2017年6月17日(土)
ガンホー・オンライン・エンターテイメントのiOS/Android用アプリ『ディバインゲート』のストーリーを振り返る特別企画をお届けします。
第七章“扉の先へ(2017年4月~)”では、アカネたち(統合世界)とアーサーたち(神界)の戦いを主軸にした最終決戦が展開します。
▼INDEX |
[9]魔界に降り立つリリン |
[10]イッテツ&リイナ対ヨハン |
[11]ニコラスの真意 |
[12]ダンテ&フォルテ対扉の君。そしてグリュプスとグライフの死闘 |
[13]ヒスイ対シオン |
[設定画紹介コーナー]ワトソン編 |
[設定画紹介コーナー]ヒナギク編 |
[設定画紹介コーナー]天狂獣グリュプス編 |
魔界に降り立ったリリンを止めるべく、戦いを挑もうとしたヒカリとユカリ。
だが、「あなたたちは力を温存してなさい」と、魔参謀長ファティマと精参謀長ヴィヴィアンが戦いを引き受けることに。
●“♯01 扉の先へ:始祖”より
魔界に降り立った始祖リリン。さぁ、終わりを始めましょう。だが、そんなリリンを止めるべく、魔界に降り立ったヒカリとユカリ。私たちが生きるイマの世界を、壊させたりしない。こうして、魔界でも世界の終わりをかけた戦いが始まるのだった。
●“♯02 扉の先へ:始祖”より
リリンに従う創魔魂と創精魂。その二匹が放つ無数の攻撃。そして、受け止めたのはヒカリでもユカリでもなく、魔参謀長ファティマだった。あなたたちは力を温存してなさい。ここは私たちに任せてもらえるかしら。あなたも――。
●“♯03 扉の先へ:始祖”より
――そう思うわよね、ヴィヴィアン。ファティマはひとりじゃなかった。そして、ふたりでもなかった。精参謀長ヴィヴィアンは宣言する。天界も魔界も関係ない。私たちの王が繋いだ手のために、すべてをかけて戦うと。ここにひとつになると誓う。
「天界も魔界も関係ない。私たちの王が繋いだ手のために、すべてをかけて戦うと。ここにひとつになると誓う」というヴィヴィアンの宣言に、無数の声が呼応する。
魔界の将であるヒメヅルと肩を並べて、天界の将であるサニィもともに戦う。その他にもアカズキンとヘレネ、ムラサメとレイニィなど、魔界と天界の軍勢がリリンの創魔魂と創精魂に立ち向かう。
聖戦では多くの涙が流れたが、同時の多くの絆も生まれていたのだった。
●“♯04 扉の先へ:始祖”より
応ッ!無数の声。そして、我先に飛び出したヒメヅル。私だって、負けないよ。ヒメヅルを追い越したのは真晴隊を引き連れたサニィ。ふたりは舞うかのごとく、創魔魂への活路を開く。聖戦で流れた沢山の涙。だが、沢山の絆も生まれていたのだった。
●“♯05 扉の先へ:始祖”より
それじゃあ、こっちは私たちかな。フードを深くかぶりなおしたアカズキン。たち、って、いつも勝手ね。そう言いながら、前へ出たヘレネ。あなたとは、言ってないけど? 生まれたのは小さな日常の笑い。こうして、創精魂への活路は生まれた。
●“♯06 扉の先へ:始祖”より
私たちは守りを固めさせてもらう。創魔魂から生まれる沢山の攻撃を弾いてみせたのはムラサメと真蒼隊の隊員たち。そして、こぼれた攻撃を防いだのはレイニィと真雨隊の隊員たち。へぇ、いい顔になったじゃない。ここにもまた、絆は生まれていた。
●“♯07 扉の先へ:始祖”より
私たちの女王に、指一本たりとも触れさせやしない。アリスの掛け声と共に、不思議の国の軍勢は盾を構えた。私たちはイマを生きて、そして次への道を作る。アリスと並び、羽衣で攻撃を受け流したオノノコマチ。私たちは死ぬわけにはいかない。
●“♯08 扉の先へ:始祖”より
あぁ、いつになく風が泣いている。オレも同感だ、ベイベ。意味不明な隊長ふたり、戸惑う隊員たち。だが、小さな風はやがて大きな風へ。俺たちが、この戦いに風を巻き起こす。オレたちこそ風になるぜ、ベイベ。さぁ、全力で迎撃だ。俺たちの風よ。
●“♯09 扉の先へ:始祖”より
いいのよ、あなたは寝ていても。イバラへと声をかけたヨウキヒ。ううん、大丈夫だよ。この戦いが終わったら、いっぱい眠らせてもらうから。それじゃあ、一緒に行きましょう。私たちは、私たちの戦い方をするまで。オヤスミを、あなたにあげる。
●“♯10 扉の先へ:始祖”より
ライキリは刀を引き抜き、目前の創魔魂へ剣先を向けた。みんな、僕についてこい。各々に武器を構える真閃隊。そして、構えたのは真眩隊の隊員も同じだった。どうやら俺の部下たちもオマエを認めたみたいだな。隣には嬉しそうなシャイニィがいた。
●“♯11 扉の先へ:始祖”より
どうか、勝利の祝福を私たちに。胸元で結ばれた両手、願いを込めたカタリナ。その願い、私たちも混ぜてくれるかしら。カタリナの隣、笑顔のシンデレラ。えぇ、もちろんですとも。だって私たちは、すでに友ですから。それじゃあ、暴れましょう!
●“♯12 扉の先へ:始祖”より
言葉ひとつ交わさないムラマサとクラウディ。だが、次第に漏れ出した笑い声。ふふふ。フフフ。ふふふ。フフフ。そして、その笑い声を合図に飛び出したふたり。続く隊員たち。言葉なくとも、ふたりの想いは同じだった。私たちがブっ殺死てあげる。
●“♯13 扉の先へ:始祖”より
あなたの友も、帰ってくるといいわね。クレオパトラへ語りかけたカグヤ。大丈夫、きっとアイツなら上手くやってるはず。だから、私も頑張らなくちゃ。そしてふたりは隊員と共に前線へ。私たちの、私たちが生きるイマの為の戦いを始めましょう。
●“♯14 扉の先へ:始祖”より
よく逃げ出さなかったじゃねぇか。ナキリが語りかけた先はスノウィ。まっ、これも仕事だからね。目を合わせようともしないスノウィ。んじゃ、足引っ張るんじゃねぇぞ。そっちこそ。不器用なふたり。だが、それでもふたりにも絆は芽生えていた。
「エリザベート、ただいま戻りました。私も戦わせてください。彼のため、彼らのために」。アーサー奪還のために王都で向かっており、聖戦の際は戦う機会がなかったエリザベートも、戦線に復帰してシラユキとともに戦うことに。
●“♯15 扉の先へ:始祖”より
あら、遅かったじゃない。シラユキが語りかけた先にいたひとりの美女。エリザベート、ただいま戻りました。私も戦わせてください。彼のため、彼らのために。うん、行ってらっしゃい。そんな彼女の背中を押したのはヴィヴィアンだった。
「あぁ、無力な子供たちよ」と嘆くリリン。天界と魔界の将と兵の力をもってしても、リリンの創魔魂と創精魂の力を抑えるので精一杯だった。
そんな中、ヴィヴィアンとファティマはリリン本体へとたどりつき、戦いを挑む。
●“♯16 扉の先へ:始祖”より
リリンへ立ち向かう天界、魔界の将と兵。だが、その全勢力をもってしても創魔魂と創精魂の力を抑えるので精一杯だった。あぁ、無力な子供たちよ。嘆くリリン。そんなリリンへ向けられたふたつの攻撃。暇そうなら、私たちの相手してくれるかしら。
●“♯17 扉の先へ:始祖”より
ふたつの攻撃の正体、それはファティマとヴィヴィアンによるものだった。そして、その攻撃を動くことなくかき消してみせたリリン。愚かな子供たちよ。なぜ、私に抗う。待っているのは終わりだけだというのに。ただ安らかに、眠ればよいものを。
