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2017年9月29日(金)

電撃マオウの『ペルソナ』マンガが熱い!! 斉藤ロクロ氏の『P4U2』と曽我部修司氏の『P4』を大特集♪

文:電撃オンライン

 現在、電撃マオウでは曽我部修司氏が描くコミック版『ペルソナ4』(『P4』)と、斉藤ロクロ氏が描く『ペルソナ4 ジ・アルティマックス ウルトラスープレックスホールド』(『P4U2』)の2作品が同時連載中!

 どちらの作品もクライマックスに向けて、物語は盛り上がっていくばかり。原作ゲームの楽しさはそのままに、それぞれの作家の個性が光る電撃の『ペルソナ』シリーズ公式コミック、いつ読むの!? 今でしょ!!(……古い?)

 ということで、著者の独占インタビューと合わせて、コミック版の魅力を徹底紹介していきます。トップバッターは、9月27日に単行本第3巻を発売したばかりのコミック版『P4U2』。アッと驚くプレゼント企画の告知もあるので、最後まで目を皿のようにして読んでね!

『ペルソナ4』

コミック版『ペルソナ4 ジ・アルティマックス ウルトラスープレックスホールド』とは?

 2014年にアトラスからリリースされた同名の2D対戦格闘ゲームの公式コミカライズ。大人気RPG『ペルソナ4』のエンディングから約2カ月後の稲羽市を舞台に、謎のキャラクター・クマ総統が開催した格闘大会”P-1クライマックス”へ強制的に参加させられた鳴上 悠と自称特別捜査隊の奮闘を描く。桐条美鶴をはじめとする『ペルソナ3』(『P3』)のメンバーや足立 透、黒幕を名乗る赤毛の少年・皆月 翔など、おなじみの人気キャラクターから新キャラクターまで、魅力的な人物がたくさん登場するのもみどころだ。

斉藤ロクロ(さいとうろくろ)プロフィール

 マンガ家。おもな代表作は、電撃コミックス『GOD EATER -the spiral fate-』、電撃コミックスNEXT『GOD EATER 2 -undercover-』など。『一血卍傑-ONLINE-』(ハットリハンゾウ)や『チェインクロニクル』(流浪の剣術家 キキョウ)などのキャラクターイラストも手がける。現在、コミック版『P4U2』の作画を手伝ってくれる背景アシスタントを絶賛募集中だそう。Twitter:@s_696

毎回、鳴上 悠にキツイ1発をもらいながら描いています。ボコボコに殴られている気分です。

――まずはコミック版『P4U2』第3巻の発売、おめでとうございます。今のご心境を教えてください。

斉藤ロクロ(以下、ロクロ):本が無事に出たという意味では、ホッと安心しています。でも、ファンのみなさんが喜んでいるものになっているかどうか……。大人気RPG『P4』が発売されたのは、今から9年前ですよね。その間、主人公(鳴上 悠)たちを応援しているファンのみなさんは、『ペルソナ』シリーズのキャラクターデザインを手がけている副島(成記)さんの美麗なイラストや、曽我部(修司)さんのコミカライズを何年も読み続けているので、ちょっとやそっとの作品では満足しない体になっていると思うんです。

 目の肥えたファンのみなさんに楽しんでもらえるよう、作画レベルを保ちつつ、原作のおもしろさとマンガならではの表現や要素を両立させていくのが課題です。自分の選んだ演出やセリフは正解だったのかどうか……。その答えが単行本の発売と同時に出るという意味では、冷や汗とドキドキが止まりません。

『ペルソナ4』
▲第3巻には『P3』の主要メンバーも登場する。自称・特別捜査隊と特別課外活動部が同じ目的のためにともに力を合わせる熱い展開も!!

――第3巻に収録されているエピソードで、特に印象に残っているシーンはありますか?

