News

2017年6月15日(木)

『追放選挙』プレイレビュー。惜しい点もありつつ、追放による分岐など新たなチャレンジを感じ取れるADV

文:カワチ

 どうも! デスゲームが好きすぎて、宝くじが当たったら田舎で自作のデスゲーム(人に危害は加えない感じで!)を開催しようと心に決めているカワチです。

 今回はそんなボクが日本一ソフトウェアからPS4/PS Vita用ソフトとして4月27日に発売された『追放選挙』を、リプレイ形式でレビュー! その魅力をお伝えしていきたいと思います!!

『追放選挙』
▲地獄のデスゲームが幕を開けます!

デスゲームものにありがちなちょっと長めのプロローグ

 ゲームを開始すると、世界が凶暴な怪物のせいで荒廃したこと、生き残った人類が遊園地に集められていることが説明されます。

 ……こういったデスゲームものの場合、大抵世界観に仕掛けがあったりするため、本当に世界が滅んだのか怪しいところですが、ここは主催者側の言うことを信じるとしましょう。人類の管理者を名乗るアリスもかわいい外見をしていますから、きっと悪いヤツではないハズです!

『追放選挙』
▲進行役のアリス。謎がありまくりですが、かわいい。

 まぁ、その後アリスは生き残った12人が殺人ウィルスに感染していると告げ、残り2人になるまで3日ごとに“選挙”を行って、メンバーを危険な外の世界に追放しろと言ってくるんですけどね。えげつないウサギだな、オイ!

 まぁ、ボクはデスゲームにおける人間関係のギクシャクを見るのが大好きですから、こういう展開は願ったり叶ったりですけどね!

『追放選挙』
▲アリスはヤバいヤツでした。でも、ボイスが五十嵐裕美さんなんですよ……。かわいい声でひどいこと言いまくるの、ずるい! 好き!

 さて、そんな状況の中、幼なじみの蓬茨苺恋(ほうしいちか)とともにミステリアスな少女・ノーリを保護することになった主人公の一条要。彼は部屋にあったぬいぐるみを手に取ったことで、自分には妹がいたことを思い出します。

 実は妹は、怪物から逃げている途中で襲われてしまい、もはや手遅れの状態に。そのため、他のみんなから最初の追放者として選ばれてしまったんです。そして、その記憶はアリスの手によって参加者全員から消されていました。

『追放選挙』
『追放選挙』
▲すでに妹の未彩(みさ)は安全な遊園地から追放されていました。せっかくかわいい妹とキャッキャできる(妄想)と思ったのに……許さんぞ!

 「公平を期すために」という理由で選挙中の記憶をリセットするというアリス。要は、自分が率先して立候補して選挙に参加するので、これ以降は自分の記憶を消すなと取引を持ち掛けます。

 アリスからの了承を得た要。彼は妹を見捨てる選択をした9人を殺すために動き出す……というところまでがプロローグですね。結構ここまでが長めですが、設定などを理解するためには仕方ないのかもという印象です。

 妹への復讐という大義名分があるとはいえ、デスゲームに積極的な主人公って珍しくないですか? 復讐を目的としているため、主人公に感情移入するのは難しいかもしれませんが、純粋に物語として楽しむ分には新鮮なのではないでしょうか? ガッツリ感情移入して楽しんじゃうのもアリだと思います!

『追放選挙』
▲やる気マンマンの主人公・要くん。記憶を消される前に、妹を追放された怒りから暴れまわったみたいです。

グループごとに追放する順番を自分で決められる!

 ここから、要(プレイヤー)は3日に1度行われる“選挙”に備えて情報収集と人心掌握に走り回ることになります。おもしろいのは、要は“共感覚”によって他人の嘘を赤い色として認識することができるということ。

 他のキャラクターがついている嘘は、その真意まではわからないので、どうしてそんな嘘をついたのか考えながらプレイするのが楽しいです。

『追放選挙』
▲平然と嘘をつくキャラクターもいれば、逆に「え? それ冗談じゃないの?」と驚かされるキャラクターいたりとおもしろいです。

 また、アリスから受け取ることができるカードを資料室で使用することで各キャラクターたちの過去を見ることもできます。これがなかなかおもしろく、カードを手に入れるたびに「誰の過去が明かされるんだろう」とハラハラします。