●“♯18 扉の先へ:始祖”より
確かに親は子に試練を与える。そう語りかけながら、攻撃の手を休めることのないヴィヴィアン。だけど、そこには必ず愛情がある。手にしたアロンダイト・シン。たとえ、血が繋がっていなくても。それは、ヴィヴィアンだからこそ伝える想いだった。
●“♯19 扉の先へ:始祖”より
だが、そんなヴィヴィアンへ向けられたリリンの攻撃。すかさず止めに入ったファティマ。だが、弾かれてしまったファティマの杖。それじゃ、私も使おうかしら。取り出したのはアポカリプス・レム。私のすべては、この杖を手にしたときに決まった。
●“♯20 扉の先へ:始祖”より
かつての聖戦、先の聖戦、そのふたつには意味があった。すべてを経たからこそ、イマのこの戦いが存在している。ふたり並んだファティマとヴィヴィアン。敵対していたはずのふたりは、かの王たちのように、互いに手を取り合っていたのだった。
リリンとの戦いは終わらず、仲間たちが倒れていく姿をただ見守ることしかできないヒカリとユカリ。
「あの子たちに、格好悪い姿は見せられないよ」とヴィヴィアンとファティマは活気づくが、2人の体力は残りわずか。それでもなお、リリンの体に傷ひとつつけることはできなかった。
●“♯21 扉の先へ:始祖”より
終わらない争い、倒れ行く体。ただその様子を見守ることしか出来ないヒカリとユカリ。あの子たちに、格好悪い姿は見せられないよ。活気付くヴィヴィアンとファティマ。だが、それでもなお、リリンの体に傷ひとつつけることは出来ないのだった。
●“♯22 扉の先へ:始祖”より
ねぇ、ちょっと息があがってるんじゃないの。そう挑発したのはファティマ。そっちこそ、疲れが見えているわよ。そう返したヴィヴィアン。それはふたりが交わした冗談。そして真実。そう、ふたりの体力はもう残り僅かだった。もう、キメないと。
●“♯23 扉の先へ:始祖”より
だが、そんな想いだけでどうにかなる相手ではなかった。知っているよ、私たちはあなたに比べたら無力かもしれない。私も知ってるよ、そんなあなたに対抗することが出来るかもしれない力を。いや、かならず対抗出来ると信じてる。そう、彼らなら。
それでもあきらめずに戦うヴィヴィアンとファティマは、援軍であるデオンが到着したことを目にして、覚悟を決める。デオンの到着は、王であるオベロンとヴラドの到着を意味していた。
「それじゃあ、私たちの最後にしましょう」「うん、あとは彼らを信じ抜きましょう」。ファティマの杖とヴィヴィアンの輪刃に込められた想いは、リリンの頬をかすめて血を流させる。
●“♯24 扉の先へ:始祖”より
そして、ヒカリとユカリのすぐ側を走り抜けた人影。その正体はデオンだった。お待たせしました。ふふ、やっと来てくれたのね。顔を合わせ、笑顔を浮かべたふたり。それじゃあ、私たちの最後にしましょう。うん、あとは彼らを信じ抜きましょう。
「血を見たのは幾億年ぶりだろうか。褒美に、私から終をくれてやろう」。リリンの攻撃はファティマとヴィヴィアンを貫き、ヒカリとユカリは臨戦態勢をとる。
●“♯25 扉の先へ:始祖”より
ファティマ、ヴィヴィアン、杖と輪刃に込めた想い。どうか、届いて。放たれた力がかすめたリリンの頬。血を見たのは幾億年ぶりだろうか。褒美に、私から終をくれてやろう。貫かれたふたりの体。かけよるデオン。あなたたちは立派に戦いました。
「うちの女王様たちに、手出ししないでもらえねぇか」。そこに姿を見せたのはヴラド。
「あぁ、俺の娘たちには指一本触れさせやしない」。そしてオベロンもまた、戦いの場に到着していた。
●“♯26 扉の先へ:始祖”より
相手を失ったリリンの見つめた先にいたのはヒカリとユカリ。ふたりはすかさず臨戦態勢へ。だが、そんなふたりの隣、リリンへと伸びたふたつの影。うちの女王様たちに、手出ししないでもらえねぇか。あぁ、俺の娘たちには指一本触れさせやしない。
ユカリは、かりそめの命をもって生きているヴラドの体を案じるが、ヴラドは「みんなが血を流してんのに、戦わない王がどこにいるんだ」と答え、戦うのに必要なのは体ではなく“覚悟”だと続ける。
●“♯27 扉の先へ:始祖”より
一つ目の影、ヴラド。あなたはもう、まともに戦える体じゃない。止めようとするユカリ。みんなが血を流してんのに、戦わない王がどこにいるんだ。ヴラドはそう答えた。それに、戦うのに必要なのは体じゃねぇ、必要なのは覚悟だ。……なぁ、親友。
一方、ヒカリもまた、オベロンの身を案じていた。創醒の聖者の血を引き、綴られた存在であるオベロンの命は、創醒の聖者に握られているのも同然だった。
そしてヒカリは、綴られた存在であるオベロンが死ぬと、そこから派生した彼の子ども(アーサー、モルガン、ヒカリ)の存在が消えてしまうことを危惧していた。
だがオベロンは、「約束するよ、俺は死んだりしない」と力強く答える。
しかし、ヒカリたちが去った後にヴラドが「嘘が下手だな、オマエは」と言ったように、オベロンはすでに覚悟を決めていた。
「大丈夫さ、俺の呪いはもう、彼女らに―(受け継がれた)」という言葉が示すように、オベロンの呪い(創醒の聖者の禁忌の血)は彼女ら(精霊王であるイフリートたち)に託していたのだった。
そのため、オベロンが死のうとも、ヒカリたちの存在が消えることはなくなっていた。
●“♯28 扉の先へ:始祖”より
そう、だから俺たちはここにいる。二つ目の影、オベロン。ヒカリは知っていた。もし、綴られしオベロンの命が果てたとき、なにが起こるかを。駄目だよ、戦ったりしたら。そんなヒカリへオベロンが返した言葉。約束するよ、俺は死んだりしない。
「だからオレたちを信じて、オマエらは先へ進め」。ヴラドの言葉を受け、ヒカリとユカリはリリンをまかせて、先へと進む。
●“♯29 扉の先へ:始祖”より
だからオレたちを信じて、オマエらは先へ進め。促したヴラド。うなずくオベロン。勝手に死んだら許さないわ。約束破ったら許さないよ。そして、ふたりの女王はその場を後にした。嘘が下手だな、オマエは。大丈夫さ、俺の呪いはもう、彼女らに―。
「ねぇー、僕のこと忘れてない?」。リリンの隣に現れたのは、水聖人ヨハン。
一方、オベロンたちにも増援が現れる。それは、死刑執行学園の学園長リイナと、鬼精将であるイッテツ。
オベロンたちはヨハンをリイナたちにまかせ、始祖リリンとの戦いに臨むのだった。
●“♯30 扉の先へ:始祖”より
ねぇー、僕のこと忘れてない? リリンの隣、現れた水聖人ヨハン。なんか厄介なのが出てきたな。ヴラドがついた溜息。ってことで、アイツはオマエらに任せるか。問いかけた先の更なるふたつの人影。あぁ、任せとけ。ようやく、ワシの出番か。
いよいよ始まった、2人の王とリリンとの戦い。決定者である聖者の血が流れるオベロンの放つ攻撃は、いとも簡単にリリンの肌を切り裂く。
それを見たリリンは先にヴラドを片付けようとするが、ヴラドもまた、聖戦の際に世界の決定者であるヴェルンの血を得ていた。
●“♯41 扉の先へ:始祖”より