ロクロ:作画で大変だったのは、第3巻の中盤あたりですね。美鶴さんとか『P3』勢も加わって人がどんどん増えて、見開きに延べ17人以上いるページもあって。画面が大渋滞で死ぬかと思いました……。

 あと物語で印象に残っているのは、足立透と『P4U2』の新キャラクター・皆月 翔が悠と対峙するシーン全部ですね。自分は担当編集から「君は私から見ると、足立と皆月を足して2で割って、陽介の皮をかぶったような性格だね」と言われる時があります。確かに『P4』のゲームをプレイした時、足立の考えには共感すべきところも多かった。ヤツのクソみたいな言い分に、クソだとはわかりつつも「ダヨネ~~~~」と納得したり。とはいえ、“現実のルール”から外れる行動はしないのでご安心ください(笑)。そのせいなのか、悠のセリフが妙に心に突き刺さるんです。本作のテーマでもある“絆”がらみのセリフが特に。

 自分自身、この連載が始まる前は「人間関係ってめんどうくさいな。“絆”というのはなんだんだろう? エゴで他人を縛るものじゃないのか!?」と悩んでいた時期もあります。でも、本気で考えるのが苦しいから、思考を保留していたんですね。そうしたら、この連載が決まって、あらためてその気持ちを向き合うことになった。ある日、悠の心の強さが自分には眩しすぎて、担当編集に「連載がつらい!!」と打ち明けたんです。そうしたら「それが正しい!」と言われまして……。

『ペルソナ4』
▲本作のキーパーソンでもある足立と皆月。皆月は世界を滅ぼせなかった足立に、滅亡後の世界を見せてやろうとするが……。

――肯定の言葉があったわけですね。そこには、どんな真意があったのでしょうか?

ロクロ:「お前は足立と皆月に似ているところがあるのだから、悠の言葉に自分のアイデンティティーが揺らぐような恐怖を抱くのは当然。むしろ、自分の生き方や存在をぐらつかせずに、他人を理解しようとするほうが甘いのだ。それはキャラクターでも、実際の人間関係もいっしょだ」と。つまり、誰かをちゃんと理解しようと思ったら命がけだと。……最初はなんて大げさなことを言うんだと思いましたけど(笑)。最近はあながち間違いでもない気がしています。

 現在発売中の電撃マオウ11月号では、孤独を望み、世界を滅ぼそうとしている皆月が悠と会話しているシーンを描いているのですが、彼の心も悠の言葉にグラグラ揺れている。同時に描いている自分の心も大地震が起きている。今後、皆月の心にどんな変化が起きるのか、最後にどんな未来と自分をつかむのか……。正直にいうと、今の自分に原作ゲームの開発スタッフの方々が作品に込めた想いを完全に理解しているという自信はありません。自分の心以上に、この世界は深いと思うから……。

 でも、最後までしっかり描き上げた時に、自分も悠のことを本当に理解できるし、この『P4U2』が持っている“真のテーマ”を表現できると思っています。いや、自分にその力があることを信じたいし、切に願ってます。

『ペルソナ4』
▲各話ごとにロクロ先生が描く扉イラストも連載の楽しみの1つ。これだ第3巻に収録されている第26話のもの。夏真っ盛り!!

――この連載にあたり、特に力を入れて描いていることはなんでしょうか。

ロクロ:キャラクターの感情ですね。マンガで大事なのは、理屈を正しく描くことじゃないんじゃないと思うんです。むしろ、物理の壁を心で……感情で越えて行く。悠が仲間を助けに入るシーンで、距離的にムリじゃないかという場面でもちゃんと間に合う。感情をストレートに描けば、物理の法則は逆に曲がるものだと(笑)。それは絆の力によって起こる奇跡だし、大事な“想い”を視覚的に表現することがドラマだと思っています。

 実は第3巻の後半に足立と皆月がガッツリやり合うシーンがあるんですが、セリフがなくても感情で“真実”が伝わるようにしようと思いました。あそこに物理的な嘘はあるけど、感情的な嘘はまったくありません。むしろ、言葉は「あああああ」だけでもいい、と。本音の独白よりも、伸ばした指先や飢えたような瞳にリアリティーがあるんだと……。“真実”は、言葉にならないのだと思うんです。あの演出やコマ割りはアトラスさんを巻き込んで、最後まで迷いました。でも、苦心した分、納得のいくものになったと思います。

――では、今後の展開で特に注目してほしい人物やエピソードはありますか?

