2017年10月4日(水)
家にいながら手軽に買えて財布にもやさしい、そんなダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。本記事では、9月26日より配信されているPS4/Xbox One/PC用ソフト『RUINER』のレビューを、ライターのキャナ☆メンがお届けします。
『RUINER』は、サイバーパンクの世界観とハイスピードなバトルが特徴のアクションゲームです。開発したREIKON GAMESはポーランドにあるゲームスタジオで、『The Witcher』シリーズや『Dead Island』、『Dying Light』などの作品に携わったクリエイターも在籍。公式サイトを読むと、そもそも『RUINER』を作るために設立されたような経緯があり、実際にゲームをプレイすると、そのエネルギーは余すことなく本作に注がれていると思うほどにこだわりを感じる作品となっています。
サイバーパンクの表現は秀逸であり、アクションゲームとしてはプレイヤーの工夫を求める難易度とレベルデザインで、一筋縄では行かない敵を倒した時に得られる達成感は、思わず「よっしゃ!」と声を上げてしまうほどです。そんな『RUINER』の心に残った部分を、順に紹介していきたいと思います。
サイバーパンクと聞いて、90年代の香港のような街並みと近未来テクノロジーの融合した風景を思い浮かべる人は、『RUINER』を期待通りの作品としてプレイできるはずです。
雑多なアジア感のかもしだすカオスな世界、臭いが漂ってきそうな薄汚れた路地、うらぶれた人々の姿が見せる退廃的な風景、けばけばしいネオンの光……社会の腐敗が投影されたような街並みが、巨大サイバー都市“レンゴクシティ”としてゲーム内に存在します。この街をただ街を歩き、人々のセリフに耳を傾けるだけで、サイバーパンクの世界を感じて没入できると思います。
▲街に生活感はあるが、人々に希望はない。これぞサイバーパンクの世界。 |
▲街に住む人々は、いい意味で“イカレて”います(笑)。普通のようでいて、影を抱える人も。 |
また、さまざまなアーティストの手掛けた楽曲がゲーム内に使用されており、音楽でもサイバーパンクの世界観がしっかりと演出されています。日本からは平沢進さんが曲を提供しており、エンディングで『トビラ島』を聞いた時は、ゲームは終わるのに改めて『RUINER』の世界へ引き込まれるような不思議な感覚を味わいました。実際には「よし、あのステージをもう1度プレイするか」とコントローラを置かず、プレイを続けたのですが。
シナリオ的には、2091年という時代背景のもと、先述の“レンゴクシティ”を舞台に物語が進んでいきます。主人公は、巨大企業“ヘヴン”にさらわれた兄を救うために戦う“弟”であり、謎の女ハッカーの助けを借りながら、歪んだ社会を作り出す巨悪に挑む……というストーリーです。
▲謎の女ハッカー。クールに見えて、顔文字をよく使うお茶目さんでもあり、つかみどころがないです。 |
上の説明だと、主要キャラクターの固有名詞は一切出てきませんが、実際、そこは分からないままプレイを進めることになります。しかも主人公は、何もしゃべらない覆面男でいかにも怪しい……不審を抱く気持ちは募る一方で、こんなにもお巡りさんに通報したくなる主人公は、ざらにはいないでしょう(笑)。
▲悪の企業と戦う主人公。え? 悪党の間違いでは? というツッコミは、初見だとアリに思えてしまうんですよね。 |
とはいえ、顔も名前も性格も分からない、しかも一言もセリフがないだけに、主人公がプレイヤーの没入感を邪魔することはまったくありません。ストーリーに変化はないものの、イベントやNPCとの会話でたまに選択肢が出るので、それに答えるたび、だんだんと愛着が湧いてきます。ロールプレイは言い過ぎですが、それにやや近い感覚です。
しかも主人公の覆面には、その時々の感情を表したかのような「KILL YOU」や「WE WERE NEVER FRIENDS」といった文字が表示される演出があり、その独特のセンスはゲームの世界観と相まって味わいがあります。
▲序盤で表示される、とある会話中の選択肢です。このように、選択肢によって顔に映る文字が変わります。 |
ジャケットの背面に“弟”という文字がロゴのように配されているのもシュールで、ギャグではないのだけども笑いを誘う……そんなユーモアが楽しくなってきます。いろいろツッコミたくなるのだけど、それは不快ではなく、むしろ『RUINER』という作品の特色になっているなという。正直、こういうセンスは好きです(笑)。
▲ゲーム開始時のデモシーンでは、主人公の背中にはズーンと“弟”の文字が。完全に持って行かれました。 |
