2017年5月21日(日)
今年で5回目を数える日本最大級のインディーゲームの祭典“A 5th Of BitSummit”が5月20日、21日の2日間開催されている。日本のみならず、世界中から多数のインディータイトルがそろい、回を重ねるごとに賑わいを増してきている。
その初日には、ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏と、『パラッパラッパー』で知られる松浦雅也氏、BitSummitのライブイベントは皆勤賞となるミュージシャンのサカモト教授という顔ぶれで、トークステージが行われた。
▲昨年は吉田氏と松浦氏の2人によるステージだったが、今年はサカモト教授を加えた3名でのトークイベントに! |
3人によるステージでは、数日前にキックスターターがスタートした松浦氏の新しいプロジェクト“PROJECT RAP RABBIT”についてなど、インディーゲームと音楽をテーマにした話を聞くことができた。
トークイベント後、吉田修平氏とサカモト教授のお2人に、ステージやBitSummitについて、さらには会場で気になったインディーゲームについてなどのお話を聞くことができたので、そちらの模様をお届けしていこう。
――めずらしい組み合わせとなりましたが、どういった経緯で実現した顔ぶれなのでしょうか?
吉田修平氏:BitSummitの運営を担当するピグミースタジオの小清水 史さんからお話をいただきました。もちろん昨年同様、今年のBitSummitにも行くつもりではいました。
「何を話したらいいですか?」と小清水さんにうかがったら、「吉田さん、松浦さん、サカモト教授さんの3人で“インディーと音楽”というテーマでどうでしょう?」とご提案いただいたんです。
サカモト教授:昨年、ピグミースタジオさんの『ボコスカウォーズ2』リリースイベントで演奏、そしてお話をさせてもらいました。そのときに「BitSummitでも登壇してほしい」と言われたのがキッカケだったと思います。その後、吉田さん同様、小清水さんから改めて登壇の連絡をもらいました。
吉田修平氏:普段なら「このようなトークテーマの組み立てでどうでしょう?」などのご提案があると思っていたのですが、今回はまったく事前の仕込みがありませんでした。20分前に集合してくださいなどの業務連絡もなかったぐらいです(笑)。
サカモト教授:そうですね(笑)。
吉田修平氏:そういう状況だったので何を話してもいいのだと思い、逆によかったのかもしれません。おかげで松浦さんの新しいプロジェクトのお話もできましたから。
――松浦さんの“PROJECT RAP RABBIT”は、このイベントにあわせて発表されたのでしょうか?
吉田修平氏:多くの方がそう察するのかと思いますが、まったくの偶然だそうです。はたから見ると“松浦さんがBitSummitでキックスターターを告知する”という流れで準備したのかと思われたでしょう。でも、それでもいいのかと思っています(笑)。
――今年の会場の様子はいかがですか?
サカモト教授:第1回目から参加させてもらっていますが、毎年熱気がアップデートされていると感じました。最初はインディーゲームの制作者や関係者の方々がほとんどでしたが、年々子どものお客さんが増えてきていると感じます。そして、子どもたちが目を輝かせて遊んでいるのが印象的ですね。
吉田修平氏:第3回から毎回来させてもらっていますが、年々全体的なクオリティが上がっていて驚かされます。今年の多くのタイトルは、このままいけば発売できるのではと思えるほど。これはBitSummitが開発者にとって“狭き門”になってきていて、ちょっとメジャーになりつつあることを感じます。
サカモト教授:全体の技術の底上げになってきていますよね。
吉田修平氏:さらに駆け出しのインディー開発者向けのイベントなどがそろってくると、もっと裾野が広がるのではないでしょうか。
――気になったタイトルはありましたか?
吉田修平氏:いくつもありましたね。Viteiさんの紙飛行機を飛ばすVR『Paper Garden』や、すでに配信されているモバイルタイトル『Missileman』。『Missileman』は、もっぴんくんの『Downwell』を逆にしたドンドン上に登っていくタイプのもので、会場で制作者に話を聞いたら『Downwell』に影響を受けたとのことでした。
もともと海外では盛んだったインディーゲームですが、なかなか日本には“波”が来なかった。それが、もっぴんくんのように若い日本のクリエイターが作ったゲームが世界でヒットして、多くのプラットフォームで展開したことで、それが目標や刺激になってきていますよね。
若手クリエイターの方にとって“自分もできるんじゃないのか?”と思わせる身近なヒーローが出てきた。『Missileman』の制作者と会話をして、もっぴんくんの残した功績は大きいと改めて感じました。
――VRタイトルで気になったタイトルはありましたか?
吉田修平氏:白と黒の線画で表現された『Stifled』です。目の見えない人が音で周りの状況を知るというところからインスピレーションをもらった作品だそうです。
――そのほかに印象に残ったタイトルなどはありましたか?
吉田修平氏:韓国の2ボタン・モバイル格闘アクション『The Counter of death』もおもしろかったです。敵の上か下かの攻撃に対して、こちらも上か下の2つのボタンを押してカウンターを決めるというもの。妙に笑えておもしろかったですね。
――任天堂さんも昨年以上にインディーに力を入れている印象でした。SIEさんも多数のタイトルがそろっていて、ゲーム業界でのインディーの盛り上がりを実感しました。
吉田修平氏:BitSummitだからできるシチュエーションですね(笑)。『スプラトゥーン』あたりから、任天堂さんは若返っていらっしゃるなと感じています。
――サカモト教授はBitSummit皆勤賞ですね。
サカモト教授:BitSummit運営のJames Mielkeが、1UP.comで私の記事を書いてくれたのが知り合うキッカケでした。その後、彼が「BitSummitを立ち上げるので出演してほしい」と声をかけてくれたんです。
――サカモト教授の好きな音楽はどういったものなのでしょうか?
サカモト教授:ファミコン世代でもあるので、ピコピコとしたシンプルな音が好きですね。最近のゲーム機は生音をそのまま使えるぶん、音楽が複雑化してきている。メロディーがボヤけてきている気がするんです。ハードウェアの制約があったからこそ、メロディーが研ぎ澄まされていた。そのときの音楽のほうが、耳に残っていて印象的なんです。
――今後、ゲームの楽曲以外のことをやられたりといったことは考えているんですか?
サカモト教授:ゲームやアニメや映画など、映像と音楽とストーリーが合わさって増幅される感覚が、子どものころから好きでした。そして、それらに音楽で携わりたいと思っていたんです。今はゲームにかかわらせてもらっていますが、将来的には映画音楽などもやりたいと思っています。
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