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2017年5月2日(火)

【電撃PS】インディーの祭典“東京サンドボックス”主催者に直撃! ゲームファンや開発者、投資家も注目

文:電撃PlayStation

 5月10日から14日までの5日間、UDX アキバ・スクエアにて行われるインディーゲームの祭典“東京サンドボックス”。単なるゲームショウではなく、ゲーム開発者と投資家、パブリッシャーなどを結びつけるという目的もあるイベントとして注目されている。

『東京サンドボックス』

 “東京サンドボックス”は、開発者や投資家向けのセッションが組まれる“PUSH(プッシュ)”と、インディーゲーム開発者が自慢の作品を展示し、来場者が遊ぶことができる“東京インディーフェス”、世界中のVRゲームの注目作を体験できる“VRラウンジ”、学生によってデザインされた創造性豊かなアーケードゲームを楽しめる“CODING FOR LIFE(コーディング フォー ライフ)”によって構成されている。

『東京サンドボックス』

 このイベントを主催するケヴィン・リム氏に、それぞれのイベントの概要とその狙いを電撃PlayStation編集部が聞いた。

『東京サンドボックス』
▲Kulabo CEO ケヴィン・リム氏

凝縮された作りをすることで、目的がブレずに集中できるイベントに

――“東京サンドボックス”と“東京インディーフェス”。一見すると、2種類のイベントがあるように見えてしまうのですが、イベント名を分けたのはなぜでしょう?

ケヴィン・リム氏(以下、敬称略):体制をわかりやすくするためですね。東京サンドボックスは、“PUSH”“東京インディーフェス”“VRラウンジ”“CODING FOR LIFE”という4つのイベントの集まりです。

 東京サンドボックスはユーザー向けだけでなく、開発者や投資家など、幅広い層に向けたイベントを提供できるような場にしたいと思っています。東京インディーフェスはもっとゲームショウ的なイメージですね。

――東京サンドボックス、東京インディーフェスのイベントとしての狙いをそれぞれ教えてください。

ケヴィン:東京サンドボックスというのはイベント全体を指すタイトルであって、東京インディーフェスはその一部です。2015年は東京インディーフェスだけ開催していたんですけどね。最初から多くの要素を盛り込むと、参加者が戸惑うかなと思い、ちょっと控えめにしていました。

 今回、東京インディーフェス自体は単純なゲームショウとして、開発者がゲームを持ち寄って、来場者がプレイできるという、わかりやすい形になっています。一方、東京サンドボックスは、日本の開発者向けにアイディアやスキルを教えるような、日本のメインイベントとして成長させたいイベントです。ゲーム業界へのサポートシステムを作りたくて、投資や開発の手伝いなどを提供したいと思っています。

――東京インディーフェスが2016年に開かれなかったのはなぜですか?

ケヴィン:私たちのミスですね(笑)。グローバルなイベントにしようと思っていたのですが、チームが小さすぎて手が回らなかったんです。その反省を生かして、これからは毎年開催しようと思っています。

――東京サンドボックスでインディー開発者から期待されているのは、リリース文にあった“国内外のゲームビジネス関係者を一堂に会する機会を設け、開発者とそのタイトルに注目する投資家、ならびに大手ゲームパブリッシャーとのマッチング”だと思うのですが、これは具体的にどのように実施されるのでしょうか?

ケヴィン:東京サンドボックスでは、開発者の方がどうやってビジネスの方と接触するか、コミュニケーションをとるか、それを提供しようと思っています。日本の開発者は、それが個人であれ企業であれ、その方法があまりうまくはない印象です。

 東京サンドボックスに招待された投資家はみなさんゲームへの投資の経験があり、ゲームをプレイされています。そのため、すごく接触しやすい環境を整えられたと思いますので、第一歩目として東京サンドボックスを活用してもらえればと。

――PUSHは講演がメインですが、会場には投資家と開発者が話をできるようなスペースが用意されているのでしょうか?

