2017年6月7日(水)
新たな商戦期をPlayStationで作りたい――SIEJAプレジデント盛田厚氏が語る新たな戦略
Electronic Entertainment Expo 2017(E3 2017)の直前に、SIEJAプレジデント盛田厚氏へのインタビューを行いました。
▲盛田厚氏。 |
インタビューでは、6月9日より開催される期間限定セール“Days of Play”、今後のPlayStationに関する展開についてお聞きしました。
新たな商戦期をPlayStationで作りたい
――6月9日から期間限定セール“Days of Play”が行われますが、こちらの目的を教えていただけますか?
日本において我々は、いくつかステップにわけて戦略を立てていました。
日本向けのタイトルがないんじゃないか、値段が高いのではないか、と言われ続けていたことに対しては、PS4 SlimやPS4 Pro、たくさんのタイトルを出すことで、2016年までには到達できたのではないかと思っております。
2016年では、10万本以上売れたタイトルが50近くありました。そのくらいタイトルが出て、売れるようになってきました。日本のタイトル比率も8割くらいあります。今や日本向けのタイトルがないということはなくなってきていると思います。
今後は、『ドラゴンクエストXI』も出てきますし、いよいよ次のステップに移りたいと考えました。
我々が最初から言っていることなのですが、PS2のころのような“誰の家にも、子どもがいる家にはなんらか必ずのゲーム機が置かれている”という状況をPS4でもう一度実現したいと思いました。
そのための活動を3年間ほど続けているのですが、今年はさらにその傾向を強化していきます。その夏向けの施策が“Days of Play”となります。
SIEが設立して1年ほどになるのですが、グローバルでいろいろな議論ができるようになりました。
そこで、何かグローバルで統一した名前をつけたキャンペーンを一度やってみようという流れになったんですね。これが“Days of Play”の始まりです。
これまでは国や地域別に商戦期などが分かれている関係上、それぞれの国や地域によって別のキャンペーンを進めていくのがいいと思っていたのですが、インターネットの普及で状況が変わってきている中で、せっかくだからグローバルでPlayStationを盛り上げてみようと、試験的に始めたのが“Days of Play”です。
ちょうどE3のタイミングにあわせて、夏の少し前にグローバルで展開していくPlayStationが作る“商戦期”のイメージになります。
――元来、E3での発表を受けてからゲームユーザー間の盛り上がりを作っていく部分が多いと思うのですが、あえて期間をE3前にした意図はなんでしょうか?
“Days of Play”はゲームファンに向けたキャンペーンです。ゲームファンのE3への注目度は高いじゃないですか。
何か大きいイベントがあると、その前後何日かはお祭りみたいになることがあります。そういった空気感をPlayStationで作りたいと思ったんですね。
E3が終わってから始めるといった考え方もあるのですが、あえて皆さんが盛り上がっている時に実施してみたかったという意図です。
――キャンペーンで、ハードの普及やソフトの売上が伸びることが予想できますが、本質的な狙いはどこにあるのでしょうか?
一番の目的は“PlayStationがこの時期に何かやる”というムーブメントを作ることです。もうひとつは、ゲームファンが盛り上がっているタイミングなので、プレイも同時にしてほしいという意図があります。
日本で言えば、50タイトルくらい日本のユーザーが好きそうなタイトルをピックアップしてディスカウントを行います。他に、対象店舗ではPS4本体やPS4ソフトと一緒にDUALSHOCK4の同時購入キャンペーンも実施します。
この時期にPS4を買っていただくなら、DUALSHOCK4も一緒に買っていただいて、家族や友人と遊んでもらいたいですね。
――海外では、PS4のカラーリングでゴールドとシルバーが発表されましたが、日本で登場する予定は?
トータルのキャンペーンは、グローバルで展開するのですが、それぞれの国や地域によって嗜好が違うので、細かい内容は国や地域別になっています。
日本では7月に登場する『ドラゴンクエストXI』の限定モデルを重視しました。今のところ、予定はございません。
――“Days of Play”は、今後毎年行われるようになっていきますか?
今年の盛り上がり次第ですが、年末商戦の1点のみで盛り上がる時代は、だんだんと平準化されてきたと思っています。E3の時期にあわせた盛り上がりの1つを、PlayStationで作っていけたら、継続してやりたいとは考えていますね。
――今回はネットを介さないリアルな店舗を巻き込んでのキャンペーンもやっていますが、ショップの反応はいかがでしたか?
どのようにプロモーション活動していくかは、皆さん模索しています。その中で、PlayStationが主導でやっていくことに関しては、サポートしていただけていると理解しています。
PS VRやPS Vitaに関する展開は?
――日本で夏から先の施策があれば教えていただけますでしょうか?
