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2017年7月29日(土)

【電撃PS】高橋慶太氏のコラムを全文掲載。E3 2017には行ってないけど気になったこと

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している高橋慶太氏のコラム『電撃ゲームとか通信。』。ゲームデザイナーとしての日常や、ゲーム開発にまつわるエピソードを毎号掲載しています。

『電撃ゲームとか通信。』
『電撃ゲームとか通信。』

高橋慶太氏PROFILE

 バンダイナムコゲームス(現BNE)時代に『塊魂』、『のびのびBOY』を制作。その後『Tenya Wanya Teens』を発表。GoogleのARプロジェクト“Tango”向けに『WOORLD』を開発、現在は『Wattam』を制作中。

 この記事では、電撃PS Vol.642(2017年7月13日発売号)のコラムを全文掲載!

『電撃ゲームとか通信。』

 どうも。誰も覚えてないと思うけど、今年のE3で『Wattam』のプレイアブルデモを展示するとか以前のコラムで強がってボヤいてたけど、結局間に合わずE3期間中もロスアンゼルスには行かず普通に開発していた高橋です。

 ということでE3に関する生な情報はゼロ。一応主要プレスカンファレンスで発表されたトレイラーは見たけど、ざっくり目を通した程度。そんなふんわりした情報で感想を書いてみるけど、そういえばE3の前にはAppleのWWDCもありました。

 幾つか注目すべきトピックがありました。1つは、Macもようやくゲーミングマシンとして使えるようになりそうということ。GPUが最新版にアップデートされたのはもちろん、外部GPUもサポートすることで独立したGPUを持ってないMacBookでもVRが遊べるほどのパワーを得ることができるらしい。

 そして、ゲーミングマシンとして使えるということは、開発マシンとしても十分に使えるということ。ただ問題はどれもこれも値段が少々お高いということ。MacBookのCPUをちょっとでもグレードアップしたら、GTX1060が積まれてるWindowsマシンを買えるくらいになっちゃう。

 昔は絶対にMacを使いたかったけど、今は正直どっちでもいい。自分が主に使ってるソフトは両OSに対応しているのでMacじゃないといけない理由も特に無いです。個人的に最近のアップル製品が持つ高級品な感じがあまり好きではないので、当分はWindowsマシンを使い続けるかもしれません。

 話は戻って、もう1つの注目すべきトピックはARkit。このAPIでここ最近のiPhoneがAR対応デバイスになるとのこと。詳しくは知らないけど、GoogleTangoのような3D空間の形状をリアルタイム認識して、、、というほどパワフルなものではないらしいんだけど、ARをカジュアルなものとして普及するには十分なものになりそう。『WOORLD』を移植するのは無理っぽいけど(そもそもGoogleが許可しない)。

 そういえば気になるニュースがもうひとつ。ご存知“SUPER NINTENDO WORLD”。叶わなかったけど、過去に子供の公園をデザインしていた身としてはかなり羨ましい話。宮本さんがインタビューで話していたのを読んだけど、幾つかのアトラクションではSwitchやDSシリーズとの連携も考えているらしい。

 そういう視点でみるとディズニーランドやサンリオピューロランドなどのアミューズメントパークとはちょっと違うものが出来そうだけど、せっかく現実世界のアトラクションで遊んでいるのにゲーム画面ばかりみてしまっている、というバランスでは駄目。アトラクションとゲーム機の連携をバランスよくやり遂げるのは簡単ではないだろうけど、可能なら関わりたいプロジェクトですね。

 そしてここでようやくE3の話。おもしろいなあと思ったのはXbox One Xというネーミングくらいで、あとは特に興味を引くものはなかったです。

 チームのメンバー内で少々盛り上がっていたのが『スーパーマリオオデッセイ』。なぜなら『Wattam』を彷彿させる仕様があったから。帽子つながりということで、発表された時から親近感を抱いていたマリオの新作ですが、今回の続報発表ではその帽子を敵に被せることでそのキャラに憑依して操作できることが公開されました。

 我らが『Wattam』も負けず劣らずそれぞれの特徴を持ったキャラクターを選択/操作できるので、マリオの帽子に引き続きそこにも共通点があることにチームのみんなはちょっと興奮気味だったのです。『Wattam』では帽子を被せることなくただただ他のキャラを選択すれば操作できる仕様なので、そこにはマリオのようなゲーム性のあるメカニックはありません。

 自分にしてみたら色んなキャラを操作できること自体は全く新しいものとは思ってなくて、サッカー等のスポーツゲームで昔から採用されてる仕様と同じものだと捉えています。

 実際に『Wattam』のゲームプレイを乱暴に例えるならばサッカーゲームと『ピクミン』を足して2で割ったようなものになる(意味不明)、と説明してたし。まあ、そもそも団体スポーツゲームとこれを同じものとして結びつけることが正しいのか分からないけど。

 今のところ公開されてるゲームプレイ動画を見た限り、他のキャラに憑依する仕様はレベル内にある仕掛け/パズルをクリアする為のものであってそれ以上のものではないっぽい。まあ、それはマリオのゲーム内容を考慮するとしょうがないことなんだけど、、、ここで自分が関わったゲームの話をちょっと。

 極端に言うと『Tenya Wanya Teens』のアイディアは、対戦格闘ゲームにおけるボタン入力の組み合わせによる技の発動を、ボタン入力の組み合わせではなく技の数だけボタンを用意し、そのままワンボタンで技は発動するようにしたもの。

 そして簡単に技は出せるかわりに、どれがどの技のボタンなのかを把握するのが大変、という違う種類の難しさを加えたものが『Tenya Wanya Teens』の16個ボタンアイディアです。

 『オデッセイ』の場合、これまでのゲームがアイテムや他の能力を持った仲間を使ってクリアしていたところを敵に置き換えたものが憑依デザインです。自分がこれに望むところは“ただ表現を置き換えただけ”以上のなにかがあること。憑依から元に戻った後の敵はどうなるんだろう? 変わらずマリオを攻撃し続けるんだろうか? 

 我らが『Wattam』もパズル的なものを解く為に他のキャラクターを使うんですけど、まずはそのデザイン以上に彼ら/彼女らが世界に存在している理由があるし、非常にシンプルながらもそこには暮らしがあるのです。だからコマとして使われるだけでは無いのです。

 前述したとおり、そこは『オデッセイ』とのゲーム性の違いから来るものだから比べられないんだけど、マリオの憑依と『Wattam』の選択は、似てるようで似てないかな、と。そんな些細な違いはつくってる本人以外には分からないけど。そもそもマリオと比べること自体、恐れ多いですね、ごめんなさい。

(C) Keita Takahashi

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.643』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2017年7月27日
■定価:694円+税
 
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