2017年9月30日(土)
『スプラトゥーン2』開発者へのロングインタビュー。イカした4人が語りまく~る『2』への熱い思い
任天堂から発売中のNintendo Switch用アクションシューティングゲーム『スプラトゥーン2』の開発者インタビューを掲載する。
▲『スプラトゥーン2』開発の中心となるイカした4人。詳しいプロフィールは順を追って紹介していく。 |
9月14日に配信された“Nintendo Direct 2017.9.14”にて、アップデート情報が公開された『スプラトゥーン2』。第2回フェス“マックフライポテト vs チキンマックナゲット”や公式全国大会・第3回スプラトゥーン甲子園が行われるなど、遊びの場は発売日以降も大きく広がり盛り上がっている。
ここでは、発売中の『電撃Nintendo 10月号』に掲載されている本作の開発スタッフ陣のインタビューを、誌面に掲載しきれなかった部分も含めて全文掲載する。収録は7月末に行われたため、それ以降のアップデート要素には触れられていないが、『2』に込められた思いをじっくり語っていただいた。
なお、インタビュー中は敬称略。
現実世界と同じだけイカ世界でも時間が経過している
――『スプラトゥーン2』の開発はいつごろからスタートしていたのですか?
野上:スタートは『スプラトゥーン』とクロスするような感じで進んでいたので、はっきりココからっていうのが言いづらいんですよね。基礎的な実験は結構早くから初めていましたし、開発チーム全体が移行したのはラストフェスが終わってからだったので。でも、本当の初めっていうと『スプラトゥーン』がリリースされてしばらくたってからかな。
佐藤:そうですね、発売から半年もたってないですね。
井上:2015年の10月辺りから『スプラトゥーン2』の開発を本格的にスタートしていった感じですね。
――開発するにあたってコンセプトとして設定していたものはありますか?
井上:前作の発売から約2年後なので、現実と同じだけイカ世界でも時間が経過したというのを世界のコンセプトにしています。はやりや服のトレンドの変化を見ていただくと、『スプラトゥーン』から2年間経過した街のようすを実感できると思います。
佐藤:あとは『1.5』みたいな見え方をするのではなく、正当続編であるっていうところはその時点で決めていましたね。前作の流れがあっての『2』を作りたい。パラレルワールドではなく、『スプラトゥーン』の世界が2年後にどうなっているのかを見せることが、正当続編っていう意味かなと。
――2年後のイカ世界で一番イカしているのがハイカラスクエアになったと。
野上:若者が今一番注目しているスポットがハイカラスクエアみたいな感じですかね。流行が渋谷から裏原宿に変わった、みたいなことをよく例えで言っていたのですけれど(笑)。そんな感じのイメージです。若者って、はやりがチョコチョコ変わっていくじゃないですか。
井上:ありがたいことに、前作の発売からかなり時間がたってからも、お客様の熱気が落ちていないと感じていました。そういう状況で『スプラトゥーン2』をプレイし始めても、すんなり移行できるようにというのは考えましたね。
▲野上恒氏。ゲーム全体を統括するクリエイティブプロデューサー。PR方針やコラボ企画にも携わる。 |
二丁拳銃ってカッコよくて主役っぽさも出せそう
――新ブキの“スプラマニューバー”が生まれた経緯などをお聞かせ願えますか?
佐藤:正統続編として『スプラトゥーン2』を作るうえで、ブキのカテゴリーはぜひ追加したかったんです。そうしたなかで最初に出たのが“トリッキーな動き”というアイデアでした。
このアイデアを“相手の攻撃を避ける”という風にゲームプレイに落とし込んで試していたのですが、「1回避けるだけじゃなく、2回連続で使えたほうがおもしろいですよね」という意見が出てきました。そうした流れから、カッコよくて主役っぽさも出せそうということで二丁拳銃のマニューバーが生まれました。
野上:両手にブキを持ったグラフィック的な部分と、遊び的な要素から入ったところの両面の要素から生まれましたね。
井上:わかりやすさは重視しています。『2』なので二丁でカッコイイ。みたいな。
野上:いろんな意味で『2』みたいなのはありますよね。“2”年後とか(笑)。
――うまいマニューバーの相手に出会うとチクショーと思いながらもカッコイイなと。
野上:戦略も大事なのですけど、まずは単純に触ってみて気持ちイイとかカッコイイという風にしたいというのが一番強かったですね。
――逆にスライドしたマニューバーにうまく当てて倒せると“やった”みたいな。
野上:そうですね(笑)。動きを読んだ的な。
佐藤:相手と自分のやり取りで、“こう来るかもしれないからこうしよう”など、工夫するところが増えるというのはブキを開発する時に意識した面でもあって、マニューバーの性能にも反映されているかなと思います。
井上:マニューバーはだいぶロマンで動いているところも(笑)。
野上:ナワバリバトル自体が、人間世界でいうスケボーとかBMXとか、いわゆるストリートスポーツみたいなイメージなので。このイカたちはカッコよくて、気持ちイイからバトルをしているんです。
佐藤:イカしてるからやってる(笑)。
野上:そうそう、イカしてるからやってる(笑)。なので、そういう雰囲気を出せるブキがマニューバーって感じですかね。
▲佐藤慎太郎氏。ディレクター兼リードプログラマー。主に技術面のディレクションとアップデートや対戦成績の運営を担当。 |
――今後アップデートによる追加が発表されている“パラシェルター”は新カテゴリーのブキということになるのですか?
