2017年9月25日(月)
音で道を切り開く斬新なホラーVRが生まれた経緯とは? 『Stifled』プレス発表会レポート。【TGS2017】
千葉県・幕張メッセで開催された“東京ゲームショウ2017”では、Gattai GamesのPlayStation VR用コンテンツ『Stifled(スタイフルド)』メディア向けセッションが行われました。
『Stifled』は、音を立てたときだけ周囲の状況が表示されるという特殊なVRホラーゲーム。シンガポールを拠点とするゲーム開発会社Gattai Gamesが開発を手掛けており、日本でもさまざまなインディーゲームイベントに展示されて話題を呼んでいる作品です。
セッションでは、同社のマネージングディレクターを務めるジャスティン・ウー氏が登壇。
開発は、リードプログラマーのウェスリー氏、ゲームデザイン/アートのウェイディン氏、プログラミング/オーディオデザインのブライアン氏、ゲームデザイナー/アニメーター/アーティストのアンドレ氏。そして、ジャスティン氏を含めた5人で行っているという驚きの事実からセッションがスタートしました。
▲本作の開発チーム。左からウェスリー氏。ウェイディン氏。ブライアン氏。アンドレ氏。ジャスティン氏。 |
“サウンド”にメリットとデメリットを用意したゲームプレイ
『Stifled』は“サウンド”が重要なゲームとなっており、プレイヤーは音を発することで視覚を確保できる仕組みになっています。音を立てないと画面は暗闇のままですが、音を立てることで“怪物”を呼び寄せてしまう可能性もあるため、ゲームプレイとしての“音”が非常に重要なものであるとジャスティン氏は強調していました。
咳払いやひそひそ話など、プレイヤーは常に“どんな音を立てなければいけないのか”を意識しながらプレイしなければなりませんが、それだけではなく、プレイヤーがいる環境も重要とのこと。
「砂利の上や鉄の板の上など、プレイヤーが歩く場所によっても異なる音が立ち、タイミングを間違えると敵をおびき寄せてしまうので、音を立てることにメリットとデメリットの両面が存在するステルスゲームになっています」と、ジャスティン氏は語りました。
さらに「ここからが本番」と前置きして語り始めるジャスティン氏。彼によれば、ゲーム内にいる敵はPS4のマイクを使って音声を拾い、プレイヤーが実際に現実世界で出した声や音を聞くことができるそうです。マイクを通したプレイヤーの叫び声が視界を広げ、敵もその音に反応します。
プレイヤーが音を立てることを意識するゲームはすでに存在しますが、“Stifled=窒息するような”という文字通りの息が詰まるようなゲームプレイは、ほかにないユニークなゲームプレイであると強調しました。
開発チームの初期作品『LURKING』から『Stifled』が生まれた経緯とは?
次にジャスティン氏は、開発チーム誕生の経緯と本作が生まれるまでの経緯について語ってくれました。『Stifled』は、もともとDIGIPEN SINGAPORE校で出会った友人たちと作り上げた卒業制作作品『LURKING』が始まりとのこと。それは『Stifled』同様に音を中心としたゲームプレイで、本作に似ているゲーム性だったそうです。
『LURKING』は台湾のとあるアニメーションから着想を得ており、暗闇の中で自分の行き先を探っていくという着想から製作を始めた作品でした。6カ月ほどで完成したそうですが、リリース当初から数々の賞を受賞。TGS2014のセンスオブワンダーナイトなどでもノミネートされ、反響が大きかったことから何かできないかと考えて生み出されたのが『Stifled』だと、ジャスティン氏は振り返りました。
なお、『Stifled』の開発自体は2014年8月からスタート。その後、2015年にPS VRの前身となる“Project Morpheus”が発表されたときに、すぐさまSIEとコンタクトをとり、現時点でシンガポールでPS VR用のソフトを開発している唯一のスタジオになったそうです。
また、本作はSIEの担当者からも強い関心を持たれており、ゲームプレイがユニークなだけではなく、マイクを利用していることとゲームの質が高かったことが評価に繋がったと述べました。
開発陣によるQ&A
セッションの最後は、開発陣とメディアによる一問一答で幕を閉じました。一問一答では開発進行度なども明らかとなり、ゲームのリリースが近いことをうかがわせていました。
Q:登場する敵は、クリーチャーのようなバケモノなのでしょうか。それとも人間なのでしょうか?