ロクロ:まずは原作ゲームでは描かれなかった皆月の過去エピソードですね。皆月は『P3』に登場した幾月修司を父と慕って育った少年なので、『P3』ファンの方にもぜひ読んでいただきたいです。

 あとは原作が対戦格闘ゲームなので、今までの『ペルソナ』シリーズのコミカライズにはなかったであろう肉弾戦ですね。十代の少年少女だからこそ、己のすべてを賭けて戦える瞬間があると思うんですよ。大人になれば、経験とか、社会的地位とか、我が子の世話とか、仕事とか、精神的にも物理的にも背負うものが多すぎて身軽にはなれませんから。そんな大人ゆえの強さもあると思うけど、今回は純粋に己の信じるもののために、一瞬と永遠を等価交換するような……そんな少年らしい雰囲気を出したいと思っています。

 あと、どうしても描きたい原作ゲームのかっこいいモーションがあるので、それをマンガでも再現してみたいです。

『ペルソナ4』
▲発売中の電撃マオウ11月号では、皆月翔の過去のエピソードが垣間見れます。舞台は病院らしい!?

――最後にコミック版の監修を担当している、アトラスの『P4U2』シナリオライター・小林鉄兵さんから、第3巻発売のお祝いメッセージが届いておりますのでご紹介します。

 「皆月とミナヅキ、鳴上と足立……役者はそろい、舞台もヒートアップして来ました! コミカライズ“ならでは”の迫力あるカットワーク、速さや重さを感じるバトルシーン……僕らが心血を注いできたキャラたちが、躍動感溢れる斉藤ロクロさんの画によって紙面を暴れ回る様を、毎回なるほど! とか、いやこうだ! とか、楽しく向き合って監修させていただいてます。いよいよ最終局面を迎える孤独VS絆+道化(?)の戦い! 乞うご期待です! というかどうなるんでしょう!? 早く先が読みたい! 電撃さーーーーーーーん!」

――以上です。これは執筆の励みになりますね、ロクロ先生。

ロクロ:これは……お祝いの皮をかぶった原稿催促では……誰だ、こんな恐怖企画をブチ上げたのは……って担当編集か!? いやいや、マジありがとうございます!!

 小林さんを始め、原作ゲームの開発スタッフのみなさんにはいつもしっかり監修をしていただき、感謝の言葉しかありません。アトラスのみなさん、ファンのみなさん、そして斉藤と担当編集……。コミカライズはいろいろな人々の大切な想いが集結して、1ページずつ完成していきます。クライマックスに突入した稲羽っコたち同様、自分も最後の戦いに向けてちゃんと描き切れるか緊張感と不安感でいっぱいいっぱいなので、後生ですから最後まで見守ってやってください。これからもよろしくお願いいたします。

『ペルソナ4』
▲アニメイトでは、コミック版第2巻を購入すると先着で購入特典の複製ミニ色紙がもらえます。今回はシャドウワーカー衣装を着た相棒コンビです。

※数に限りがありますので、在庫の有無は全国のアニメイト各店舗にお問い合わせください。

斉藤ロクロ氏、渾身の描き下ろし!! 30名に複製原画プレゼントキャンペーン実施中!

『ペルソナ4』
▲鳴上 悠、花村陽介、真田明彦、天田乾、コロマルが描かれた特製イラストです。買い物先で道に迷ったらコロマルの鼻で解決!?

※この画像はまだ制作中のものです。絵柄は変更になる場合があります。

 第2巻の時にみなさまに大好評をいただいた、電撃オンラインでの斉藤ロクロ氏の複製原画プレゼント企画。なんと今回も実施いたします!! 下記のあて先に、(1)氏名 (2)郵便番号・住所 (3)電話番号 (4)性別・年齢を明記してご応募ください。詳細は電撃マオウ公式ツイッター(@dengeki_maoh)や斉藤ロクロ氏のツイッター(@s_696)などでも告知していくとのこと。ぜひフォロー&チェックして、最新情報を受け取ってね。

★あて先★

⇒メールでの応募
タイトル:P4U2第3巻発売記念イラストがほしい!
maoh@ml.asciimw.jp

⇒ハガキでの応募
〒102-8584 アスキー・メディアワークス 電撃マオウ編集部
「P4U2第3巻発売記念イラストがほしい!」係

応募締め切り
2017年11月27日(当日消印有効)

※ご提供いただいた個人情報は賞品の発送以外の目的では利用いたしません。
※当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。
※賞品の発送は2017年12月ごろを予定しています。
※譲渡・転売しないことを応募・当選の条件とさせてください。


 続いてご紹介するのは、曽我部修司氏と創作ユニット・FiFSが総力を挙げて取り組む、『P4』の公式コミック!! 『P3』のコミック連載を無事完結し、満を持して『P4』の連載を再開した曽我部氏に今後の見どころや創作秘話などをお聞きしました。

『ペルソナ4』

コミック版『ペルソナ4』とは?

