News

2017年8月16日(水)

クトゥルフの呼び声が響くとき、騒乱が起きる――『The Lost Child』クリア済みネタバレなしレビュー

文:電撃PlayStation

 『エルシャダイ』の世界観を継承するPS4/PS Vita用ソフト“神話構想RPG”『The Lost Child』。プレイヤーは神に選ばれし者である“選民”にして雑誌ライターの伊吹隼人として、天使と悪魔と堕天使の3勢力が現代日本を舞台に争う“天魔抗争”のなかで、神に与えられた使命を遂行するのが目的。

 『エルシャダイ』の世界観を継承するだけあって、ルシフェルやミカエルなど『エルシャダイ』に登場したキャラクターも、一部引き続き登場するのですが、本作の魅力はそれだけじゃない! 90年代に流行ったようなオカルティズムや都市伝説、そして数々の神話をベースに天使や悪魔が入り乱れる世界観、独自のキャラクター育成やダンジョン探索など、本作独特のゲーム性に魅入られた編集、あーやがその魅力を解き明かしていきます。

『The Lost Child』

この世界の端々には、這い寄る“邪悪”が存在する

 本作の現状を改めて説明しましょう。数年前、唯一神を筆頭とした天界に住まう天使たちと、邪神クトゥルーを筆頭とした異界に住まう悪魔たちが、それぞれの目的のため、人間が住まう地上界を舞台に争いを始めました。当然人間に被害が及ぶのですが、人間たちを愛したために天界を捨てた堕天使たちが、それはならんと2勢力の争いに介入。現在は天使と悪魔と堕天使が三つ巴の争いを繰り広げている、という状況。そんな中、オカルト雑誌ライターである主人公、伊吹隼人は都市伝説“紫の女”を追ううちに選民の使命を課せられ、パートナーのルアとともに、3勢力が争う天魔抗争を生き抜いていくことになります。

『The Lost Child』
▲重要なシーンはアニメーションが挿入され山場を盛り上げます。

 個人的に推したいのが邪神クトゥルーの存在。そう、この物語の中心に据えられた神話は、アメリカの小説家ラヴクラフトを始祖とし、その後多くの作家陣に愛され現代も拡張され続けている神話、“クトゥルフ神話”。クトゥルーのほかにもニャルラトテップなど、数々の“名状しがたいもの”が本作には登場します。

『The Lost Child』

 隼人がオカルト雑誌“LOST”のライターと言うこともあり、都市伝説の取材が随所に挟まれるのも、その雰囲気をグッと引き立てています。これまでに挙げた単語のどこかに引っかかった人は、まずその段階で遊んでみる価値アリといえるでしょう。“名状しがたい狂気”がゲームからにじみ出ていることがすぐにわかるはずです。

『The Lost Child』
▲ゲーム開始直後から取材対象となる紫の女。その正体は……?
『The Lost Child』
▲血痕が衣服にこびりついていることを意にも介さない女子高生。正気なのだろうか?

アストラルの育成が底なし沼のやりこみ度!

 では「いや、クトゥルフ神話なんてあまり詳しくないんだけど……」と言う人が本作をプレイして楽しめないかと言うと、大丈夫です。問題ありません! ゲーム的な内容紹介に移りましょう。本作は「怪異の噂が流れる街で人に聞き込み→レイヤーという3Dダンジョンを探索」というのが基本の流れ。3Dダンジョンということで敵とのバトルも多いのですが、テンポは非常にいいので、この手のゲームに慣れていない人も安心です。

『The Lost Child』
▲レイヤーは秋葉原の場合は使われることがなかった廃駅“万世橋駅”など、生活圏の身近な範囲に存在。

 まず、パーティはメインメンバーの5人、サブメンバーの6人で構成。メインの2枠は隼人とルアが占めるのですが、残りの枠は天使・悪魔・堕天使の総称である“アストラル”が担います。アストラルは選民たる隼人のみ扱える魔銃“ガンゴール”が持つ特殊能力“アストラルバースト”を敵アストラルに使用することで捕縛・浄化ができ、パーティメンバーとして使用可能に。その総数は100以上。神話上の人物から実在した狂人、果ては忍者まで多彩な種類が存在します。

『The Lost Child』
『The Lost Child』
『The Lost Child』
▲浄化したアストラルは詳細を見ることもできます。

 アストラルには、天使・堕天使・悪魔の3種のほか、水・火・木・風・雷、という5つの属性があり、それぞれに弱点が設定されています。敵の弱点を突くように戦闘中にアストラルを入れ替えれば、ほぼオート戦闘で問題ありません。また、レベルはアストラルに正・因・邪という3種のカルマ(経験値)を注入することで上げていくのですが、このカルマはストックされ、誰に使うかは自分で決められます。そして、カルマはそれぞれの種族に対応しており、たとえば正のカルマは天使に注入すると最も効率よく強化できます。このサジ加減が絶妙で、効率を重視するもよし、好きな1体を集中強化するもよし、自分のプレイスタイルに合わせることができるのもウレシイ。

『The Lost Child』
▲弱キャラも愛さえあれば……!?

 このほか、アストラルの強化にはさまざまな方法があり、“御霊初期化”を使えば基礎値にボーナスを得た状態で最初から強化できるので、気に入ったアストラルは限界まで強化が可能。また、レベルを最大まで上げると可能になる“進化(SIN化)”を行うと、ビジュアルが変化するほか、個体によっては固有のスキルを覚えることも。強力なスキルは“スキル移譲”で別のアストラルに渡せる上、「育ててみたけど意外と強くないな?」と感じたら“御霊回帰”でカルマに変えてしまえるのもムダがなくていいですね。

『The Lost Child』
▲アストラルの育成関連でお世話になる“澄伝寺”の住職、電脳和尚。

 戦闘中にスキルを閃く“知恵の実システム”も、起死回生の一発を閃いてくれることもあれば「強いけどこの瞬間じゃなくても……!」というものを閃くこともあって、戦闘中のドラマの演出に一役買っています。各アストラルの独特なビジュアルとパラメータを見比べているだけでけっこう楽しいうえに、ゲーム初期から銭湯に行けば“カルマ所得量アップ”という効果も得られるので、育成は最初からかなり楽しいです! 