『追放選挙』
▲アリスによると、メンバーの中に“殺人を犯した者”が少なくとも“1人”はいるとのこと。それを予想しながらデータベースを読んでいくのが楽しい。

 さて、登場キャラクターたちは主人公も含めて4つのグループに分かれており、自分たち以外のどのグループから追放していくか選ぶことができます。端的に言えば自分で殺す順番を選べるということですね(笑)。

 「お気に入りのキャラクターは長生きさせたいから、とりあえずどうでもいい人物から殺そうかな」と思ったりしましたが、よく考えればヒドいですね(笑)。

 ちなみにキャラクターのグループをざっくり紹介すると、まずは作中でAグループと呼ばれるのが腐女子の姫野実乃璃、その弟の姫野勇璃、勇璃の親友である石動道宗の3人。等身大の中学生グループで協調性もある人たちです。遊園地からの脱出を計画しているなど、デスゲームにも否定的ですね。

『追放選挙』
▲健全な中学生グループといった感じの3人。要の立場から言えば、一番扱いやすそうなグループと言えそうです。

 Bグループは中学生の双子とその家庭教師によるグループ。病弱な大学生である伊純白秋を双子のアーシャとカーシャ心から慕っているという構図ですが、しゃべっているセリフが赤文字だらけのため、それぞれの本心は違うということがわかります。なかなか一筋縄ではいかなそうな3人です。

『追放選挙』
▲嘘まみれで、その真意がわからないBグループ。……そういうことは置いておいて、かわいい双子に慕われるなんて、うらやまけしからん!

 最後のCグループはAとBのどちらにも属していない3名をまとめたもので、協調性もなくクセの強い人間が多いです。メンバーは他人に攻撃的な態度を取るチンピラの絢雷雷神(あやらいづき)、飄々とした態度で本心が見えない料理人の忍頂寺一政、他人に無関心すぎる百合園志歩理の3人です。

『追放選挙』
▲それぞれがかなりクセの強いCグループの面々。年齢も他のグループより高めなので、何かと邪魔になることもありそう……?

 以上の9人が復讐すべき人間です。なかなか個性的ですね。さて……どのチームから崩していくか。

 当たり障りのないAグループにしようかなとも思ったのですが。やっぱりデスゲームで最初に見せしめで死ぬのはチンピラしかいないな(偏見)と思い、Cグループを選ぶことにしました。一政と志歩理には恨みはないけど……ボクは雷神を追放したいんだ!

『追放選挙』
▲チンピラだからという理由で、最初の追放者は雷神に決めた! こんな感じで、自分の好きなように追放する順番を決められます。

 アリスに雷神を指名すると伝えた後、マップ移動画面で彼のもとに向かってみます。話をしてみると……あれ? 意外といいヤツのような気がしてきました。彼とは他のメンバーの情報を共有するという約束をしましたが、時すでに遅し。最初の追放相手に選んでしまいましたからね……。だ、だってチンピラだったから……。

『追放選挙』
▲殺さないと言ったな。あれは嘘だ。要は自分の言葉の嘘も見えちゃいます。

 そして、ついに最初の選挙がスタート。議論のテーマは“記憶消去装置の使用”というもの。この装置があれば両親を通り魔に殺された少女の社会復帰を促すことができるのではないか? という内容でした。

 てっきり12人の中から誰を追放すべきか? という議論をすると思っていたのですが、架空のテーマで議論をするんですね。

 最初は「これではギスギス感が足りないんじゃないか?」とも思ったのですが、それぞれ議論するテーマ自体はおもしろいですし、そのテーマが選挙で戦う人物の過去に直結しているものだったりして、より深くキャラクターのことを知ることができます。

『追放選挙』
▲選挙はほぼタイマンでの対決になります。

 最初の相手である雷神は人となりを調べている余裕もなかったため、どんなことを考えているのかわからず、ちょっと焦りました。

 しかし、選挙パート自体は基本的に選択肢を選ぶだけ。個人的には、もうちょっと選挙パートのシステムが複雑でもいいような気がしましたね。選挙中の会話もほぼ1対1で進行しますし。