遂にリリンと対峙したオベロンとヴラド。どうしても、お前たちは私に抗うというのだな。ふたりは頷きもせず、リリンを見つめていた。そして、ふたりはその先のもうひとつの場所を見つめていた。そう、自分たちが歩みだした道の先の死に場所を。
●“♯42 扉の先へ:始祖”より
どうやら、オレたちの夢は果たせそうにないな。そんな言葉を口にしたのはヴラドだった。だけど、大丈夫、きっと俺たちの道は続いていく。そんな言葉を口にしたのはオベロンだった。あとのことは、オレらの可愛い女王様たちに任せるとするか。
●“♯43 扉の先へ:始祖”より
オベロンが放つ攻撃がいとも簡単に切り裂いたリリンの柔肌。そうか、お前には聖者の血が流れていたのだったな。顔つきの変わるリリン。だとしたら、まずは手始めに貴様から殺してみせよう。そして、リリンの冷たい瞳はヴラドを捉えたのだった。
●“♯44 扉の先へ:始祖”より
リリンが放つ衝撃、あえてかわすことなく受け止めてみせたヴラド。ほう、まさか受け止めるとはな。動揺をみせることのないリリン。あぁ、それと受け止めるだけじゃないぜ。そしてヴラドが解放した左腕に宿る竜の力。これでも受けてみろって。
●“♯45 扉の先へ:始祖”より
そんなヴラドが放った攻撃も、リリンの柔肌に傷跡を残した。僅かに眉間に皺を寄せたリリン。そうか、そういうことだったのか。そう、ヴラドにもオベロン同様に決定者の血が、かつての聖戦時に与えられた決定者ヴェルンの血が流れていたのだった。
「少しは褒めてやろう。それでこそ、私の息子だと」と、自分の優位を確信するリリン。オベロンたちの攻撃はリリンに届いたものの、それが致命傷になることはなく、逆にオベロンとヴラドの体力は確実に削られていった。
●“♯46 扉の先へ:始祖”より
お前たちに決定者の血が流れていようと、私に歯向かえるわけがなかろう。そう、リリンへ攻撃が通りはしても、それが致命傷になることはなかった。少しずつ、削られていくオベロンとヴラドの体力。少しは褒めてやろう。それでこそ、私の息子だと。
何か言い残すことはないかとうヴラドの問いに、オベロンは手紙にしてきたと返す。現代の聖戦でのオベロンとヴラドの戦いではヴラドが手紙を用意していたが、ここではその逆の形となった。
●“♯47 扉の先へ:始祖”より
なぁ、なんか言い残すことはあるか。ヴラドはオベロンに問う。あぁ、いっぱいあるよ。だから、手紙にしてきたんだ。なら、丁度いい。そして、ヴラドはオベロンから手紙を受け取ると地上のデオンへと投げ飛ばした。なぁ、アイツに届けてくれるか。
オベロンが書いた残される者たちへの手紙は、地上のデオンに託された。オベロンは「あの人(ヒスイ)、怒るかな」と少し不安を感じつつ、「最後にもう一回、お酒でも飲みたかった」とこぼすのだった。
●“♯48 扉の先へ:始祖”より
あの人、怒るかな。オベロンは少しだけ不安そうだった。あぁ、怒ると思うぜ。不安なのはヴラドも同じだった。最後にもう一回、お酒でも飲みたかった。あぁ、オレも同じだ。ふたりだけに通じる会話。蘇る記憶。笑い合う魔王、妖精王、そして竜神。
死力を尽くそうと力を解放するオベロンとヴラドだったが、オベロンの身動きが封じられてしまう。それは、オベロンを救おうとするヴラドの力によるものだった。
「どうせこの体はもう持たない」。自分1人でリリンと刺し違えようとするヴラド。ヴラドはオベロンに「ちゃんと息子(アーサー)のこと、抱きしめてやれよ」と言い残す。
●“♯49 扉の先へ:始祖”より
オベロンが解放した神の力。ヴラドが解放した竜の力。オレさ、オマエにもうひとつだけ叶えて欲しい夢があるんだ。そして、ヴラドは竜の力でオベロンの身動きを封じた。どうして!? 動けないオベロン。ちゃんと息子のこと、抱きしめてやれよ。
「ありがとな、親友。オレはオマエがいたから最高の夢がみれた」。こうしてリリンとの戦いは、ヴラドの覚悟と引き換えに終焉を迎えたかに見えた。この戦いの行方は、のちに明らかとなる。
●“♯50 扉の先へ:始祖”より
どうせこの体はもう持たない。そして、ひとりリリンの許へと飛び立つヴラド。行かないでくれ!届かない声。ありがとな、親友。オレはオマエがいたから最高の夢がみれた。こうして始祖との戦いは、ひとつの覚悟と引き換えに終焉を迎えたのだった。
リリンとの戦いをオベロンとヴラドにまかせ、水聖人ヨハンと対峙するリイナとイッテツ。
「まさか、先生と戦うなんて怖いなぁ」。かつての教師であるリイナを前にしても、ヨハンはいつも通りのテンションだった。
●“♯30 扉の先へ:始祖”より
ねぇー、僕のこと忘れてない? リリンの隣、現れた水聖人ヨハン。なんか厄介なのが出てきたな。ヴラドがついた溜息。ってことで、アイツはオマエらに任せるか。問いかけた先の更なるふたつの人影。あぁ、任せとけ。ようやく、ワシの出番か。
●“♯31 扉の先へ:始祖”より
ヨハンと対峙したふたつの人影。どうも、体がなまって仕方がないんだ。やっぱり俺は、教えるよりも戦場が相応しいみたいでさ。ヨハンへ銃口を突きつけたリイナ。まさか、先生と戦うなんて怖いなぁ。だが、ヨハンはいつも通りのテンションだった。
●“♯32 扉の先へ:始祖”より
なんじゃ、コイツは。もうひとつの人影、それはイッテツだった。どうだ、感覚は取り戻したか。知らん。そんなリイナとイッテツ。ふたりは、聖人を相手に怯もうともしなかった。ワシはワシの生活を乱されたくないんじゃ。本気だすのは今回だけだ。
ちなみに、この戦いを前にイッテツは滝に打たれて修行を行い、感を取り戻していた。
リイナはそんなイッテツを迎えに行き、誰にも知られることのない激しい戦いを繰り広げた。
その戦いの果てにイッテツは真鬼精将となり、リイナは真怪魔将となったのだった。
●“真鬼精将イッテツ”のプロフィール
よぉ、迎えにきたぜ。それは天界の外れの大きな滝。この時代に滝打ちなんて、相変わらずだな。そう、目を閉じ、ひとり滝に打たれていたイッテツ。お主が来たってことは、戦いはすぐそこなんじゃな。そして、イッテツは立ち上がる。勘違いすなよ、ワシはワシの平穏のために戦う。それ以上でも、それ以下でもない。
●“真怪魔将リイナ”のプロフィール
滝に打たれていた男を迎えに来ていたリィナ。理由なんか、別になんだっていいさ。俺たちは、俺たちなりにやろうさ。かつての聖戦、先の聖戦、生まれる絆。どれだけ感を取り戻したか、試させてもらおうか。なめんな、ボケ。誰にも知れることなく終わった戦い。そして戦いの果てに、真鬼精将と真怪魔将は生まれた。
水学徒ワトソンからフラスコを受け取ったヨハンは、そこに入っていた超兆丁跳殺戮型ウィルス・カタストロフィXXXをばらまく。
魔界は毒の煙に包まれるが、リイナはその行動を読んでいた。かつて、聖戦の裏で薬学部特別顧問スパジローに頼んでいた解毒剤が役立つ時が来たのだった。
●“♯33 扉の先へ:始祖”より
凄いよ、なんだかワクワクするよ。いつにもなく楽しそうな笑顔を浮かべたヨハン。それじゃ、ワトソン君、アレを頂戴。ハーイ、もちろんです。そして渡された謎のフラスコ。それじゃいっくよ、超兆丁跳殺戮型ウィルス・カタストロフィXXXだぁ!
