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2017年6月24日(土)

【電撃PS】SIE・山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』を全文掲載。テーマは“Vなま”について

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『電撃PlayStation』

 この記事では、電撃PS Vol.640(2017年6月8日発売号)のコラムを全文掲載!

第109回:“Vなま”について

 今回は、現在制作中の『V!勇者のくせになまいきだR』について、制作レポートをしてみようかなと思います。この号にゲームの紹介記事も掲載されているはずなので、併せて読んでいただけると嬉しいです。

 『V!勇者のくせになまいきだR』、僕は通称“Vなま”と呼んでいますが、開発状況は佳境中の佳境。ウチのスタジオの制作段階で言えば、α承認が降り、最後の山場、β承認に向けて突っ走っているところです。(株)アクワイアの精鋭達も体力的にはかなりキツい日々だと思いますが、開発後半特有のギラギラした精神力でギリギリのチューニングを施してくれています。

 僕としては、最後の最後、嵐のデバッグ期間用に体力を温存しておいて欲しい気持ちでいっぱいですが、それはそれ。限界まで良くしようと泳ぎ続けてしまうのがクリエイターというものなのです。プロデューサーの鳥山君も、いつ寝ているの? というくらい、深夜から明け方のメールにガンガン対応してくれています。ほら、日本が寝静まると海外の仕事が開くので、ローカライズ関連のやりとりでずーっと連絡が入り続けるわけですね……。ガンバレ、みんな!

 さて、僕にとってもチームにとっても、“VRゲーム”の制作はすべてが初体験。なので事の大小はありつつも、いつもの制作作法とは違うところがたくさんあり、戸惑いながらここまで進めてきた感じです。ほんと、これまでの当たり前が当たり前じゃなくなるって大変。でも何らか解答は見つけなければならない。そんな例をいくつか紹介したいと思います。

 まず、VRゲーム制作の苦労話としてよく語られるのが、“VRゲームは、カメラをプレイヤーに委ねているので演出が難しい”という問題。これは本当にそうで、物凄く苦労しています。『Vなま』は、コンセプトとして、現実にある体験をVRで代替するアトラクションゲームではなく、VR空間の中でしっかりとしたゲームルールを遊ばせよう、ということを標榜して作っています。

 で、ルールを楽しんでもらうということは、まずはそのルールを理解してもらわなければならない。そのためにはチュートリアルの要素がかなり重要になるのですが、これが先ほどの“カメラはプレイヤーに依存問題”により、思うようにいかないわけです。

 たとえば、説明のため空間上のあるポイントに注目して欲しいようなシチュエーションがあったとします。通常のゲームだとそのポイントにカメラを向ければ済むのですが、VRでこれをやると、簡単に酔いを誘発してしまう。いわゆるモーションシックネスというやつですね。

 ではどうするかというと、カメラ移動自体をゲーム側が強制することはできないので、魔王というキャラクターに“キラキラしたところを見てください”といったセリフを喋らせ、音声で誘導したりします。ただ、音声はうっかり聞いていない場合も多く、情報をその場に滞留させることができないので、どこを見ていても視界に入るような大き目のエフェクトを出すなどして、音声と同時に見てほしい方向を促したりするのです。

 他にも、VRゲームって“実在感”ということが魅力の一つとしてよく言われます。感覚的には、そこにいる感じがハンパない、ということになるでしょうか。確かに、VR空間に入ったときのそこにいる感じは、ちょっと普通のゲームでは味わえないダイナミズムがあります。しかしこれも、“そう感じさせる”にはかなりの調整が必要になります。

 『Vなま』の場合、“魔王の部屋で楽しむリアルタイムストラテジー”なので、魔王がそこにいる感じは大事にしたいわけです。しかし実際、魔王はこの世にはいませんよね。なので最初は、存在感自体にすごく違和感がありました。VR空間は、そこに入るとまず自分自身のスケール感を否応なく定義させられます。人間型のキャラが同じ目線で立っていると、つまり自分も同じくらいのサイズなんだな、と理屈ではなく理解させられるのです。

 そうした場合、魔王のようによく分からない存在が目の前にいると、“え?”となるのですね。というわけで、当初は2Dのイメージも大事にしつつ4頭身くらいでデザインしていた魔王を、“そこにいる感”を向上させるため、結果的に人間に近い6頭身程度のバランスにしたりしました。

 まだまだいっぱい苦労はあるのですが、そんな『Vなま』の最新ビルドを、先日電撃PS編集部の面々が遊びにきてくれたので、最後に、ヒジョーに盛り上がったそのときの写真をご紹介しますね(笑)。

『ナナメ上の雲』

ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ 部長兼シニア・プロデューサー。PS CAMP!で『勇なま。』『TOKYO JUNGLE』、外部制作部長として『ソウル・サクリファイス』『Bloodborne』などを手掛ける。現在、『V!勇者のくせになまいきだR』を絶賛制作中。公式生放送『Jスタとあそぼう!』にも出演中。

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.641』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2017年6月22日
■定価:694円+税
 
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