そもそも、藤沢さんにオーダーがいった経緯を教えてもらえますか?
藤沢:お話をいただくことになったきっかけは、僕が脚本や演出を手掛けた『Valkyrie ~Story from RHINE GOLD(ワルキューレ ~ラインの黄金)』という舞台になります。
これを『ヴァルキリーアナトミア』制作スタッフさんたちと一緒にご覧になられた山岸さんがとても気に入ってくださり、その場で「じつは今、こんなゲームを作ろうとしていまして……」というお話をいただいたことをきっかけに、プロジェクトに参加させていただきました。
元々『ヴァルキリープロファイル』のファンでしたし、とてもおもしろそうな企画だったので、お話を聞かせてもらってすぐに引き受けようと思いましたね。
――具体的には、どのようなお仕事を担当されているんですか?
藤沢:メインストーリー、そしてそこで登場するエインフェリアのサブストーリーに関しては、すべて自分でテキストを書いています。その他、イベントクエストの一部も担当させてもらっていますね。
――シナリオのほとんどってことじゃないですか! それはすごい。そんな藤沢さんは、やはり北欧神話に関してかなりの知識をお持ちなのでは?
藤沢:自分でいうのもなんですが、劇作家という仕事柄、さまざまな神話に関する知識を深めておかないとお話にならない部分はあるので、北欧神話に限らず、古今東西の神話について調べています。
仕事柄といいましたけど、神話というものは触れれば触れるほど味が出るというか、昔の人が考えた物語のすごさに驚かされるので、いち個人としても大好きなんですけどね。
――では、数ある神話の中で北欧神話にはどのようなイメージを抱いておられますか?
藤沢:北欧神話というものは、元々はヴァイキングと呼ばれた人たちが作り上げたものなんですよ。ヴァイキングというとあらくれ者のイメージがあると思いますが、じつはものすごいテクノロジーを持っていて、彼らの造船や築城の技術、アートに関するセンスなどは傑出していたんです。
当時のヨーロッパの生活様式は、ほとんどヴァイキングたちが組み上げたといわれているほどの人たちなんですよね。そんな彼らが、夜に星を見ながら語り合ったのが北欧神話。
人間の業の深さを思い知らされるものもあれば、美しいラブロマンスもあったりして、神さまたちがとても生々しいんですよね。神さまが我々人間と同様に、欠点や弱い部分を何かしら持ち合わせていて、かと思えばとても遠い存在であると感じさせるエピソードもあり、ものすごくロマンティックなんですよ。
――本作のシナリオに関しては、そんな北欧神話に『ヴァルキリー』らしさ、そして藤沢さんらしさを盛り込んでおられるかと思いますが、手ごたえとしてはいかがですか?
藤沢:そうですね。僕はヨーロッパで育ち、そこで教育を受けてきました。
その中で感じたヨーロッパならではの真冬の厳しい寒さ、そしてそこに住む人たちとコミュニケーションする中で感じた生の感覚……それから、舞台作家としての感覚。
北欧神話をベースに、これらすべての要素、そして『ヴァルキリープロファイル』へのリスペクトを盛り込んでいるつもりです。
木村:新規の物語を書き下ろしてもらうにあたって、これまでの物語と齟齬がないようにしつつ、あえて矛盾が生じる部分も盛り込んで、物語を盛り上げてくれています。
そこに実際の北欧神話の解釈まで入れ込んでいただけるというのは、藤沢さんならではなんですよね。
『ヴァルキリーアナトミア』は、当初『ヴァイキングアナトミア』と異名がつくほどヴァイキングたちが前面に出るストーリーとなっていますが、それは北欧神話に照らし合わせて考えると当然のことだったりしますし、そういった肉付けがあるからこそ、シナリオがものすごくリアルで生々しくなっているんじゃないかなと思います。
藤沢さんの北欧神話への、そして『ヴァルキリープロファイル』への愛の深さは、ゲームを遊んでいるファンの方にもすごく伝わっているのではないでしょうか。
――では、シナリオは全面的に藤沢さんにお任せされていると?
木村:そうですね。骨子の部分にかんしては、もう藤沢さんありきで作らせてもらっています。はたしてエンディングはどうなるのか……我々としてもとても楽しみなんですよ。
――そんな『ヴァルキリーアナトミア』が1周年を迎えたわけですが、山岸さんからバトンを引き継いだ木村さんとしては、これからどんなゲームにしていきたいとお考えですか?
