2017年6月3日(土)
電撃PSで連載している高橋慶太氏のコラム『電撃ゲームとか通信。』。ゲームデザイナーとしての日常や、ゲーム開発にまつわるエピソードを毎号掲載しています。
高橋慶太氏PROFILE
バンダイナムコゲームス(現BNE)時代に『塊魂』、『のびのびBOY』を制作。その後『Tenya Wanya Teens』を発表。現在は新作『Wattam』と、GoogleのARプロジェクト“Tango”向けに『WOORLD』を開発中。
この記事では、電撃PS Vol.639(2017年5月25日発売号)のコラムを全文掲載!
どうも。正式名称は何だかわからないんだけど、プラスチックのビーズを寄せ集めて形をつくり、アイロンで熱して溶かし固まらせる創作系玩具で楽しんでいる高橋です。
今うちにあるものはPerler Beadsという商品名なんだけど、息子が学校で遊んでいるのはFuse Beadsと呼ばれているらしい。調べたところ日本では“アイロンビーズ”とか“パーラービーズ”と呼ばれているみたいです。
思い起こせば自分が小さい時からあったような無かったようなこのビーズに、子供と一緒に遊んでいる内に案の定楽しくなってしまい自分の分までつくるようになりました。
実際にこのビーズでやってることは仕事でもやってるようなドット絵を描く作業をビーズでやってる感じなので、特に新鮮味はないんだけど、出来上がりが画面上の2Dではなく、実際に厚みがあって手で触れる2.5D的なものとして仕上がる感覚が新鮮。
あと、その仕上げの段階でアイロンを使うのも、アナログな感じで良い。熱繋がりで、子供の頃に遊んでいた“プラ板をトースターで熱して縮める/厚くする例のやつ”を思い出しました。
そしてこのアイロンがこのビーズの最大の難所でもあり重要なポイントでもあります。いかに美しく全ビーズを均一に熱してくっつけるかが、難しい。
まだまだ自分的に突き詰められていない点として、ビーズの穴が全部埋まるくらいアイロンで熱するのがいいのか、むしろ穴が空いてる状態をキープするのが良いのかが、見極められていません。
あと、基本的に剣山状のイボイボテンプレートにビーズをはめていくんだけど、そのテンプレートを使わないでやったほうがより密度の高いものつくれるのです。知らない人にはどうでもいい情報だと思うけど、機会があったら遊んで見てください。
ゲームのドット絵をビーズで再現するのは予想以上に楽しいと思います。そして話はドット絵のゲーム繋がりでファミコンのコントローラーについて。
最近ふとしたことでファミコンのボタンの配置が左がBボタンで右がAボタンであることに気が付きました。自分はすっかりアルファベット順そのまま左がAで右がBだと思っていたのです。
この“左Bボタン/右Aボタン”というのは、アルファベット的に決定ボタンの機能を持つのはBではなくAが適当、だけど決定ボタンとして押しやすいのは手に近い右側のボタン、というところから来ていると想像できます。
これは4つボタンで左右じゃなく上下左右配置となったスーパーファミコン以降も引き継がれています。そして、この任天堂のデザイン哲学が他のプラットフォームにどれだけ影響を与えたのか分からないけど、プレイステーションでもキャンセルのXが左(正確には下)で決定の◯が右にあります。
しかし、これが欧米のプレイステーションゲーム(もしくは日本以外のアジア圏でも)では違うのです。欧米では下に配置されてるXが決定ボタンで、右にある◯がキャンセルボタンになってます。
これは多分”Xボタンの方が押しやすい”という現実的な判断から来ていると推測されます。実際、Xの方が押しやすいし。
と、ここで気になるのはXboxやセガ陣営。自分はセガ派ではなかったので若干怪しいけど、4つボタンのドリームキャスト以降はどうやら任天堂ソニー陣営とは逆で下がAで右がBになっている模様。そしてXboxも同じ。
実際各社がどんなボタン哲学を持っているのか分からないけど、初期の任天堂による2ボタン横並びのBA配置の英断はすごいと思います。左側のボタンは右側に比べて若干押しにくいから、それをBAと配置して解決するのは結構勇気が必要だったと思う。
しかし、スーパーファミコン以降の4つボタン上下左右配置では、むしろ下(旧左)のBボタン側のほうが届きやすくなったので、その時点で“下がAで右がB”と柔軟に変更できたなら、もしかしたらプレイステーション陣営も下に◯右にXを配置して、日本版と海外版である違いを解消できたのかも知れません。実際どういうプロセスで決まったのか知らないので完全な憶測ですけど。
それにしても誰が思い付いたのか知らないけど“ボタン/押しボタン”というのはすごい発明だと思う。『Tenya Wanya Teens』という4つどころではなく16個のボタンを持った特別なコントローラーで遊ぶパーティーゲームを思いついたきっかけは子供がエレベーターのボタンを押すのが大好きだったから、というくらい、押し込む→決定という所作は子供でも理解できるとても直感的なものです。
このボタンが発明される前の時代がどんなものであったのか全く想像つかない程、、、というのは言い過ぎで、おそらくボタンが出てきたのは電気などのエネルギー/動力が発見されて機械がつくられ始めた産業革命あたりだと思います。
当時の電気や機械という華々しい主役と比べると“ボタン”という発明の存在は小さすぎて誰も気づかなかったかも知れないけど、個人的には同じくらいすごいと思う。
パソコンのキーボードなんてボタンの集まりだと言っても過言では無いし、前述したゲーム機のコントローラーもボタンが発明されてなかったらどんなものになっていたのか全く想像つきません。
と興奮気味でボタンのことを考えていたら目に入ってきたのが部屋にあるピアノ。奥さんがレンタルしてるピアノが部屋に置いてあるんだけど、鍵盤なんて言ってしまえばボタンの集まりです。
ボタンが発明された時期は産業革命あたりかもと書いたけど、案外もっと昔からボタン的な仕組みは存在していて、そこからDNAレベルで”押すことの快感”が我々人類には刷り込まれているのかも知れません(嘘)
(C) Keita Takahashi
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