2017年8月10日(木)
8月5、6日に岐阜市の柳ヶ瀬商店街および周辺で行われた、“全国エンタメまつり(略してぜんため)”。このイベントはゲームを中心とした“子どもから大人まで楽しめるイベント”と銘打っており、JR岐阜駅、名鉄岐阜駅からメイン会場となる柳ヶ瀬まで複数のルートを歩きながら楽しめました。
本イベントのメインステージにて、電撃PSの西岡編集長と週刊ファミ通の林編集長とがSIEジャパンアジア プレジデント盛田 厚さん、SIEワールドワイド・スタジオ プレジデント吉田修平さんのお2人をお招きし、トークショウを行いました。
「2人がそろってステージに登壇するのはPlayStation 4発売前夜以来ではないか」と吉田さんが語るくらい、レアな顔ぶれがそろった本ステージの模様をレポートしていきます。
▲盛田さんは地方のイベントにて草野球的に親子やご家族でゲームをプレイしてもらい、その熱が全国に伝わっていってほしいと考えて、“ぜんため”への出展を決めたそうです。 |
【司会】
電撃PlayStation編集長 西岡美道
週刊ファミ通編集長 林克彦
【ゲスト】
SIEジャパンアジア プレジデント盛田厚氏
SIEワールドワイド・スタジオ プレジデント吉田修平氏
第1部では、事前に電撃オンラインやTwitter上で募集した質問に対し、SIEのキーマンである盛田さん、吉田さんに回答していただきました。
Q1:お2人がいちばん好きなゲームはなんですか?
盛田さんは「ゲームは映画や読書と同じく、そのときの気分に応じてプレイするもの」と前置きしつつも『ドラゴンクエスト』と回答。「MSXの営業時代にMSX版『ドラゴンクエスト』を触ったのが自分のゲーム体験の原点であり、『ドラゴンクエストXI』も早くプレイしたい」と語りました。
吉田さんは「(2014年のSCEカンファレンスの際、盛田さんがステージに登壇された堀井雄二さんに対して)“おかえりなさい”と言ったのはそんな背景があったんですね!」 とつなげました。
一方の吉田さんはご自身のことを“アクションゲーマー”と言い、『クラッシュ・バンディクー』などが好きで、最近では『Demon's Souls』や『DARK SOULS』、『Bloodborne』、『仁王』など、高難度アクションゲームがお気に入りとのこと。
なかでも最近とくにはまっているものが『LET IT DIE』。朝起きて『LET IT DIE』、朝ごはんを食べて『LET IT DIE』、仕事に行く前に『LET IT DIE』……と、『LET IT DIE』が生活の中心になっているそう。先日ふとプレイログを見たら、プレイ時間は800時間を超えていたそうで、「そろそろ卒業しないといけないのですが、運営型のタイトルだけあってなかなかやめ時が見つからない」と語っていました。
Q2:盛田さん、吉田さんは電撃PS、ファミ通のことをどう思っていますか? あと電撃PS、ファミ通にやってほしいことを教えてください。
吉田さんは「両メディアとも生放送を積極的に行っており、ユーザーと一緒に盛り上がったり、クリエイターさんをお招きしてコメントをもらったり、編集部員の性格や気質がわかるのが楽しい」と語りました。
盛田さんは「今必要な情報をちゃんと載せていることがとてもうれしくありがたいと感じている」とのこと。
また、盛田さん、吉田さん両名とも、インディータイトルをきちんと取り扱っているのがうれしいとのことでした。盛田さんは自分たちも昔はインディーであり、今度は自分たちがインディータイトルを育てていかなければならないと感じている点、吉田さんは昔から少人数でつくり熱量のこもったインディータイトルが大好きである点が要因のようです。
また、盛田さんは両メディアとも読者、ファンがついていることを承知のうえで、もっと普段雑誌を読まない新規のゲームユーザーさんにむけて誌面をつくり、情報を発信し、“攻めてほしい”と語っていたのが印象的でした。
Q3:ニンテンドースイッチのことをどう思っていますか? ちなみにおふたりは買いましたか?