野上:そうですね、新カテゴリーのブキです。
――パラシェルターの特徴はなんですか?
佐藤:一番の特徴はZRボタンを押すと散弾のようなインクをドバっと出せるのですが、その状態のままZRボタンを押し続けていると傘をさして相手のインクを防ぐことができます。さらに押し続けているとインクがチャージされ、傘の部分を“パージ”して飛ばすことができます。
パージした傘の後ろについて行って相手との距離を詰めたり、その傘をオトリにして攻撃させている間に回り込んだり。あとは傘を使って仲間を守ったり。バトル中に状況によっていろいろな選択肢を取れるブキになっています。
――仲間と一緒に行動することで真価を発揮しそうですね。
佐藤:そういった側面はあると思います。仲間の攻撃は通るので、ツーマンセル(2人1組)で行動して相手の攻撃を防ぎつつ2人で反撃するといったこともできますし。とはいえ仲間との連携だけでなく、自分1人でも傘を飛ばす行動をうまく使って相手の意識をそらすなど、工夫ができるブキになっているかなと。
野上:ヒーローモードではもう使えるよね?
佐藤:そうですね。ヒーローシェルターというブキが登場するので、そこで片鱗を味わっていただけるかなと思います。
――飛んできた傘を撃って破壊できますか?
佐藤:はい。傘には耐久力があって、ある程度以上インクを受けてしまうと、傘をさしている状態でもパージした後でも壊れます。あとはある程度の距離まで飛んでいくと壊れてしまいます。壊れたり飛ばしたりすると一定時間使えなくなるので、復活するまでの間は傘で守れません。
野上:その時は傘の柄だけで戦う。
――傘が飛んでいく前にZRボタンを放すと?
佐藤:放すとその場合は傘を閉じ、またZRボタンを押すとパンと撃てます。
野上:あの、こうやって(傘を閉じたり開いたりするジェスチャー)傘に付いた水滴を飛ばすじゃないですか。
――あぁ~、バシャバシャと小学生のころにやった!
野上:アレです。
(一同笑)
佐藤:イメージ的にはそんなバシャバシャに近いですね。
――狭い通路で使われるとツラそうですね。
天野:ただ、対抗手段がないわけではないので、うまく壊したりとか、状況を見て対応していただければなと。
佐藤:あと、最初は使う側の工夫も必要かなと思います。そうした工夫に合わせて対抗策が生まれて、さらにその対抗策への対抗策が生まれて……となっていったらおもしろいなって思います。
野上:これは新カテゴリーなので大きな追加ですけど、今後も工夫と対抗策が生み出されてちょっとずつ遊びが変化していくことを意図して、ブキを追加していくことになります。
▲初の防御が可能になったブキ・パラシェルター。新たな戦い方が生まれた。 |
――ちなみに、パラシェルターの名前の由来は?
井上:パラはパラソルで、シェルターは防ぐ意味の“殻”とか、“避難所”っていう英語からきています。
天野:基本ブキって「〇〇ー」っていう。
野上:最後、棒で伸ばす(笑)。
(一同笑)
井上:で、一応トリプルミーニングになっていまして、その“避難所”って意味と、“貝”のシェルって意味と。
野上:一応海産物つながりで。
井上:あとはショットガンなんで、ショットガンってあの弾のことをショットガンシェルっていうんですよ。それなので、攻撃する部分のところにもかけているっていうのがあります。
――なるほど、たくさんの意味が込められているのですね。
野上:ダジャレみたいなところもありますけどね。割とそういうのを大事にしています。
井上:あとは世の中にない言葉のほうがいいかなっていうのがありまして。
野上:パラシェルターって聞いたことない、でも口に出してみると言いやすい、みたいな。
井上:スロッシャーもそういうのに近いですけど。
新アクションや効果で今までになかった“工夫”が生まれる
――ローラーのタテ振りとチャージャーのチャージキープはどういった経緯で誕生したのですか?