ケヴィン:もちろんです。ミーティングエリアを設置していて、イベントとして投資家とのネットワーキングイベントも実施しています。そこでは開発者と投資家が名刺交換を行ったり、ミーティングの予約を入れたりすることが可能です。

――イベントには、日本のインディー開発者が作品を大勢の人にアピールする場はあるのでしょうか?

ケヴィン:東京サンドボックスには、多くの外国のフォロワーがいますので、ゲームを出展するだけでも多くの人にアピールできるかなと思います。そのうえで、投資家にもアピールするには、イベントで積極的に別の開発者や投資家たちと話をして、交流を深めることだと思います。

――では成功を求めるのであれば、積極的に話をしたほうがいいということですね。

ケヴィン:そうですね。今回来ている有名な開発者や投資家は、かつてインディーズの開発者だったり、開発に関わっていたりする人も多く、話題としてもお話しやすいと思います。ちなみに、投資家の人やVIP、パブリッシャーの人たちは、パスの色でわかるようになっているので、探すのはそんなに難しくないでしょう。

――招待した投資家の方のほかに、チケットを購入して来場する方もいらっしゃるのでしょうか?

ケヴィン:まず招待客ですが、そんなに多くの方は招待していません。東京サンドボックスでは、ゲーム投資に経験がある、ゲームが好きな投資家だけを招待しようと思っていたので、意図的に少し絞っているんです。開発者が投資家とどう接すればいいかとか、最初は慣れていないでしょうから、最初からいろいろ押し込むとかえって混乱してしまうのではないかなと思いまして。徐々に開発者側がどう接すればいいかをわかってきたら、増やすこともあるでしょう。

 私は多くの日本の開発者に会いましたが、投資が必要なのに、投資が必要であると認めない……自分ですべてできると思っている開発者もいます。また、もう1つのタイプとして、日本の開発者は謙遜する人が多いんです。「何ができる?」と聞かれたら、自分ができる50%くらいの能力しか説明しないタイプの人ですね。でも外国では、自分の能力の150%くらいのことを言う人たちが多いので、日本の開発者の人たちも、もっと自分の力をアピールしてもいいと思います。

――ちなみにその投資家の方々は、日本のほかアジアだったり、北米、ヨーロッパの人もいらっしゃるのですか?

ケヴィン:はい。さまざまな国の方がいらっしゃいます。たくさんの投資家やパブリッシャーが、新しいIPを買いたがっていますよ。ただ大手のパブリッシャーは、日本のインディー開発者側から怖がられてる印象がありますね。

 日本ではインディーズ=同人というような、すごく小さい作品のイメージがあるからビックリしてしまうのだと思います。ですが、我々の捉えているインディーというのは個人制作のものだけではなく、中小規模の会社のものを含めて考えています。

――“VRラウンジ”や“CODING FOR LIFE”などに入るにはどのチケットが必要なのでしょうか?

ケヴィン:一般来場者の方が入れるのは日曜日だけになりますが、東京サンドボックスのチケットがあればどれでも入場できます。

――“CODING FOR LIFE”はなかなか意義のあるイベントだと思うのですが、いったいどんなことを狙って開催したのでしょうか?

ケヴィン:いまだゲームは、“遊び”であるといったイメージが根強いですよね。ですが、実際にはゲームを通して重要なことを学ぶことも可能です。ARやVRといった技術もゲームから始まりました。それらをどうやって使うかといったテクニックを勉強できる場を提供することが、勉強している人たちにとって役立つと思いますし。このイベントの目的は、どうやってゲームを勉強に役立てられるか、ということですね。

――東京インディーフェスは、ビジネスデーと一般日が各1日しかないのはゲームイベントとしては短いと思うのですが、なぜこのスケジュールにしたのでしょうか?