●“♯34 扉の先へ:始祖”より
ヨハンがばら撒いた殺戮ウィルス。すごいよね、これ、ほらほら、みんな倒れていくよ。そして魔界は毒の煙に包まれた。よかった、オマエの思考は変わってなかったみたいだな。そう笑ってみせたリイナ。スパジロー、みんなの救助は任せたからな。
「っつか、注射は嫌じゃ」と解毒剤を打つフリだけしていたイッテツに、リイナは無理矢理注射を打つ。
「いつか仕返しするからな!」と叫びつつ、ヨハンへと迫るイッテツだったが、そこにヨハンが生み出した無数の軍勢(ヨハン軍団)が立ちはだかる。
●“♯35 扉の先へ:始祖”より
そしてリイナとイッテツは、手にしていた注射を静脈へと打ち込む。これで俺たちはいつも通りに戦える。そう、リイナはこうなることを予期していた。っつか、注射は嫌じゃ。イッテツは打つフリをしていた。オマエってやつは死にたいのか馬鹿野郎。
●“♯36 扉の先へ:始祖”より
リイナに無理矢理注射を打ち込まれたイッテツ。いつか仕返しするからな! ふたりはヨハンへ一直線に走り出す。肉弾戦とか好きじゃないんだ。僕の代わりに戦ってきてよ。ほら、ヨハン軍団のみんな! 気がつけば、無数の軍勢が生まれていた。
倒しても倒しても減ることがないヨハン軍団を相手に苦戦するリイナとイッテツ。その危機を救ったのは、イッテツの弟子である少女のヒナギクだった。
ヒナギクは滝で修行中のイッテツのすべての真似をして修行を行い、それを見たイッテツもあえて言葉はかけず、鍛錬メニューのメモのみを残した。そんな師弟関係の末、ヒナギクは鬼精刀ヒナギクへと進化していた。
●“♯37 扉の先へ:始祖”より
こんなの、聞いてないぞ。無数の軍勢を相手に体力を消耗するイッテツ。いいから、いまは数を減らすんだ。対抗するリイナ。だが、このふたりをしても、減ることのない軍勢。奪われたイッテツの身動き。そして、その危機を救ったのは少女だった。
●“♯38 扉の先へ:始祖”より
やっと追いつきました!そう、少女ヒナギクは瞳を輝かせていた。誰だか知らんが、恩に着る。そして、再びイッテツは前線へと。見せてください、師匠の力を。こうして、イッテツとリイナは無数の軍勢を掻き分け、ヨハンの許へ辿り着いたのだった。
●“鬼精刀ヒナギク”のプロフィール
ヒナギクは見つけていた。ひとり、滝に打たれ、そして刀を振り続けていた憧れの存在を。だが、ヒナギクは決して声をかけなかった。その代わり、すべてを真似をし始めた。ある日、ヒナギクのいつもの岩場に置かれていた鍛練メニューの書かれたメモ。ふたりの間に会話はない。だが、そこに師弟関係は生まれていた。
ヒナギクの助力を得てヨハンまでたどりついたリイナとイッテツ。リイナに銃口を突き付けられながらも、ヨハンは楽しそうだった。
●“♯39 扉の先へ:始祖”より
リイナがヨハンへと突きつけた銃口。なにか言い残すことはないか。それでもヨハンは楽しそうだった。僕たちの始祖って、とっても強いんだよ。イッテツが突きつけた剣先。それでもヨハンは楽しそうだった。死後の世界って、どうなってるのかな。
「死後の世界って、どうなってるのかな」。そんなヨハンの言葉は、彼に自分の過去を思い出させた。
ヨハンもまた、ジャンヌと同様に一度死に、聖人として生き返った存在だった。
「聖人って、死んだらどうなるんだろう」。そんな好奇心を抱きつつ、イッテツの刃で首を落とされたヨハンは絶命した。
●“♯40 扉の先へ:始祖”より
そっか、思い出した。僕は一度死んだんだった。それは聖人になる前の話。そして、ヨハンが新たに抱いた好奇心。聖人って、死んだらどうなるんだろう。ドス。転がり落ちた首。水聖人ヨハンもまた、最期のときまで自らの好奇心にだけ貪欲だった。
ジャンヌと共に神界へ通じる塔へと向かっていたアカネたちの前に、無聖人ニコラスが姿を見せる。
●“♯01 扉の先へ:神界へ”より
ジャンヌと共に神界へ通じる塔へと向かっていたアカネ、アオト、ミドリ、ギンジ。遅れて駆けつけたヒカリとユカリ。さらに遅れて駆けつけたのは悲しい知らせ。感情を押し殺したヒカリとユカリ。それでも私たちは、立ち止まるわけにはいかない。
●“♯02 扉の先へ:神界へ”より
そう、アカネたちには悲しむ暇すら与えられなかった。少しでも早く、この戦いを終わらせる。それが6人が抱いた共通のひとつの願い。そして、そんなアカネたちが塔に辿り着いたとき、入口にはひとりの男が待っていたのだった。よぉ、こんにちは。
●“♯03 扉の先へ:神界へ”より
なにしに来たの。眉間に皺を寄せたジャンヌ。そう、待っていた男の正体は六聖人のひとり、ニコラスだった。おいおい、そんなに怖い顔しないでくれよ。おどけてみせるニコラス。オマエたちは、この塔を上るつもりなんだろう。だったら、話は早い。
狂騒獣タマを連れたニコラスは、思い出をたどればアイツ(アーサー)にたどりつけると語る。
そして、塔をのぼりながら、自分の思い出話をアカネたちに聞かせるのだった。
●“♯04 扉の先へ:神界へ”より
歩きながらで構わない、俺の話を聞いてくれないか。そして、ニコラスの隣には一匹の獣がいた。よーし、よし、俺たちをアイツのところへ案内してくれるか。思い出を辿れば、アイツに辿りつける。そう、ニコラスのすぐ隣にいたのはタマだった。
かつてニコラスは妖精王として、天界が生まれた時に世界を治めていた。神の言いなりになることを拒んだニコラスは神への反乱を企てたが、失敗し、命を失った。
その後、聖人として生き返らせられたニコラスは、世界の決定に従い続ける運命を背負わされたのだった。
●“♯05 扉の先へ:神界へ”より
ニコラスを警戒しながらも、タマを先頭に塔を上り始めたアカネたち。語り始めたニコラス。昔々、あるところに妖精の王様がいました。その王様は悪い神様に殺されました。そして、その妖精の王様は聖人として生きる使命を与えられたのでした。
●“♯01 扉の先へ:回想・ニコラス”より
天界が生まれたとき、世界を治めていた妖精王ニコラス。そして、それは神の掌の上の箱庭。だからこそニコラスが企てた神々への反乱。そして、その反乱はニコラスの死をもって終わりを迎えた。だが、君は聖人として生き、世界の決定に従い続けよ。
それ以降、天界には代々、神によって綴られた存在が王に置かれるようになる。オベロンもまた、綴られし王の1人だった。
ニコラスは自分の感情を殺して、何度も世界の崩壊と再生を見届けてきたが、年に一度でいいから世界中のみんなに幸せになってほしいと思うようになる。
その結果、ニコラスは年に一度、世界中の子どもにプレゼントを届けるサンタクローズとなった。
●“♯02 扉の先へ:回想・ニコラス”より
そして、天界には代々綴られし王が置かれるようになった。ニコラスは聖人という生き物として、自分の感情を殺して長き刻を生き続けた。何度も崩壊と再生を見届けてきた。だが、いつかニコラスは思った。年に一度でいい。年に一度でいいから―。
●“♯03 扉の先へ:回想・ニコラス”より
―世界中のみんなに幸せになってもらいたい、と。こうして、ニコラスはサンタクローズの仮面をかぶった。いくつもの世界でサンタクローズの仮面をかぶり続けた。世界中のみんなに幸せを届け続けた。いつか終わる世界でも、幸せになって欲しいと。
やがてニコラスは、純真無垢な子供たちが持つ無限の可能性と、ひとりの男として子供が欲しいという感情を持つ。
ニコラスは1人の女性と出会い、息子(サンタクローズ)と、のちに娘(イヴ)が生まれた。
●“♯04 扉の先へ:回想・ニコラス”より
沢山の子供の寝顔と出会ったニコラス。そして、ある日ニコラスは思い出してしまった。純真無垢な子供たちがもつ無限の可能性と、ひとりの男として子供が欲しいという感情を。やがて出会ったひとりの女。こうして、ニコラスの子供は生まれてきた。
