2017年7月10日(月)
ガンホー・オンライン・エンターテイメントから配信中のiOS/Android用アプリ『ディバインゲート』。2017年夏開始予定として期待が高まる新章、『ディバインゲート零』のキャラクターストーリーを追っていく連載企画をお届けします。
第1弾は、カズシ編・第一章“契機”。主人公の1人であるカズシの視点で、この世界において広く知られることになる“魔影蝕(まえいしょく)”が起こる直前の出来事が綴られています。
テキスト:team yoree
イラスト:noraico
相克。それは、本来1つであるべき世界を統合しようとする力。この力によって“蝕”と呼ばれる現象が起き、相反する2つの世界、『理力界』と『魔力界』が結び付けられようとしていた。
この物語は、のちに”大消失”と呼ばれる大被害が起きた地から始まる。
ギュイーン! ダダダダダダ…シャーン!
派手なギターとドラムの音が鳴り響く。
客が歓声をあげると、ステージ上の青年がマイクスタンドに向かって叫んだ。
「お前らに会えて嬉しいぜ!」
「まだまだお前らイケるよなー!!」
「ガンガン盛り上げていこうぜ!!!」
わーーーーーっ!
再び大歓声に包まれる会場。
――シブヤロックフェス。毎年夏に開催される、シブヤシティ随一の音楽フェスだ。全国各地から熱心な音楽ファンが集まり、昼夜を問わず様々な音楽に浸っては大いに熱狂する。参加するバンドはベテランから新人まで幅広く選ばれており、会場に設置されている複数のステージにジャンルや年代などで振り分けられている。
その中の若手主体のステージに、高校生たちが組んでいる新進気鋭のバンドが出演をしていた。バンドの名前はイデア。メンバーは、ボーカルのセリ、ドラムのジュン、ベースのマサト、そして、ギターのカズシの4人。中学生の時に出会って活動を始めた4人だったが、ボーカルのセリの人気もあって、数年のうちに若者を中心に一目置かれるバンドとなっていた。
「カズシ。次、新曲だ」
「オッケー、セリ。ハデにいこうぜ!」
セリに声をかけられ、カズシがうなずく。
カズシはピックを弦にあてると、最新曲のイントロを弾き始めた。
「きたきた! 新曲!」
「イントロかっこいい~!」
「やっぱりイデアって最高!」
女子高生の二人組がイデアに熱烈な視線を送っている。
「ねえあれ見た? ミスDの記事! イデアのことイチオシって紹介してたよ」
「見た見た! ミスDも注目するなんてすごいよね!」
「ま、見つけたのは私たちの方が先だけどね」
ミスDとはミストD.のことで、音楽雑誌でバンドの評論を書いている有名な批評家のことである。
「あ~。やっぱりセリが一番!」
「ううん、一番はカズシだよ!」
「セリだよ!」「カズシだよ!」
それぞれの推しメンのこととなると誰にも負けまいとなる二人。二人とも中学生の時にカズシと同級生で、カズシたちがバンドを始めたときからイデアを応援していた。
普段のカズシは一匹狼な感じでクラスメイトと群れる様子もなく、どことなく話しかけづらい雰囲気があった。好きなものが何なのか、何に興味があるのか、二人とも本音のカズシを見たことがなかった。しかし、文化祭の時、ステージに立ったカズシは歯を食いしばり、汗を流し、時には笑顔で、熱く激しくギターを鳴らしていた。カズシのことを、どこか儚く浮世離れしているとさえ感じていた二人だったが、そんなカズシの姿を見て、本当のカズシはこうなのだと知ったのだった。
曲がサビにさしかかり、一層盛り上がってゆく。セリの歌声に合わせて弦をかき鳴らしていくカズシ。
「全力で響かせるんだ! この瞬間の輝きを!」
最高の笑顔でメンバーと目を合わせるカズシ。メンバーもカズシを見返して頷いた。
――しかし、その時だった。
カズシの視界に紫色のノイズがかかった。
「なんだ――?」
何が起きたのか、カズシにはすぐに分からなかった。会場が見る見るうちにノイズに飲み込まれ、混乱した観客の悲鳴が起きる。
「なんだよこれ……。セリ…! みんな!」
カズシが叫ぶ。しかし返事はない。ノイズばかりがカズシの周りに色濃くなっていく。
のちに一般に広く知れ渡ることになる”魔影蝕”が起きたのだった。
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