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2017年6月28日(水)

【電撃PS】『カリギュラ』発売1周年記念レビュー! “見てはいけないものほど見たくなる”名作

文:電撃PlayStation

 フリューが2016年6月23日に発売したPS Vita用RPG『Caligula ‐カリギュラ‐』。本作は、“見てはいけないものほど見たくなる、してはいけないものほどしたくなる”という意味を持つ“カリギュラ効果”をタイトルの由来とした、オリジナルの学園ジュブナイルRPGです。

『カリギュラ』

 シナリオを里見直さん、キャラクターデザインをおぐちさんが担当。サウンドには増子津可燦さんのほか、インターネットを中心に活躍するサウンドコンポーザー9名が起用されています。

『カリギュラ』
▲キャラクターデザインを担当したおぐち氏による発売1周年お祝いイラスト。
『カリギュラ』
▲PR漫画『エクストリーム帰宅部』の作者・大川ぶくぶ氏による発売1周年お祝いイラスト。

 今回は、発売1周年を記念して『Caligula ‐カリギュラ‐』の魅力を再チェック。最終アップデートであるVer1.05までの内容を踏まえたレビューをお届けしていきたいと思います。

アップデートを経て遊びやすさも楽しさも増した『カリギュラ』

 帰宅部活動開始だ! というわけで、みなさんこんにちは。電撃PSの『カリギュラ』担当ライター・まさんです。もう、発売から1年も経つのですね。ボクがこのゲームを知ったのはフリューさんの企画書を読んで、収録現場取材に立ち会ったことがキッカケでした。企画書を読んだ時点で大興奮したのを覚えています。

 見てはいけない物を見たくなる“カリギュラ効果”というテーマ。理想の世界で、本当の自分が持っている闇の側面を隠しながら生きているキャラクターたち。それを暴くキャラクターエピソード。ボーカロイドの楽曲で有名な人たちが手掛けるBGM。これらの要素がメチャクチャおもしろそうだと感じて、積極的に推していきたいと編集部で言ったことを覚えています。

『カリギュラ』

 そこから実際に遊んでみたところ、里見直さんによるシナリオでグイグイ引き込まれ、未来予測をしながら戦う“イマジナリーチェイン”といったバトルや、500人のNPC全員に用意されたサブクエストなど、とにかく予想外のボリュームと魅力的な要素の数々に、仕事であることを忘れてハマっちゃいました。

 ファンブックの『LOVE! Caligula 【付録:描き下ろしイラストA2判タペストリー】 (e-MOOK)』や、ノベライズ『カリギュラ EPISODE水口茉莉絵~彼女の見た世界~ (GAノベル)』、『Caligula -カリギュラ- オリジナルサウンドトラック』まで、関連商品も全部購入。今でも続編を待ち望んでいるほど好きな作品です。

 自分は電撃PS Vol.617のレビューで95点をつけましたが、本作は発売後にVer1.05までパッチでアップデートが入り、追加要素も無料で配信されて初期とは別物と言っていいほどの進化を遂げていきました。この点を知らない人は少なくないのではないかと感じています。というわけで、今回はアップデートを踏まえた本作のレビューをお届けしたいと思います。

『カリギュラ』
▲アップデートでいろいろと便利な要素が追加されました!

里見直氏のダークな作風と凝ったゲーム性がマッチ!

『カリギュラ』

 アップデートによる差異へ触れる前に、まずは『カリギュラ』がどんなゲームなのか簡単に説明していきましょう。本作は、誰もが理想的な姿で過ごせる世界“メビウス”にとらわれた主人公となり、“帰宅部”の一員として理想世界からの脱出を目指すRPGです。

 メインシナリオだけを追うと王道な物語として話が完結しますが、キャラクターごとのエピソードを見ていくと里見さんのシナリオらしい“闇が深いトラウマ”が見られる独特な構造が特徴になっています。キャラクターのエピソードは見なくてもクリアできますが、きちんと見たくなる展開になっているのが流石です。

 しかも、隠された闇の部分はメインキャラクターだけではなく、ゲーム中に登場する500人のNPCにも用意されています。攻略にはまったく関係ないですし、理想の楽園に救いを求めている人たちなので悩みもヤバい物ばかり。ちょっと特殊な性癖の持ち主やら犯罪者やら……理想の楽園の裏側にある闇をのぞき見る背徳感がたまりません。

『カリギュラ』
▲NPCにはさまざまなトラウマがありますが、なかでも“ハイブマインド”関連はヤバい! SF小説でよく出てくる概念ですが、本気で見なければよかった系のエピソードなので気になる人だけ見てください!