その後、ニコラスは聖人として、禁忌の血を引く子ども(アーサー)の廃棄を命じられた。
その子どもに「なにか最期に欲しいものはあるか」と尋ねてみるものの、答えはない。そもそもその子どもは、なにかを与えられるという喜びを知らず、答えることができなかったのだ。
●“♯05 扉の先へ:回想・ニコラス”より
だが、それでもニコラスは聖人という生き物だった。聖人に告げられた世界の決定。禁忌の血を引く子供を廃棄せよ。伝えられるがまま向かった美宮殿。そこで待っていた女と禁忌の子供。ニコラスは子供へ尋ねた。なにか最期に欲しいものはあるか。
ニコラスは次に、その子どもの母(イグレイン)の部屋へと向かい、「なにかあの子に与えたいものはあるか」と問う。
自分の最期を悟った女性は、涙ながらに「どうか、あの子に最高のクリスマスプレゼントを」と答えた。
その日は12月23日。明日は年に一度のクリスマスイブだった。
●“♯06 扉の先へ:回想・ニコラス”より
だが、子供はなにも答えなかった。答えられなかった。なにかを与えられるという喜びを知らなかったから。だから、ニコラスは尋ねる先を変えた。向かったのはその子供の母親が幽閉されていた間。そして、その日は奇しくも12月23日だった。
●“♯07 扉の先へ:回想・ニコラス”より
現れたニコラス。女が悟ったのは自分の最期。そして、ニコラスは問う。なにかあの子に与えたいものはあるか。そして、女は涙ながらにこう答えた。どうか、あの子に最高のクリスマスプレゼントを。そう、明日は年に一度のクリスマスイブだった。
そして、クリスマスイブ当日となる12月24日。禁忌の子(アーサー)の廃棄を命じられたニコラスは聖夜街の外れに向かい、自分の息子(サンタクローズ)が通るであろう道に置いた。
小説『ディバインゲート アーリーデイズ -あの日の僕ら-』で描かれたアーサーとサンタクローズの仕組まれていた出会いの答えは、ふたり(アーサーの母とサンタクローズの父)からの優しさだった。
●“♯08 扉の先へ:回想・ニコラス”より
訪れたクリスマスイブ。廃棄という任と共に、禁忌の子を預けられたニコラス。向かった先は聖夜街の外れ。これが俺からのプレゼントだ。自分の息子が通るであろう道に置かれた禁忌の子。仕組まれていた出会いの答えは、ふたりからの優しさだった。
●“♯09 扉の先へ:回想・ニコラス”より
必然の出会いを果たした禁忌の子であるアーサーと、ニコラスの息子であるサンタクローズ。そして、サンタクローズがついた小さな嘘。やがて肯定される禁忌の命。ニコラスはただ嬉しかった。聖人でありながら、ふたりの子供の父親になれたことが。
だが、禁忌の血が生きているという密告がなされ、ニコラスには罰が与えられた。それは、二度と子どもたちにあってはならないというものだった。
すべては子どもたちを守るため。ニコラスはすべての事実を抱えて、たったひとりで姿を消した。
●“♯10 扉の先へ:回想・ニコラス”より
だが、幸せはそう長くは続かなかった。禁忌の血が生きているという密告。呼び出されるニコラス。そして、ニコラスへ与えられた罰。それは、二度と子供たちに会ってはならない、というものだった。これも決定か。こうして、ニコラスは姿を消した。
●“♯11 扉の先へ:回想・ニコラス”より
子供たちは知らなかった。なぜニコラスが姿を消したのか。切り取られた家族写真。子供たちは知らなかった。なぜニコラスが決定に従ったのか。すべては子供たちを守るため。そう、ニコラスはすべての事実を抱え、たったひとり姿を消したのだった。
「あぁ、いい大人になれよ」。ニコラスは、使徒ドロッセルが集積した子どもたちの成長の記録を見て、遠くから子どもたちの成長を見守ることだけが楽しみだった。
●“♯12 扉の先へ:回想・ニコラス”より
聖人として生きるニコラスの楽しみはひとつ。使徒ドロッセルが集積した子供たちの成長の記録。抱きしめることも、会うことすらも叶わない子供たちの成長の記録。ただ遠くからその成長を見守ることだけが楽しみだった。あぁ、いい大人になれよ。
のちにアーサーは、世界評議会へと推薦される。ニコラスは「どうして、普通に生かしてやれないんだ」と怒りを覚えるが、世界の決定者たちは「君は父じゃなく聖人だ」と告げる。
そして、黄昏の審判の際にアーサーが聖なる扉の前でエビルアーサーへと堕ち、そんなアーサーを昔からの名前(アルトリウス)で呼び続ける自分の息子(サンタクローズ)を見た時、ニコラスはイマの世界の崩壊を願おうとした。
●“♯13 扉の先へ:回想・ニコラス”より
やがて刻は経ち、ふたりの子供は別々の道を歩き出した。アーサーに届けられた世界評議会への推薦状。どうして、普通に生かしてやれないんだ。怒りを堪えるのに必死なニコラス。だが、そんなニコラスを牽制する決定者たち。君は父じゃなく聖人だ。
●“♯14 扉の先へ:回想・ニコラス”より
やがて、何の因果か、聖なる扉の前で堕ちたアーサー。そんなアーサーを昔からの名前で呼び続けるサンタクローズ。その一部始終を遠く離れた場所から見つめることしか出来なかったニコラス。こんな結末になるくらいだったら。俺はイマの世界を―。
「こんな結末になるくらいだったら。俺はイマの世界を―」。そんなニコラスが思いとどまったのは、アーサーの瞳が最期までまっすぐだったから。
子どもが自分の足で進んだ未来を否定する親がいないように、ニコラスはアーサーを肯定しようとしたのだった。
●“♯15 扉の先へ:回想・ニコラス”より
だが、ニコラスが思い留まったのは、最期のときまでアーサーの瞳が真っ直ぐだったから。あぁ、これはアイツが望んだことなのか。子供が自分の足で進んだ未来を、否定する親がいるだろうか。だからニコラスはアーサーを肯定しようとしたのだった。
とはいえ、ニコラスは素直にアーサーを肯定できたわけではなく、時には悩むこともあった。そんな時、ニコラスはエビルアーサーに寄りそう1匹の猫(狂騒獣タマ)の存在に気付く。
タマという名は、アーサーが“アルトリウス”の名を名乗る前にサンタクローズから与えられた名前。
アルトリウスという名前はアーサーという王の名前につながる、ある意味で“王の道を歩むことを定められた呪縛”のような部分があった。
それに対してタマは、ただ純粋に「生きたい」と願っていた時期に与えられた名前だった。
●“♯16 扉の先へ:回想・ニコラス”より
だが、ニコラスは素直に肯定することは出来なかった。ひとり悩み続けるニコラス。そんなニコラスは堕ちたアーサーを見つめながら、あることに気がついた。そう、アーサーに寄り添っていた一匹の猫に。いつなんどきも、離れることのなかった猫を。
●“♯17 扉の先へ:回想・ニコラス”より
そしてニコラスはひとつの答えに辿り着いた。これがアイツの、本当の想いだったんだな。アルトリウスという名前が、王の道を歩む呪縛であるとしたら、タマという名前は、ただ純粋に「生きたい」と願っていたあの日の少年の想いではないか、と。
ニコラスはアーサーの「生きたい」という気持ちに気付き、「これがアイツの、本当の想いだったんだ」という答えにたどりついた。
たどりついた答えがもたらした希望。それによりニコラスは、世界の決定を裏切ることを決めた。
そんなニコラスに、彼の息子であるサンタクローズの廃棄=抹殺が命じられる。
●“♯18 扉の先へ:回想・ニコラス”より
辿り着いた答えがもたらした希望。それなら、俺がアイツらにしてやれることはひとつ。ニコラスが下した決断。俺は世界の決定を裏切る。そんなニコラスの気配を察知した決定者たちは、ニコラスへひとつの決定を与えた。サンタクローズを廃棄せよ。