吉田さんはニンテンドースイッチは発売初日に買ったとのこと。アメリカ版と日本版の両方を買い、それぞれの地域でしか流通していないゲームを楽しんでいるとのことです。また家では娘さんお2人が『スプラトゥーン2』をプレイしていると語りました。ちなみにPS4では『マインクラフト』をプレイしているそうです。
盛田さんはまだニンテンドースイッチを持っていないそうですが、現在スイッチは品薄状態が続いているため、「私が買うことで楽しみにしているユーザーさんのうちの1人が残念な気持ちになるのでは……」と思うと、なかなか一歩を踏み出せない様子。
「ゲーム業界が活性化することはいいことですから、お互いに盛り上げていきたいですね」と盛田さんが語ると、吉田さんは「お互いに得意分野もユーザー層も異なりますから、お互いが盛り上がることでいい影響もたくさんあると思いますよ」と重ねました。
Q4:『ワイルドアームズ』や『アーク ザ ラッド』がスマホででると聞きましたが、コンシューマーではそういったコテコテの日本向けのRPGの新作はもう作らないんでしょうか?
この質問には、まずフォワードワークスの社長も努める盛田さんが先に回答。まずみんなで考えたのは、「PlayStationのことはいったん頭の外に置いて、モバイルゲームを楽しんでもらうにはどうすればいいか?」だったそう。モバイルゲームをすでに楽しんでいるユーザーに向けても、こういったタイトルを展開すれば楽しんでもらえるのではないかと考えたそうです。
一方、吉田さんは最近は限りのある予算・開発スタッフのなかで、新規IPと人気IPの続編、そのバランスが半々になるように作っていると説明。またPS4にハードを移すことで開発期間の長期化などを考慮すると、“全世界的に評価される”タイトルを優先的に作らざるを得ない面はあると説明。
ただしそれは最近までのことで、じつはPS4が全世界的に普及するにともなって、日本のクリエイターさんが日本のユーザーさんに向けて作ったゲームが海外でもよい結果を残しているケースは増えており、パブリッシャーさんも私たちもその流れには気づいている、と続けました。さらに、自分たちが一番得意な分野で作ったものが、結果的に海外でよい結果を残せる可能性が今後高まってくるかもしれない、とゲームの未来に対して前向きなコメントも。それを聞き盛田さんは「私も聞きたかったことが聞けてよかったです」と顔をほころばせていた姿が印象的でした。
Q5:今後、PS VRがもっとパワーアップしたらどんなことになりますか?
こちらは吉田さんが先に回答。1960年代からコンセプトとして存在していたバーチャルリアリティ(VR)は、1990年代に一時的なブームを迎え、その時代を経験していたクリエイターさんたちはVR関連コンテンツが作れるようになる瞬間を今か今かと待っていた、と語る。
それを裏付けるように、PS VR開発の発端は、業務終了後や土日に、スタッフが自主的にバーチャルリアリティシステムを作ったことにあったと続け、ある日サンタモニカスタジオを訪れた吉田さんにスタッフがバイザーを被せたそう。
そこで吉田さんは自分の体が『God of War』のクレイトスになったことにとても驚き、PS4が発売される頃には、全視覚をカバーできるバーチャルリアリティの世界が作れるのではないか、と考え、草の根活動を通してPS VRの制作環境を整えたとのこと。
そうしてアメリカや日本のスタッフなど、全世界でやりとりが行われ、約5年の開発期間を経て昨年発売されたPS VRは、「ハードとしてひとつの完成形を迎えた」と思っているそうで、『Rez Infinite』や『サマーレッスン』などハード発売の瞬間から優れたコンテンツは多数登場したとはいえ、今度はこのハードを使ってどんな体験が可能になるのか、クリエイターさんが想像をめぐらせるターンに差し掛かっているのではないかと感じている、と語りました。
そんな吉田さんが最近驚いたのは、ゲームではないけれどもアニメ『傷物語』を題材としたアプリケーションだそう。VRだからと言ってすべてを3Dで作りこむのではなく、豊富なアニメ素材をそのまま使い、それをいろんなシチュエーションでいろんな場所に投影して、プロジェクションマッピングのようなことをVRで体験できる、しかもそれが“隣にアニメのキャラクターがいる”という内容で、これはアニメ業界の方々にもインスピレーションを与えられるのではないかと思ったとのこと。なお、このアプリは無料でダウンロードできるので、気になった方はぜひ体験してみてください。
ハードの進化は日進月歩ですが、PlayStationは“買ったらすぐ楽しめる”、“1つのコンソールでコンテンツをじっくり作りこめる”、というところが武器だと思っているので、今後も技術ノウハウなどをいろいろなものを提供して、新しい体験をみなさんにお届けしたいと思います、と締めました。
これに対し、盛田さんは「PS VRの品薄状態が続いてしまい申し訳ありません……」とションボリ。とはいえ、岐阜県でも最近地元のゲームショップに並び始めているそうですので、そろそろいつでも買えるときは近いのかも。
吉田さんは「PlayStation自身も、20年かけて想像もつかないところまで到達したので、VRの20年後がどうなるのか、今から非常に楽しみ」と語り、盛田さんは「テレビの前の体験をそろそろ超える体験を作りたい、VRならそれができるんじゃないかなと思っている」と、この質問でも、お2人のゲームの未来に期待する姿が印象的でした。
このコーナーは、事前に司会の2人が用意した岐阜の銘菓を、盛田さん、吉田さんに味わってもらい、お2人の一押し岐阜銘菓を決めちゃおう、というもの。“お菓子おじさん”とも呼ばれるほどお菓子が大好きな吉田さんからは「今日はこのために来ました!」という大きな期待を寄せられた本コーナー。
今回用意されたのは、鮎菓子、柿羊羹、からすみ、味噌松風、の4種類。第1部でたっぷりと語っていただいたため、すでにスケジュール的に推していたコーナーでもありました。お2人のコメントをダイジェストでお届け!