 里見さんのシナリオや細かいクエストのおもしろさはもちろん、新規IPとしては驚くほどゲーム自体も作り込まれてています。未来の行動を妄想として見られる“イマジナリーチェイン”を利用してコンボを組み立てていくバトルシステムは、オリジナリティがあって戦略性もバッチリ。最初はルールを理解するまで苦労しましたが、その試行錯誤も楽しかったです。

 ただ、空中に浮かせて落ちないようにコンボし続けることが基本となるため、慣れてくるとこんなふうに空中に浮かせたままボスまで次々と処理できるようにもなってしまいます(笑)。

 レベル補正が強いのでゴリ押しするとこのパターンを多用しがちなのですが、むしろコンボを乱されやすい格上(+5レベルくらい)と戦うときが楽しいシステムかもしれません。戦略を間違えるとパーティが壊滅するので、ほどよい緊張感が楽しめます。

『カリギュラ』
▲アップデート後も強い琴乃さんの“アセンションセラフィム”。

 やり込み要素も多く、クリア後の敵はレベルもメチャクチャ高いので倒しがいもアリ。ラスボスを「オラッ、欲望全部受け止めろや!」と何度も倒して経験値を稼ぎ、彗星にまたがっているヒマもなく延々とラスダンマラソンをした経験。本作にハマった人ならあると思います。ある程度レベル上げをしたらワールドリワードの敵と戦ったほうが効率が良くなりますが(笑)。

 ほかにも、仲間を含めた500名以上のキャラクター同士の相関図“因果系譜”を紐解き、彼らの悩みを解決しながら“メビウス”のいびつな裏側を知るやり込み要素が楽しい。LINEのようなSNS“WIRE”で仲間たちとやり取りするオマケ要素などなど、やり込み要素は盛りだくさん!

 とくにWIREは物語の進行や状態に応じて中身が変わり、仲間の1人、維弦のWIREや別行動中の鳴子のWIREなど、細かいネタも仕込まれているので読み応えがあります、鳴子のWIREを読み逃した人は、2周目で「楽しい時間にしてやるよ」って考えながら読みましょう。

『カリギュラ』
▲NPC500人+αの悩みを解決し、因果系譜を埋めるのはかなり大変です。ボリューム満点のサービス精神ですね。

 全体的に、戦闘で流れるボーカル入りの曲とボス戦の曲が各ダンジョンのボスの心情を表していたり、エントランスの1枚絵で表現された背景が良かったりと、とにかく世界観の構築がうまいのもポイント。

 増子さんのBGMもいいのですが、ボーカル曲はバリエーション豊かで耳に残り、何度も聞いているうちにサントラが欲しくなると思います。自分は即買いました。とくに“コスモダンサー”と“sin(Remix)”。あと“Orbit(Remix)”がお気に入りです。

 こんな感じで本当にハマる人にはハマる作品なのですが、アップデートでさらに良くなり、いろいろな人にオススメしています。という訳で、ここからはアップデートでどう変わったのかについてお話ししていきましょう。

アップデートでこんなに変わった!

 数回のアップデートを経てさらにプレイが楽しくなった『カリギュラ』。そのアップデートの内容を、一緒に振り返りながら解説していきたいと思います。

 まずは、ver1.01。ここで“ビギナーモード”と単語を集めて隠しダンジョンを解放する“ワールドリワード”機能が追加されました。

 本作はバトルが少々難しく、RPGが苦手な人には厳しい部分があったのも事実。そんな人のために“ビギナーモード”は本当にありがたい追加といったところです。ビギナーモードだとシステム上、維弦がかなり強くなるので、苦手な人は彼を使うといいでしょう。