個性的なダンジョンギミック多数! 快適な探索のためのシステムも満載

 レイヤーには“ダメージ床”や“落とし穴”“隠された扉”など、個性的なギミックが数多く仕掛けられており、探索のし甲斐は満点。また、目的地までの最短距離を計算して動いてくれる“自動移動”システムが非常に便利。一度踏破したマップを再度歩きなおす必要はありません。戦闘も上記の通り編成が適切であればすぐに済みますし、エンカウント率を下げるアイテムも初期から購入可能なので、探索に集中することもカンタン。

『The Lost Child』
▲メニュー画面が開けるときなら、戦闘の難易度や歩行速度などが変更可能。

 「ちょっとヌルすぎない?」というやり込み派のあなたには、ルルイエロードへの挑戦がオススメ。こちらは帰還アイテムの使用不可などさまざまな特殊ルールが追加された、全99層にわたる巨大ダンジョン。各層にある“幻影の樹”を調べると、他プレイヤーの育てたアストラルたちとの対戦もできるので、ここでできることに終わりはないといっても過言ではないでしょう。もちろん、やりこんだ人にはそれ相応の“ご褒美”もありますよ!

『The Lost Child』
▲地下7Fでこの複雑さ(地図にたくさん表示されているマークは落とし穴です)。このダンジョンだけで何百時間も遊べるそう。

 宝箱にも独特の仕掛けが。宝箱はレイヤー内に点在&戦闘後敵がドロップするのですが、カギがかかっており、開錠に失敗するとワナが発動する仕組み。ワナに応じてアストラルが固有に持つスキルを使えば意外とあっさり開くものの、失敗すると思わぬダメージを負うことも。

『The Lost Child』

 さらに、敵がドロップする宝箱の中には“アーティファクト”が入っていることもあります。これは、“剣”とか“鎧”といったジャンルはわかるのですが、詳細は鑑定してもらわなければわかりません。

『The Lost Child』

 鑑定の際はアイテムにランダムで効果が付与されていることがほとんどで、「完全に同じアイテムは出ないんじゃないか?」と言うぐらい多彩です。また、装備は基本的に店では販売しておらず、“製錬合成”して基礎値を強化する仕組み。拾ったアイテムがあまり無駄にならないのがポイントです。

『The Lost Child』
『The Lost Child』
▲アイテムにはさまざまな称号が複数ついていることがほとんど。

“神話構想”そして『エルシャダイ』ファン必見のストーリー

 これまでにお伝えしたとおり、ダンジョン探索もアストラル育成もテンポよくサクサク進み、物語も謎が謎を呼ぶ展開なので、先が気になってついついプレイしてしまうことうけあいの本作。最後に、ジャンル名にも記載されている“神話構想”について補足します。

 神話構想とは、世界各地に伝わる神話を竹安佐和記氏が1つに再構成した世界で語られる物語の総称。ゲーム『エルシャダイ』はもちろん、コミックスや小説も発売されています。本作に興味を持った方は、予習がてらこれらの作品に触れてみるのもいいかもしれません。思わぬキャラクターが本作に登場しているかも……?

 ちなみに、神話構想のファンの方はパッケージ版の早期購入がオススメ。数量限定の初回特典で、神話構想DLCである“ダーク・イーノック イーノック悪魔Ver.”、“ネフィリム サリーボーイVer.”の限定アストラル2体、神話構想に関する情報がタップリ詰まったブックレット“神話構想記”が入手できます。

『The Lost Child』
▲神話構想DLCの“ダーク・イーノック イーノック悪魔Ver.”(画面写真上段中央)。もちろん最後まで頼れる男です。

 一方、『エルシャダイ』のファンの方はPS Storeにて期間限定で販売される“デジタル限定版”の購入がオススメ。デジタル限定版には、パッケージ版の初回特典である、神話構想DLC“ダーク・イーノック イーノック悪魔Ver.”、“ネフィリム サリーボーイVer.”に加え、ゲーム内楽曲はもちろんのこと、発売を記念した神話構想コラボとして『エルシャダイ』の楽曲を加えた計23曲、大ボリュームの“デジタルプレミアムサウンド”が特典として付随します。

『The Lost Child』
▲デジタル限定版では、残念ながら“神話構想記”は付随しない。どちらを買えばいいか迷う? 両方買えば大丈夫だ、問題ない。

 プレイしていると“ノストラダムスの大予言”や“世紀末”といった90年代に流行った単語がチョイチョイ脳裏をかすめる本作。あのザワザワとした空気感が好きだった人や、世界各地の神話知識をざっくり得たい人には、とくに遊んでほしい1本に仕上がっていると感じました。遊んでいてとくに感じたのは、“この作品でしか味わえない独特の面白さが多い”こと。ちょっとクセがあるところもありましたが、自分としてはそのクセがわりと普通のRPGとは差別化が図られている部分として、いい方向に楽しむことができました。

 本作を期待する方も、この記事を読んで興味を持った方も、発売をお楽しみに! 自分も発売後はルルイエロードの踏破に挑戦します!

(C)2017 KADOKAWA GAMES

関連サイト