佐藤:前作のブキを見直しましょうって話になった時に、ローラーは地面が塗られている時は強いですが、相手に詰め寄られてしまうと動きにかなり制限があったんです。そういった場合でも相手をけん制してあぶり出し、仲間と一緒に前線を押し上げていくときに使える新しいアクションを入れたいなっていう思いがあって、タテ振りを追加しました。
あとタテ振りとヨコ振り、2つのアクションを使い分けられるというところで、バトルに工夫が生まれてくれたらいいなと思います。
野上:実際にローラーと対峙する側は、前作では一定の距離まで詰めてもよかったのですが、今回は相手がタテ振りを使ってくるかもしれないので詰めていいか離れたほうがいいのか考える必要がある。そういう風に対峙する側にも工夫が生まれるので、バトルの全体に影響するかなと。
――気のせいかもしれないのですが、ローラーのインク切れが早くなっている気がするのですが……。
佐藤:ブキによっても調整しているものはありますね。前作のブキでインクの持ちがよすぎるなと判断したものを下げるなどの調整はしているのですけど。
野上:ローラーはもともとインク管理をちゃんとしないとすぐにインク切れしちゃうブキではあります。
――前作で使っていたギアパワーの感覚が抜けていないのかな?
佐藤:それはあるかもしれないですね。今回ギアパワーにも微調整が入っているので、インク効率アップ(メイン)とかもぜひ使っていただけたらと思います。
――では、チャージキープは?
佐藤:チャージャー同士が向かい合った時に、こう着状態になってしまうことがあります。それはチャージャーというブキがタメた状態のほうが強いブキなので、お互いタメて隠れているような時は先に飛び出したほうが負けてしまうため、出るに出られない状況になる。そういった状況を打破できるきっかけが作れないかということで生まれたのがチャージキープです。
あとはチャージャーでもトリッキーなことができるかなと思っていまして。例えば、今まではジャンプで越えられない段差でチャージャーが隠れていていた場合、攻撃しようと思ったらチャージを解除して段差の上に立たなければならなくて非常に危険でした。それが今回は先に段差を塗っておき、チャージキープで段差の上に上がって飛び出して撃つ。そんな工夫した戦い方が増やせると判断して追加しました。
――使いこなせたらいいなと思って使うのですが、まだ操作が(苦笑)。
野上:チャージキープはテクニカルではありますよね。
佐藤:やっぱりプレイしていて、“今のはやったぜ!”って思う瞬間を増やしたい気持ちがあって。チャージキープは難しいぶん、それがうまくいった時にその気持ちよさも大きいかなって思います。
――“試しうち”で練習していますが、インクから出た瞬間に照準がズレるんですよね。
野上:わかります(笑)。チャージキープは感覚で慣れていかないと難しいですよね。
佐藤:中央につねに出ている薄い白い照準があると思うのですが、そこを合わせるように意識してもらうと結構当たるかもしれませんよ。
――なるほど! よし、練習だな。
(一同笑)
▲天野裕介氏。前作に引き続きディレクターとして全体の取りまとめをしつつ、サーモンランの仕様決定にも中心的にかかわる。 |
――サブウェポンでトラップとスプリンクラーの性能がちょっと変わりましたが、これはどういった理由で変えられたのですか?
佐藤:ここもやはり“戦い方の工夫”というところがキーワードになってくると思います。トラップは設置可能数が2つに増えたこととマーキングができるようになったことで、相手がココから攻めて来たらイヤだなと思う場所にあらかじめ仕掛けておき、通った相手を探知するレーダーみたいな使い方でプレイの幅を広げられるような修正を意図して行いました。
スプリンクラーも時間経過で塗りが弱まり、もう一度セットしなおすと塗りが強くなるという性質も同じような感じで、放置しっぱなしにせずに工夫して設置してほしいということですね。
勝利に貢献したとわかるうれしい瞬間が増えたらいいなと思った
――今作では倒した人数とスペシャルの発動回数が表示されるようになりましたね。
野上:前作はトドメを刺した数でしたが、今回は倒すことに関わった数に変わりました。例えば僕が1発当てて仲間が2発当てて倒したら、僕も倒したことになります。
――思った以上に相手を倒していると思ったのはそういうことか!
