2017年9月27日(水)
東京都、JR有楽町駅の改札を出て徒歩1分。座席数5012席、世界でも有数の大きさを誇る東京国際フォーラムAホールにて、9月23日(土)~24日(日)、オーケストラコンサート“FINAL FANTASY XIV ORCHESTRA CONCERT 2017 ―交響組曲エオルゼア―”が行われました。
東京国際フォーラムを2日間借り切ってゲームミュージックのオーケストライベントを行う……という、音楽事情通からするとかなりの“事件”だという本イベント。今回は、公演を観たうえでのレポートをお届けします。
■開催日時
2017年9月23日(土) 昼公演12時開場/13時開演 夜公演17時開場/18時開演
2017年9月24日(日) 昼公演12時開場/13時開演(追加公演) 夜公演17時開場/18時開演
■指揮:栗田博文
■演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
■出演:
吉田直樹氏(ファイナルファンタジーXIV プロデューサー兼ディレクター)
祖堅正慶氏(ファイナルファンタジーXIV サウンドディレクター、コンポーザー)
スペシャルゲスト:植松伸夫氏(コンポーザー)、スーザン・キャロウェイ氏(ヴォーカリスト)
筆者が訪れたのは9月24日夜、最終公演。17時開場にもかかわらず15時半頃にはすでに数百人規模の列ができ、開場後の購買コーナーではカードケースや各種カラビナなどの人気商品が即座に売り切れ……この日の東京国際フォーラムには『FFXIV』のほかのイベントと比べても特異と言えるほど熱気が満ちていました。
それもそのはず。『FFXIV』プロデューサー兼ディレクターの吉田さんやサウンドディレクターの祖堅さんいわく「プレイヤーの方々から、イベントのたびに"オーケストラ化はいつですか"と問われていた」という、光の戦士たち待望の『FFXIV』単独オーケストラコンサートがついに開催されたわけですから。その期待感の大きさは、会場を訪れた方々の表情を見ているだけでも十分に察せられるものでした。
▲会場内には、開発コアスタッフさんたちのコメントが書かれたボードも。個々人の“曲”に対する思い入れが垣間見られます。 |
▲GLAYのTERUさんはじめ、各所から贈られた花もズラリ。 |
<第1部【新生編】> | 作曲者 | 編曲者 |
01. 希望の都 | 祖堅正慶 | 仲間将太 |
02. 静穏の森 | 祖堅正慶 | 宮野幸子 |
03. 極限を超えて | 祖堅正慶 | 宮野幸子 |
04. 絢爛と破砕 ~クリスタルタワー:シルクスの塔~ | 祖堅正慶 | 宮野幸子 |
05. 究極幻想 | 祖堅正慶 | 宮野幸子 |
06. 試練を超える力 | 祖堅正慶 | 鈴木克崇/仲間将太 |
07. 白銀の凶鳥、飛翔せり | 祖堅正慶 | 宮野幸子 |
08. Answers | 植松伸夫 | 成田勤 |
<第2部【蒼天編】> | 作曲者 | 編曲者 |
09. 不吉なる前兆 | 祖堅正慶 | 鈴木克崇/仲間将太 |
10. 彩られし山麓 ~高地ドラヴァニア:昼~ | 祖堅正慶 | 黒田賢一 |
11. 逆襲の咆哮 | 祖堅正慶 | 黒田賢一 |
12. Dragonsong | 植松伸夫 | 成田勤 |
13. メビウス ~機工城アレキサンダー:天動編~ | 祖堅正慶 | 辻峰拓 |
14. 忘却の彼方 ~蛮神シヴァ討滅戦~ | 祖堅正慶 | 辻峰拓 |
15. 英傑 ~ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦~ | 祖堅正慶 | 黒田賢一 |
16. Heavensward | 祖堅正慶 | 鈴木克崇 |
<アンコール> | 作曲者 | 編曲者 |
17. そして世界へ | 祖堅正慶 | 宮野幸子 |
18. 天より降りし力 | 祖堅正慶 | 仲間将太 |
「オーケストラに慣れている方はいらっしゃいますか? みなさんはタンクです。初見の方々がスタンディングオベーションの際に戸惑わないよう、率先して立ち上がってあげてください。ヒーラーの方々、もしも近くに感動で涙ぐんでいる方がいたら……一緒に泣いてあげてください。そしてDPSの方々。あなたがたのお仕事は拍手です。高DPSをめざして力いっぱい叩いてくださいね」
司会を務める吉田さんのそんな言葉で場が和み、スタートした本公演。演奏される曲目は“新生編”“蒼天編”に分かれた形で構成されており、プレイヤーのこれまでの冒険の軌跡をなぞるような順番で展開されていきました。
その音の奔流……栗田博文さんの躍動感あふれる指揮に彩られた楽器の演奏、ミィ・ケット合唱団やスーザン・キャロウェイさんの圧巻の歌声、どれをとっても本当に感涙もの。