木村:ユーザーの皆さんから、さまざまなご意見をいただきながら少しずつ前に進んできた1年間でした。すべてのご要望におこたえするのは難しいのですが、我々開発スタッフとしても“これは修正しなければ”というごもっともな意見を多数いただけているにも関わらず、まだ手が回り切っていない状態です。
1年をかけてようやく土台が固まってきていますので、ここからよりおもしろいゲームになるにはどうすればいいのかをあらためて考え、皆さんによりご満足いただけるゲームにしていきたいと、日々試行錯誤の連続ですね。これからはもっともっと、プレイヤーの皆さんの意見を参考にしつつゲームを組み立てていきたいと考えています。
――それは具体的にいうと、どのような部分になるのでしょうか?
木村:たとえば、マルチプレイの要素の有無についてですね。これまでの『ヴァルキリーアナトミア』はシングルプレイメインのゲームになっていましたが、今後、マルチプレイの要素を実装するべきなのかどうか。
ここについては、プレイヤーの皆さんが求めていないものを盛り込んでも仕方がありませんので、実際にゲームを遊ばれている皆さんの声を第一に考えていきたいと思っています。
――なるほど。どちらの意見も出て来るかもしれませんが、個人的には、もしマルチプレイの要素が入るとしてもそれがメインになるのではなく、あくまでもシングルプレイメインで遊びたいなという思いはあります。
木村:まさに、そういった生の意見をお聞きしていきたいんです。そのため、今後はまだプロット段階の仕様を一旦盛り込み、遊んでもらったプレイヤーの皆さんの反響を見て正式な仕様を決めていく……といった流れもあるかもしれません。
――まさに、ファンの皆さんと作り上げていくゲームを目指しておられるわけですね。
木村:世界観や雰囲気をものすごく大切にされているプレイヤーの皆さんが多いと思いますので、安易な形でそれを裏切るようなことはしたくありません。今後、ご意見をうかがう機会が増えてくると思いますが、皆さんにはぜひご協力いただければと思います。
▲ユーザーからの要望があれば、マルチプレイ要素が盛り込まれる可能性も? |
――ちなみに、現在メインストーリーは3月に追加配信された“ジークフリート”まで進んでいますが、シナリオとしては何%くらいまで進んでいるのでしょうか?
藤沢:ちょうど50%くらいでしょうか。想定しているものの半分くらいまでは進んでいると思います。
木村:藤沢さんとは何度も話し合いをしていて、着地点はしっかり見えているんですけど。そこまで持っていくにはあれもやりたい……これもやりたい……と膨らんでしまうこともあって、藤沢さんにはご迷惑をおかけしています(苦笑)。
藤沢:とんでもない! 僕としても、キャラクターたちがどんどん1つの個性として自分の中に浸透してきていて、よりリアルな人間になってきているので、どうしてもお話が膨らんでしまいがちなんですよ。
ゲームというものはアニメやドラマとは見せ方が異なりますし、ましてや『ヴァルキリーアナトミア』のシナリオは、キャラクターの掛け合いのみで進む独特なものになっているので、ゲーム内で語れる情報はどうしても少なくなるんです。
――なるほど。実際に藤沢さんの頭の中には、もっとたくさんの構想が練られているってことですかね。
藤沢:もちろんです。たとえるなら4コママンガ、もっと言れば和歌や短歌に近いかもしれない。“五七五七七”という制限の中にできるだけ情報を盛り込んでいるつもりですが、実際はこんな構想やこんな裏設定があるというのを、よく飲み会の席で木村さんとやり取りしています。
なまじそうやってお話ししていることで、たぶん木村さんとしては“この人どれだけ書くつもりだろう”って不安になっている部分もあるかもしれません(苦笑)。
木村:不安というか、逆に楽しみになっていますよ。これだけの壮大なボリュームをゲームのシナリオとして収めて、なおかつ会話劇メインで進めていっても違和感のない形に仕上げられるというのは、間違いなく藤沢さんが舞台で培ってこられたテクニックによるものですよね。キャラクターの会話だけでテンポよく物語が進んでいくので、感情移入もしやすいのではないでしょうか。
藤沢:舞台って変な話し、予算が少ないことが多いのでいろいろな制限が出てくるんですよ。無尽蔵にキャラクターを出せるわけでもなければ、シチュエーションをコロコロ変えることもできません。
そんな中、登場人物同士の掛け合いだけでいかに見ている方の想像力を掻き立てられるかが重要になるのですが、『ヴァルキリーアナトミア』のシナリオはそんな舞台の見せ方にとてもよく似ています。
▲状況説明のテキストがほとんど入らず、キャラクター同士の掛け合いで進む演出は『ヴァルキリーアナトミア』ならでは。これは、舞台を手掛けている藤沢さんだからこそ可能な手法といえる。 |
――これまでに培ってきたノウハウが生きているってことですね。
藤沢:そうですね。僕自身、ゲームが大好きなので世界を構築するうえでのフレームというか、基本的な部分は理解しているつもりですが、せっかく僕に任せてくださるということは、これまでのゲームシナリオとはちょっと違ったものを求めておられるのだろうと思います。
なので、あえて“これはゲームのシナリオなんだ”と意識せずに書いている部分はあります。それに対して、ほとんどダメ出しが入ってこないことには驚いているんですけど(笑)。
木村:いやいや、ダメ出しなんてとんでもない。エインフェリアのシナリオに関しては山岸さんといつも「これいいね!」「さすが藤沢さん」と膝を打ちながら楽しませてもらっていましたので。
――『ヴァルキリー』の物語、とくにエインフェリアたちの生き様を描くにあたって、絶対に逃れられない宿命に“死”というものがあります。常に死をテーマにしてキャラクターたちの人生を描くというのは、書き分けが難しいものなのでしょうか?