「たまには父親らしくさせてくれよ、だから、オマエにプレゼントだ」。サンタクローズに銃口を突き付けたニコラスが打ち抜いたのは、その背後にいた決定者の使徒だった。
ニコラスは、サンタクローズが死んだということにして、彼に自由を与えようとしたのだった。
●“♯19 扉の先へ:回想・ニコラス”より
果たされた親子の再会。ニコラスが突きつけた銃口。たまには父親らしくさせてくれよ、だから、オマエにプレゼントだ。鳴り響く銃声。グッドラック。放たれた弾丸がかするサンタクローズの髪。そして、撃ち抜いたのはサンタクローズの背後だった。
●“♯20 扉の先へ:回想・ニコラス”より
悲鳴をあげることなく息絶えたのはサンタクローズの背後にいた神界からの使者。どういうことだよ。戸惑うサンタクローズ。たったいまをもって、オマエは俺に殺された。そう、オマエは「死んだ」んだ。そして、提出されたのは偽りの報告書だった。
話を終えたニコラスに対して、ジャンヌは言葉を詰まらせる。一方のニコラスは流暢に答える。
「だから、俺はあのとき言ってたろ。裏切ったりなんかしないって」「そうさ、俺はずっと昔から、裏切っていたんだから」と。
●“♯06 扉の先へ:神界へ”より
やがて辿り着いた最上階。それじゃあ、アンタは。言葉を詰まらせたジャンヌ。だから、俺はあのとき言ってたろ。裏切ったりなんかしないって。対するは流暢なニコラス。そして続けられた言葉。そうさ、俺はずっと昔から、裏切っていたんだから。
●“♯07 扉の先へ:神界へ”より
伝えられた真実と、アーサーの想い。そうだよ、あいつは生きたかったんだ。そんな自分の想いを押し出してまで、なにが新しい世界だよ。そんなの、俺たちは望んじゃいないんだ。いつかは笑い合えるよ。だから、辛いことがあってもいいじゃないか。
こうして塔の最上階に到着したアカネやニコラスたちだったが、神界への道は閉ざされていた。
そこに姿を現したのは、ヤシロからの願いでやってきた6人の獣神たち(炎獣神ベニ、水獣神ヘキ、風獣神サナエ、光獣神ソガ、闇獣神キキョウ、無獣神スズ)だった。
●“♯08 扉の先へ:神界へ”より
だったら、その想いを早くアイツに教えてやろうぜ。答えるニコラス。だが、神界への道は閉ざされていた。でも、これはどうしたものかしら。困り果てるジャンヌ。そんなアカネたちの許に現れた6人の神々。そんな道なら、俺たちが創ってやるよ。
「俺たちだって、これでも神様なんだ」。6人の獣神たちは、力を合わせて神界への道を創る。
●“♯09 扉の先へ:神界へ”より
そう、現れた6人の獣神たちが力を合わせて創った神界への道。俺たちだって、これでも神様なんだ。それは常界での戦いで離れることの出来ないヤシロからの願いだった。だが、気をつけて進めよ。こっから先は、悪意や憎悪が渦巻いているんだから。
そして、6羽の花獣たち(炎花獣キリ、水花獣フジ、風花獣ウメ、光花獣ススキ、闇花獣ヤナギ、無花獣マツ)もアカネたちに力を貸す。
悪意や憎悪が渦巻く神界でアカネたちが行動しやすいように、花獣たちはその悪意を塗りつぶそうと試みる。
今やアカネたちは、イマを生きるすべての命の希望となっていた。
●“♯10 扉の先へ:神界へ”より
だとしたら、私たちの出番ですね。ときを同じく、現れた6羽の花獣たち。その悪意を、私たちが塗りつぶしてみせましょう。それは彼女らだからこそ、成せる業。だから、行ってください。あなたたちは、イマを生きるすべての命の希望なのですから。
神界への道を進むアカネたちは、自分たちを襲う憎悪の正体に気付く。それは、破壊と再生の中で、これまで犠牲になってきた過去の世界の命だった。
●“♯11 扉の先へ:神界へ”より
神界への道を真っ直ぐ走り出したアカネたち。だが、その道は簡単なものではなかった。塗りつぶしきることの出来なかった憎悪たちがアカネたちを襲う。ねぇ、この憎悪の正体って。そう、襲いかかる憎悪の正体にいち早く気づいたのはアオトだった。
●“♯12 扉の先へ:神界へ”より
なんだか、みんな悲しそう。そう口にしたミドリ。気づいたと思うけど、この憎悪は犠牲になった過去の世界の命よ。神々によって犠牲にされた無数の命。その上に、神界は成り立っているんだから。そして、それはもうひとつの意味を持っていた。
そしてその憎悪は、イマの世界を肯定しようとしているアカネたちにより強く向けられていた。生まれ変わり続けた世界を否定することは、未来への礎となった過去の世界の否定でもあったのだから。
●“♯13 扉の先へ:神界へ”より
そんなの、悲しすぎるよ。そうこぼしたヒカリ。そう、この憎悪が持っていたもうひとつの意味。そう、俺たちは生まれ変わり続けた世界を否定して、イマの世界を肯定しようとしている。それは即ち、未来への礎となった過去の世界への否定だった。
●“♯14 扉の先へ:神界へ”より
神界に辿り着くには、すべての憎悪を切り捨てなければいけない。だけど、この散っていった命に罪はないのね。そんなユカリの言葉には戸惑いが隠れていた。せめて、私たちからだけでも、彼らにオヤスミを。もう、泣かないで、苦しまなくていいの。
●“♯15 扉の先へ:神界へ”より
もし死んだらさ、俺は何にもかも無くなるのかと思ってた。だからこそギンジは思った。俺たちが、無に帰してやろうぜ。きっとそれは安らかな終わり。そのぐらいのことなら、俺たちでもしてやれるはずだ。だから、少しでも早く、一歩でも、前へ。
それぞれの思いを胸に、憎悪を切り捨てながら先へと進むアカネたち。アカネは、「だったらさ、俺たちはコイツらの分まで精一杯生きればいいんだ。胸を張って生きればいいんだ。それが、イマを生きる俺たちだから」と、決意を口にするのだった。
●“♯16 扉の先へ:神界へ”より
ひとつひとつ、憎悪に与えられる終わり。それと、俺たちに出来るもうひとつのことがある。アカネが口にした決意。だったらさ、俺たちはコイツらの分まで精一杯生きればいいんだ。胸を張って生きればいいんだ。それが、イマを生きる俺たちだから。
アカネたちは大きな翼を持つ存在を目にして、歩みを止める。それは、一度は封印されたはずの扉の君だった。
●“♯17 扉の先へ:神界へ”より
だが、そんなアカネたちが歩みを止めたのは、目の前に新たな人影が現れたからだった。いや、それは人影と呼ぶにはあまりにも大きな翼を持っていた。そう、目の前に現れたのは、一度は封印されたはずの扉の君だった。これは絶体絶命、ってやつね。
「私には名前すら与えられなかった。そう、私は聖なる扉のたった一部。私に名前など、必要ないのだ」。その扉の君は、アカネやジャンヌらの目の前で無数の憎悪を取り込んでいく。
●“♯18 扉の先へ:神界へ”より
一度は倒したはずの扉の君。だが、アカネたちが立ち止まってしまったのは、無数の憎悪が扉の君に取り込まれていく様を目の当たりにしたから。私には名前すら与えられなかった。そう、私は聖なる扉のたった一部。私に名前など、必要ないのだ。
さらに敵は数を増やす。アカネたちの背後から現れたのは、フォルテとグライフを従えた炎聖人ダンテだった。
「一番の頭でっかちがやってきちゃったわね」とぼやくジャンヌ。
●“♯19 扉の先へ:神界へ”より
扉の君を前に、身動きのとれないアカネたち。そして、そんなアカネたちの背後から近づく足音。そこまでだ。現れたのはフォルテ、グライフを従えたダンテだった。一番の頭でっかちがやってきちゃったわね。貴様たちは、なぜ世界の決定を裏切った。
「貴様たちは、なぜ世界の決定を裏切った」と、ジャンヌとニコラスへ問いかけるダンテだったが、そんなダンテの首筋にグライフの爪が突きつけられる。