 間違えてもすぐにやり直すこともできるのですが、選択肢を選ぶ際の制限時間がかなり短く、間違いが重なると少し不便だなと感じました。また、一部の選択肢が少し主張の意味がわかりにくいところもありました。

 選挙自体は難しくはないので、雷神はあっさり追放することができました。追放された人の記憶はなくなっても、その人への感情は残ってしまうのですが、雷神に関しては特に他の人物への影響はなし。記憶にも感情にも残らなかった、雷神かわいそう……、ってちょっと思ったり。

『追放選挙』
▲全員があっけらかんとしていました(笑)。

 そして次に追放するのは一政に。彼からはなにやらヤバそうな匂いがプンプンするので早めに葬り去ることにしました!

 選挙を始めてみると、予感は的中。ネタバレになるため詳しくは語りませんが、一政は完全なサイコパス野郎でした……。早めに追放しておいてよかった! でも、逆に終盤まで生き残らせていたらどうなったのかというのも気になりました。

『追放選挙』
▲ただのヤバいヤツでした。イケメンだし、女の子に人気が出そうと思いましたが、こんなヤツについて行っちゃダメですよ!

 また、選挙では追放された人間も人格を再現したアバターで参加するため、雷神も参加しているのに驚きました。いなくなっても出番があってよかった!

『追放選挙』
▲選挙の前にはテーマを説明するためのミニドラマをキャラクターたちが演じますが、それぞれ普段とは違う設定なのでちょっとおもしろいです。

 さて、Cグループの最後は志歩理。何を考えているのかわからない彼女ですが、“完全なる秩序による統制が可能なAIの起動”というテーマで議論をすることで心の内を覗くことができました。

『追放選挙』
▲ようやく彼女のことが少し理解できたと思ったのですが……。

 しかし、このゲーム……キャラクターの持つ心のトラウマを紐解いたところで“追放”しなきゃいけないんですよね。わかり合うことができずに、ちょっと切ないです。

生き残った人々とのイベントで人物像がわかってくる

 まぁ、気を取り直して次に追放するグループを選びましょう。次は仲がよさそうに見えて、実は複雑な関係のBグループにしました。

 双子のアーシャとカーシャは大好きな白秋を自分のものにするため、つねにガチの殺し合いをしているようです。だったら片方がいなくなったらどう関係が変わるのか、楽しそうで見てみたくなったんですよね。

『追放選挙』
▲ギリギリのバランスを保っているBグループ。誰が欠けても、おもしろい展開が期待できそう。

 選挙が終わった後は切ないといったばかりなのに、楽しそうという理由で殺す相手を決めちゃってゴメンナサイ!

 少しアーシャとカーシャのどちらを追放するのか迷いましたが、あいうえお順でアーシャから追放することにしました。

 “完全なる不老不死”というテーマでアーシャと戦い、彼女を追放。その後、実はアーシャとカーシャには白秋の前にも好きな人がいて、2人で“半分こ”にしたけど、それでは満足できなかった……という過去のエピソードが語られました。なんだ、それ! 怖すぎだろう!!

『追放選挙』
▲ホラーかな?

 さて、アーシャがいなくなると白秋とカーシャはどうなるのか。2人に早速会いにいってみました。

 邪魔者がいなくなったカーシャが白秋に思う存分ラブラブ攻撃をしかけています。そして迷惑そうもしている白秋。なんかアーシャがいなくなっても構図はあまり変わらないような? 2人にとってアーシャはそれだけの存在だったということでしょうか……。かわいそうなアーシャ!

『追放選挙』
▲カーシャちゃん大勝利!

 次に追放するキャラクターですが、白秋を選んだ場合はカーシャには愛を注ぐ対象がいなくなってしまって、逆にカーシャを選んだ場合は白秋は束縛するものがなくなり自由になることができるわけですよね。

 うーん、どちらの展開もおもしろそうです。悩むところですが、今回は白秋を追放し、カーシャだけを残してみることにしましょう!