藤沢:そうですね……。もちろん簡単に書けるものではないのですが、“死”という終着点は決まっているものの、そこに至る道のりはさまざまなので、書き分けることが難しいとは思いません。
ラテン語に“死を想え”という意味を持つ“memento mori(メメント・モリ)”という言葉があるのですが、これは僕の中で作品のテーマとして常に意識しています。
人間である以上、誰もがいつか死ぬ。その終着点は変わらないのですが、レナスや彼女に見出されたエインフェリアたちはその先を往く者たちなんです。どういう生き方をしてきたかが、どういう死に方をするかにリンクするわけで、それがその人物の人間性につながっていく。
そして、レナスはその生きざま自体を見定めて、エインフェリアを選定するんです。死を見つめるということは、それだけ今を精いっぱい生きることにつながるわけで、実はとても前向きなんですよね。
――ネガティブな部分もあれば、ポジティブにとらえられる部分もあるというわけですね。
藤沢:死の対極に永遠の命というものがあるとして、それは誰もがあこがれるポジティブな側面もあれば、望んでも絶対に死ぬことができないというネガティブな側面もあると思うんです。
僕はヴァンパイアをテーマにした舞台も手がけているんですが、そこでは永遠の命についてのネガティブな部分を書き続けています。死にたくても死ねない者からすれば、死は救済ですよ。
ちなみに、僕のその舞台の中では、アヘン中毒になっているヴァンパイアを描いています。永遠の命にさいなまれたヴァンパイアが、アヘンを吸った人間の血を取り込むことで永遠の命をごまかし、どんどん廃人のようになっていくというストーリーなのですが……。
――それもまた拷問ですね……しんどそう。でも、めちゃくちゃおもしろそうじゃないですか! 木村さん、ぜひ『ヴァルキリーアナトミア』とコラボしてください。
木村:おもしろそうですね。コラボに関しても、実はいろいろと考えているものはありますので、そこらへんはまた別の機会に(笑)。個人的には、藤沢さんに台本を書いていただいて、『ヴァルキリーアナトミア』を舞台化するのもおもしろいんじゃないかと思っているんですよ。
――それはやってほしい! 舞台でも、声優さんの朗読劇でも、どちらでもしっくりくる気がします。最近のスクウェア・エニックスさんでいえば『ロマンシング サ・ガ』が舞台化したり、『NieR:Automata』のコンサートで朗読劇がお披露目されたりしてますもんね。これは期待したいところです。
木村:私としては、ぜひ実現させたい夢のひとつではありますね。これもファンのみなさんのご要望があれば。
――『ヴァルキリープロファイル』20周年までにはぜひ! 期待しております。
▲『ヴァルキリー』シリーズ20周年は2019年。まだ時間はたっぷり残されている。 |
――先日の生放送で、『ヴァルキリーアナトミア』の登場人物で好きなキャラクターや、好きなシナリオについてファンの方にアンケートを行いました。ここで藤沢さんと木村さんにも、それぞれ好きなキャラクターとシナリオについておうかがいできればと思います。まずは藤沢さんから。
藤沢:僕、じつはマクシミリアンが好きなんですよ。生放送は拝見していましたので、好きなキャラクター1位になったのは本当にうれしかったです。
――おお! 力の入ったシナリオでしたもんね。
藤沢:もちろん、その他のキャラクターにも思い入れはあるんですけど。マクシミリアンはちょっと異色というか、生きている時に特別な功績があったわけでもなければ、ハッと目を見張る美男美女でもない、普通に考えたら選定されるはずがないエインフェリアなんですよね。