野上:いやいや、それも実際に倒しているということですよ(笑)。
佐藤:逆に前作ではそれが、数値として表現できていなかったので。
野上:勝利に貢献したはずなのにそれが数値化できていなかったので、今回はちゃんと数値化しました。
佐藤:倒した数が多いというのがわかった時はうれしい瞬間でもあるので。そういった瞬間が少しでも増えたらいいなと思って今回のような仕組みにしています。
――逆にやられた数をなくしたというのも。
佐藤:協力して倒した場合も倒した数としてカウントされるので、倒した数と倒された数の計算が合わなくて気持ちが悪いなと思っていたことが1つ。もう1つはやっぱりポジティブな数値があの画面に出ているほうがうれしいと思いまして。
スペシャルの数は使えば使っただけ増えていきますよね。さらに、スペシャルは使えば仲間のためになっていることがほとんどだと思うので、結果的にスペシャルの使用回数が多ければ、それだけチームにたくさん貢献しているということになります。そうした理由で、やられた数の代わりにスペシャルを使った回数を出そうということにしました。
心機一転したスペシャルウェポンで『スプラトゥーン2』らしいフレッシュさを出す
――今回スペシャルウェポンが一新されましたが、一新した理由というのは?
佐藤:『スプラトゥーン2』らしさをどこで出すかということの1つだと思っていますが、ただ単にスペシャルウェポンを増やすだけだと同じような役割のスペシャルウェポンが2種類あることになってしまいます。そのため、すべて新しくして『スプラトゥーン2』らしいフレッシュな感じを出そうということで、一新することに決めました。
――前作の世界観と合わせるとのお話がありましたが、そこのパラレルワールド的な部分をどうお考えになったのかなと。
井上:詳しくはヒーローモードをプレイして、ミステリーファイルを集めていただければと思うのですが、旧スペシャルウェポンは試合のレギュレーションが変わって、使えなくなっているんです。
野上:ちなみにハイカラスクエアの壁とかには、スペシャルウェポンが一新されたことに対する当局への抗議みたいな落書きがあって(笑)。
井上:トルネードの張り紙があったり。
――そうなんですか!
野上:イカたちの世界にトルネードファンがいるのかもしれないですね。でもそこはもう、これからのナワバリバトルでのスペシャルウェポンはコレだと当局が発表した。一応ナワバリバトルは公式ルールでのインクバトルなので。
▲本作のスペシャルをイカすには、使うタイミングが重要! |
――世界設定的にはガチマッチは公式ではなく?
野上:ガチマッチは裏ルールですね。ナワバリバトルはもともとイカたちが普通にインクの塗り合いの遊びをしていたものがスポーツ化されたのですけどね。もしかしたらガチマッチもストリート系スポーツから正式競技にされるような流れがあるのかもしれません。
天野:一応ガチオブジェクトを専門で作っている会社もイカたちの世界にはあるので。
井上:結果的にそれが公式になるかも……。
野上:もう当局が認めざるを得ないようになり、標準ルール化されていくという流れがあるのかもしれないですね。今作から2年後になっても、標準化されてるかどうかはわからないですけど。あと、ガチマッチってイカたちが勝手にあの場所でやっているんです。
佐藤:ゲリラ的にやっているのだと思いますね。
天野:だから一応メインのナワバリバトルをやっているステージではなく、別のステージでゲリラ的に開催されています。
野上:レギュラーマッチで使ってないステージにヤグラとかを持ち込んだり床にガチエリアの線をひいたりとかして(笑)。
天野:こっそり遊んでる(笑)。
野上:そんなイメージですね。エクストリームの中のさらにエクストリームみたいな感じ。
――ファイトクラブ的な。
野上:あ~、そうです。ちょっと地下競技みたいな。もしかしたらそのうち当局に見つかって正式競技化されるのかもしれないですけど。
――ガチマッチに参戦されているプレイヤーは皆さん強いですよね(笑)。
野上:どうしても時間がたたないとウデマエが分かれないところがありますから。
佐藤:私たちも悩んだところではあって。前作から続けてプレイしてくださっているお客様からしたら、ガチマッチの3ルールは最初から遊べて当然だという思いがあります。とはいえ、いきなりすべてのお客様が参戦するような状態で始まってしまうと、いろんなウデマエのお客様が混ざってしまう状態になってしまう。
野上:前作ではお客様の慣れに合わせるようにコンテンツを追加していったのですが、今回は慣れているお客様と慣れてないお客様の両方がいらっしゃいます。慣れてないお客様のことを考えると、ガチマッチに挑戦できるハードルをもっと上げるなどの選択肢もありました。でもやっぱり慣れているお客様の遊びたい要望のほうが強いと思ったので、最初から遊べることを選択しました。
――そこで飛び級の出番ということですね。友人が、C-からいきなり飛び級してB-になったと連絡して来ました。
野上:そうですね、慣れているお客様はイッキにボンってウデマエが上がるようになっています。
佐藤:悩んだってところの続きかもしれないのですけど、早く適正なウデマエに上がれるような仕組みは必要かなと思ったので。今回は飛び級という仕組みを入れて、ウデマエが本来の適正であるところに早く行けるようにサポートしています。
――飛び級はどう判断しているものなのですか?