 一方で、ワールドリワードは完全にやり込み用のエンドコンテンツ。NPCなどから入手したワードを打ち込んで隠しダンジョンを解放するというものです。強い装備品(スティグマ)も手に入るので、クリア後にやり込むのに向いています。

『カリギュラ』

 Ver1.02ではユーザビリティの改善が行われました。とくに大きかったのがセーブポイントの増加。油断して強い敵に見つかってゲームオーバーになっても安心できるようになりました。

 また、キャラクターの親密度ランクが頭の上に表示されるようになった仕様変更もありがたかったですね。基本的に会話だけで親密度をあげていくので、親密度がアップしやすくなったのも英断だと思います。

 ほかにも、重要な点として“自分よりレベル5以下のデジヘッドが襲ってこないようになった”という点も大きいです。これ以前のバージョンでは、前のダンジョンに戻ってNPCと話したくても、敵が容赦なく襲ってくるのでたいへんだったんですよね。

 ステルスゲーのように隠れて進むしかなかったのですが、このアップデートで適正なレベルの相手と戦いつつ、ザコは無視して快適に進めるようになりました。このVer1.02で追加された要素がゲームの快適性を大幅に上げたと言えます。

『カリギュラ』
▲NPCが500人もいるので、誰に話しかければいいのかひと目でわかるようになったのは、ありがたい変更点でした。

 さらに2回のアップデートを挟んで、最後のアップデート・Ver1.05では、強くてニューゲーム的なシステムや敵の強化。倒したボスとの再戦。セーブポイント間のファストトラベル。あの人と戦える隠しダンジョンと、ちょっとどうしてしまったのと思うくらい、至れり尽くせりのアップデートが行われました。

 さすがに予想外だったので自分もコレにはビックリ。ちょうど、小説版『カリギュラ EPISODE水口茉莉絵~彼女の見た世界~ (GAノベル)』が出る時で、その内容に関連した隠しダンジョンになっているのですが、小説版を読んだあとに遊ぶとグッとくるものになっています。

 ちなみに、小説版は“ゲームクリア後の話”になっているのでゲームをクリアしてから読んでください。本当にエンディングから始まるので、クリアする前に読むと超もったいないです。小説版は本編と同じくらい好きで、かなりおもしろいのでクリアしたら絶対読んで欲しいんですよ!

『カリギュラ』
▲追加ダンジョンには、ラスボスよりも強いあの人が待っています。でも、小説を読んだら行きたくなるのは間違いなし!

 さて、このように初期バージョンも十分楽しめる作品でしたが、5回のアップデートを経て遊び心地が向上しました。

 まとめてみると『カリギュラ』という作品は、“里見シナリオRPG”感を出しつつも、ボーカル曲が流れ続けるダンジョンやキャラクターエピソードといったオリジナリティがあって、本作ならではの“味”がものすごくある作品です。

 上記で解説したアップデートを経たことでゲームとしても遊びやすくなっていますし、この1作だけで『カリギュラ』という独自のタイトルを構築できているのではないでしょうか。

『カリギュラ』

 発売日以降、大川ぶくぶさんによるPR漫画『エクストリーム帰宅部』や、ふぁっ熊さんによる『カリギュラ体験記~メビウスのあるきかた~』。ノベライズ『カリギュラ EPISODE水口茉莉絵~彼女の見た世界~ (GAノベル)』など、その世界はいろいろな形で広がり、継続し続けています。

 まだ遊んでいない人はもちろん、すでにプレイ済みの人も、1周年というこのタイミングで、もう一度最初から遊んでみてはいかがでしょうか? そこから、小説版まで読んで、より深くこの世界を知ると、また見方が変わってくるかもしれません。

 時間がない人は『Caligula-カリギュラ- オリジナルサウンドトラック』を聞きながら、この世界の思い出に浸ってみるのもアリです。願わくば、続編につながって欲しい! 本当に好きなゲームなので、ファンのみなさんと一緒にこれからも『カリギュラ』を応援していけたらと思っています。

 また、『カリギュラ』1周年を記念したさまざまな展開もあるようなので、公式ツイッターブログもぜひチェックしてみてください!

『カリギュラ』

(C)FURYU Corporation.

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