●鮎菓子(玉井屋)
あっさり甘くて食べやすい。モチモチしてる(吉田さん)
出身が愛知県ということもあり、子どもの頃に買ってきてもらって食べていました。昔は中にあんこが入っていたような……バリエーションがあるんでしょうか?(盛田さん)
●柿羊羹(つちや)
すごい柿の味がしますね。柿独特の歯ごたえもあって、柿をそのまま食べている感じもありますね(吉田さん)
食べるまで記憶になかったのですが、食べたらなんだか昔食べたような気も……? ちょっと干し柿っぽさもあり、美味しいですね。(盛田さん)
●からすみ(玉井屋)
これはういろうのようなイメージですね。なつかしいです。(吉田さん)
これは食感がいいですね。(盛田さん)
●味噌松風(信玄堂)
味噌が一番上に塗ってある感じですね。味噌感はほのかに感じます。(吉田さん)
後味に味噌がふわっと残りますね。(盛田さん)
このほか、からすみを食べている最中、盛田さん、吉田さんは名古屋に本家を持つ“青柳ういろう”のCMのことで盛り上がるも、関西・中部ローカルだったのか、西岡、林は「なんでしょうか、それは?」状態になる場面もありました。
さてそんなこんなの実食タイムを経て、吉田さんのお気に入りの銘菓は“柿羊羹”、盛田さんのお気に入りの銘菓は“味噌松風”に決定! ここにSIEジャパンアジアと、SIEワールドワイド・スタジオ、おそらく初となる公認の岐阜銘菓が誕生しました。
最後にPlayStationの今後の予定を語っていただき、ステージは終了となりました。以下にそのお2人のコメントをご紹介します。
この夏からSIEのタイトルはたくさんでます!まずは8月31日に『New みんなのGOLF』。ゲームを始めるとすぐにみんながいてワイワイできるタイトルになっています。続いて9月24日は『KNACK ふたりの英雄と古代兵団』。2人でやると本当に楽しいタイトルですね。9月はほかにも14日に『アンチャーテッド 古代神の秘宝』が、さらに10月19日には『グランツーリスモSPORT』が出ます。ほかにもPS VRタイトルだと、この秋に『V!勇者のくせに生意気だR』などなどいっぱいタイトルが出てきますので、ぜひ楽しんでください。(吉田さん)
まずいま吉田さんがおっしゃったタイトルがきちんと出ることを心待ちにしております(笑)。われわれは“みんなのPlayStation”を目指して活動をしています。さっき『アーク ザ ラッド』の新作についても、お話がありましたが、“みんなのPlayStaiton”になるため、いろんなゲームやいろんな場を提供していきたいと思っていますし、ゲームを含めたすべてのテンターテイメントはPlayStationで楽しむことができる、という状態を作るためにがんばってまいります。PlayStation 4をお持ちでない方は、ぜひ買っていただき、お父さん、お母さん、お子さん、お友だち、みんなでPlayStationを楽しんでいただければと思います。(盛田さん)
改めましてステージにご登壇いただいた盛田さん、吉田さん。そして現地、ニコ生でごらんいただいたみなさま、ありがとうございました!