ケヴィン:本当は合わせて3日間くらい欲しかったです。メディアの日で1日、一般の日で2日くらい。しかし出展者側の声を聞くと、メディアの日、一般の日、それぞれ全力投球できるような濃縮された1日が欲しいという声が多かったので、今回のような形になっています。

 東京サンドボックスでは、各日程にテーマを集中させました。今日は投資の日、今日は交流の日、というように、やることをキッパリ分けたんです。そういう凝縮された作りをすることで、目的がブレずに集中できるようになったと思います。

――お話を聞いてようやくイベントの趣旨や全体像が見えました。学生に向けてゲームの啓蒙をしつつ、デベロッパーには投資のマッチングをしたり、一般の人にはゲームのよさを伝える。インディーシーン全体を支えたいという意思を感じます。

ケヴィン:まさにその通りで、ゲーム業界全体をサポートしたいのです。ゲーム業界は大きいので、すべてをカバーするのは難しいですが、こういうサポートを受けられるイベントがあるんだということに気づいてほしいですね。

――ちなみに、ケヴィンさんが注目されているタイトルなどはありますか?

ケヴィン:PS VRの『GNOG(ノッグ)』というタイトルに注目しています。音楽も素晴らしいですね。イベントの1週間前に発売(海外)される予定ですので、イベントでもたくさんの方にプレイしてもらえるのではないでしょうか。

――VRラウンジで使用しているVR機器はなんでしょうか?

ケヴィン:ハイエンドのVR機器はほぼ揃っていると思いますが、PS VRが少し多いでしょうか。なるべく多くの台数をそろえるようにはしていますが、全体的にVRは人気で品薄状態なので、万が一お待たせしてしまったらすいません。

――ケヴィンさんは、現在の日本のインディー環境をどのように捉えていますか?

ケヴィン:日本のインディーはビジネスに興味ない、消極的だという印象があります。クリエイティブなすばらしいアイディアなどを生み出すものの、うまくゲームがユーザーのもとへ届いていない。ビジネスに興味がなく、ただ好きで作っているだけというならいいのですが、もしビジネスで成功したいのにやり方がわからないというのであれば、まずユーザーが何を望んでいるのか、それを知らなければならないと思います。

 例えば昔アーケードゲームが流行った時代には、ゲーム会社の開発者が仕事終わりにゲームセンターに寄って、ユーザーの遊んでいるものをリサーチするという話もありました。ビジネスとして成功させたいなら、重要なのは自分でちゃんとその事実と向かい合うこと。自分から動かないと解決しない問題ですから。

――開発者は、ゲームイベントで自分のタイトルを出展したとき、ユーザーがどう遊んでいるかが気になるという話を聞きます。今は発表の場でいえばSteam Greenlightや、Youtubeなどがあるものの、自分のゲームがどう見られているかを知るという点に関しては、具体的な方法はわからないのかもしれません。

ケヴィン:自分の作品の評価を聞きたいときに注意しなければいけないのですが、自分の望む声だけを聞いてしまうというのは避けねばなりません。海外では“エコーチェンバー”という言葉で言われるもので、自分の言いたいこと、聞きたいことだけが反響して返ってくる、みたいな意味合いの言葉です。

――それを含め、日本のインディーデベロッパーは、自分のゲームをどう宣伝したらいいのかわからないという状況なのかもしれませんね。

ケヴィン:宣伝方法については、私は積極的には話さないようにしています(笑)。日本の開発者は、もっと宣伝方法を考えなければならないにもかかわらず、あまり積極的に解決方法を探そうとはしていないように感じるのです。ビジネスとして成り立たせるには、やはりその問題としっかり向き合うことが重要です。自分から立ち上がらないと解決しない問題なので、それだけは個々で解決すべきだと思っています。

電撃PS Vol.638では“TOKYO INDIE FEST 2017”と“A 5th Of BitSummit”を総力特集

 5月11日(木)発売の電撃PS Vol.638では、5月に開催される2大インディーゲームイベント“TOKYO INDIE FEST 2017”と“A 5th Of BitSummit”を総力特集! 編集部注目のインディータイトルや出展者インタビューなど盛りだくさんの内容になっているので、インディーゲームファンは要チェック!

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.638』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2017年5月11日
■定価:638円+税
 
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