佐藤:実力を推定する値としてガチパワーというものが計算されています。ガチパワーがこれぐらい高かったら、もっと高いウデマエに行ってもいいだろう。というように判断して飛び級するようにしています。
▲ガチパワーはガチマッチに勝てば上がり、負ければ下がるので、直近の成績が強く反映されやすい。 |
――友人はガチヤグラに乗ったまま勝ったから上がったのかな。みたいなことを言っていました。
佐藤:なるほど。飛び級の判定は、試合の内容よりはそのバトルのメンバー、ステージでチームを勝利に導いたかどうかだけで判断されていると思ってください。
野上:1人で活躍したかどうかではなく、チームをいかに勝利に導いたかですね。
――どんなにうまい人でもいきなり1戦2戦やって飛び級するわけでは?
野上:ないですね。継続的な強さですね。ウデマエはあくまでも同じくらいのプレイレベルの人と一緒に戦えるようにという指標です。ただ、上げることだけが目的ではないので、ガチマッチ自体を楽しんでいただけたらと思います。
――飛び級は一気にどれぐらい上がりますか?
佐藤:4段階までは一度に上がるようになっています。C-からですと、一度に上がりうるウデマエはBになります。毎回白熱した試合を楽しんでほしいという気持ちがあるので、同じウデマエでも、なるべく推定ガチパワーが近い人を8人そろえるようにしています。
自分と同じぐらいの相手が8人そろったら勝率は5割になるはずなので……。まあ、これは理論上の話ですけど。そういった意味では毎回ヒリヒリした試合が楽しめるのかなと思います。
野上:格闘ゲームとかでもそうですけど、同じぐらいのプレイレベルの人と戦うのがやっぱり一番おもしろいのではないでしょうか。
――負けてもめげすにたくさんプレイする。
野上:そうですね。たくさんプレイするのもいいのですが、考えたり、振り返ったりしながらやったほうがいいと思います。次はこんな風に戦法を変えてやってみようとか、こういう攻め方をしてみようとか。そうした工夫自体を楽しんでいただきたいです。
――リーグマッチをウデマエB-以上からにした理由は?
佐藤:リーグマッチのベースはガチマッチにあると思っています。そのため、最初にガチマッチで見知らぬ人と8人集まるというのを経験してからリーグマッチを楽しんでいただきたいので、B-からにしました。
野上:もともとランク10にならないとガチマッチに挑戦できないのは、まずは基本である“地面を塗って戦う”立ち回りを覚えていただいてから、さらに複雑なものに挑戦してもらいたいからなんです。
佐藤:やっぱり基本はナワバリバトルなんですね。ナワバリバトルが『スプラトゥーン』のベースに存在していて、まずはそこを体験してほしいというのがあります。
野上:そういったことをしっかり理解していただいたうえでガチマッチに挑戦してもらいたいので、ハードルをちょっとだけ上げています。
▲井上精太氏。グラフィックのみならず、ゲーム世界の見せ方も担当するアートディレクター。本作のamiibo監修も。 |
最初はベーシックなステージ、徐々にとがったステージが追加
――ステージを作る時に心がけていた点はありますか?
佐藤:『スプラトゥーン2』は新しく始めるお客様もいらっしゃるので、最初からプレイできる8ステージはベーシックなステージ構成になるようにというのは心がけました。なので、これから徐々にとがったステージが追加される感じです。
野上:前作の時と同様に後半にいくほどギミックが凝ったステージが追加されていく感じで。
――アンチョビットゲームズみたいな?
野上:あ~、そうですね。リフトのように、それまでになかった特殊なギミックが追加されたりとかですね。
佐藤:形状とかも、これまでよりもとがったスタイルのステージが。まあこれからですね、はい。
――初期ステージのなかに前作のタチウオパーキングとホッケふ頭があって驚いたのですが、この2つが続投された理由はありますか?