サイバーパンクの世界観が素晴らしい『RUINER』ですが、本質はアクションゲームです。街を歩いて世界観を感じるおもしろさや、街中のちょっとしたオマケ要素はあれど、プレイの圧倒的な時間をバトルステージの中で過ごすことになります。
ステージの随所に敵の出現するエリアがあり、そこに突入すると出入り口が塞がれて、限られた空間で敵と戦います。ザコが波状攻撃で襲ってくるバトルが基本ではあるものの、シチュエーションや敵の組み合わせが工夫されていて、最後までザコ戦で飽きるようなことはありませんでした。もちろん、ボス戦も用意されています。
▲チュートリアルを兼ねたステージに登場するボス。元ヤクザという、サイバーパンク作品らしい設定の人物です。 |
飽きずにバトルを楽しめた要因は、1つには、多彩なアビリティ(特殊アクション)や武器を使え、それぞれに異なる触り心地があるからだと思います。アビリティに関して書けば、シールドを張って敵の攻撃を軽減したり、敵をハッキングして味方にしたり、あるいは一定範囲の敵を気絶させたり、それぞれに立ち回りが変わってきます。
武器もまた種類によって攻撃方法が変わるので、アビリティと武器の組み合わせによってプレイ感の幅が広がり、戦闘のバリエーションを自分の操作で体験できるんです。
▲武器は近接用と遠距離用の2種類を携帯でき、拾った武器には回数制限があります。 |
▲特に遠距離武器は、種類によって攻撃方法が大きく変わるので楽しいです。 |
▲サイバーパンク作品に欠かせない(?)刀もあります。 |
ちなみに、各アビリティはアップグレードによって、使いやすさや効果を向上させることができ、いずれもスキルポイントを割り振ることで、プレイヤーの自由に獲得できます。カスタマイズの自由度が高いこと自体、かなり楽しいのですが、さらに本作がおもしろいのは戦闘中でもスキルポイントの割り振りができる点です。
▲カルマという経験値的なものをためるとレベルアップし、アビリティやアップグレードがアンロックされます。 |
▲アンロックされたアビリティやアップグレードにスキルポイントを割り振ると、そのアクションを使えるようになります。 |
これにより、敵やシチュエーションに合わせてアビリティ構成を変えられるので、バトルで苦戦したら、有効なアビリティを見つけ、自分なりの攻略法を見つけるおもしろさがあります。どのアビリティも何かしらの状況で輝く場面があるので、新しいアビリティがアンロックされたら、とりあえず使って特徴を掴んでおくといいと思います。
▲アビリティの効果は、映像でも確認できるので参考にしましょう。 |
正直、本作は歯応えのある難易度に仕上がっているので、闇雲に戦うとかなり苦戦すると思います。筆者はノーマルモードでクリアしたのですが、有効なアビリティや戦い方を見つけられないと、結構ドツボにはまることがありました。なお、開発しているREIKON GAMESも本作が決して簡単なゲームではない自覚があるのか、死亡回数はカウントされていつでも見られます(笑)。
▲ちなみに、何回死んでもデメリットはありません。むしろ666回死ぬとアンロックされる実績もあります。 |
とはいえ、歯応えがあるからこそ、試行錯誤のおもしろさがあるわけで。“レベルアップ=単純に強くなる”わけでもないですし、アビリティとそのアップグレードを充実させても、最終的にはアビリティを使いこなす戦術や腕が必要です。筆者の場合、とある終盤のボスで100回くらい死にましたし。おのれナーヤク……!
なので苦戦する敵に対して“勝てる戦い方”を見つけた時は、腕の上達が実感できて、なおかつ達成感も込み上げてきます。それこそ、100回も殺されて親の敵よりも憎いボスを倒した時などは、興奮して思わず声もガッツポーズも出てしまうわけですよ(笑)。そういうアクションゲームの醍醐味は、しっかり作られたゲームだと思います。
▲バトルのクリア後に、ランクによる評価も出ます。女ハッカーちゃんの態度が違いすぎますね……(笑)。 |
途中でコントローラを投げ出したい場面もあったけれど、終わってみると非常に楽しくプレイできたので、いろいろと書きたい『RUINER』の魅力がありました。
▲最後の画像は、一番好きなキャラのアリーナです。 |
『RUINER』は、サイバーパンクの世界観や歯応えあるアクションゲームが好きなら、買って損なしのゲームだと思います。あと、ゲームに対して自分の腕が上達する快感を求める人も。尖ったゲームではあるものの、それだけにクリアまでプレイすると、心に刺さるゲームだと感じます。
もし機種にこだわりのない人であれば、個人的にはサウンドトラックも配信されているPC版がおすすめです。レンゴクシティを彩るテクノサウンドは、お酒やタバコがおいしくいただける音源になっていますよ(笑)。
(C) REIKON GAMES 2017.
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