だけど、レナスはそんなマクシミリアンを“最も強いエインフェリア”として選定しました。他の人から見たら“なんだこのおっさん”と思われるような人物を、その生きざまを見守ったうえで英雄として選ぶことで、この『ヴァルキリーアナトミア』の世界が大きく広がった気がしました。そういう意味で、自分の中でちょっと特別感があるエインフェリアとなっています。
木村:あれは、これまでの『ヴァルキリー』のエインフェリア選定をくつがえした瞬間だったかもしれませんね。
▲藤沢さんのお気に入りは、奇しくもファン投票で1位を獲得したマクシミリアンだった! |
藤沢:こんなに地味なおっさんを選んでいいのか……と怖くなっていた部分もあるだけに、スクウェア・エニックスさんからGOサインが出てホッとし、さらにはユーザーのみなさんにも受け入れてもらえたことで、とても感慨深いです。
――ちなみに、昨年の東京ゲームショウでの生放送時も同様のアンケートを行っていまして、その時は“好きなキャラクター”の1位であると同時に、“嫌いなキャラクター”でも1位をとるという、かなりのモテっぷりを発揮していました。
藤沢:それ、ものすごくうれしいです。それだけプレイヤーの皆さんの心に残ったということですからね。
――まぁ、“百発百中”という設定でありながら戦闘ではわりと的を外したりもして、中々トリッキーなキャラクターではあるわけですが(苦笑)。
木村:弓キャラは使いこなすのが中々難しかったりしますから(苦笑)。でも、攻撃を命中させるのが難しいぶん、すべて命中させたときのダメージは大きくなっていますよ。ぜひ愛を込めて使いこなしていただければ。
藤沢:すべてにおいて玄人向けなキャラクターになりましたよね。
――ちなみに、お気に入りのシナリオについてはいかがですか? 生放送では“ジークフリート”や“神殺しの兵器”など、比較的新しいシナリオが多くランクインしていたのですが。
藤沢:それは納得ですね。物語の序盤は、どうしても世界観や登場人物たちの設定を理解してもらうために、説明重視になりがちでしたから。
――なるほど。
藤沢:たとえばシャイロ二世は、まだアンジェロであった時はあれほど純粋無垢な人間だったのに、何をきっかけにして人間的に歪んでいき、暴君と化していくかをしっかりと描写する必要がありました。1年間をかけてプレイヤーの皆さんにそれは十分伝わったと思うので、ここからはますます加速していきますよ。
▲神々に憎悪を燃やすシャイロ二世。今後、どのような形でレナスたちに牙をむくのだろうか。 |
――それはジークフリートしかり、ロキしかり、きっとレナスしかりですよね。これまでは助走期間でしかなく、シナリオはますますおもしろくなっていくと……。
藤沢:地味な部分はあったと思いますが、おもしろくなるのはここからだぞ、と。ぜひご期待いただければと思います。ちなみに、僕はシグルズのデザインが大好きだったんですけど、成長してガラリと変わってしまって、少しだけ残念です。
▲まだ幼さが残っていたころのシグルズ。成長することで外見はガラリと変化することに! |
木村:おっと、そうでしたか。ガラッと変わりましたからね。
――まぁ、その違和感を含めてのシナリオ展開でもあるのでは。何より、あれくらい変わらないとレナスが気づいてしまうような気もします。……と自分で言っておきながら、レナスであれば魂の波動などでジークフリートの正体に気づいてもおかしくないような気がするのですが、そこについてはいかがでしょうか?
藤沢:うーん……。そこはね、ちゃんと気が付かないことに対する理由が設定されています。ええ。
――どうしてそこで視線を逸らすんです?