佐藤:ココはこだわりかもしれないですけど、調整しがいのあるステージをピックアップしたうえで、さらにイカたちの世界の2年間の時間経過でどのような変化が起きているのかというのを入れようということで選びました。
野上:あと単純に2つとも特徴が強いステージなので。新しいステージを作って特徴が一緒になってしまうようなら、前のステージが持つ特徴は生かしつつそれをリファインしたほうがいいだろうという判断です。
天野:あとはホッケふ頭ってコンテナの位置をズラすだけでステージが全然違う(笑)。
野上:そうそう(笑)。イカたちが、新しいステージを作れるからということでコンテナをギーッて動かして。
天野:まあこれは冗談ですけどね(笑)。
――戸惑ったのはホッケふ頭でした。一見変わってないように見えるけどコンテナの上に乗れるようになっていたり。
野上:コンテナの上り方もいくつかあります。
――ルールによっても上れたり上れなかったりするので、把握するのに一番時間がかかりました。
佐藤:そういった違いを楽しんでいただきたいなっていうのもありますね。前作から継続して登場するステージとはいえ、開発者としての思いは他のステージと同じだけ入っていますので。
野上:このステージでこのブキを使ってこういう風に戦えば強い。でも、強いと思っていたらそれに対して対抗手段が出てきて……。という繰り返しで遊び方が変わっていくゲームだと思っています。ステージの構成も上れる場所が変わったり進み方が変わったりしているで、また新鮮な気持ちで遊んでいただきたいです。
▲取材時は当然触れられていないが、9月16日には前作の人気ステージ・モズク農園が追加された。改修ポイントで遊びも変化! |
――ちなみに、前作では4時間に1度ステージチェンジしてたのが、今回は2時間おきになったのには何か理由がありますか?
野上:私たちが思っていたよりも遊んでいただいているお客様の熱量がずっと高くて、一度にプレイされる時間が多かったんですね。僕らはあの4時間のうちにどこか1時間ほど遊んでいただいて、また別の機会に別のステージを遊んでいただいて、と思っていたのですけど。
佐藤:一度に遊んでいただいている時間が長いのがわかってきたんです。
天野:あとガチのルールが最初から3つ解禁されているのと、ステージも前作から増やそうというのがあるので。
井上:ステージチェンジの回転を上げることで、別のステージやルールをテンポよく遊んでほしいなと思ったんです。
佐藤:そうなることで3つあるルールがいろいろ遊べるようにと、2時間ごとにしました。
持ち寄った時の別の切り口としてサーモンランが誕生
――協力プレイのサーモンランはどういったきっかけで生まれたのですか?
野上:Nintendo Switchが据え置機と携帯機の両面を持ったハードで、持ち寄って遊ぶってことができるわけですけど、持ち寄った時に8人のナワバリバトルより少ない人数でも遊べる、別の切り口の遊びが欲しいということで作られました。
――オンラインではクマサン商会のバイト募集の時間に合わせてのプレイにしたのはなぜですか?
天野:あれはシャケがその時間にならないと現れないからですね。
――あぁ、現れたシャケを退治するために?
天野:いやいや、退治ではないです。イクラを集めているんです。
佐藤:目的はイクラですから。
野上:イカにはイカの生活があって、シャケにはシャケの生活があります。だからシャケ退治ではありません。でもイカはイクラが欲しいからシャケを倒しに行く。そんな感じの設定です。
天野:と、いうことにしておいてください。
(一同笑)
野上:サーモンランもゲームサイクル全体の中にちゃんと組み込みたかったというのもあります。『スプラトゥーン』のメインであるナワバリバトルを楽しんでいるイカたちが、そのスキルを使ってバイトに行くという。
天野:バイトに行ったり、時にはハイカラスクエアを救ったり。
野上:そういう風なサイクルを作りたくて、あえて時間を区切りました。
――オンラインだと使用できるブキがランダムで設定されているのはなぜですか?