ハードウェアだけの施策では売れなくて、タイトルが出る月や週ごとに差が出てくるのは仕方がないとは思っています。
7月からは『ドラゴンクエストXI』をはじめ、いろいろなタイトルが出てきます。いわゆるゲーマーライクなタイトルでなく、『ドラゴンクエスト』のようなユーザー層を広げてくれるようなタイトル、『New みんなのGOLF』のようなカジュアルなタイトルが展開していくことで、ユーザー層を拡大していきたいと思っています。
昨年から実施している子ども向けに新しい体験をしてもらうような施策などは継続していきたいと考えています。
もうひとつは、PlayStation祭です。リアルなイベントでプレイする楽しみ、見る楽しみなども訴求しながら、タイトルとブランディングキャンペーン、リアルな場という形でユーザー層を拡大していくことを今夏は行っていきたいです。
“子どもがいる家には、PlayStationがある”という状況を作っていきたいです。
――新規タイトルが店頭で触れるような機会も増やしていきたいと?
地域ごとに店舗大会などが開かれるような際には、我々もサポートしていきたいです。
――PS Vitaも6年目を迎えていますが、後継機に関してなど、どんな展開を考えていますか?
後継機の有無などについて、お話することはできませんが、PS Vitaに関して言いますと、これまで行ってきた全国キャラバンは親子で遊ぶことを一番体現できていると思っています。
そこは今年も我々にとって大事なプロダクトだと考えています。7月にはPS Vitaの『マインクラフト』の刻印モデルも展開しますし、まだPS Vitaには力を入れていきます。
――E3直前にショーン・レーデン氏が「日本の大きなタイトル発表がある」ということを言われていましたが、何か盛田さんから言えることはありますか?
もちろん、何も言えないです(笑)。
ただ、アンドリュー・ハウスがPS4が6,000万台近くをとなり、ソフトの収穫期に入ると言っていますので、私もたくさんのタイトルが出ることを期待しています(笑)。
――PS VRの販売店舗や体験会の場が増えていきますが、供給台数も増していくということでしょうか?
昨年は、一台でも多く売るというよりはもう少し未来に目を向けて、大事に育てていこうと決めていました。まずは体験していただき、納得して購入してもらおうと考えていました。それは考えていた通りに進んでいます。
ですが、当初想定していた需要に供給が追い付かない状況になってしまい、皆さんにご迷惑をかけてしまいました。生産体制の増強は行っていますので、少々お待ちいただければと思います。
生産体制の増強につき、タイトルの登場にあわせて今後は体験していただける場や機会を増やしていくことが決定しました。
――今後は、これまで以上にプロモーションの機会を作ったり、体験できる場を作ったりしていくのでしょうか?
体験の場は、100箇所ほど作っていきたいと思っています。いろいろな体験や可能性を提供することが大事だと思っています。
ひとつは我々が行う体験会、もうひとつは、いろいろなコンテンツが出てくるような形でサポートをお願いしています。Sonyグループの中でアニプレックスの『傷物語』にあわせた体験とか……。
Sonyグループの中でVRに向けた展開をやっていきたいです。サードパーティの皆さんともコラボのような形で、とにかくいろいろなコンテンツを供給できるようにしていきたいです。
今年の夏は『仮面ライダー』の映画とコラボを行いますし、いろいろな形でPS VRが登場して、さまざまな体験をしてもらえるようにしていきたいですね。
――ゲームファン的には、大手メーカーがPS VR向けのタイトルを発表しない点が気になっていると思うのですが、こちらについてお話できることはありますか?
いろいろなゲームでPS VRを楽しみたい方が多いと思いますので、『サマーレッスン』や『FFXV』のPS VRコンテンツなど、タイトルにあわせてVRの体験もできるものが今後増えていくと思います。
『バイオハザード7』のように、フルでゲーム体験をできるようなものも出てくるべきだと考えていますので、出していただきたいと思っています。
今後は『エースコンバット7』や『グランツーリスモSPORT』などが登場しますので、いろいろな体験ができると考えています。
――映像などのソフトウェア的な部分での広がりも期待されていると思いますが、さらなるシステムバージョンアップなどは予定されていますか?
具体的な話はできないのですが、VRで目指しているのは今年だけではありません。
ゲームの中に入り込むというのは、ゲーマーの夢だと思っていますので、できるだけ素晴らしい体験を提供していくこと、ゲーム以外の体験を楽しめるようにすることはやっていきたいです。
もう1つは、映像体験としてテレビ以来の革命だと思っているんですね。テレビの前に座っているだけでなく、中に入りこむ体験は、テレビと同等のレベルで普及していくべきテクノロジーだと思っています。
でも、PS VRだけでそれを達成できるとはならないと思いますので、視点はそこに持ちつつ、今後の技術開発にあわせたコンテンツの開発を整えられるようにしていかないといけません。
どちらかと言うと、技術開発にあわせたコンテンツ開発の中で何かが起こるかもしれないですね。
――VRだけの短期的な話だけでなく、VRを使った大がかりな外側のシステム作りも含めた考えになるわけですね。
我々の中でも、ロケーションベースでSonyのコンテンツを楽しめるということを組織として発表しています。
コニカミノルタさんが発表されたプラネタリウムのような体験についても、我々からハードウェアとして提供をしていますし、いろいろな可能性がPS VRにあると思っています。
その中で、コンテンツだけでない外側も進化していくべきだと考えています。
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