●“♯20 扉の先へ:神界へ”より
ダンテが問いかけた先のふたりの聖人。いいや、愚問だったか。ならば、俺がすることはひとつ。そして、ダンテが構えたレイピア。そして次の瞬間、ダンテの首筋に突きつけられたグライフの爪。貴様は俺に、第四の選択肢を与えてしまったんだ。
●“♯21 扉の先へ:神界へ”より
グライフがダンテから与えられた任務。一つ、王の象徴であること。二つ、神の翼になること。三つ、黄金を守ること。一つ目と二つ目、それは王都ティンタジェルで王から神へと変わるアーサーを見届けることだった。そして、三つ目の黄金の意味―。
グライフが選んだ第四の選択、それはグライフがダンテを裏切ることだった。
●“♯22 扉の先へ:神界へ”より
―それは、やがて王となるクロウリーの力となること。そう、最初は二択の三択だった。だが、違った。ダンテ、貴様は初めから、裏切るつもりだったんだろう。そう、一択の三択だったんだ。だから俺は、第四の選択をした。俺が貴様を裏切るという。
そんなグライフの隙を突き、フォルテはダンテを助け出す。フォルテは、「俺はアンタだからついてきたんだ」と、事情はともあれ、ダンテに協力することを告げる。
●“♯23 扉の先へ:神界へ”より
一瞬の隙をつき、グライフの爪を弾いたフォルテ。俺はアンタがどういうつもりか知らないし、聞かされたこともねぇよ。そのフォルテの言葉はダンテへ。だけど、俺はアンタだからついてきたんだ。だから、アンタの思うように、好きにやってくれよ。
一方、ダンテがクロウリーと通じていたこと、すなわち常界の味方であったことを知ったジャンヌは「だったら、なんで最初から言わないのよ」と頭を抱える。
それに対してダンテはレイピアで空間を引き裂き、聖神アーサーへと続く裏口を開き、アカネたちをアーサーのもとへと導くのだった。
●“♯24 扉の先へ:神界へ”より
ダンテの真意を知り、頭を抱えてしまったジャンヌ。だったら、なんで最初から言わないのよ。そして、その問いにレイピアで答えたダンテ。俺の奏でが道を開く。引き裂かれた空間、そこに生まれたのはかつてダンテが通った聖神へ通じる裏口だった。
●“♯25 扉の先へ:神界へ”より
さぁ、早く進め。裏口へ飛び込むアカネたち。行かせるか。すかさず飛びかかるグライフ。だから、邪魔すんなって。そんなグライフへと殴りかかるフォルテ。あとは、頼んだ。優しいダンテの微笑み。そして、ダンテはその裏口を閉じてみせたのだった。
アカネたちが先に進み、残された扉の君たち。なぜ裏切ったのかを問うダンテに対してグライフは、自分がなぜセカンドして完成したのかを語り始める。
●“♯26 扉の先へ:神界へ”より
残されたのは扉の君、グライフ、そして、ダンテとフォルテだった。聞かせてもらおうか、なぜ裏切ったかを。それはダンテからグライフへの問い。そして、グライフは答える。どうして俺がセカンドとして完成したか。俺には完全な神格が与えられた。
グライフの目じりに浮かんでいたのは、勝者である神々の力。グライフは神々の意思に支配され、完全な神格が与えられたのだった。
●“♯27 扉の先へ:神界へ”より
グライフの目じりに浮かんでいたのは、勝者である神々の力。そうか、どうやら俺が見誤っていたようだな。そう、グライフはダンテに従いながらも、神々の意思に支配されていたのだった。だとしたら、俺がここで貴様を始末しなければなるまい。
誇り高きセカンドの完成形であり、成功者であることを自負するグライフ。そこに現れたのは、すでにその半身が蝕まれてしまったセカンドの失敗者とも呼ぶべき天狂獣グリュプスだった。
●“滅神獣グライフ”のプロフィール
成功と失敗、そこには明確な差があった。だが、それは必ずしも勝者と敗者とは限らない。誇り高きセカンドの完成形であるグライフ。彼はそう、成功者だった。だが、そんな彼が勝者とは限らない理由。そこには、彼と対である失敗作が存在していたから。そうさ、この俺こそが勝者であり、完全な敗北を教えてやろう。
●“♯28 扉の先へ:神界へ”より
いいや、それは違う。新たに響いた声。アイツを討つのはオレだ。そう、更に現れたのはすでにその半身が蝕まれていたグリュプスだった。出来損ないが、死に場所を求めてやってきたか。こうしてまた、異なる因果も結末への道を辿り始めるのだった。
こうして、グライフとグリュプスが対峙する一方で、ダンテとフォルテは無数の憎悪を取り込んだ扉の君と対峙していた。
戦いを前にフォルテは、ダンテに「アンタがいままで、なにを見てきたのか。なにを考えていたのか。どんな想いだったのか。それを俺に教えてくれよ」と頼む。
ダンテの答えは「無事に生き残れたら教えてやろう」。フォルテは「あぁ、男の約束だ」と、扉の君に戦いを挑むのだった。
●“♯29 扉の先へ:神界へ”より
グライフと対峙したグリュプス。そして、無数の憎悪を取り込んだ扉の君と対峙したダンテとフォルテ。そして、フォルテは言う。なぁ、やっぱり最後に教えてくんないかな。無言のままのダンテ。俺さ、やっぱり知っておきたいんだ。アンタのこと。
●“♯30 扉の先へ:神界へ”より
アンタがいままで、なにを見てきたのか。なにを考えていたのか。どんな想いだったのか。それを俺に教えてくれよ。フォルテは純粋だった。そして、ダンテは答える。無事に生き残れたら教えてやろう。あぁ、男の約束だ。こうして戦いの幕は上がる。
神に選ばれた獣(グライフ)と、神に捨てられた獣(グリュプス)。その先制攻撃はグライフが行い、グリュプスは体ごと地面へとたたきつぶされた。
「あぁ、オレは失敗作かもしれない。いいや、失敗作だ」。咆哮とともにグライフを押しのけたグリュプス。だが、グライフはあっさりとグリュプスの翼をもぎ取るのだった。
●“♯31 扉の先へ:神界へ”より
神に選ばれた獣と、神に捨てられた獣。俺が正しいということを、その身をもって教えてやろう。翼を広げたグライフは、一直線にグリュプスの許へ。そして、その体ごと地面へと叩き潰されるグリュプス。なにが正しいか、オマエが決める話じゃない。
●“♯32 扉の先へ:神界へ”より
咆哮と共にグライフを押しのけたグリュプス。あぁ、オレは失敗作かもしれない。いいや、失敗作だ。そう、刻一刻と蝕まれるグリュプスの体。オレのこの悲しみは、オマエにはわからないだろうなぁ。そして、悲しみこそが、グリュプスの秘策だった。
●“♯33 扉の先へ:神界へ”より
口答えをするな。そう、グリュプスの翼をもぐなど、グライフにとっては造作もなかった。だが、次の瞬間、赤黒い翼が生まれた。続いてもがれた腕。だが、次の瞬間、赤黒い腕が生まれた。そしてグリュプスは笑う。ここがどこだか、忘れたのか。
しかし、翼をもがれた次の瞬間、グリュプスに赤黒い翼が生まれた。腕をもいでも、また腕が生まれる。
「オレのこの悲しみは、オマエにはわからないだろうなぁ」。その悲しみこそが、グリュプスの秘策だった。
グリュプスの体を補っていたのは、グリュプスの悲しみに引き付けられた無数の憎悪たちだったのだ。
●“♯34 扉の先へ:神界へ”より
そう、もがれたグリュプスの体を補っていたのは無数の憎悪たち。ここのみんなは、どうやらオレの悲しみに気づいたようだ。そして、グライフの顔は歪み始める。きっと、オレはこのまま飲み込まれるだろう。だが、それはそれで幸せってもんだ。
「教えてやるよ、セカンドの悲しみを」。失敗作のグリュプスを理解者として認めた憎悪たちとともに、化け物と化したグリュプスはグライフを飲み込んだ。
こうして2人のセカンドの戦いは終わり、グリュプスもまた憎悪に飲み込まれ、自らの生に終わりを与えたのだった。
●“♯35 扉の先へ:神界へ”より