野上:あれは“こういうスキルを持っている人を募集します”みたいなことです。
天野:もう少し開発者目線で言うと、バトルで別のブキと対峙したときにそのブキの特性も知らないと、自分の使っているブキがどう生きるのかっていうのがわからないなと思って。だから実際に使用してほしいというのと、バトル以外で多くのブキを使う機会を増やしたかったという思いです。
野上:そこはサイクルを意識した発想になっていて、相手の持っているブキの特徴がわかるので対戦に生きてくる、ということですね。例えば対戦で相手チームにチャージャーがいた時、遠くから撃ってきてズルいなと思ったりすることがあると思います。
だけど、実際に自分で使ってみるとスキの大きさや発射間隔の長さなどがあって扱うのが難しい。そうしたことがわかると、相手が使っていた時に攻撃後のスキに攻めようとか考えられるじゃないですか。そういったことを知ってほしくて、いろんなブキを使う機会を増やしている。そのほうがこのゲームをもっと楽しんでいただけるのではないかと。
――苦手なブキが第1WAVEにくるとちょっとホッとします。
(一同笑)
天野:まあでも、対戦で使うよりはまだ余裕をもって使えるので。
野上:たまに余裕ないけどね(笑)。
天野:“試しうち”とかで練習してから、バイトに参加して実戦で使ってみてみると。
野上:バイトでチャージャーをうまく扱えなくて役に立てないなと思ったら、“試しうち”でチャージャーの練習をしたりしてからサーモンランに行ってもらうとか。そんな風にいろんなモードを渡り歩きながら遊んでもらえるとうれしいです。
――そういう意味で次の次までのステージ内容がわかるのですね。
野上:ここは俺のスキルが生きる! って思ったらそこを狙ってやっていただいて。逆にこのブキだけダメだと思ったら、それだけ練習してもらうとか。
▲たくさんのブキを使いこなせればバイトの効率もアップする! |
――報酬はイカッチャとオンラインで何か違いはありますか?
天野:基本は同じですけど、イカッチャのほうがいつでもやれるぶん、報酬の種類が少なく、量も少なめに設定しています。あと、ローカル通信のサーモンランは失敗しても再挑戦すると同じシャケの出現パターンで遊べるので、そこはオンラインとまた違う遊びになると思っています。
佐藤:失敗した時にダメだった部分を反省して挑戦すれば、考えた攻略法が通用するかを試せる。
――でも意外と覚えてない(涙)。
天野:でもそれを何回繰り返しても大丈夫なので。
野上:あれはできるだけ冷静に進めたほうがクリアできます。
天野:いやクリアっていうのは関係ないので。金イクラさえ集めていただければいいので(笑)。
――もらえる報酬は完全にランダムですか?
佐藤:そうですね、クマサンが適当にカプセルに詰めて渡しているので。
天野:報酬カプセルの色でだいたいわかるようになっていて、たまにレア物もあります。
野上:キラキラしているやつですね。
天野:でもあんまりそういうことを考えずに(笑)。手に入れたものをうまく使ってバトルを楽しんでほしい。
佐藤:そういった意味じゃ、あともうちょっとバイトしたら次のカプセルがもらえるけどどうしようかなって思った時、チケットがもらえそうなカプセルだなと思ったらもうちょっと頑張る。という風にしてもらえると、集めやすいかもしれないですね(笑)。
――ちなみにそのカプセルの中身は?
天野:もらえるものがはっきりしてしまうと作業になってしまうので。でもたくさん金イクラを集めればたくさんもらえるので、たくさん金イクラを集めてください(笑)。
ギアパワーのかけらを集めればいつかは思ったとおりのギアができる!
――今回ギアパワーのクリーニングと、ギアパワーのかけらでギアパワーの付け直しができますが、これはどういった経緯で導入されたのですか?
佐藤:前作ではダウニーにスロットを回してもらっても、欲しいギアパワー以外が1個でも付いてしまったらもう1回スロットを回す。その0か1かっていうのはちょっとネガティブかなと思っていました。そのため、ギアパワーのかけらを集めていけばいつかは思ったとおりのギアになるほうがポジティブになるかなと思って、ギアパワーのかけらというシステムを導入しました。
――前作は目的のギアパワーをそろえた究極のギアができなかったのですが、今回は理論的には可能なのではないかと。
野上:そうですね、時間はかかるけど理論的にはできますね。
天野:クマサン商会のバイトに参加すればもうちょい楽になるかも。
――ギアパワーのかけらを効率よく集めるのはクマサン商会でアルバイトをするのが一番いいんですかね?
佐藤:数値で言ってしまうと味気ないかもしれないですけど、ロブの屋台でドリンクを飲んだ状態でギアを成長させると狙ったギアパワーがちょっとつきやすくなるので、うまく使うと集めやすいのではないかなと思います。
野上:今回はアプリのNintendo Switch Onlineと連携させると“アネモのゲソタウン”というものが使えます。そこでは普段のギアとは違う基本のギアパワーが付いたギアが手に入るので、自分が欲しいギアパワーで、かつ欲しいデザインのギアがきたらそれを注文して頑張って育てる。というようなことをしていただければなと。
▲右のメインセーブレモンで“インク効率アップ(メイン)”が少しつきやすくなる。 |
――プライベートマッチとオンラインラウンジが分かれている理由は?