 2008年にアトラスからリリースされた同名のRPGをコミカライズ。都会から離れた田舎町の八十稲羽を舞台に、都会からの転校生・瀬田総司と自称特別捜査隊のメンバーが、町で起きた連続殺人事件に、巷で囁かれる“マヨナカテレビ”の噂が関係していることに気づき、犯人探しに挑んでいく……。なお、瀬多総司はコミック版の主人公の名前。現在、単行本第10巻まで好評発売中!

曽我部修司(そがべしゅうじ)プロフィール

 創作ユニット・FiFS(フィフス)の発起人で、メインクリエイターの1人。おもな代表作はPS Vita 『プリンス・オブ・ストライド』(企画・原作・デザインワークス)、『アイドルマスターSideM』(キャラクターデザイン)、『バンドやろうぜ!』(キャラクターデザイン)、『夢色キャスト』など。また、舞台『プリンス・オブ・ストライド』のテーマ曲の作詞とプロデュースも手がける。コミック制作、ゲーム作品の企画、イラストなど多彩な分野に才能を発揮。“なんでも屋”というスタンスで、メディアの枠にとらわれない活動を展開している。Twitter:@shuji_s

『P4』の魅力は“弱さ”も肯定してくれているところですね。弱さは悪じゃない。

――まずはコミック版『P4』を描く時、特に心がけていることを教えてください。

曽我部修司(以下、曽我部):僕自身、コミカライズ作品は原作の雰囲気を感じるものが好きだったので、連載を始めた当初は、原作のイメージをとにかく大事にすることを心がけていました。逆に演出が内容と関係ないくらいブッ飛んでいて、原作要素の“ON”と“OFF”がはっきりしている作品も大好きですけどね(笑)。

 コミック版『P3』の時は、その“OFF”も意識的に作っていたんですけど、最近は“ON”のみでやっています。もちろん、「オリジナル要素も楽しみたい」というファンの方もいますので、そのご要望に応えつつですけど。あとは“下品にならない”。これは『P4』のコミカライズに限らず、作品を描かせていただく時に僕が大事にしているマナーです。

――それは原作へのリスペクトが大事ということでしょうか?

曽我部:そうですね。原作リスペクトは絶対に必要です。というか、すべてはそこから始まると言っていいと思います。コミカライズだけではなく、オリジナルを描く上でも必ずその原点となる作品があります。

 僕の場合は、『プリンス・オブ・ストライド』の企画と原作を手がけていますが、原点へのリスペクトが低い部分は完成度も低いし、気持ちも乗らない結果になることが多いですね。あくまでも、リスペクトの範疇での自分の“味”を追加する。僕の好きな言葉に「20%のロマンティック」というのがあるんです。聞く人によって、いろいろな意味に取られそうな言葉ですけど、僕は「80%は既存の価値観、フォーマットへのリスペクト、あとの20%に自分のやりたいことを配分するのとバランスがいい」というように解釈しています。

『ペルソナ4』
▲2009年に発売された、記念すべきコミック版『P4』第1巻のジャケットを掲載。この絵柄に当時の曽我部先生の熱い想いが詰まっています!

――原点までさかのぼることが、リスペクトになるというのは新鮮です!

曽我部:『ペルソナ』シリーズも、過去の作品から受け継いでいるものがたくさんあると思いますし、大事にしていると思うんです。そういう意味では、家系図じゃないですけど、作品のルーツをさかのぼるというのは、わかりやすいリスペクトの方法だと思います。飛躍的な考え方ですけど、“絵を拡張する”という方法もその1つです。

 原作ありきのキャラクターを描く時には、まずそのデザインを担当した人がなにに影響を受けているかを考えます。『ペルソナ』シリーズなら、『真・女神転生』シリーズ。副島さんの前に金子一馬さんがいますよね? さらに『真・女神転生』シリーズを紐解くと、その原作小説でキャラクターを描いているのはTVアニメ『機動戦士ガンダムZZ』などで活躍した北爪(宏幸)さんというアニメーターです。その北爪さんは作画スタジオ・ビーボォーの出身で、そのビーボォーを設立したのが湖川(友謙)さん。このようにルーツを探って、絵柄を参考にする。過去の絵には当時の流行とは別に時代に左右されない魅力もあるので、それを抽出して自分の作品に取り入れてみる……という感じです。

――では、『P3』と『P4』の物語を作る上で大事にしていることはなんですか?

