2017年6月15日(木)
米国・ロサンゼルスにて、現地時間6月13日~15日に開催されているコンピュータゲームの祭典“Electronic Entertainment Expo 2017(E3 2017)”。ここでは、E3会場で実施した『ロストスフィア』橋本厚志ディレクターのインタビューをお届けする。
『LOST SPHEAR(ロストスフィア)』は、『いけにえと雪のセツナ』に続く“Project SETSUNA”の第2弾タイトル。Project SETSUNAのコンセプト、目標は、JRPGの黄金期と言われる90年代にあったRPGスタイルをベースに、今の技術でさらに進化させて新しいRPGを作ることで、『ロストスフィア』もそのコンセプトを継承した作品となっている。
本作では、記憶がテーマに置かれている。この世界ではすべてのものに記憶が宿っており、その記憶が抜け落ちてしまうと“ロスト”という真っ白な状態となって、すべての機能が停止してしまうのだ。
主人公のカナタは、ものに宿る記憶を操る力を持っている。その力を使い、ロストしたものを復元したり創り変えたりしていくことで、世界を救うためにロストに抗っていくことになる。
インタビュー前のデモプレイでは、主人公たちの故郷である月鐘の街“エル”と、その周辺を確認できた。街では住人に話しかけて情報収集したり、宿屋に泊まって回復したり、アイテムを購入したりと、RPGの基本とも言える行動を取ることができる。また前作『セツナ』同様、街やフィールドの光るポイントを調べることで、アイテムを入手することも可能だ。
ダンジョンでは、敵に近づくとシームレスでバトルに突入。バトルシステムは『セツナ』同様にアクティブタイムバトル2.0がベースとなっている。また、攻撃時にタイミングよくボタン入力することで追加効果を得られるセツナシステムも前作から継承されている。
バトルにおける新しい要素は、行動を選んだ時に移動ができること。うまく立ち回れば複数の敵を巻き込んで攻撃することができるので、攻撃範囲が広いスキルと移動を効果的に組み合わせれば、戦闘を有利に運ぶことができる。
デモプレイの最後では、ロスト現象についても確認できた。ロストした場所はフィールド上で部分的に真っ白になっており、進入することができない。物語冒頭ではエルの街もロストによって消失してしまい、そこから主人公たちの物語が本格的に動き出していく。
▲橋本厚志ディレクター |
――主人公が覚醒するのは、この最初のロストを見て徐々にという形になるのでしょうか?
橋本厚志氏(以下敬称略):そうですね、かなり早い段階で覚醒することになります。ただ、その力が持つ意味や、「ロストとは結局何なのか?」ということは、物語を進めて解き明かしていく必要があります。
――『ロストスフィア』の世界では人の死=ロストになるのでしょうか?
橋本:死とロストは別です。ただし人がロストすることはありえます。
――主人公の能力は人のロストについても干渉できるのですか?
橋本:ロストについては干渉できます。
――記憶というと、人には持っておきたい記憶となくしたい記憶があると思うのですが、主人公はすべての無くした記憶を救おうとするのですか?
橋本:記憶という言葉だけだとちょっと誤解を招くかもしれませんが、感覚的には人の記憶というより星の記憶というイメージです。ストーリーに大きく関わる部分なのであまり言及できませんが……。
――最初に世界を作ったのは月であるというモノローグがありました。月が監視者になってずっと見ているみたいな印象を受けますが、月にも記憶はあるんでしょうか?
橋本:そのへんはご想像にお任せします(笑)。アート的にもそうですし、物語としても月が重要な役割をはたしているのは事実、とだけ言っておきましょう。
――記憶が世界を形作ってそれを復元していくというのは、どのように生まれた発想なのでしょうか?
橋本:もともと記憶というワードがあったわけではないんです。システム的な遊びやシナリオなどをいろいろ考えていくうちに、それぞれをどう繋いでいくか、という部分で、記憶というキーワードを用いると一本筋が通るね、という話になったんです。なので、開発としてやりたいことのベースがあったうえで、記憶というキーワードが出てきたという流れです。
――バトルの面についてもお聞きします。先ほど自由に移動できるとうかがいましたが、敵側も同じように自由に動いてくるんでしょうか?
橋本:敵は一応自由に動いてきますが、こちらの攻撃を避けるために移動したり、ということはないですね。あくまで主人公たちが戦略的に戦えるようにするためのシステムと思っていただければ。
――移動するためには別に用意されたゲージのポイントを使用しなければならない、などのシステムはありますか?
橋本:そういうデメリット的なものはありません。また、移動を駆使しないと苦戦するような形にもしたくないので、普通に戦っていてもなんとかなるようにしています。
さらにいうと、シミュレーションゲームなどによくある“後ろに回り込んで攻撃するとダメージが大きい”といったシステムも意図的に入れていません。こういったものも、採り入れ方次第で遊び方を強いることになってしまう場合がありますので。
――プレイヤーは、効率よく攻撃できるように自ら微調整できるという感じでしょうか?
橋本:そうですね。また、味方同士距離を置くことで敵の範囲攻撃を回避する、ということも可能です。そういう意味では、自由に移動できることが攻略に影響してくるところは当然あるのですが、それを理解しなくても遊べるようになっています。
――前作『セツナ』での経験や反省点を踏まえて、なにか本作のバトルに採用した要素はありますか?