ただただ音に包まれるのが幸せで、大スクリーンに映された映像(冒険の軌跡となるイベントシーンなどを編集したもの。シナリオセクションマネージャー・前廣さん作とのこと)を見つつ、涙やら鼻水やらがじわじわ出てくるのを感じながらの視聴となりました。
とくに“Answers”では"時代の終焉"トレーラーだけでなく大迷宮バハムート真成編3をクリアした際の"第七霊災の真実"も映され、あらためて当時の感動を思い出したり……。氷の巫女イゼルのテーマである“忘却の彼方”は四弦楽でしっとりと奏でられ、その際に映し出された“ラスト・ダイヤモンドダスト”のシーンに涙腺が緩み……と、映像と音の相乗効果も素晴らしいものでした。
▲“ファイナルファンタジーXIV ファンフェスティバル2016 in TOKYO”などで多くの人を魅了したピアニストのKEIKOさん。本公演にも参加しておられました。 |
▲“メビウス ~機工城アレキサンダー:天動編~”での1コマ。指揮や楽団員の方々がぴたっと時間停止し、その間に吉田さん、植松さん、祖堅さんが客席を行進。こんな場でもちゃんと散らかし要素を入れてくれるあたりは流石です。そして時間停止が終わったあとに一糸乱れぬ動きでズバッと演奏を再開した東京フィルハーモニー交響楽団の技術にも驚愕。 |
さて、レポートと銘打っておきながら申し訳ないのですが、残念ながら文章ではとてもとてもこのコンサートのすばらしさを伝え切ることはできません。ただ、これらの楽曲が光の戦士たちの心の琴線にダイレクトに触れてくるのには、曲や演奏そのものが素晴らしいこと以外にも理由があるのかな、と思ったりもします。
エオルゼアの世界は、現実と同じようにさまざまな音で満ちています。水のせせらぎ、鳥のさえずり、人々のざわめき、鎧のこすれる音、草を踏む足音、飛行時の気流、武器や魔法が弾ける音。そしてもちろん、各所で流れるBGMの数々。私たちが冒険をする際、膨大かつ繊細なそれらの“音”はいつもすぐ傍らにあり、冒険を彩ってくれています。
私たちがエオルゼアで過ごす時間は、つねにそんな“音”とともにあるわけですね。だからこそ、その音を取り出しオーケストラという鮮やかな形で浮き出させたとき、私たちの胸には、その音とともに過ごした時間の記憶があらためてよみがえってくるのかもしれません。
ウルダハの街中でフレンドと話したこと、初めてアルテマウェポンを倒したときのこと、大迷宮バハムートに挑んだ際の仲間との試行錯誤、レイドファインダーなどがない時代に毎週いろんな人に声をかけてメンバーを募ったこと、そこで知り合ったフレンドと以後もずっと遊んでいたりすること、勝利の瞬間の叫び声、バハムートプライムとの対峙で流れた“Answers”に心震わせたこと。
蒼天編、初めて空を飛んだ際の感動、竜詩戦争の真実にふれたときの戦慄、それについてフレンドと考察したこと、アルフィノやイゼル、エスティニアンと旅したこと、オルシュファンやイゼルの想い、ナイツオブラウンドと化した蒼天騎士団との決戦、アレキサンダー戦で時間停止&過去改変ギミックに驚愕したこと……。
ゲームとしてのイベントも、それ以外の、プレイヤーそれぞれに起こった・感じた出来事も、すべてひっくるめて『FFXIV』のゲーム体験。私たちはきっと、その体験があるからこそ、オーケストラ楽曲という刺激に呼応してこれほどの感動を得られたのでしょう。
こうして24日夜の最終公演は、5000人超の観客総立ち・スタンディングオベーションで幕を閉じました。演者の最後の1人がはけるまでいっこうに拍手が鳴りやまないその様は、舞台に慣れた楽団員の方をして「かつてない」とのコメントを残すほどのものだったようです。
ちなみに、最後のあいさつで吉田さんや祖堅さんたちが壇上に上がった際、客席からは「紅蓮編も待ってる!!」との声も飛び出しました。
今回残念ながら会場に来られなかった方々も、いずれまた紅蓮編以降のオーケストラを楽しめる日がくるかもしれません。その日に向けて、今後も『FFXIV』の世界に満ちたあらゆる音を感じつつ、それに彩られた自分だけの冒険を大いに堪能しでほしいと思います。
なお、本公演のBlu-ray Disc盤オーケストラアレンジアルバム『Eorzean Symphony FINAL FANTASY XIV ORCHESTRAL ALBUM』は2017年12月20日(水)に発売されるとのこと。この冬、この感動がもう再度――。楽しみです。公演に来られなかった方々もぜひこのBDをチェックしてみてください!
※コンサート中の写真は公式提供のものを使用しています。
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