曽我部:原作者と同じ目線で、『P3』や『P4』のテーマはなんだろうかとじっくり考えることですね。実はコミック版『P3』の最終巻のラストシーンは、原作ゲームよりもさらに1歩踏み込んだ表現をする必要があったので、主人公のセリフを書き足しているんです。原作ゲームや劇場アニメだと、主人公が出した“答え”を受け手に委ねるような終わり方をしているんです。

 でも、僕らが作るコミック版は、それまでの連載を数式に例えるならば、最後のセリフでちゃんと“答え合わせ”をしたかったんです。『P3』のテーマは“悔いなく生きる”ということ。人間、命がかぎりはあるのだから、与えられた時間の中で一生懸命生きる……という想いが作品の根本にあると思うんです。悔いなく生きた主人公の気持ちを言葉にしたら、どんなセリフになるのか――? あの時は「僕はうれしい」という言葉を選びました。

――単行本では異例のフルカラーで描かれていたシーンですね。その言葉を選んだ理由も教えていただけますか?

曽我部:『ペルソナ3 フェス』(『FES』)という、『P3』本編の後日談が収録されたゲームがリリースされていますよね。僕はその物語がとても好きで……。

 ざっくり説明すると、主人公は悔いなく生きて旅立ったけど、残された仲間たちは心残りがあるという内容なんですね。『P3』のファンのみなさんの中には、プレイヤーの分身である主人公を自分の友達のように思っていて、「なぜ、アイツが旅立たなくちゃいけなかったんだ!」と苦しい想いをした人もいると思うんです。それはあとに残された特別課外活動部のメンバーと、まさに同じ心境なんですね。

 「許されるなら、生き返らせたい」と。そんな主人公への想いを消化できずにいるファンとメンバーに向けて、ちゃんと彼自身の口から、自分の想いを語らせるしかないなと……。僕は『FES』の後日談も含めて1つの物語だと思うので、コミック化すべきだと考えていました。でも、それが叶わないなら、主人公の想いがわかったから、それを伝えて“答え合わせ”をしなければと思ったんです。これもテーマから読み解いていった結果ですね。

『ペルソナ4』
▲コミック版『P3』は全11巻で完結。ぜひ一気に読んで、主人公・有里湊と仲間たちが全力で駆け抜けた日々をぜひ体験してください。

――なるほど、そういう意図があったのですね。では『P4』はどうでしょうか?

曽我部:『P4』のコミックを作る時は、とにかく素の自分というか、「自分が他人を信じられる理由はなんだろう」と考えています。本音で腹割って話した仲間がそろっているのが、自称・特別捜査隊ですよね。僕の解釈では『P4』は「自分の本当の気持ちがどこにあるのかを見極める力を身につけないと、間違った方向へ進んでしまう」というテーマが物語の根底にあると思うんです。コミック版ではそれをまっすぐ描こうかなと思ってます。

――続いて、ご自身が考えるコミック版『P4』の魅力を教えてください。

曽我部:僕が考える『P4』の魅力は、人間が持つ“弱さ”も肯定してくれているところですね。弱さは悪じゃない。その部分はできるだけ、強く描いていきたいです。今、電撃マオウの連載やコミックス最新巻の第10巻では、コミック版の主人公・瀬多総司が持つ弱い部分を重点的に描いています。主人公の弱いところは原作ゲームではあまり描きにくいですよね。

 でも、主人公も決して完璧超人ではなく、相棒の陽介たちと同じ地平に立っている少年なんだと……。それから、「個人の能力自体が、その人の価値そのものではない」ということをなによりも伝えなければいけないと思っています。例えば、守っている立場と守られている立場の場合、守っているほうが上の存在というわけではないと思うんです。雪子と千枝の関係なども、視点を変えれば、雪子のほうが精神的保護者だったりする。その人が持つ価値観によっても、人の立場や能力は変化して見えるわけです。

 弱いことへの不安、自分の能力が低いことへの不安と向き合うことができるというのも心の強さだと、『P4』は教えてくれているのだと思います。『ペルソナ』シリーズは今、洗練されたデザインやキャラクターのかっこよさが目立っていますけど、実は人間の本質とちゃんと向き合っているんだなぁと感じますね。

『ペルソナ4』
▲陽介は総司が弱ったり、迷ったりした時に、助け舟を出してくれる頼りがいのある相棒。強く見える主人公も実は仲間に支えられているのです。

――今後の展開で特に力を入れて描きたいと思っているエピソードはありますか?