野上:オンラインラウンジを使う場合はNintendo Switch Onlineから募集をかけてもらったうえで、ロビーのメニューを選ぶとその部屋にスッと入れる形になっています。プライベートマッチはあらかじめ申し合わせた友だちと集まるために部屋を作る。入り口が違うみたいな感じですね。
佐藤:Nintendo Switch Onlineで部屋を作っていただくと、スマートデバイスに“部屋ができました。友だちを招待してください”みたいな感じで通知が届くので、そのきっかけがあるか、ないかの違いですね。
――アプリを介したボイスチャットの感度のよさにびっくりしました。
野上:それはよかった。ボイスチャットももちろんですが、SNSなどですでにつながっている友だちの輪を使ってそのままマッチングできるというのが一番の特徴かなと思っていまして。「今から遊ぶ人だれかいない?」って募集をかけたら、答えた人とすぐにマッチングができる。そういったところは手軽になっているのではないかなと思いますね。
佐藤:例えば「フォロワーの人、誰でもいいからきて」みたいなことをやりたい時は、SNSなどに直接ルームに入れるURLを流すだけで誰でも参加できるので、これまでと違うマッチングの方法が増えたって考えていただけると、いろいろと使い道があるかなと思います。
野上:URLを送れる方法ならSNSでもメールでもなんでも使えるんですよ。だから、自分がいつも使っているコミュニティに働きかける感じでつながることができる。で、さらにボイスチャットもできる。
――過去50戦の戦績などを空いた時間に見てみて「ああ、こんなんで負けてたんだな」とか振り返っています(笑)。
野上:そうですね、Nintendo Switch Onlineでは細かい個人成績が出ますので、そういった情報を参考に自分のバトルを振り返ってもらうのにも使っていただきたいですね。
――あのアプリのなかで、まだあまり知られてない機能はありますか?
佐藤:知られていないとはちょっと違うのですけど、いろんなところにシェアするボタンというのがあって、それを使うと自分の今の戦績だったりとかをSNSに流したりできます。友だちと自慢しあったりする時にぜひ使ってほしいですね(笑)。
天野:ヒーローモードのベストタイムとかも出ていますので、それもぜひ友だちと競い合ったりしていただきたいなと思っています。
▲Nintendo Switch Onlineの“ゲーム連携サービス”から『スプラトゥーン2』選択で、役立つ情報満載のページ“イカリング2”へ。 |
アップデートなどで変化するその瞬間を楽しんでほしい
――では最後に読者へメッセージを伝えていただけたらと思います。
佐藤:『スプラトゥーン』というゲームはすごい思い入れがあるゲームなのですが、その私が驚くくらい皆さん『スプラトゥーン』に対する熱量が高く、多くのお客様に遊んでいただいてすごくうれしいなと思っています。それに負けないようにこれからもアップデートして変化していきますので、ぜひこれからも『スプラトゥーン2』を遊び続けいただけたらなと思います。
井上:この世界に住んでいる若いイカたちの、刹那的な「今が大事なんだ」という瞬間が一番生き生きして見えるように描いています。イカたちが好きなものがモデルチェンジしたり、服の趣味が変わっていったり、そういう移り変わっていく現象そのものを楽しんでほしいなと思います。
天野:前作の『スプラトゥーン』のプロジェクトが始まる前に、最初は1人用から始まって、次に協力プレイがあって対戦になっていくというように、プレイヤーの熟練度や目的、気分によって、世界中の人がインターネットを介してマッチングすること自体が遊びになる、という企画を考えていました。
前作では、最初ということもあり対戦要素だけでまとめましたが、今作では協力要素を入れることによって、もともと作りたかった理想の形に近づけることができました。サーモンランにはオンラインとローカル通信、それぞれの楽しみがあるので、いろいろな状況で遊んでみてください。
野上:ゲームって1人で遊ぶコンテンツでもあるけど、遊び場みたいなものかなとも思っています。今回は、身近な友だちと一緒に遊ぶっていう新しい遊び場ができた。そこにドンドン新しいブキや新しいステージが追加されたり、フェスといった新しいお祭りが起こったりして、遊び場がドンドンと進化していく感じを楽しんでいただきたいですし、僕たちもそういう環境を用意できるように頑張ります。お互いにプレイヤーとして、一緒に楽しんでいきましょう。
▲今後は新ステージのエンガワ河川敷と新ブキ・キャンピングシェルターの追加も予定されている。『スプラトゥーン2』の遊びはまだまだ進化し続ける! |
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