『追放選挙』
▲ちなみにそのころAグループは、実乃璃が道宗と勇璃でBL妄想をしていました……。

 “全ての犯罪者が確実に裁かれる世界”というテーマで白秋と戦い、勝利。ひとりぼっちとなったカーシャに会いに行ってみました。

 すると、なぜかベタベタと主人公にすり寄ってくるカーシャ。いったいどうなってるの? と思ったら、行き場を失った白秋への感情がこちらに移ってるのか! これはヤバい!!

『追放選挙』
▲怖いよぉ……。

 は、早く始末しなければ……ということでカーシャもサクッと追放。いよいよ残るのはAグループのみとなりました。

いよいよ最後のグループを追放……

 最後のAグループを追放するべく、彼らに近づいてみました。どうやら道宗はかなり主人公のことを疑っているようです。まぁ、これだけ人が死んでいればね……。

『追放選挙』
▲めちゃくちゃ疑われていますね。

 道宗を追放してもよかったのですが、せっかくなので彼が大事に守ろうとしている2人を奪うことにします。追い打ちです。よし、まずは実乃璃からだ!

 ……なんか自分が鬼畜になっていっているようで怖いのですが、きっとこのゲームはこの楽しみ方が正解なのだと思います! そう思いたい!!

『追放選挙』
▲あいかわらずでテーマ説明のドラマで大活躍の雷神。

 実乃璃がいなくなると勇璃は部屋に引きこもってしまいました。あせる道宗。やり場のない怒りを主人公に向けてきます。

 その後、勇璃が部屋にやってきて先に自分を殺してほしいとお願いしてきます。ここでボクは次のターゲットを勇璃ではなく道宗にすることにしました。そう! 殺してほしいという人間は逆に殺さない!! もっと苦しんでくれ。キヒヒ。

『追放選挙』
▲よし、キミは殺さない!

 道宗を追放し、最後まで残った勇璃。大切な2人の記憶を失った彼は行き場のなくなった感情を主人公にぶつけてきます。うわ。めちゃくちゃかわいいんですけど……。お、男の子なのに……。

『追放選挙』
▲こんなにかわいい子が女の子のはずがない!

 その後、彼の願いを断る主人公。復讐する相手とはいえ、かなり辛辣な言葉を勇璃に投げかけます。なんかここにきて勇璃がかわいそうになってきました。めっちゃ泣いているし……。要は勇璃にまで復讐をしてしまうのでしょうか、それとも……?

『追放選挙』
▲いったいこの先、どうなっちゃうの!

 と、リプレイはここまでにしておきましょう。その後の主人公たちの運命は、ぜひ本作をプレイして確かめてみてください!

 ちなみに、どうしても気になったのでCグループを最後まで残すパターンも試してみました。一政がサイコパス野郎であることがさらにわかったり、主人公にずっと利用され続ける雷神がかわいそうだったり、志歩理のおかげで苺恋のドン引きする一面も見れたりと、こちらはこちらですごく楽しかったです!

 追放するタイミングでいろいろなイベントを見ることができるのがおもしろく、既読部分のスキップ(早送り)もできるので、周回プレイも問題なく楽しめます。ぜひ、全ルートを遊んでみてくださいね!

『追放選挙』
▲こちらのルートはこちらのルートで大変なことに!

 ということで、一通り本作をプレイしたボクの感想ですが、選挙パートの地味さをはじめ、復讐対象のキャラクターは掘り下げがあるものの、つねに一緒にいるヒロインが逆に薄めになってしまったりと、残念な部分も確かにあります。

『追放選挙』
▲選挙で自分で頭を使って戦うゲームというより、ノベルゲームとしてキャラクターの葛藤などを楽しむ作品だと感じました。

 ですが、復讐が目的のダークな主人公や自分で殺す順番を選べるルート分岐要素など、チャレンジブルな部分も多くてかなり楽しめました。謎の少女・ノーリやアリスの秘密など、ストーリーもなかなかおもしろかったです。

 また、舞台化などの展開もあるようなのでそちらがどういう演出になるのか楽しみです。かなり続編に期待したいタイトルなので、ぜひ、たくさんのADVファンに遊んでもらいたいです!

(C) 2017 Nippon Ichi Software, Inc.

データ

関連サイト