曽我部:今、描いている生田目の周辺のエピソードは、『P4』の物語の本質をついている大事な部分だと思うので、特に注意を払って書いてはいますね。コミック版『P4』は僕の構想では残すところ、あと2巻の予定です。最終話までの展開もすでに決まっていますし、あとは瀬多君のパーソナリティーをどれだけしっかりと描くか。瀬多君は原作ゲームの主人公とも、TVアニメ版の主人公とも少し違った個性を持っているので、今まで応援してくださったファンの方が納得するエンディングにしたいですね。『P3』の時に“終わる終わる詐欺”をした身なので、恐縮ですが。

『ペルソナ4』
▲菜々子の命を“救済”という大義名分のもとに脅かした生田目を許せるのか? 総司たちの葛藤はどんな結末を導き出すのか……。

――では、クライマックスへ向けて、これから注目してほしいシーンはありますか?

曽我部:もちろん、主人公の瀬多君と本作の黒幕とのバトルですね。黒幕との戦闘シーンはTVアニメ版や原作ゲームでもすでに描かれていますが、コミック版でも終盤の見せ場になるのは確実なので、腹をくくってアイデアを練りに練っているところです。ここからはネタバレになってしまうので、伏字にしてほしいのですが……●●の●●●●が●●●●●●●●●になるかもしれません。

――えっ、そんな大変なことになるのですか? 今までにない解釈ですね、早く読みたいです!

曽我部:ありがとうございます。終盤のバトルはファンの方を驚かせるだけでなく、「なるほど」と納得するものにしようと考えていますので、ぜひご期待いただければ……。欲をいえば、戦闘好きの男子ファンのみなさんが喜ぶバトルにしたいですね。もちろん、『ペルソナ』シリーズらしい品のよさは保ちつつです(笑)。あとは特別捜査隊のみんなに、それぞれの見せ場を用意してあげたいというか、持ち味を生かしたシーンを描いてあげたいと思っています。

『ペルソナ4』
▲悲しんでいるのか、怒っているのか――。その表情からは感情が読めない足立。今後、注目したいキャラの1人だ。

――ちなみに、曽我部先生のお気に入りのキャラクターは岳羽ゆかりとお聞きしましたが、『P4』では誰なのでしょうか。

曽我部:これは難しいですね! 本当は全員好きなんですよ。う~ん、あえて選ぶとしたら、外見的にはショートカットの千枝かな。カンフー好きだから、足もキュッと締まってそうですし……。そういえば、原作ゲームファンにはおなじみの王様ゲームのエピソードで、“肩車される”という罰ゲームのクジをりせが引く、というのがあるのですが、コミック版ではその役を千枝に変更したんです。

 なぜかというと、千枝を肩車したほうが足のしっかりした質感を味わえるのではないかと(笑)。あれで首を絞められたら、大変だろうなと思って書きました。物語の本筋ではないので、コミック版ならではの脱線というか、大喜利的なおもしろさではないかと思っています。

――最後に連載を楽しみにしている読者のみなさまへメッセージをお願いします。

曽我部:長い連載になりましたが、変わらずに応援してくださって本当にありがとうございます。ボリューム的にはあと2巻を考えていますが、さてどうなるか(笑)。最後まで読んでいただいた時に、「これぞ『P4』だったね!」とみなさんに納得していただけるような物語にしますので、最終話までおつき合いいただけたらうれしいです。


 いかがしたか? 気になる制作秘話がいっぱいでしたね! 電撃マオウが誇る、実力派クリエイターが連載する2本の『ペルソナ』公式コミックは今後もみどころとお楽しみが盛りだくさん。ぜひ毎月チェックしてみてください。

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データ

▼電撃コミックスNEXT『ペルソナ4 ジ・アルティマックス ウルトラスープレックスホールド 3』
■著者:斉藤ロクロ
■原作:アトラス
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:KADOKAWA
■発売日:2017年9月27日
■定価:本体570円+税
 
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▼電撃コミックスNEXT『ペルソナ4(10)』
■著者:曽我部修司
■原作:ATLUS
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:KADOKAWA
■発売日:2015年7月27日
■定価:本体570円+税
 
■『ペルソナ4(10)』の購入はこちら
Amazon.co.jp

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