失敗作のグリュプスを理解者として認めた憎悪たち。教えてやるよ、セカンドの悲しみを。化け物と化したグリュプス、その圧倒的な力に飲み込まれたグライフ。終わる戦い。色々、ありがとな。そしてグリュプスは自らの生に終わりを与えたのだった。
実力差を感じながら、フォルテはダンテのために扉の君へ先制攻撃をかける。
ダンテの手を煩わせまいと、扉の君の攻撃をその身で受け続けながら、フォルテは「俺、明日が誕生日だったんだよね」と、自分のことを語り始める。
●“♯36 扉の先へ:神界へ”より
憎悪を取り込んだ扉の君。ダンテの合図を待たずして飛び掛ったフォルテ。だが、いくらフォルテが実力者であれ、いまの扉の君は人間が敵うような相手ではなかった。だからこそ、フォルテが語りだした自分のこと。俺、明日が誕生日だったんだよね。
●“♯37 扉の先へ:神界へ”より
ダンテの手を煩わせまいと、すべての攻撃をその身で受け続けるフォルテ。俺の26年間、結構楽しかったな。そしてフォルテは願う。どうせ死ぬのなら、あと1日生きたかった。常界のポップスター、27歳で死去。俺は歴史に名を残せるのにさ。
「どうせ死ぬのなら、あと1日生きたかった。常界のポップスター、27歳で死去。俺は歴史に名を残せるのにさ」「そんな簡単に諦める男を、俺は使徒に選んだ覚えはない」。右腕の炎が消えかかり、扉の君の闇の波動に襲われたフォルテを救ったのはダンテだった。
●“♯38 扉の先へ:神界へ”より
フォルテの右腕の炎は消えかかっていた。刹那、フォルテを襲う闇の波動。そんな簡単に諦める男を、俺は使徒に選んだ覚えはない。波動とフォルテの間、割って入ったのはダンテ。共に奏でよう、俺たちの狂想曲を。教えてやろう、最高の二重奏を。
「共に奏でよう、俺たちの狂想曲を。教えてやろう、最高の二重奏を」。ダンテが振るうレイピアは、まるで指揮棒のように一音、一節ずつ戦況を変えていく。
勢いを取り戻したフォルテの炎拳が扉の君の本体に叩き込まれ、戦いはダンテたちの勝利に終わった。
●“♯39 扉の先へ:神界へ”より
ダンテが振るうレイピアは、まるで指揮棒のよう。勢いを取り戻したフォルテ。そしてレイピアを振るうたびに、一音、一節ずつ変わり始める戦況。壊れるトリオと壊れる光の翼と闇の翼。そうだ、叩き込んでやれ。フォルテの炎拳は、残された本体へ。
ダンテが明かした、世界の決定者を裏切った理由。それは、「俺はきっと、羨ましかっただけなんだ。天国でも地獄でもない、イマを自由に生きるアイツらが」というものだった。
●“♯40 扉の先へ:神界へ”より
消えていく扉の君。横たわったふたり。約束、覚えているか。問うフォルテ。なんの話だ。誤魔化すダンテ。だが、しばらくしてダンテは言葉を続けた。俺はきっと、羨ましかっただけなんだ。天国でも地獄でもない、イマを自由に生きるアイツらが。
ベオウルフを倒し、研究所をあとにしたヒスイとリヴィアの前に現れたのは、ヒスイの妹であり、闇聖人でもあるシオン。
「丁度いい、そろそろお前に会わなきゃと思っていたんだ」と棍を構えるヒスイに対して、シオンはなぜ自分に棍が向けられているのか理解できなかった。
●“♯01 扉の先へ:竜兄妹”より
研究所をあとにし、常界に訪れるであろう因縁へとの戦いに向かったヒスイとリヴィア。そして、そんなふたりの目の前に現れた少女。丁度いい、そろそろお前に会わなきゃと思っていたんだ。そして、ヒスイは目の前の少女、シオンへ棍を向けた。
●“♯02 扉の先へ:竜兄妹”より
兄さん、どういうつもりなの。妹であるシオンへと向けられた棍を前に、驚きを隠すことの出来ないリヴィア。いや、これでいいんだ。多くを語ろうとはしないヒスイ。そして、武器を構えることのないシオン。お兄様、どうして、なぜなのでしょうか。
●“♯03 扉の先へ:竜兄妹”より
なぜ自分に棍が向けられているのか、理解出来ないのはシオンも同じだった。どうしてって、そんなの答えは簡単だ。お前は聖人であり、世界の決定に従う。そして、俺はその決定に背いている。だからこそ、俺たちが戦うことになるのは必然だろう。
「お前は聖人であり、世界の決定に従う。そして、俺はその決定に背いている。だからこそ、俺たちが戦うことになるのは必然だろう」。そう戦いの理由を告げたヒスイは、シオンとの戦いを始める。
刃を交える兄妹を見つめるリヴィアは、やがてその戦いの意味に気付く。
●“♯04 扉の先へ:竜兄妹”より
そっちがその気じゃないのなら、こっちから始めさせてもらうぜ。ヒスイは目にも留まらぬスピードでシオンへ距離を詰める。そして、シオンが咄嗟に起動させたドライバ。そうだ、それでいい。聖人として、俺を止めればいいんだ。全力で来いよ。
●“♯05 扉の先へ:竜兄妹”より
刃を交える兄ヒスイと妹シオン、そして止めることなく見つめるリヴィア。なぜ、互いに想い合う兄妹が争わなければいけないのだろうか。やがて、リヴィアが気づいた戦いの意味。だから、兄さんは。そう、この戦いには確かな意味が存在していた。
●“♯06 扉の先へ:竜兄妹”より
強くなったじゃん。シオンの鍵爪を受け止めたヒスイは嬉しそうだった。だったら、こっちも本気出さなきゃ失礼だよな。シオンを襲うのは多節に別れた棍。どうしてなんですか、お兄様。それでもなお、シオンはこの戦いを認めようとはしなかった。
戦いの中でヒスイは、自分がやりたいようにやるために、シオンを竜界からの生贄として差し出したと告白するが、シオンはその嘘を見抜いていた。
そして、そんな嘘を持ち出してまで戦おうとするヒスイに応え、シオンも全力で戦うことを決意したのだった。
●“♯07 扉の先へ:竜兄妹”より
お前は初めから生贄だったんだよ。ヒスイの告白。俺は俺のやりたいようにやる。そのためには、ウチから聖人を出す必要があった。だから、お前に生贄になってもらったんだ。その言葉に、思わず笑みを浮かべたシオン。お兄様は、嘘が下手ですね。
●“♯08 扉の先へ:竜兄妹”より
だが、その下手な嘘はシオンに戦う決意をさせるには十分だった。お兄様がそこまでして、私と戦うというのであれば、私は全力で戦わせてもらいます。そうだ、それでいい。再び交わる刃。ふたりは全力で戦いながらも、どこか楽しそうにみえた。
●“♯09 扉の先へ:竜兄妹”より
聖人と竜神の力のぶつかり合い、それはふたりが互いに集中していなければ、常界に多大なる被害をもたらしていただろう。だが、互いを想いやるふたりには、互いの姿しか瞳に映りはしない。さぁ、これで終わりだ。先に膝をついたのはシオンだった。
戦いの果て、先に膝をつき、敗北したのはシオンだった。ヒスイはそんな妹をねぎらうこともなく、その場を立ち去った。
●“♯10 扉の先へ:竜兄妹”より
じゃあな。シオンを労ることなく去るヒスイ。シオンへ駆け寄るリヴィア。明かされる真意。闇聖人は裏切ることなく、世界の決定に従った。もし僕たちが決定者に敗れても、君は罪に問われない。そう、どう転んでも、兄さんは君を守りたかったんだ。
リヴィアはシオンに駆け寄り、ヒスイが明かさなかった真意を伝える。ヒスイはシオンの立場を守るため、あえてシオンと戦う必要があった。
そうすれば、もしヒスイが世界の決定者に敗れたとしても、闇聖人として戦ったシオンは罪に問われない。
逆にアカネたちが世界の決定者に勝った場合は、ヒスイ自身が勝者としてシオンを守ることができる。
「そう、どう転んでも、兄さんは君を守りたかったんだ」。妹を思うがゆえの気持ち、それがヒスイの真意だった。
【第七章“扉の先へ4”は6月24日(土)夕方ごろに公開予定です】
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