橋本:『セツナ』で得た手ごたえやご意見をベースにしているのは間違いないです。バトルは特にわかりやすいのですが、このキャラがもうちょっとこっちのキャラと近かったら一緒に回復できるのにとか、そういうジレンマを感じていたというご意見をいただいていました。
こういったプレイで感じるジレンマをどう解消していけば良いかチーム内で試行錯誤した結果、自由に移動できる形に落ち着きました。移動システム1つとっても、いろいろフィードバックがあったうえで実装されています。
――ストーリー面で『セツナ』と『ロストスフィア』は何か関係がありますか?
橋本:繋がりはないと思っていただいて構いません。ただ一部のワードが共通になっていたりはしますので、自由にご想像していただければと思います。
――それでは『セツナ』をプレイしていなくても楽しめるけど、プレイしていると何かピンと来るところがあると。
橋本:そうですね。でも、本当にプレイしていなくても100%楽しめると保証できます。
――今回4人のキャラクターがすでに発表されていますけど、キャラクターの描写で大切にしていることはありますか?
橋本:今回仲間同士で会話できるパーティトークという要素があるのですが、今回はイベント以外の何気ない会話でもキャラクター性を掘り下げることができればと思っています。長い会話とかではなくて一言二言だけ話すみたいな感じですが、そういうところでキャラクターの細かい感情などを表現できればと思っています。
――現在公開されているパーティメンバーは4人ですけど、これ以上増えることはありますか?
橋本:現段階ではご想像にお任せします(笑)。1つヒントを言いますと、トレーラーを見ていただければ、と。
――ワールドマップの雰囲気がすごく綺麗だと思ったのですが、デザイン的な部分で大事にしたことはありますか?
橋本:『セツナ』でも、光の表現にはかなりこだわっていました。ただ、雪景色が主体の表現でしたので、本作ではもっと突き詰められる部分があったんです。本作はさまざまなロケーションがありますから、セツナとは違った形で光の演出にもいろいろこだわっています。
――街がミニチュアみたいになっていたりと、本作独自の表現があるように思えます。そういう点でこだわっている部分はありますか?
橋本:先ほどの光の話に繋がりますが、本作の制作にあたってフォトリアル的な表現はちょっと違うなと思っているんです。90年代のRPGには、想像する楽しさみたいなものがあったと思うんです。僕らはそこを大事にしたいと思っているので、おっしゃっていただいた部分はその賜物だと思います。
イベントとかもそうですが、キャラクターの顔がアップになって表情を細かく描写するというよりは、セリフから「今こんなことを想ってこういう行動をとっているんだ」と、想像しながらプレイする楽しさを目指しています。
――前作『セツナ』は複雑な人間関係が描かれていたと思うんですが、今回はどのようになるのでしょうか?
橋本:じつは『セツナ』の時はもう少しキャラクターを掘り下げてほしかったという意見もいただいていたんです。今回のパーティトークはシステムでそれをフォローした形ですね。ただ、先ほどお話しした想像する楽しさという面では、なんでもかんでも掘り下げるのは違うとも思ってはいます。
――全体的なボリュームはどのくらいになるのでしょうか?
橋本:『セツナ』のボリュームはだいたい20時間くらいでしたが、『ロストスフィア』は30時間くらいになるかと思います。ただ、いろいろやり込むともう少し長くなりますね。『セツナ』の時にも言っていたのですが、誰でもちゃんとクリアできるくらいのボリュームにしたいと考えています。
――公式サイトのBGMがすごくいいと思うのですが、音楽面で何かコンセプトはありますか?
橋本:『セツナ』はピアノオンリーのBGMで評価していただきました。ただ、同じことを続けるのではなく、ピアノを軸にしつつ、曲ごとに違う楽器を組み合わせるという形にしています。
――今回ワールドのバリエーションが豊かになりましたが、それにあわせて曲調が変わるみたいなことはありますか?
橋本:今回ピアノオンリーにしなかった理由の1つとして、ワールドのバリエーションが豊かになったことがあるんです。ピアノオンリーではそのロケーションの幅を表現するのは厳しいだろうなというのもありました。
ちなみに余談ですが『セツナ』は街単位で曲が違ったんですが、今回は違う街でも同じ曲が流れたりもします。より曲単位で覚えてもらえるのではないかと思いますね。
――2017年秋発売となっていますが、開発の進捗状況はどうですか?
橋本:けっこう順調に進んでいまして、QAのチェックが始まったところです。今後は最終調整に向かっていく感じになります。新情報も、夏休みが始まる頃からどんどん出していけると思います。
――今回、PS4とNintendo Switch、2つのハードに対応していますが、ハードごとに何か違いはありますか?
橋本:ゲームの内容、仕様に関してはハードごとの違いはありません。
――それでは最後に発売を楽しみにしているユーザーにメッセージをお願いします。
橋本:これからまさに最終調整へ進んで行くところです。90年代のスタイルとずっと言ってきていますが、それだけではなく、まだお話しできていない新しい要素もあります。トレーラーにいろいろヒントが隠されているのでいろいろ想像して楽しみに待っていてください。よろしくお願いします。
(C) SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. Developed by Tokyo RPG Factory.