A:ほとんどクリーチャーです。クリーチャーと人間の半々のような感じなのですが、少し説明しにくいです。
Q:世界観について教えていただけますか?
A:ゲームのストーリーは、2人の人物を中心に展開していきます。プレイヤーがプレイするなかで「なぜ、音を立てることで視界を得られるのか」といった謎を解いていくことになります。ですから、世界観についてはお話できません。
Q:マイクで音を拾うゲームとのことですが、ゲーム実況などで声を出さなければいけない場合のプレイも想定されているのでしょうか?
A:R2ボタンの押し方によって音の立て方が変わり、コントローラーだけでも遊べるようになっています。ただし、音の精度に関してはマイクに譲るところがあるので、ぜひマイクを通して遊んでいただきたいと思います。
Q:PS4版を作るにあたって、やりやすかった点を教えてください。
A:PS4は仕様が統一化されていて、PCと違ってプレイヤーが持っているハード性能の差を考えずに信頼して作れたのが、大きくやりやすかった点だと思います。
Q:逆に開発をするうえで、一番苦労されたところはどこですか?
A:学校でゲーム開発を学んでいたので、ゲーム開発に関してはそれほど苦労したことはありませんでした。逆に、マーケティングがどれも新しいことばかりで慣れないのですが、とても楽しくやっています。学生時代は多少のバグがあっても許されていたのですが、プロのクリエイターとしてリリースしなければいけないので、バグなどがないちゃんとしたゲームをリリースしなくてはいけないという点は緊張しています。
Q:言葉で命令するのではなく、音を立てることに絞った理由を教えてください。
A:言語認識も試してみましたが、リアルタイムで行うと難しかったからです。また、言語認識で操作させるとプレイヤー側も混乱してしまうのも理由です。大きな音を立てると大きなパルスが出るほうが、プレイヤーがわかりやすいので採用しました。
Q:コンバット要素はあるのでしょうか?
A:主要はステルスです。敵を倒したり、攻撃することはできません。敵の気をそらして逃げることが主な要素になります。
Q:『LURKING』や『Stifled』を発表して、国によって反応が異なると感じたことはありましたか?
A:音という物は人間が本能的に理解できるせいか、国や文化によって反応が違ったことはほとんどありません。みなさん、やはり同じような反応を示していただけます。ほとんどの場合、みなさんプレイしながら叫んでいただけるので、それを見るのがうれしいですね。
Q:日本のユーザーについて思われることを教えてください。
A:2014年にはじめて卒業制作の『LURKING』をリリースしましたが、その3年後にSIEさんからこうした形で『Stifled』をリリースできることはとても喜ばしく思います。日本のみなさんにも、私たちのゲームを楽しんでもらえることを期待しています。
Q:配信時期はいつ頃になるのでしょうか?
A:現在、SIEさんと相談させていただいている状態です。
Q:現在の完成度は、どれくらいですか?
A:ゲームは、ほぼ完成しています。現状はバグ修正や調整。それから、ローカライズを確認している時期です。
Q:ホラーゲームは開発している側が怖さに慣れてしまうと思うのですが、怖さを調整するうえで行ったことはありますか?
A:おっしゃる通り、慣れというのはありますね。だから、プレイテストを頻繁に行いました。やはり、慣れてしまうので外部から人を連れてきて反応を見ています。外部の人たちが叫ぶ反応などを見て、自分たちの開発が正しかったことを確認しながら作っています。