木村:藤沢さん、よろしくお願いします(苦笑)。
――あとは、あの世界に電気があったり、錬金術の研究がやたらと進んでいたりと、じつは文明的にかなり進んでいますよね。
藤沢:ファンタジーではあるんですけど、僕の中ではスチームパンク的な世界観でもあると思っているんですよね。まだ描写されていませんけど、古代文明に関していえば、今よりもっと進んだ文明も存在していたような背景もあるわけで。
木村:『ヴァルキリー』の世界観って本当に奥が深くて、掘りがいがあるんですよね。藤沢さんには、それこそ『ヴァルキリーアナトミア』以前の世界ってどうなっていたの? ってところにまで踏み込んでもらいたいなと考えています。
藤沢:まだ公開されていないエピソードで、古代文明について触れているものもありますからね。
――おお、世界がどんどん広がっていきますね。期待が高まります。では、木村さんの好きなキャラクターは? って、もう生放送でもお聞きしていますけど(苦笑)。
木村:ええ、ヴァルヴァロワが好きなんですよ。藤沢さんと同様のおっさん弓闘士でごめんなさい。
▲ファンからは“探索おじさん”の愛称で呼ばれるヴァルヴァロワが、木村Pのお気に入り。 |
――いえいえ。しかし、探索おじさんが本当に大好きなんですね。
木村:探索時にとても役立つことはもちろん、エピソードとしても大好きで。亡くなった元妻を追い求めて彷徨っていたり、正気を取り戻してかつての思い出を振り返ったりする展開で、思わず涙が出てしまいまして。
人間ドラマのだいご味ですよね。英雄が秘める弱さとか、人間らしさとかが実にいい。私はずっとヴァルヴァロワが一番なのですが、毎回マクシミリアンに首位をとられて複雑です(苦笑)。
藤沢さんは、どのような展開になれば人の心が動くのかを熟知されているのがすごいんですよ。どうなれば人が感動して、どうなれば人が怒りを覚えるのかといった感情の動きを的確に把握して、そこを刺激するのが上手だなと感心します。
藤沢:ほめ過ぎです(苦笑)。
――先ほど、シナリオの進捗は50%くらいであるとお聞きしましたが、今後加わるエインフェリアはどれくらいの数いるのでしょうか?
藤沢:それ、僕も聞きたい。
――ええっ? まだ確定していないってことですか!?
木村:最終的な人数まではまだ決まっていないですね。でも、書きためていただいているエインフェリアも結構いますし、今後着々と増えていくのは間違いないですよ。
どのエインフェリアも個性的なのでぜひご期待ください。私なんかは、藤沢さんはよくもまぁこんなに人を殺せるものだと感心してしまいます。
藤沢:その言い方はどうなんですか(苦笑)。たしかにその通りですけど……。
木村:今後、どのようにしてプレイヤーの皆さんのお手元に届けるかは思案中です。現在、“ヴァルハラ防衛戦”の報酬が、しばらくキャラ専用オーブになっていましたが、それもだいたい配布し終えたので、ここからはまたアーティファクトを用意して、適度にエインフェリアを増やしていければと考えています。
ちょっと厳密な数字はいいづらいのですが、まぁ、現在の進捗が50%なので、そこからざっと計算しておいてもらえれば(笑)。
――ずいぶんざっくりですね(笑)。
藤沢:ちなみに今、僕は何人くらい殺してるんですかね?
――いやいや、藤沢さんまでその言い方!!(苦笑)
木村:登場しているエインフェリアは、だいたい50人前後くらいですね。それで50%ということは、あと50人くらいが死ぬことになるんでしょうか……。
藤沢:今のペースでいくとそうなりますけど。って、とんだシリアルキラーですね、こういう言い方をしてしまうと。これはよくない(苦笑)。
――藤沢さんと木村さんは、そういう業を背負ってしまったんですね……(遠い目)。
木村:まぁ、今申し上げたことはおおよその話ではなくて、そんな単純に数だけ増やしていくつもりはないです。よりエインフェリアたちを掘り下げつつストーリーを盛り上げていければと思いますので、そちらについてもご期待いただければ。
藤沢:バディものというわけではありませんが、今後はエインフェリア同士の絡みというか、横のつながりも描いていきたいんですよ。それによって、物語がより奥深くなると思いますしね。
――そうなってくると、やはり物語は全部見たくなってしまいますよね。いわゆる“ガチャ限定”のエインフェリアが登場するとして、そのシナリオだけでも見られるような措置は期待したいところです。
木村:生放送でもその話題になりましたよね。私としても、今後アルフィオのようなガチャ限定のエインフェリアを登場させるとして、アーティファクトを手に入れないと物語が楽しめないというのは単純にもったいないなと感じています。
まずはエピソードをご覧いただいて、そのエインフェリアが気に入ったならガチャを回していただくなど、ちょっと仕組みを考えたいと思います。
藤沢:いいですね。やるしかないでしょう。
――藤沢さんからのお墨付きもいただけました。
▲泣けるエピソードで上位にランクインしたアルフィオ。妹思いな彼が選んだ結末に涙したファンは多い。 |
木村:たとえばアリスなんて、ストーリーで登場した瞬間にプレイヤーの皆さんから“エインフェリアにしてほしい”という要望が届いたりしたんですよ。
そういう意味で、『ヴァルキリーアナトミア』を遊んでくださっているプレイヤーの皆さんが、いかにストーリーやキャラクターの個性を大切にしてくれているかはわかりました。まだ詳細は決まっていないのですが、これからの動きにご期待いただければと思います。
――今、例としてアリスの名前があがりましたけど、彼女がエインフェリアに選定されるというのは世界観としてそうとう難しそうですね。仲間になったらなったで、ものすごく強そうですけど。
藤沢:アリスがそんなに人気が出るなんて、僕は想像もしていなかったんですけど。生放送では好きなエピソードで1位を取っていましたもんね。あれを見て僕、ちょっと今後のエピソードを書き直そうかなって思っちゃいました。
――これは爆弾発言! まさかのエインフェリア化もありますかね?
木村:ご期待ください!
――では、今後のエピソード展開について、ちょっとだけ教えてもらえませんか? 次回予告的なノリで……。
藤沢:そうですね。やっぱり、今お話に出てきたアリスとか、シャイロ二世とか、トラキシア勢の動向については注目してほしいですね。『ヴァルキリーアナトミア』に登場するキャラクターは完全無欠ではないので、今後、トラキシアの勢力はそこを突いてくるようになるんです。
その時、レナスたちがどう動くのかというところが見どころでしょうか。それだけではなく、今後は“そもそも神というものはなんなのか”というところにもスポットを当て、これまでとはまた違った軸のエピソードも展開していく予定です。楽しみにお待ちください。
▲ファンからの人気が高いアリスは、今後のシナリオでも活躍必至!? |
――あとは、ゲーム外のグッズ展開についてもぜひご検討いただきたいですね。生放送では、サウンドトラックや設定資料集なんかの要望もコメントで流れていました。
木村:たしかに! 私としても、桜庭統さんの新規BGMには本当に感動したんですよ。いまやアプリゲームは数多く配信されていますけど、その中でも群を抜いて素晴らしいBGMだと思いました。
なんらかの形で世に出せればうれしいですね……。ファンの皆さんのご要望があればということで。
藤沢:ライブとかやりたいですよね。
木村:いいですね。ショートストーリーの朗読劇なんかも交えたら盛り上がりそうです。『ヴァルキリーアナトミア』はこの『ヴァルキリー』シリーズの世界をより広げていくための役割を担っていますので、ファンの皆さんからの意見を集約して、何事も前向きに検討していければと思います。
――まずはファンの皆さんが何を求めているのか……ってところからですね。コラボ企画なんかにも期待したいところです。他社さんのIPしかり、スクウェア・エニックス作品しかり、コラボするとおもしろそうな作品はたくさんあるじゃないですか(部屋をぐるりと見回しつつ)。
木村:そうですね。世界観はしっかりと守らなければならないと思っていますが、だからといってコラボを尻込みしすぎるのも違うなとは感じています。
『ヴァルキリーアナトミア』の世界に遊びに来てもらうような感覚で、いろいろ仕掛けていけるものがあれば展開していきたいですね。今、水面下で動いている企画もいくつかありますので、詳細は続報をお待ちください。
――期待しています。では、最後にファンの皆さんに向けてのメッセージをお願いします。
木村:今までの1年間は、バタバタした動きの中、常にプレイヤーの皆さんに支え続けてもらった1年だったと思っています。なのでここからは、支えていただいたプレイヤーの皆さんに恩返しをしていけるよう、ますます楽しんでもらえるコンテンツにしていきたいと考えています。
末永く愛していただける作品に出来るようがんばりますので、引き続き応援よろしくお願いいたします。
――ありがとうございます。藤沢さんからも、ひと言お願いします。
藤沢:はい。僕自身もゲーム世代なので、昔遊んでおもしろかったゲームの話は今でも酒の肴として話したりします。いいゲームって何年経っても色褪せないんですよね。
『ヴァルキリーアナトミア』も、今後何年経っても語りついでもらえるようなシナリオにしていきたいと思っています。ぜひご期待いただければと思います!
――期待しています! 本日はどうもありがとうございました!!
(C) 2016, 2017 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
データ